- 配信日：2024.01.22
- 更新日：2024.04.18
オープンイノベーション Open with Linkers
カーボンニュートラル技術20選〜材料・素材・リサイクル技術編～
リサイクル技術の事例
ここからはリサイクル技術の事例として、元の素材と同じ用途へ再利用する技術を紹介します。
リサイクル技術に関しては、以下３つの分野に分類しています。
- ・プラスチック
- ・フッ素系プラスチック
- ・ゴム類
Audiの事例
Audi はカールスルーエ工科大学と共同で、自動車用プラスチックのケミカルリサイクルのパイロットプロジェクト開始を予定しています。当プロジェクトでは、使用済みプラスチックコンポーネントをアウディモデルから取得し、ケミカルリサイクルを使用して熱分解油に変換するという取り組みを進めています。
デンカ株式会社の事例
デンカ株式会社では、使用済みポリスチレンを熱分解し、その原料であるスチレンモノマーを再生する実証設備建設に着手しています。大手企業を中心に、プラスチックを熱分解して、もう一度プラスチックとして蘇らせるケミカルリサイクルに取り組んでいます。
gr3nの事例
gr3n では、マイクロ波を照射しつつ、水によるペットボトル の解重合を行う技術を研究しています。熱を使って熱分解させるよりもエネルギー効率が良いことで注目されています。
Pyrowaveの事例
Pyrowave では、マイクロ波を使ってポリスチレンなどを始めとした熱可塑性（ねつかそせい）のポリオレフィンのケミカルリサイクルを事業として行っています。
Ioniqaの事例
Ioniqa では、ペットボトルのケミカルリサイクル技術の研究に取り組んでいます。プラスチック廃棄物からペットボトルに使えるような原料を再生産することが目的です。回収されたペットボトルを細かく粉砕した後、磁性イオン液体を触媒として反応させることによりペットボトルの原料であるモノマーに分解します。
廃棄物の資源化の事例
廃棄物の資源化として、事例を大きく以下２つの分野に分けて紹介します。
- ・燃料化：食品残渣（ざんさ）* を熱分解して燃料化する技術や、ワイン / ウイスキーの搾りかすを用いたバイオガス / エタノール生成、廃プラスチックを分解して燃料化する技術など
- ・資源化：コーヒーの皮や廃棄野菜、テキーラ製造残渣などからセルロース繊維やプラスチックを生成する技術
＊残渣（ざんさ）＝濾過（ろか）をした後に残ったかすのこと。
LICELLA HOLDINGS LIMITEDの事例
LICELLA HOLDINGS LIMITED では、高温高圧の超臨界水（水と水蒸気の間のような特殊な性質を持つ液体）を利用して廃プラスチックの科学結合を分解し、 20 分程度の短い処理時間でプラスチックを液体のワックスやディーゼルオイル、エチレンなどのガスに変換する技術を開発しています。
従来、プラスチックを分解する場合、熱をかけるというやり方が一般的でしたが、この技術では熱分解と比較して収率が 1.5 倍程度改善されると言われています。また、超臨界水を使うため、分解する前に原料を乾燥させる必要がないのも特徴です。
Resynergiの事例
Resynergi では、廃プラスチックを燃料にリサイクルするためのマイクロ波高速熱分解装置を開発しました。この装置を使用することで１トンの廃プラスチックから 250 ガロンのディーゼル燃料を回収可能。エネルギー効率が非常に高く、コンパクト化しやすい点がメリットです。
Perpetual Nextの事例
Perpetual Next では、枯葉や木材などの有機廃棄物を低酸素環境下で焙煎（ばいせん）処理して得られたバイオ炭を提供しています。炭はエネルギーとして使うだけでなく、炭として CO2 を固定化する目的もあります。
近畿大学の事例
近畿大学では、植物性廃棄物のゴミを再生可能なバイオ固形燃料に変換する装置を開発しています。
Curtin Universityの事例
Curtin University では、電池機器の廃棄物から有用な物質を抽出する技術を研究しています。具体的には、シアンフリーのアルカリ性グリシン溶液を、酸化剤存在下で用いることで廃プリント基板（ PCB ）から貴金属を回収するプロセスを開発しました。従来、廃プリント基板から貴金属を回収するには、シアン化化合物・シアン化溶液を使うのが基本でしたが、毒性が高いのが難点でした。この技術ならシアンを必要としません。
Indian Institute of Technology Delhiの事例
Indian Institute of Technology Delhi では、亜臨界から超臨界のメタノールを使用して電気電子機器廃棄物を処理し、非金属画分（かくぶん）の有機材料を回収した後、金属画分から金属を回収する二段階の回収プロセスを開発しました。非常に独創的な技術として注目されています。
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講演者紹介
浅野 佑策
リンカーズ株式会社 リサーチプラットフォーム事業本部 オープンイノベーション研究所
東北大学工学部卒業（ 2006 年）、東北大学大学院工学研究科修了（ 2008 年）
株式会社東芝 生産技術センターにおいて半導体製造プロセスの研究開発に従事。
その後、アクセンチュア株式会社にて大手製造業における、工場デジタル化や業務自動化などのデジタルトランスフォーメーションを複数推進。
現職では、メーカーでの研究開発とコンサルティングの経験を活かして、エレクトロニクス領域を中心に、先端技術動向調査、技術マッチング、技術情報を効率的に収集するための技術開発など、製造業向けのイノベーション創出を支援している。
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