• 配信日:2023.03.13
  • 更新日:2024.04.19

オープンイノベーション Open with Linkers

CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

ソフトウェア/Web3分野の注目技術


CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

次に、CES2023 に出展していた技術で、ソフトウェアや Web3、メタバース領域の注目技術を紹介します。

CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

Rephrase.ai の技術

Rephrase.ai というアメリカの企業では、深層学習機能を用いて、実在する人間の映像や音声からデジタルアバターを作成する技術を開発しています。テキストを入力することで、その内容を正確な唇の動きとともにデジタルアバターに喋らせることが可能です。 Rephrase.ai では、この技術をマーケティングツールやビジネスメールの代替ツールとしての活用を想定しているとのことです。

Xinapse の技術

Xinapse という韓国の企業では、AI の学習データ構築をせず合成音を作るソフトウェアを開発しています。この技術は音声だけを対象としていますが、 Xinapse 自体はデジタルアバターを作る映像技術も持っているとのこと。実際の人間を複製したデジタルアバターを作るには倫理的な問題が関わる可能性を考え、技術の出し方について検討している段階だそうです。

DeepBrain AI の技術

韓国の企業である DeepBrain AI でも、顧客対応を行うデジタルアバターを作成する技術を開発しています。ここまでに紹介した Rephrase.ai 、 Xinapse 、 DeepBrain AI の3社はいずれも似ている技術で差が見えにくくはあるのですが、それだけデジタルアバターや付随する AI 技術の開発に取り組む企業が多く、革新的な技術が増えてきていることが伺えます。今後、盛り上がりを見せる分野の1つではないでしょうか。

Custonomy Company の技術

ここからは、 NFT / ブロックチェーン領域の技術を開発している企業の事例を紹介します。 ブロックチェーンという言葉自体は 2018 年ごろから広く使われるようになりましたが、親和性の低い分野でも使われている、地に足がついていないような印象を受けていました。最近になってようやく違和感のない文脈でブロックチェーンという言葉が使われるようになり、技術開発も進んでいるように感じています。

CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

画像の左にある Custonomy Company という香港の企業では、暗号資産や NFT などを保護するためのセキュリティプラットフォームを提供しています。 Web3 の時代らしく、管理者不在のプラットフォームを目指しており、どのブロックチェーンに対しても導入できる点が特徴です。このプラットフォームを利用することで、 NFT ビジネスの迅速な立ち上げができます。

LUTRA の技術

画像真ん中にある LUTRA という韓国の企業では、消費者向けのソリューションとして、撮影した写真を NFT として保存できる技術を開発しています。ユーザーは自身の思い出を NFT として保存したり、他のユーザーとシェアしたりすることが可能です。

Map Emulsion の技術

画像の右にある Map Emulsion というフランスの企業では、ブランド製品のトレーサビリティ(製品の生産から消費までの過程を追跡すること)を保証するサービスを提供しています。このソリューションに対応する QR コードを製品に貼り付け、消費者がこのコードを読み取ることで製品のトレーサビリティや購買決定に関わる情報(素材や品質など)を確認することが可能です。

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また、製造業を含めたビジネスでいかに WEB3 関連技術が活用されているのか、「サービス領域」「ヘルスケア / 医療領域」「食品領域」など、さまざまな領域における活用事例を紹介しています。
本 Web3 記事でもウェビナー資料を無料ダウンロードいただけますので、ぜひご覧ください。

記事を見る:Web3ウェビナーレポート~各種産業で活用されるWeb3.0最新技術

ロボティクス/モビリティ分野の注目技術


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例年 CES に出展している企業の技術は、ハードウェアを含んでいるものが多く見られます。その中で、ロボティクス / モビリティ分野は大掛かりで、複雑な機械が多いのが特徴です。

ここ数年は、飛行するドローン技術がスタートアップを中心に流行していた印象を受けますが、 CES では中堅以上の企業でもドローンの開発に取り組んでいることが分かりました。ドローンを差別化するポイントとしては、省電力化やドローンで取得したデータをどう生かすかなど、ユースケースごとに開発し、ビジネス化しているといった点が見られます。

このような中で特に気になった企業のハードウェアを紹介します。

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Meropy の技術

画像の左にある Meropy というフランスの企業では、農業用のドローンを開発しています。農業用ドローンというと、ドローンを飛ばして、空撮や空中からの農薬散布などの方面で開発が進んでいますが、 Meropy は異なるアプローチをしています。機体の両側に特徴的なホイールがついた、農地をパトロールするドローンです。このホイールにより地面との接地面積を減らし、農地や植物にダメージを与えないことを可能にしています。

また機体の上下にカメラが搭載されており、植物を上下から撮影することで生育情報のインプット量を増やしての AI での高度な処理を実現しているのも、このドローンの特徴です。

Noras Performance の技術

Noras Performance というポルトガルの企業では、 U 字型の電動救命ボートを開発しています。このボートの特徴は、水に投げ込まれると自動で起動し、遠隔操作が可能になる点です。緊急時にユーザーがどのように使うかを想定して開発され、「水中に投げ込めばすぐに使える」というUX(ユーザーエクスペリエンス)の点で他社製品と差別化している印象を受けました。

エイターリンクの技術

エイターリンクという日本の企業では、ワイヤレス充電の送受信のパッドを開発しています。このパッドは、充電する端末から最大 20 m 離れていても数ミリワットの電力伝送と、稼働している端末への給電が可能です。

ワイヤレス充電は昨今、非常にホットな分野で、例えば店舗で使用するロボットなど配線が難しい端末の充電を行うためのワイヤレス充電の開発が進みつつあります。エイターリンクという日本企業も、ワイヤレス充電の開発が製品レベルにまで進展しているという点が特に印象的でした。

ZOOZ Power の技術

ここからは、自動車(モビリティ)に関する技術を紹介します。大手の自動車会社では自動運転や電気自動車、デジタルツインなどを推し出している中、各社の掲げる大きなビジョンは似通ってきているような印象です。

一方でスタートアップは自社の飛び抜けた技術を使って、モビリティの分野にどのようにアプローチするか考えているという点で、差別化ができているように感じます。

このようなモビリティ分野に取り組むスタートアップを紹介します。

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画像左の ZOOZ Power というイスラエルの企業では、フライホイールという技術で急速充電や繰り返しの利用に強い充電池を開発しています。特に充電器の接続口について独自の技術を持っていることをアピールしており、興味深く感じました。

Ubicept の技術

画像真ん中の Ubicept というアメリカの企業では、専用の光子検出カメラを使って光子1つひとつを撮影でき、暗所での環境認識ができる技術を開発しています。通常の車載カメラでは認識が難しいもの(高速で回転しながら動くもの)でも正しく検出することが可能です。

Superimaging Display の技術

画像の右にある Superimaging Display という、こちらもアメリカの企業では、ナノ蛍光体を埋め込んだフィルムをガラス面に貼り付けるだけで、紫外線を照射すると透明ディスプレイになる技術を開発しています。指向性がないため、どの角度から見てもディスプレイの文字や画像を見ることが可能です。

ただ、背景が暗くないと文字や画像が見えにくいという印象を受けたため、使える場面は限定されるかもしれません。それでも、作り込みが難しい透明ディスプレイという分野で、後付けという別のアプローチで取り組んでいるのは非常に興味深い点です。このような新しい技術の可能性を垣間見ることができるのも CES の良いところだと思われます。

その他分野(スマートホーム/シティー・フードテック・センシング)の注目技術


CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

ここまでに紹介してきた3つの分野以外に「スマートホーム / シティー」「フードテック」「センシング」の注目技術を紹介いたします。

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Disruptive Technologies の技術

画像の左にある Disruptive Technologies というノルウェーの企業では、温度センサーと機械学習により、机の占有率をリアルタイムで検知できるセンサーを開発しています。センサー自体は数センチ角の小型で、どのような机にも使える印象を受けます。机だけでなく部屋の占有率を測定することにも活用可能です。

RePG ENERGY の技術

画像真ん中の RePG ENERGY というトルコの企業では、空気中の水分から飲料水を生成する技術を開発しています。ウォーターサーバーのような外見をした装置で、昼夜の温度差を利用し、1日に約 10 〜 15 リットルの飲料水を生成することが可能です。トルコ国内ではすでに、生成した水を飲用する承認を取得しているとのことです。

Meta Materials の技術

画像の右にある Meta Materials というカナダの企業では、「 NANOWEB 」という透明導電性フィルムをベースにした、多様なフィルム製品を展開しています。 CES2023 では、例えば 5 G / 6 G ネットワーク向けの高周波電波アンテナとして機能するフィルムや、電子レンジ用のマイクロ波保護フィルムなどが展示されていました。

CES2023 全体を見ると、 Meta Materials に限らず、フィルムに関する技術がたくさん展示されていた印象です。

Taste Boosters の技術

CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

こちらはフードテックの紹介です。画像の左にある Taste Boosters というアメリカの企業では、微弱電流で舌を刺激し、味覚を変化させるスプーン型の製品を開発しています。また、歯磨きをする際にマイナスイオンを照射して歯垢を除去する歯ブラシも開発しています。これらは商品として販売中です。

Nuvilab の技術

画像真ん中の Nuvilab という韓国の企業では、 AI で食品を識別し、食品の種類やそれぞれの栄養素、カロリーなどを判別するスキャナーを開発しています。他にも同様の技術を開発している企業はあるのですが、Nuvilab は食品廃棄物の削減を大きなテーマとして掲げていて、サステナビリティを価値として提供している点が印象的でした。また、個人ではなく飲食店などをターゲットとしている点も、他の企業とは異なる特徴でした。

大阪ヒートクールの技術

画像の右にある大阪ヒートクールという日本の企業では、温冷刺激を同時に与えることで、自分で肌を掻いた感覚を模擬的に与えるデバイスを開発しています。実際に肌を掻かずともかいたように錯覚するため、肌を傷つけずに痒みを和らげることが可能です。 2023 年に国内展開、 2024 年には世界展開を計画しているとのことでした。

CESに関するその他レポートのご案内(より詳しく知りたい方にオススメ)


CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

リンカーズでは毎年、「CES 先端技術動向調査レポート」をご提供しております。リンカーズの専門技術リサーチャーが注目企業の情報を整理し、今後のテクノロジートレンドを解説しているため、効率的な情報収集が可能です。
今回( CES2024 )は開催前の注目技術選定から、開催中のヒアリング代行、開催後の動向レポートまで、CES を最大限活用できるサービスをご用意いたしました。
以下より詳細をご確認いただき、この機会にぜひ活用をご検討くださいませ。

講演者紹介

CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

蒲原 知宏
リンカーズ株式会社 リサーチプラットフォーム事業本部 オープンイノベーション研究所 プロジェクトマネージャー 博士(工学)

東京工業大学大学院 理工学研究科修了。
東陽テクニカにて、自動車ソフトウェア向け静的コードチェッカーや大容量デジタルアセットの高速管理ソフトウェアの技術営業に従事。その後、シーメンスにて構造物振動計測・解析、および騒音源探査ソリューションのプリセールスを行う。
2020 年よりリンカーズに入社し、オープンイノベーション研究所のプロジェクトマネージャーとして、自動車、建設、ヘルスケアなど、多岐にわたる最新技術動向調査を行う。

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石田 かほり
リンカーズ株式会社 リサーチプラットフォーム事業本部 オープンイノベーション研究所 プロジェクトマネージャー

武蔵工業大学大学院 工学研究科 電子工学専攻。
脳波( EEG )における ERP 評価を用いたヒトの記憶関連の脳機能に関する研究に取り組む。
デンソーにて車載空調機器向けセンサーの開発・設計、車室内快適性製品の新規企画・開発、小型モビリティの新規企画に従事。
現職ではヘルスケア、各種センシング技術(生体、環境 etc. )、カーボンニュートラル / ネガティブ 他多数の最新技術動向調査を行う。

CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

西田 健治朗
リンカーズ株式会社 リサーチプラットフォーム事業本部 オープンイノベーション研究所 プロジェクトマネージャー 博士(工学)

慶應義塾大学大学院 理工学研究科修了。在学中は、欧州原子核研究機構( CERN )との共同でプラズマの数値モデルの研究開発を行っており、同機構を含む海外研究機関との共著論文を複数執筆。
その後、日本 IBM にて、国内外クライアントの海外事業戦略の立案を支援。産業分野は通信、金融・保険等、多岐にわたる。
2021 年よりリンカーズに入社し、人工知能(AI /機械学習/深層学習)の産業応用、ビッグデータ処理技術の研究開発事例など、主にソフトウェア領域での最新技術動向調査を担当している。

CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

久留 和成
リンカーズ株式会社 リサーチプラットフォーム事業本部 オープンイノベーション研究所 リサーチマネージャー 博士(医学)

九州大学大学院 医学研究科 博士課程修了。2002年 日本宇宙フォーラム、2003 年 英国 Dundee 大学、2006 年 英国Imperial college London にて博士研究員、2010 年 佐賀大学医学部、2015 年 北海道大学歯学部にて生理学・薬理学分野の教員を務め、中枢神経領域における摂食調節・糖尿病研究に取り組む。2022 年よりリンカーズ オープンイノベーション研究所に入社し、医学、ヘルスケア、バイオテクノロジー領域を中心に先端技術動向調査を行う。

オープンイノベーションを支援するリンカーズの各種サービス

「 Linkers Research 」サービス紹介ページ
リンカーズのグローバルな専門家ネットワークや独自のリサーチテクノロジーを駆使し、貴社の要望に合わせて、世界の技術動向を調査します。調査領域は素材、素子、製品、ITシステム、AIアルゴリズムまで幅広く、日本を代表する大手メーカーを中心に90社以上から年間130件以上の調査支援実績があります。

「Linkers Sourcing」サービス紹介ページ
Linkers Sourcing は、全国の産業コーディネーター・中小企業ネットワークやリンカーズの独自データベースを活用して、貴社の技術課題を解決できる最適な技術パートナーを探索するサービスです。ものづくり業界の皆様が抱える、共同研究・共同開発、試作設計、プロセス改善、生産委託・量産委託、事業連携など様々なお悩みを、スピーディに解決へと導きます。

「 Linkers Marketing 」サービス紹介ページ
貴社の技術・製品・サービスを、弊社独自の企業ネットワークに向けて紹介し、関心を持っていただいた企業様との面談機会を提供します。面談にいたらなかった企業についても、フィードバックコメントを可視化することにより、今後の営業・マーケティング活動の改善に繋げます。

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