• 配信日:2022.07.21
  • 更新日:2024.08.07

オープンイノベーション Open with Linkers

オープンイノベーション事例 ~ サントリーの取り組みを徹底解説 ~

オープンイノベーションの仕組み


オープンイノベーション事例 ~ サントリーの取り組みを徹底解説 ~

この画像は、私たちの考え方を示したものです。「最先端技術情報」をしっかりと核にして、それを経営戦略や研究戦略の実現や加速に貢献していくという旗じるしを掲げて、私たちは仕事に取り組んでいます。
画像の下の方に「アカデミアスタートアップ」と記載しています。ここからさまざまな最先端技術情報が出てきますが、そこに対して情報をどのように取りに行くのか、また取りに行くだけでなく情報が集まってくるにはどうしたらいいのかといった点が重要だと思っています。また、集まってきた情報をいかに加工して研究者へ届けるのか、そのときに単に届けるだけでなく、インキュベーションをして研究者に届けることも必要だと思っています。
一方でどのような情報が必要なのかをニーズとして集めていくことも大切ではないかと考えています。
それぞれどのような活動をしていくかということも大切ですし、情報を取りに行く、あるいは集まってくる活動(画像の下の方の活動)と、あるいは届けていく、インキュベーションしていくという活動(画像の上の方の活動)がそれぞれ力一杯できたらいいと考えています。
しかしそれよりも、それぞれの力の入れ具合のバランスも重要なのではないかと思っています。下の方の活動ばかりやっていても、単に情報が集まってくるばかりで、情報のコレクターになりかねません。「あそこは情報をよく知っているんだけど、何も生まれてこないよね」と言われてしまいます。かといって、上の方のインキュベーションばかり注力していると、次第に下の方の情報は枯渇していきます。
このバランスをいかに取りながらやっていくかということも、私たちが気をつけながら行っているところです。

オープンイノベーションに必要な活動1「情報を取りにいく」

オープンイノベーション事例 ~ サントリーの取り組みを徹底解説 ~

では、ひとつひとつの活動のコアになっている部分を見ていきます。
まず「情報を取りにいく」ということに関しては、国内外のハブ組織、情報が集まっているところと連携することによって、そこから情報を吸い出して、拾い集められるようにしています。
日頃から連携できる関係を構築していくことも大切ですし、私たちが「こういった情報が欲しいのですが、ありませんか」と尋ねたときに、これらの機関からスピーディに、そして的確な情報が集まってくるような仕組みを構築・運用することも重要です。
次に、私たちが 2021 年から始めた「第一人者との技術ディスカッション」について。私たちの研究活動に影響を与えそうな領域、例えば 量子コンピュータ(量子化学)やブレインテック(脳科学)などの第一人者に講義を依頼します。
まず私たちがこれらの領域の動きを知ったうえで、これが5年後、10 年後の社会にどのようにインパクトを与えるのか、私たちはそれに対して何をすべきなのかということをやり始めています。
こういったものを蓄積することによって、私たちの最新の技術情報というものが質・量ともに充実するのではないかと思っています。
「情報を取りにいく」ということはマンパワーがかかります。 私たちのマンパワーにも上限があるので、いかにして私たちのもとに「情報が集まってくるか」ということにもチャレンジしています。

オープンイノベーションに必要な活動2 「情報が集まる」

オープンイノベーション事例 ~ サントリーの取り組みを徹底解説 ~

ここでは Web サイトを通じた提案募集ということで、 Web サイトを作ってスタートアップやアカデミアの方から提案、あるいは面談のコンタクトを受け付けています。これは 2021 年から始めた取り組みです。 すでに Web サイト経由で提案を受けて、実際に研究者の方に届けて、連携関係ができたという例もいくつかあります 。こうした投資が少しずつ実を結んでいるのではないかと考えています。

オープンイノベーションに必要な活動3 「ニーズを集める」

オープンイノベーション事例 ~ サントリーの取り組みを徹底解説 ~

次に「ニーズを集める」という点についてお話しします。
松本さんからキャラバン活動のお話がありましたが、私たちのところでもキャラバン活動のようなことをしています。
定期的にニーズを募集するという取り組みもありますし、随時ニーズを持ってきてもらうという取り組みもあります。そういった中で、研究者が研究しているテーマに対して「ここが足りないんだ」というニーズが集まります。
例えば「 A という技術が足りないから A という技術がほしい」という話があったとします。その解決方法として、ハブ機関に提示して募集をかけていくというようなプロセスがあるときに、「 A がほしいんだよ」というニーズをそのまま出してしまうと、考えていたものと少し違うものが集まってくるということが多々あります。
したがって、私たちは研究者たちのニーズを翻訳する、コンサルティングするということが必要だと思っています。そこであいまいだったニーズをよりシャープにして、言葉も変えていきます。
また「技術的に難しすぎる」というニーズに対しては「こうすればできるのではないか」というように少しハードルを下げたり、同じことを達成するにしても少し異なるアプローチを提案したりすることなどを、私たちの方でやっています。
そうすることによって、先ほどの探索活動で答えが見つからなくても解決策が見つかる確率を高めることができると思っています。

オープンイノベーションに必要な活動4 「情報を届ける」

オープンイノベーション事例 ~ サントリーの取り組みを徹底解説 ~

次に「情報を届ける」という点についてお話しします。
今までは、私たちが集めた情報が研究者の方にダイレクトに届かないということがありました。従来の方法では私たちが集めた情報をマネージャー陣に渡すのですが、そこからメンバーの方になかなか届かない、あるいはマネージャー陣は自分が抱えているテーマで手一杯なところがあるため、新しい情報を受け入れても活用しようがないと判断してしまうことがよくありました。
このような状況を踏まえ 2021 年から、画像にはメルマガと書いていますが、社内にある、情報を投稿する場所をうまく活用しました。私たちが集めてきた情報を投稿して、研究者が直接見ることができる、直接届けられる仕組みを作っています。
この取り組みを隔週で行っており、例えば私たちが会ったスタートアップ、あるいは集めてきた情報を特集のような形で、技術領域の特集を組んで提供しています。
また、私たちが参加したイベントの情報などを直接研究者に届けることによって研究の刺激になり、研究者の気づきが発生して、かつてに比べると実際に連携するといった成果につながってきているのではないかと感じています。

オープンイノベーション活動の今後


オープンイノベーション事例 ~ サントリーの取り組みを徹底解説 ~

このように、オープンイノベーションの仕組みとして最先端技術情報に対して投資をして、インキュベーションを行って研究者に届けていこうということをやっています。
特に「情報が集める仕組み」「情報を届ける仕組み」については 2021 年に始めたばかりということもあり、さまざまな試行錯誤をしながら進化をさせているところです。

オープンイノベーション事例 ~ サントリーの取り組みを徹底解説 ~

今後の方向性ということで、最後に締めたいと思います。
2021 年に私がサントリーグローバルイノベーションセンターに着任してから1年が経ちました。今まではオープンイノベーションを手段として活用しているところがあったため、探索することが目的になっていたのではないかと考えています。これをさらに進化させて、オープンイノベーションを戦略として埋め込む。
松本さんから戦略的提携についてのお話もありましたが、私が考えているのは、例えばテーマを作るときに、今まではテーマがあって研究テーマを進めていく中で「この辺は私たちだけでは無理だよね」というミッシングピースが見つかり、先ほどのニーズという形もあってうまいこと当てはめていく。そういったようなことをやってきましたし、そういったものができてきました。
この戦略に埋め込むには、少なくともテーマを作るときに最初からオープンイノベーションを考えていく必要があります。要は 「自分たちだけでやったらこれくらいの成果しか生まれないけれど、他のスタートアップとこのように組むことでこんな成果まで作ることができるのではないか」 ということを最初から考えていきます。
そして 、そもそも外に任せてしまうということも考えています。私たちサントリーグローバルイノベーションセンターは 100 人くらいの会社です。今までこの 100 人の中でできることをやってきました。しかしこれからは、松本さんのお話にもあったとおり外部の優秀なところ、優秀な人と組んで成果を出していく。私たちも外部に数々の優秀な研究者やスタートアップがあって、そこと組んでいくことで新しい成果、私たちだけではできない成果を作り上げていこうというふうに思考しています。
現在それに向けた仕組み作り、場作りにチャレンジしており、今後はサントリーグローバルイノベーションだけではできなかったような成果を生み出せたらと考えています。
私からの話は以上となります。

講演者紹介

オープンイノベーション事例 ~ サントリーの取り組みを徹底解説 ~

鈴木 雄一 氏

サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社 研究推進部 上席研究員
(オープンイノベーション担当)

【略歴】
・武蔵野ビール工場・京都ビール工場
(ビール工場での設備導入・改善プロジェクト)
・サントリーホールディングス 生産企画部
(技術戦略、技術系の人材戦略、全社改善活動の推進)
・サントリーグローバルイノベーションセンター ビジネス開発部
(研究戦略、研究ポートフォリオ、テーマ創出マネジメント)
・サントリーホールディングス 経営企画部 (兼務)研究企画部
事業開発部 (兼務)研究企画部
(経営戦略、オープンイノベーション、研究開発プロジェクト推進)

オープンイノベーションを支援するリンカーズの各種サービス

「Linkers Sourcing」サービス紹介ページ
Linkers Sourcing は、全国の産業コーディネーター・中小企業ネットワークやリンカーズの独自データベースを活用して、貴社の技術課題を解決できる最適な技術パートナーを探索するサービスです。ものづくり業界の皆様が抱える、共同研究・共同開発、試作設計、プロセス改善、生産委託・量産委託、事業連携など様々なお悩みを、スピーディに解決へと導きます。

「 Linkers Marketing 」サービス紹介ページ
貴社の技術・製品・サービスを、弊社独自の企業ネットワークに向けて紹介し、関心を持っていただいた企業様との面談機会を提供します。面談にいたらなかった企業についても、フィードバックコメントを可視化することにより、今後の営業・マーケティング活動の改善に繋げます。

「 Linkers Research 」サービス紹介ページ
リンカーズのグローバルな専門家ネットワークや独自のリサーチテクノロジーを駆使し、貴社の要望に合わせて、世界の技術動向を調査します。調査領域は素材、素子、製品、ITシステム、AIアルゴリズムまで幅広く、日本を代表する大手メーカーを中心に90社以上から年間130件以上の調査支援実績があります。

オープンイノベーションの推進についてお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
「まだ方向性が決まっていない」
「今は情報収集段階で、将来的には検討したい」

など、具体的な相談でなくても構いません。
リンカーズが皆さまのお悩みや課題を伺い、今後の進め方を具体化するご支援をさせていただきます。

リンカーズはものづくり企業の方向けにさまざまな Web セミナーを開催しています。
最新のセミナー情報やセミナーのレポート記事など、お役立ち情報を公式 Facebookでご案内しています。ぜひフォローをお願いします。