• 配信日:2021.09.24
  • 更新日:2022.04.12

オープンイノベーション Open with Linkers

オープンイノベーションとは? ~ 技術の価値を最大化する事業開発 ~

この記事は、リンカーズ株式会社が主催したウェビナー「ニューノーマルにおける新規販路開拓の方策」より、オープンイノベーションに関しての話を抜粋し、まとめたものになります。

オープンイノベーションとは


技術マーケティングで、その成功の鍵を握る「オープンイノベーション」についてお話しします。
オープンイノベーションとは、 2003 年に経営学者のヘンリー・チェスブロウ氏が発表した概念であり、「組織内のイノベーションを促進するために、意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイディアなどの資源流出入を活用し、その結果組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすこと」と定義されています。
これを図解にしたものが下の図になります。

画像 1 :外部ネットワークを活用して製品化を目指す活動
画像 1 :外部ネットワークを活用して製品化を目指す活動

例えば、企業内でのあるプロジェクトをイメージしてください。
・プロジェクトがスタートした時、社内で研究テーマから開発に移行できない
・またそれができていても開発から量産に移行できない

このような課題を克服できないと、研究や開発自体が途中で頓挫してしまいます。なので、そうなる前に自分たちで社外の技術を活用し、マーケットにアプローチして、イノベーションを推進してゆくのです。

オープンイノベーションが求められている 2 つの理由


では、なぜ今オープンイノベーションが求められているのでしょうか。
その理由に、「製品ライフサイクルの短命化」「融合領域の拡大」が挙げられます。

「製品ライフサイクルの短命化」

わかりやすい例を上げますと、カセットテープから CD 、そして DVD と移行していくごとに、どんどん競争が激化、製品寿命も短くなり、キャッシュを得られる時間が短くなっています。そのように研究開発に割く時間が減った結果、外部を利用してスピーディーに事業化に結びつける必要性が一層高まっているのです。

画像 2 :製品ライフサイクルが短命化している
画像 2 :製品ライフサイクルが短命化している

「融合領域の拡大」

これまでは、「自動車」「電気」「 IT 」など業界ごとの境界がはっきり分かれていましたが、現在は様々な領域での DX 化など、「融合領域」で生まれる最新技術が増えてきています。その結果、もはや社内独自の研究・事業開発では、市場に対応することが困難になってきています。

画像 3 :業界の境界領域の拡大により独自 R&D では対応困難
画像 3 :業界の境界領域の拡大により独自 R&D では対応困難

実際、下のグラフのように 1990 年頃から研究開発の投資比率が下がってきているます。これは、技術投資しているのにリターンが得られていない、という結果が示す状況であると言えます。

画像 4 :結果的に研究開発の投資効率が下がっている
画像 4 :結果的に研究開発の投資効率が下がっている

こういった背景があり、バズワードのように扱われたオープンイノベーションではなく、外部を利用しながら研究の効率化、商品化のサイクルの短期化を図ることができる「本質的なオープンイノベーション」が、より一層求められる時代になっています。

オープンイノベーション 3 つの類型


オープンイノベーションには、
 「事業開発型」
 「技術探索型」
 「シーズアウト型」

という 3 つの類型があります。

事業開発型

  • 外部から事業テーマを探し、スタートアップと協業で新規事業を創るといったアクセラレータ的な活動を行う。
  • 技術探索型

  • 外部から研究開発・技術開発・ 生産委託先などの技術パートナーを見つけ、自分たちの技術開発を行う。
  • シーズアウト型

  • 自社の R&D で生まれた技術を、自分たちで事業化せず外部に展開する。
  • 技術探索型とシーズアウト型は、既存事業でのスポット的活動を行うという意味で活動内容が似ています。しかし、シーズアウト型は「売上を伸ばす取り組み」であるのに対し、技術探索型は「コストを削減する取り組み」であるという違いがあります。
    3 つの類型の中で、現在最も多く取り入れられているのは「外部から技術を取り入れる」という技術探索型のオープンイノベーションです。
    外部の技術パートナーを見つけて「自分たちの事業を早く事業化したい」という企業が多いことから、サプライヤーとしては、この潮流にうまく乗ることが重要であると考えます。
    この技術探索型のオープンイノベーションの例として「メッセージの入ったプリングルス」が有名ですので、次に紹介します。

    P&G の探索型オープンイノベーション事例

    画像 5 :メッセージの入ったプリングルス
    画像 5 :メッセージの入ったプリングルス

    プリングルスを販売している P&G では、イタリアの大学教授が持っていた食用色素や印刷の技術を取得し、製品に応用することを実現しました。
    またこの他にも、 P&G では、 2001 年に「新製品開発のうち、 50% 以上は社外の技術を取り入れる」という目標を立て、 4 年後の 2005 年にこれを達成しています。これにより研究開発費比率も下がり、費用対効果も上がりました。

    画像 6 :効率を追求できる『技術探索型オープンイノベーション』 ~  P & G の売上高と R & D 費割合の推移 ~
    画像 6 :効率を追求できる『技術探索型オープンイノベーション』 ~ P & G の売上高と R & D 費割合の推移 ~

    オープンイノベーションの活用事例


    オープンイノベーションを活用する理由にも変化が起きてきました。 IT バブル崩壊後からリーマンショックあたりまでは、「業績が厳しくなってきたので効率化を図りたい」という理由が多かったのが、 2015 年頃からは、前述のように「製品ライフサイクルが短命化している」「キャッシュ化できる時間が短いから」「研究開発費削減のため」という理由に代わるようになりました。
    では、大手企業の事業開発は、どのような経営戦略で行われているのでしょうか。
    これまでは、足元の事業(既存事業)から新規のお客さまや技術を探す、という方法(例「アンゾフのマトリクス」のフレームワーク)が一般的でした。これは、企業内の既存事業を軸にして新規事業開発をしていく方法です。バブル期に、無謀にも飛び地の領域にチャレンジし、撤退していった反省が活かされているとも言えます。

    画像 7 :これまでの事業開発はアンゾフのマトリクスが定石
    画像 7 :これまでの事業開発はアンゾフのマトリクスが定石

    しかしながら、環境変化が速く、未来予測が困難な VUCA 時代で。さらにコロナ禍を経て、世の中の劇的な変化を踏まえると、既存事業を軸にしているだけでは市場に対応しきれないケースは、さらに多く増えてきています。この問題に対しては、飛び地を狙う既存事業とは非連続な新規事業を「外部と連携することで小さくスタートさせる」ということで対応していく事例がでてきています。

    トヨタ自動車のオープンイノベーション事例

    例えば、トヨタ自動車では CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる次世代技術を、外部と連携することで社会での実装化に取り組んでいます。

    画像 8 :トヨタは外部連携を進めることで破壊的イノベーションに対応
    画像 8 :トヨタは外部連携を進めることで破壊的イノベーションに対応

    積水化学工業のオープンイノベーション事例

    また積水化学工業では、自社の既存技術である樹脂フィルム・ラミネート技術に、外部技術を融合させることで、太陽光発電分野に進出しました。
    さらにユーザー側のプレイヤーとも連携することで、従来自社の技術領域とは全く違う領域で、ビジネスを立ち上げることができました。

    画像 9 :積水化学のオープンイノベーションを活用した事業開発の事例
    画像 9 :積水化学のオープンイノベーションを活用した事業開発の事例

    このように、すでに大手企業では、足元の事業だけでなく、飛び地も含めた新しいビジネスに進出できているケースも多く見られ、サプライヤー側にとっても新たなビジネス機会創出のよい例になっています。
    10 年前に比べてもオープンイノベーションが活発化している今、ビジネスチャンスを積極的に捉えていくことが重要ではないでしょうか。
    (下に続く)

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    オープンイノベーションにおける問題・課題


    では、サプライヤー側は、オープンイノベーションの波にどのように乗っていけばいいのでしょうか。
    PDF、Adobe のストーリーから「企業が技術の価値に気づく難しさ」について見てみましょう。
    オープンイノベーションでは企業内外の技術やアイデアを活用することが重要ですが、多くの企業では、自社の技術を十分に活かしきれておらず、死蔵した技術のうち 63% はそのまま消滅しているというアンケート結果が出ています。

    画像 10 :死蔵した技術の多くはそのまま消滅している
    画像 10 :死蔵した技術の多くはそのまま消滅している

    このように、日本国内で毎年 18 兆円もの研究開発費が投入されていながら、多くの技術は事業化されずに埋没しています。この技術をうまく活用できれば、新たな価値創出のチャンスがあるのではないでしょうか。
    しかしながら、自分たちだけで埋もれている技術の価値に気づき、有効活用するのは難しいこともあります。 PARC ( Palo Alto Research Center /パロアルト研究所。米ゼロックスの 100% 子会社)では、35 件の遊休技術を社外に移管したことがありました。その結果、1/3 にあたる 24 の技術が社外で事業化に成功し、2000 年当時、米ゼロックスの時価総額の 2 倍の価値を生みだしています。

    画像 11 :技術の価値に気づくのは難しい
    画像 11 :技術の価値に気づくのは難しい

    このほか、 PARC では、マウスやレーザープリンターなどが発明されました。スティーブ・ジョブズや、ビル・ゲイツも見学に来ており、 PARC で得たアイデアを自社サービスに活かしたりもしています。この成功例から、自社のビジネスには不要な技術であっても、市場に出すことで価値を持つ技術があることがわかります。自社に閉じて開発を行うだけでは、技術を活かしきれない場合も多いのです。じつは、PDF も実はゼロックス社内から提案されたアイデアでした。しかし、PDF が世の中普及してしまうと、自分たちの事業を脅かされるため、ゼロックス経営陣はアイデアを却下。そこで PDF の開発者は、ゼロックスを退社し、皆さんもよく知る Adobe という会社を設立しました。

    画像 12 :優れた技術の有望市場は既存事業からの「飛び地」にあることが多い
    画像 12 :優れた技術の有望市場は既存事業からの「飛び地」にあることが多い

    ここからは、オープンイノベーションの話からは少し反れますが、大いに関連する話として、新規事業領域の開発の話をひとつ。
    もうひとつ、「技術マーケティング」に関する話をしてゆきます。
    オープンイノベーションの潮流に乗り、川下企業や大企業では、技術探索やパートナー探索が盛んになっています。この流れをうまく活かし、川上の企業が研究開発のフェーズから川下企業や大企業と連携する上で重要になるのが「技術マーケティング」です。

    新規事業開発におけるスタンス


    新規事業領域において、それが自社事業の周辺領域なのか革新領域なのか、日本企業と米国の企業を比較すると、日本では足元の研究開発を重要視し、対して米国では革新的な技術開発をしていることがわかりました。

    しかし、先ほどの PDF の例にもあるように、「外部」をうまく活用することができれば、米国の開発方法を日本でも踏襲し「飛び地」にチャレンジできる可能性があります。そこで、外部をうまく利用しながら革新的な研究開発に取り組み、需要化することが重要なテーマになっています。

    画像 13:飛び地を狙った活動を行う
    画像 13:飛び地を狙った活動を行う

    では、この場合の「外部」というのは何を指すのでしょうか。
    それは、ユーザーです。
    先進的な取り組みに一緒に取り組んでくれるユーザー(その技術を利用する立場の人や企業)を巻き込むことが、革新的な技術開発にとって必要になります。
    このことについて、自動車業界における、新たな移動手段の事業開発を例に考えてみましょう。

    画像 14:飛び地を狙うには、顧客に評価してもらいつつ進める
    画像 14:飛び地を狙うには、顧客に評価してもらいつつ進める

    新規に事業を考える際、企業側だけでゼロからソリューションを考えるのではなく、まずユーザーに手持ちの技術で提供できるソリューション、例えば上の図の一番左にあるスケボーを提供し、そこで反応をみます。
    そして「転ぶ危険がある」ということがわかれば、次に「ハンドルをつけよう」というソリューションを提供。
    それ対し「足で漕ぐのは大変そう」ということがわかれば、さらに次は「エンジンを付ける」…といった流れで商品開発を行います。
    こうすることで、最短で製品開発を行うことが可能になります。逆に、社内での検討を中心にしてしまうと、情報不足の中で的外れのシナリオを描いてしまい、結果的にユーザー、マーケットに受け入れられないというリスクが高まってしまいます。
    アメリカのスタートアップ・アクセラレーターをしているポール・ブックハイト氏も「とにかく製品を作ったらお客さまに売りに行くこと」そして「売り先で得られた情報は非常に貴重であり、新しいアイデアを見つけられることもよくある」といっています。

    画像 15:ユーザーの声に耳を傾ける
    画像 15:ユーザーの声に耳を傾ける

    つまり、最終製品になる前の開発初期段階から「技術マーケティング」、すなわち、その技術を使ってどのような新しい顧客価値を提供できるかを考え、ユーザーと共に商品開発をする。そうすることでユーザー起点(ユーザードリブン)で競争力を評価することができ、足りない部分を明確化し、実現性の高いプランを作ることができるのです。

    技術マーケティング成功事例


    次に、実際の技術マーケティング成功事例や、ユーザードリブンで技術開発をおこなった事例についてお話したいと思います。

    iRobot 社の『ルンバ』の事例

    iRobot(アイロボット)社では、自社のロボット技術をどう活かせばよいか、製品化前から技術を評価してくれるユーザーを捉え、技術の用途仮説を立てて試行錯誤を繰り返しました。そして 14 回の失敗を経て、15 回目で「家庭用のお掃除ロボット」という用途を見つけ、「ルンバ」を製品化し大成功を収めました。

    画像16:技術マーケティング成功例 ① アイロボット社
    画像16:技術マーケティング成功例 ① アイロボット社

    東レ(TOREY)の『トレカ』事例

    2 つ目は東レ株式会社の事例です。
    東レでは、1970 年から炭素繊維『トレカ』を開発していましたが、その技術を最初は「釣り竿製品」など身近な用途開発からはじめ、現在の航空宇宙事業、自動車事業にまで拡大してきました。この市場開拓、事業拡大の成功も、開発初期のタイミングからユーザーの声を取り入れてきた結果です。

    画像17:技術マーケティング成功例 ② 東レ株式会社
    画像17:技術マーケティング成功例 ② 東レ株式会社

    このように、ユーザー起点での考え方、マーケティングでの成功事例があります。
    さらに BtoB の分野で戦略的に「マーケティングのとらえ方」「マーケティングの活用の仕方」を変えるべきだと考えています。一方で BtoC では、マーケティングの方法が時代と主に進化していますので、参考にそのマーケティング変遷を見てみましょう。

    技術マーケティング 2.0 とは


    画像18:マーケティング 1.0 ~ 4.0
    画像18:マーケティング 1.0 ~ 4.0

    1970 年代は、作れば売れる時代でした。
    この時代は、効率的にお客さまのもとに製品を届けるために、売り手の視点に立った 4P などのフレームワークが導入されました。
    その後、2000 年代には供給が需要を上回り、モノがなかなか売れない時代になりました。
    この時代は、お客さまに何を提供すればよいのかを見極めるのが重要になりました。そして、現在 BtoC は「マーケティング 3.0 」「マーケティング 4.0 」の時代を迎えています。お客さまの共感価値を構築し、ブランディングや SNS を活用したマーケティングも行うようになり、お客さまと共に製品が作られるようになりました。

    BtoB 分野においてはどうでしょうか。現在も顧客不在で製品が作られ、スペック至上主義に陥っているケースが多くあるのではないでしょうか。もしそうなっているとしたら、生み出した製品のスペックが高くても、どこに(誰に)売ったらよいかわからない、といった問題を抱えてしまいかねません。このような事態を回避するために、プロダクトアウト的な発想を捨てて、顧客ドリブンでの技術開発をする必要性が非常に高まっているのです。そしてこれこそが、皆さまに取り組んでいただきたい「技術マーケティング 2.0 」です。

    「技術」そのものではなく、技術が提供できる「価値」を売る

    画像 19:ドリルを買う人が欲しいのは「穴」である
    画像 19:ドリルを買う人が欲しいのは「穴」である

    「技術マーケティング 2.0 」の本質は「価値の訴求」です。
     マーケティングにおける有名な言葉に、ドリルを買いにきた人が欲しいのは、ドリルではなく「穴」である、という言葉があります。この例えにおける、ドリルそのものではなく、「穴を開けるという(技術)価値」を提供することが、「技術マーケティング 2.0 」の本質にあたります。
    ここからは技術マーケティングの取り組み方についてお話したいと思います。

    技術マーケティングの取り組み方


    技術マーケティングは、研究開発から需要を作り事業化するまでの、あらゆるフェーズやステージで必要になります。
    それぞれのフェーズにおいて、早めにユーザーを巻き込むことが重要です。研究から開発フェーズ、開発フェーズから量産フェーズ、量産から他のマーケットへの移行フェーズ、といったゲートのタイミングでユーザーにのレビューを得ることで、フェーズ、ステージ間に存在する「魔の川」や「死の谷」を超えることができます。

    画像 20:各開発段階に応じて乗じる課題
    画像 20:各開発段階に応じて乗じる課題

    では、研究フェーズにあって、ユーザーに評価をしてもらう技術や製品がなにもないという場合は、どうすればよいでしょうか。
    この場合こそ、技術マーケティング 2.0 思想で本質価値を伝えることが大切になります。

    そのユーザーのレビューを得たい価値については、対面で伝えられる場を必要としており、プレコロナ時代では展示会がその場としてうまく機能していました。しかし新型コロナウイルスの影響を受けた現在では、多くの展示会は中止やオンライン開催となり、対面で価値を伝えることが難しい状況です。

    展示会では、達成したい目標設定とその後の検証が不可欠

    ここから少し、展示会がコロナ前と変わらず開催されるという前提でお話しします。
    展示会で名刺 1 枚を入手するためにどのくらいの費用がかかっているか、みなさんはご存知でしょうか。会場設置代、輸送費、人件費等など、総額 250 万円かけて展示会に参加し、名刺を 100 枚入手したとすると、名刺 1 枚あたり ¥25,000 の経費がかかっている計算になります。展示会に参加するにあたっても、明確な KPI を設定し、何件名刺をもらってそのうち見込み客はどのくらいか、更に受注数はどのくらいであったか、など受注に向けてうまく進んでいるかを確認し、数値管理をすることが重要になります。

    画像 21:展示会を最大限に活用するための KPI の考え方は目的に応じて異なる
    画像 21:展示会を最大限に活用するための KPI の考え方は目的に応じて異なる

    またこの他に、展示会を有効活用できたかどうかを確認するために、開発サイクルにユーザーの声が反映できたのかを検証する必要があります。
    先述のように、対面でユーザーと接することができる展示会では技術マーケティングに則した活動が可能です。まだ製品として形をなしていないもの、開発途上の状態であっても、お客さまに評価してもらうことができ、開発フェーズにユーザーの声を乗せることができます。
    ですから「まだできていないのですが開発サンプルを見ていただけませんか」というような形でにお客さまに依頼をし、得られた生の声を開発サイクルに乗せれば、量産化・ビジネス化のフェーズ、ステージ、に持っていくことも可能になるのです。

    課題仮説をたて、そのソリューションを提案し技術の価値を伝える

    先に触れましたが、そのような展示会での活動が困難になっているのが昨今の現実です。
    このような場合こそ、先ほどお話しした「価値を起点にお客さまに訴求する」ことが重要になります。そして、価値訴求の際のポイントは「課題仮説を立てること」だと弊社では考えています。

    例えば、自社で洗濯機用減速機の技術を持っていると仮定します。
    減速機の特徴には「伝導効率」や「動作精度の良さ」があります。まず、この特長を自動車用トランスミッションや医療用ロボットに活かせるのではないかと用途仮説をたてます。次に、その自動車用トランスミッションや医療用ロボットに求められていることは何かを考えます。
    そして「さらなる燃費の向上」「より精密な人の動きの再現」が求められているのではないかと課題仮説をたてます。
    そこまでユーザーが求めることを考えることができれば、「燃費 ○% 向上」「人間の精度を実現することが可能」とお客さまに技術の価値を伝えることができます。

    画像 22:対面での価値訴求が難しい中では、「課題仮説」と「価値」をセットで訴求することが重要
    画像 22:対面での価値訴求が難しい中では、「課題仮説」と「価値」をセットで訴求することが重要

    課題仮説とユーザーへの価値提供をセットで紹介した資料の例を紹介します。
    ある会社で、耐熱性が高く、かつ薄型で設置しやすい超音波センサの技術を持っているとします。この技術をどのような場所で活用できるのか、どのような価値があるのか考えてみます。

    1. 薄型技術に注目した場合
    活用場所:石油生産プラント
    課題仮説:配管の超音波探傷作業に多くのリソースが必要
    価値提案:薄型であることを活かし、超音波センサを貼ったまま配管の常時監視が可能

    2. 耐熱技術に注目した場合
    活用場所:鋳物工場
    課題仮説:鋳物製造時は金型が高熱になっているため、内部の様子がわからない
    価値提案:700 度の耐熱性を活かし、内部の様子の確認が可能

    画像 23:課題仮説と価値をセットとした資料を構築する例
    画像 23:課題仮説と価値をセットとした資料を構築する例

    このように、自分たちで仮説をたてて、お客さまに価値を提案することが重要です。
    また、価値の提案に際し、自分たちの技術を抽象化・具体化することで、別の視点での価値を創造することも可能になります。例として、また先ほどの(洗濯機用)減速機の技術を持つ会社を想定してみます。減速機には、渦流型水流を発生させることが可能になる機能がありますが、この技術は減速機以外の用途、例えば水処理プラントやキッチンメーカーでも利用できるのではないかと、さらに用途仮説をたてることができます。

    画像 24:提案内容を決めるための準備 ①
    画像 24:提案内容を決めるための準備 ①

    自分たちの保有技術を分解し、抽象化・具体化することで、思いも寄らない価値を見つけられる可能性が出てきます。
    今自分たちができることだけを提案するのではなく、これからやろうとしていることや、開発途上の価値を提案することも可能です。
    また、価値は必ずしも「技術」であるとは限りません。
    「コスト削減」「納期・時間短縮」といった技術以外の価値も存在します。特に開発メーカーでは「技術思考」に陥りがちですが、QSD(品質・コスト・納期)全体を見渡して、自社の強みを見つけてみてください。

    画像 25:提案内容を決めるための準備 ②
    画像 25:提案内容を決めるための準備 ②

    提案からユーザーの課題とニーズを引き出す


    課題仮説の内容が、提案先の実態にあっているかどうかは重要な問題ではありません。仮説起点の提案が的外れであったとしても、逆に「それは課題ではない。本当の課題はこれです」と、正しいニーズを引き出せる可能性が上がります。ダミー提案であっても、まずは提案をすること自体が大切なのです。

    営業リソースが十分ではない会社であれば、まず仮説起点でどのお客さまに提案するかを決めることで、的を絞った営業が可能になります。ユーザー自身が課題を明確に捉えきれていない場合でも、仮説ベースでの提案が有効になります。

    画像 26:仮説を元にダミー提案を行い顧客にフックをかける
    画像 26:仮説を元にダミー提案を行い顧客にフックをかける

    すでに特定の業界に特化し、既存の商流に頼っており、新規開拓に対し社内の意識も低い状態であっても、ダミー提案をすることで、自社の持つ技術を思いも寄らないところで活かせることが判明する可能性があります。
    また、新しいビジネスの可能性を探れるだけではなく、既存の枠外への意識醸成という社内の意識改革もつながります。

    画像 27:仮説起点の提案が有効となる例 ②
    画像 27:仮説起点の提案が有効となる例 ②

    オープンイノベーション直接の話からはそれましたが、オープンイノベーションにおいて、川上企業が研究開発初期から大きなビジネスに関わっていくためには、技術探索をしているユーザー(企業)に対して、早い段階から技術の PR をし、価値を評価してもらう必要があります。
    そして、仮説課題をもとに提案をしていくことで、技術の強みを最大限活かすマッチングができ、事業の成功が狙えるので、とても大切な話だと考えています。

    弊社は、様々なオープンイノベーション支援の活動を通じて、日本全体のイノベーションの促進、研究開発の底上げをし、最終的に産業構造の活性化を願っています。

    出典
    画像 1  リンカーズ作成
    画像 2  経済産業省「デジタル化・モジュール化による製品寿命の短期化」よりリンカーズ作図
    画像 3  Global Cleantech 100 List, MIT 50 Smartest Companies, 近年の投資動向よりリンカーズ作図
    画像 4  経済産業省より引用
    画像 5  P&G ウェブサイトより引用
    画像 6  P&G Annual report よりリンカーズ作図
    画像 7  リンカーズ作成
    画像 8  経済産業省 事業会社と研究開発型ベンチャー企業の連携のための手引き(第二版)より引用
    画像 9  NEDO オープンイノベーション白書(第二版)よりリンカーズ作図
    画像 10  NEDO オープンイノベーション白書(初版)より引用
    画像 11  H. Chesbrough “Graceful Exits and Foregone Opportunities: A History of Xerox’s Management of its Technology Spinoff Companies”, Business History Review,2002 よりリンカーズ作図
    画像 12  EE Times Japan 『自前主義で”モノづくりの自由度”を失った日本』 より引用
    画像 13  リンカーズ作成
    画像 14  Making sense of MVP (Minimum Viable Product) より引用
    画像 15  Adobe Stock からの画像
    画像 16  Business Journa l記事よりリンカーズ作図
    画像 17  東レ株式会社 IR 資料より引用
    画像 18  リンカーズ作成
    画像 19  Adobe Stock からの画像
    画像 20  リンカーズ作成
    画像 21  リンカーズ作成
    画像 22  リンカーズ作成
    画像 23  リンカーズ作成
    画像 24  リンカーズ作成
    画像 25  リンカーズ作成
    画像 26  リンカーズ作成
    画像 27  リンカーズ作成

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