• 配信日:2023.02.08
  • 更新日:2023.10.27

オープンイノベーション Open with Linkers

大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

マイクロ波を社会実装できた理由


大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

1つが、マイクロ波の反応系は、一般的な熱源によるそれとは全く異なる思想のもと、マイクロ波に合った形でゼロベースデザインしていく技術です。個々の物質がどんな条件でどの程度、電磁波を吸収するのかデータを取得することが重要です。
もう1つが、反応器のデザイン。ご家庭にある電子レンジをイメージしてください。例えばお弁当を加熱した際、一部は加熱されたけれど、他の部分は温まらない加熱ムラを経験されたことがあると思います。このような現象が工場で発生しては、使っていただけません。目には見えないマイクロ波を、化学反応を起こす釜の中で、いかにムラやロスなく安定・安全に使いこなしていくかを、シミュレーション技術を使いながら最適化しています。

マイクロ波化学株式会社のミッション


弊社のミッションは研究ではなく、開発した技術を実際の工場で使ってもらうことです。そのため、開発した技術を実験室レベルからスケールアップできるよう多くのエンジニアが事業に携わっています。

大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

さらに弊社は小さな組織であるため、工場を持たず、「技術・サービスを提供すること」がメインビジネスになります。メーカー様の敷地に「マイクロ波の工場を建てること」を最終ゴールとし、そのゴールに向かってマイクロ波の装置・プロセスを開発し、最終的な成果物としての商業機を納めることが私たちのビジネスです。

大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

事業領域としては、昨今注目されているグリーンの領域に始まり、医薬・飲料・食品のようなヘルスケアや電材関係などさまざまな分野で展開しており、それぞれの課題の解決方法としてマイクロ波プロセスを開発しております。

大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

現在、事業化に向けたプロジェクトが数多く動いており、 2014 年の工業化を皮切りに食品添加物・ポリマー・医薬品・廃プラスチックのリサイクル・炭素繊維など幅広い分野に展開しています。

具体的な共同研究開発の事例


最後に共同研究開発の具体例を紹介します。

大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

まずは三井化学と共に行っている炭素繊維製造です。風力発電のブレードや自動車・航空機などの構造材として広く使われている素材で、製造プロセスで繊維を温める際に消費するエネルギーが非常に多いのが課題です。マイクロ波は繊維だけをピンポイントで選択的に温められるため、従来法よりも消費エネルギーを半減させることができます。

大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

次に、廃プラスチックのケミカルリサイクル技術です。サーキュラーエコノミーという非常に大きな潮流がある中で、各化学メーカーでは、廃プラスチックを熱で分解して元の原料に戻し、再びプラスチックを生成するケミカルリサイクルが活発化していると認識しています。廃プラの分解のためのエネルギーとしてマイクロ波を使ってもらうものです。

大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

例えば新型コロナウイルス感染予防として広く使われたアクリル板、さらに車のテールランプ、コンビニの看板、水族館の水槽などさまざまなところで使用されているアクリル樹脂というものがあります。このアクリル樹脂の熱分解に弊社の技術を三菱ケミカルにお使いいただいており、 2024 年には商業化を予定しています。

大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

他にも、容器包装プラスチックのケミカルリサイクルについてはレゾナックと、セブンイレブンとはコンビニの店舗で出た廃棄物をマイクロ波で分解して油に変えたのち、大型の化学工場に輸送する小型分散型ケミカルリサイクルシステムという取り組みも実証しています。

大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

ここまでに紹介した事例は主にグリーンの領域でしたが、マイクロ波は食品・医薬の分野にも使うことが可能です。現在、アサヒグループ食品とは、長い製造時間がかかっていたインスタント食品の凍結乾燥工程を時間短縮し、工場の生産性を高める取り組みなども行っています。

講演者紹介

大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

菅野 雅皓 氏
マイクロ波化学株式会社 事業開発本部 本部長

旭化成 (株)にて中長期的な研究開発に従事後、2018年、マイクロ波化学(株)に事業開発第一号メンバーとして参画。
2012年、慶應義塾大学理工学研究科 修了、専門は合成生物学。

カーボンニュートラルに関するレポートのご案内

大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

リンカーズでは、カーボンニュートラルに向けた技術を「広く」「深く」知ることのできる、「カーボンニュートラル最新技術動向マルチクライアント調査」レポートをご提供しております。リンカーズの技術リサーチャーがグローバルの先端技術情報をピックアップし、専門家の目で情報を整理しているため、効率的な情報収集が可能です。

オープンイノベーションを支援するリンカーズの各種サービス

「Linkers Sourcing」サービス紹介ページ
Linkers Sourcing は、大学も含めた全国の産業コーディネーター・中小企業ネットワークやリンカーズの独自データベースを活用して、貴社の技術課題を解決できる最適な技術パートナーを探索するサービスです。ものづくり業界の皆様が抱える、共同研究・共同開発、試作設計、プロセス改善、生産委託・量産委託、事業連携など様々なお悩みを、スピーディに解決へと導きます。

「 Linkers Marketing 」サービス紹介ページ
貴社の技術・製品・サービスを、弊社独自の企業ネットワークに向けて紹介し、関心を持っていただいた企業様との面談機会を提供します。面談にいたらなかった企業についても、フィードバックコメントを可視化することにより、今後の営業・マーケティング活動の改善に繋げます。

「 Linkers Research 」サービス紹介ページ
リンカーズのグローバルな専門家ネットワークや独自のリサーチテクノロジーを駆使し、貴社の要望に合わせて、世界の技術動向を調査します。調査領域は素材、素子、製品、ITシステム、AIアルゴリズムまで幅広く、日本を代表する大手メーカーを中心に90社以上から年間130件以上の調査支援実績があります。

オープンイノベーションの推進についてお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
「まだ方向性が決まっていない」
「今は情報収集段階で、将来的には検討したい」

など、具体的な相談でなくても構いません。
リンカーズが皆さまのお悩みや課題を伺い、今後の進め方を具体化するご支援をさせていただきます。

リンカーズはものづくり企業の方向けにさまざまな Web セミナーを開催しています。
最新のセミナー情報やセミナーのレポート記事など、お役立ち情報を公式 Facebookでご案内しています。ぜひフォローをお願いします。