• 配信日:2023.08.24
  • 更新日:2024.04.19

オープンイノベーション Open with Linkers

次世代モビリティの最新技術〜MaaS・自動運転・HMI〜

この記事は、リンカーズ株式会社が主催した Web セミナー『ニューモビリティの最新技術のご紹介』を書き起こしたものです。

弊社では、次世代モビリティの体験を向上する最新技術や事例を調査し、その結果をまとめた「次世代モビリティ2023(アプリケーション/MaaS編)マルチクライアント調査レポート」というものを作っています。
このレポートの中から、MaaS 、マイクロモビリティ、ドローンなど、乗用車以外におけるモビリティ技術に焦点をあてて、注目の技術を一部抜粋して紹介します。

セミナーで使用した講演資料を記事の最後の方で無料ダウンロードいただけますので、次世代モビリティの最新技術の具体例を知りたい方は、ぜひ本文と合わせてご覧ください。

MaaS/マイクロモビリティ/パーソナルモビリティの例


次世代モビリティの最新技術〜MaaS・自動運転・HMI〜

MaaS( Mobility as a Service ) とは、一人ひとりの移動ニーズに合わせて、複数の公共交通・移動サービスを最適に組み合わせ、検索・予約・決済等を一括で実施するサービスのことです。近年完成度が高まっており、大手企業を中心に様々な機能統合をしたプラットフォームが開発されています。

移動や決済、ルート検索など統合的な機能を持つMaaSプラットフォーム

次世代モビリティの最新技術〜MaaS・自動運転・HMI〜

トヨタ自動車株式会社は、スマートフォン上でルート検索からチケット購入までを完結できるプラットフォームを開発しています。レンタカー・鉄道・高速など、さまざまな移動手段を組み合わせて最適なルートを出すことはもちろん、予約や決済まで1つのプラットフォーム上で実現できる機能の幅広さが特徴です。

BMW は、EV 専用の充電ステーションや駐車場の検索、カーシェアリングなど、EV の自動車所有者向けに必要な情報を1つに統合したプラットフォームを開発しています。

Kyyti Group では、Kyyti Group の名義でルート検索や決済システムなどの機能を簡単に統合したアプリを作ることができる、ホワイトラベルプラットフォームを開発しています。自動車メーカーやカーナビメーカーが自社でアプリを開発しなくとも、 MaaS の提供が可能です。

好ましい行動にインセンティブを与えるブロックチェーンと組み合わせたMaaS

次世代モビリティの最新技術〜MaaS・自動運転・HMI〜

ブロックチェーンと組み合わせた MaaS の例も紹介します。

Velocia Inc. は、CO2 削減などの環境保護にも貢献できるコンセプトのシステムを提供しています。例えば自家用車ではなく、他の手段(徒歩・自転車・eスクーター・カープール・公共交通機関など)に乗り換えた通勤者に対して、アプリ経由で仮想通貨を付与します。 ConnectIQ Labs, Inc. も同様のコンセプトで、移動実績に応じてインセンティブを与えるアプリサービス「 Miles 」を提供しています。 Enroute では、電車やバスの移動時にネットショッピングすると、運賃を値引きする取り組みをしています。

ブロックチェーンを絡めている理由は、ポイント付与や決済などの金銭的な価値を伴う、高いセキュリティが必要なシステムを比較的小さな初期投資で作ることができるからです。これによってベンチャー企業や小さなプロジェクトでも取り組みやすい、という特徴があります。

次世代電池を活用した電動自転車などマイクロモビリティ例

次世代モビリティの最新技術〜MaaS・自動運転・HMI〜

パーソナルモビリティやマイクロモビリティの例をみていきましょう。

まずは、マイクロモビリティ(自動車よりコンパクトかつ機動性が高く、1人または2人乗りの車両のことです。)の例である、電動自転車について紹介します。最新の水素燃料やナトリウム燃料など、次世代 EV (電気自動車)向けの電池を、まずは自転車に採用する新しい動きがあります。

Anhui Bohua Hydrogen Energy Technology Co ltd は、水素燃料アシスト電動自転車を開発しています。内圧調整機構を使っており、水素が過圧状態になると放出する仕組みで、長い距離の移動が可能です。 Modern Times Ltd では、簡単にバッテリー交換できるウォーターボトル形状の電池パックを採用し、利便性を高めたコンセプトで開発しています。 Sodium Cycles では、ナトリウムイオン電池をいち早く自転車に取り入れていることが特徴です。

上記取り組みにより、既存の電動アシスト電動自転車の課題であった、充電時間に対して走行距離が短いという欠点の解消が期待できます。

ロボティクス技術を活用したパーソナルモビリティ例

次世代モビリティの最新技術〜MaaS・自動運転・HMI〜

パーソナルモビリティとは、近距離移動を想定した1〜2人乗りの次世代自動車の概念です。近年では、ロボットとモビリティの融合というコンセプトで、試作品レベルまで出ている事例が増えています。

千葉工業大学では変形するロボットを開発しています。このロボットは、移動時はバイクのように跨って(またがって)走行し、乗っていないときは、変形してコミュニケーションロボットとして役立つ、という新しい価値を提案しています。

株式会社テムザックは、乗り込む時は座席が下がり、乗り終えたときは座席を立てるなど、車椅子に乗り込むときの負担を軽くする電動車椅子を開発しています。 City Transformer Ltd. は、タイヤの幅が変わるミニカーを開発しました。広い道を安定して走行したり、狭い道は車幅を狭めて移動したりできます。

自動運転サービス/インフラストラクチャの例


次世代モビリティの最新技術〜MaaS・自動運転・HMI〜

乗用車向けの自動運転サービスよりも先に自動化が進んでいるのが、工場・倉庫向けの自動運転ロボット AGV / AMR です。

工場、倉庫向けの自動運転ロボットAGV/AMR

次世代モビリティの最新技術〜MaaS・自動運転・HMI〜

従来は、磁気テープなどを床に貼り、決められた経路のみを動くロボットがほとんどでした。近年ではロボット自体にカメラやセンサーをつけ、ロボットが経路を考えながら動く技術が開発されています。

Dematic( KION Group )では、自動運転車両を設計し、スペースが限られている様々な環境でストレージ(収納)・ピッキング・トランスポート機能の最適化が可能となりました。シグマトロン株式会社のロボットは、メカナムホイールという特殊な形のタイヤを採用し、車体の向きを変えず 360 度どこでも移動できます。 Eurotec( Lowpad )社のロボットは、ホイールが独立しており、その場で旋回するなど狭い場所を自由に移動できます。

重量物を運搬できるドローン技術

次世代モビリティの最新技術〜MaaS・自動運転・HMI〜

ドローンも自動運転に関係して実用化が進んでいます。最近では、積載重量が 100 kg を超えるものも開発されています。こうした、重量物運搬用のドローンは、eVTOL と呼ばれる垂直に離発着できるヘリコプターに近い形状のものが多く、さまざまなメーカーで実用化に向けた開発が進められています。

F-drones は、港から船舶などの海上拠点に重量物を運ぶ eVTOL「 Hyperlaunch Heavy」を開発中です。 Autoflight や Tactical Robotics Ltd.でも、100 kg を超える大型のドローンを開発しています。

こうしたハイペイロードのドローンサービスは、港から船舶に大型の荷物を輸送したり、山の工事現場に資材を送ったり、土木事業で遠くの現場に資材を送ったりするなど、産業用途として主に使われると考えられています。従来のヘリコプターや狭い道を通るトラックの代わりとして、大きな社会的変化をもたらすでしょう。

個人/店舗レベルでのEV充電シェアリング

次世代モビリティの最新技術〜MaaS・自動運転・HMI〜

EV の充電インフラに関しても様々な新しい取り組みが進められています。 ArcBlock, Inc. では、分散型サービス構築を支援するプラットフォームを提供しています。具体的には、個人が所有する充電ステーションを他人でも使えるようにし、誰がどのくらい使ったのか、支払いはどの程度かをブロックチェーンを使って、安全かつ確実にやり取りできる仕組みです。

Slock.it は、「 Blockcharge 」という、EV車の充電を街中で可能とするシステムを開発しています。電気自動車のスマートプラグを購入し、コンセントにプラグを挿せば充電でき、ブロックチェーン上に記録されます。街中の充電器に対して、支払い処理・ポイント付与などが可能になります。

日産自動車株式会社はミニストップ株式会社と連携し、電気自動車と小売店とのマッチングサービス「チャージング + (プラス)」を提供し EV の充電を試験運用しています。