• 配信日:2021.09.24
  • 更新日:2023.10.05

オープンイノベーション Open with Linkers

オープンイノベーションとは?意味、課題、事例など

オープンイノベーションにおける問題・課題


では、サプライヤー側は、オープンイノベーションの波にどのように乗っていけばいいのでしょうか。
PDF、Adobe のストーリーから「企業が技術の価値に気づく難しさ」について見てみましょう。
オープンイノベーションでは企業内外の技術やアイデアを活用することが重要ですが、多くの企業では、自社の技術を十分に活かしきれておらず、死蔵した技術のうち 63% はそのまま消滅しているというアンケート結果が出ています。

画像 7 :死蔵した技術の多くはそのまま消滅している
画像 7 :死蔵した技術の多くはそのまま消滅している

このように、日本国内で毎年 18 兆円もの研究開発費が投入されていながら、多くの技術は事業化されずに埋没しています。この技術をうまく活用できれば、新たな価値創出のチャンスがあるのではないでしょうか。
しかしながら、自分たちだけで埋もれている技術の価値に気づき、有効活用するのは難しいこともあります。 PARC ( Palo Alto Research Center /パロアルト研究所。米ゼロックスの 100% 子会社)では、35 件の遊休技術を社外に移管したことがありました。その結果、1/3 にあたる 24 の技術が社外で事業化に成功し、2000 年当時、米ゼロックスの時価総額の 2 倍の価値を生みだしています。

※遊休技術の販路開拓は Linkers Marketing でご支援可能です。

画像 8 :技術の価値に気づくのは難しい
画像 8 :技術の価値に気づくのは難しい

このほか、 PARC では、マウスやレーザープリンターなどが発明されました。スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツも見学に来ており、 PARC で得たアイデアを自社サービスに活かしたりもしています。この成功例から、自社のビジネスには不要な技術であっても、市場に出すことで価値を持つ技術があることがわかります。自社に閉じて開発を行うだけでは技術を活かしきれない場合も多いのです。実は PDF もゼロックス社内から提案されたアイデアでした。しかし、PDF が世の中に普及してしまうと自分たちの事業を脅かされるため、ゼロックス経営陣はアイデアを却下。そこで PDF の開発者はゼロックスを退社し、皆さんもよく知る Adobe という会社を設立しました。

画像 9 :優れた技術の有望市場は既存事業からの「飛び地」にあることが多い
画像 9 :優れた技術の有望市場は既存事業からの「飛び地」にあることが多い

オープンイノベーション成功のポイント


オープンイノベーションの効果を最大化する”組織”と”仕組み化”(2022年12月8日追記)

オープンイノベーションとは?意味、課題、事例など

リンカーズが 2012 年の創業以来、さまざまな企業のオープンイノベーションを支援してきた経験から、オープンイノベーション成功のポイントをまとめました。

記事冒頭では、オープンイノベーション推進の成功例を紹介し、そこからオープンイノベーションの推進には、以下の3つのことが必要だと述べています。

  • ・オープンイノベーション専門組織の設置
  • ・オープンイノベーション活動の仕組み化 / 見える化
  • ・会社トップによるコミットメント

その後、オープンイノベーションの実際の取り組みにおける成功ポイントとして、以下の3つを紹介しています。

  • ・成果の出やすい技術ニーズ型(=技術 / リソースの外部探索)から取り組む
  • ・専門組織が各現場の技術ニーズを吸い上げて定期的にメンテナンスし、外部連携または自社で促進する
  • ・オープンイノベーション活動の成功例を社内共有する

最後に、オープンイノベーション活動を成功させるための具体的な実践方法をご案内しています。

  • ・オープンイノベーションの活動を仕組み化 / 見える化するための、「技術のニーズ / シーズの見える化シート」の作成方法
  • ・オープンイノベーション活動のプロセスごとの KPI 設定方法 など

記事の詳細は以下からご覧いただけます。
記事リンク:「オープンイノベーションの効果を最大化する”組織”と”仕組み化”

オープンイノベーションを成功させる思考(2023年7月28日追記)

オープンイノベーションとは?意味、課題、事例など

ヤンマーホールディングス株式会社でオープンイノベーションに取り組み、新規事業創出や産学連携などを担当してこられた、同社 技術本部 共創推進室 専任部長の鶴 英明 様に、オープンイノベーションに取り組むうえで大切な思考や実務におけるポイントなどをお話しいただきました。

まず、オープンイノベーションに取り組むうえで大切な思考として、以下を挙げています。

  • ・エネルギッシュでポジティブでアクティブであること
  • ・もしかしたら新しいトライをすることで予期せぬ結果が生まれるかもしれないと考えて、探求/発見することを楽しむ思考
  • ・好奇心やワクワクする気持ち

実務におけるポイントとしては、以下のように述べています。

  • ・各プロセスがオープン化されたときに、自社のクローズドなやり方とどう変わっていくのかをしっかりイメージしていくことが必要
  • ・プロセスマップの上流の部分では、他社は共創のパートナーであるということを、オープンイノベーションに取り組む前にしっかり認識しておく、または共有しておくことが大切
  • ・オープンイノベーションとして新しい価値を生んでいくということを共有しておき、結果的にプロダクトの競争力向上が目的となることを共通認識として関係者が理解しておくべき
  • ・オープンイノベーションを推進するための「場」や「ツール」について、自社の文化に対してどういうツールが適しているのか、議論することも重要なポイント

記事の詳細は以下からご覧いただけます。
記事リンク:「オープンイノベーションを成功させる思考

オープンイノベーションの活用事例


オープンイノベーションを活用する理由にも変化が起きてきました。 IT バブル崩壊後からリーマンショックあたりまでは、「業績が厳しくなってきたので効率化を図りたい」という理由が多かったのが、 2015 年頃からは、前述のように「製品ライフサイクルが短命化している」「キャッシュ化できる時間が短いから」「研究開発費削減のため」という理由に代わるようになりました。
では、大手企業の事業開発はどのような経営戦略で行われているのでしょうか。
これまでは、足元の事業(既存事業)から新規のお客さまや技術を探す、という方法(例「アンゾフのマトリクス」のフレームワーク)が一般的でした。これは、企業内の既存事業を軸にして新規事業開発をしていく方法です。バブル期に無謀にも飛び地の領域にチャレンジし、撤退していった反省が活かされているとも言えます。

画像 10 :これまでの事業開発はアンゾフのマトリクスが定石
画像 10 :これまでの事業開発はアンゾフのマトリクスが定石

しかしながら、環境変化が速く、未来予測が困難な VUCA 時代で。さらにコロナ禍を経て、世の中の劇的な変化を踏まえると、既存事業を軸にしているだけでは市場に対応しきれないケースは、さらに多く増えてきています。この問題に対しては、飛び地を狙う既存事業とは非連続な新規事業を「外部と連携することで小さくスタートさせる」ということで対応していく事例が出てきています。

トヨタ自動車のオープンイノベーション事例

例えば、トヨタ自動車では CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる次世代技術を、外部と連携することで社会での実装化に取り組んでいます。

画像 11 :トヨタは外部連携を進めることで破壊的イノベーションに対応
画像 11 :トヨタは外部連携を進めることで破壊的イノベーションに対応

積水化学工業のオープンイノベーション事例

また積水化学工業では、自社の既存技術である樹脂フィルム・ラミネート技術に、外部技術を融合させることで太陽光発電分野に進出しました。
さらにユーザー側のプレイヤーとも連携することで、従来自社の技術領域とは全く違う領域でビジネスを立ち上げることができました。

画像 12 :積水化学のオープンイノベーションを活用した事業開発の事例
画像 12 :積水化学のオープンイノベーションを活用した事業開発の事例

このように既に大手企業では足元の事業だけでなく、飛び地も含めた新しいビジネスに進出できているケースも多く見られ、サプライヤー側にとっても新たなビジネス機会創出の良い例になっています。
10 年前と比べてもオープンイノベーションが活発化している今、ビジネスチャンスを積極的に捉えていくことが重要ではないでしょうか。

⇒次のページでは、オープンイノベーションを実践されている、さまざまな企業の方の推進事例を紹介します。