• 配信日:2022.01.04
  • 更新日:2022.01.08

オープンイノベーション Open with Linkers

オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

この記事は、リンカーズ株式会社が主催したウェビナー「実践的オープンイノベーション」を書き起こしたものです。
ウェビナーでは、リンカーズ株式会社 Open Innovation Evangelist 、一般社団法人 Japan Innovation Network 常務理事の松本 毅 氏に「大阪ガスのオープンイノベーションの実例」についてお話いただきました。

日本のオープンイノベーションの課題


オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

私は、「オープンイノベーション」の普及活動についてはリンカーズを通じて実施していますが、 Japan Innovation Network ( JIN ) では ISO 56002 / ISO 56000 シリーズ であるイノベーション・マネジメントシステム( IMS )の、導入・普及を図っております。その為に IMSAP (イノベーション・マネジメントシステムアクセラレーションプログラム)のサービスを提供しています。
ISO 化(国際標準化)された イノベーション・マネジメントシステム( IMS )には、オープンイノベーションにも共通する部分があります。日本における現在のオープンイノベーションの課題は、スマホに例えるなら「最新のアプリに飛びつくものの、全く成果が出ない」状況と言えます。
これはアプリに課題があるのではなく、スマホの OS が古い。古い OS では最新のアプリを導入しても成果が出ないという問題です。 OS に相当する部分に世界が合意した最新のイノベーション・マネジメントシステムを導入する必要があります。 Japan Innovation Network( JIN )の西口代表理事の作成した「日本のオープンイノベーションの現状課題~古い OS に最新のアプリを導入 成果が出ない」は現在の日本のイノベーション、オープンイノベーションの状況を上手く表現しています。

オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

例えば最近の流行ですと、「出島」を作っている企業が多いようです。しかし「御社は何の目的で出島を作ったのですか?」と質問すると、なかなか答えが返ってきません。

私は「これからは目的のないオープンイノベーションはやめましょう」ということを企業に伝える活動をしております。
オープンイノベーションでも成功確率の高い仕組みを作りが必要です。それには 2019 年に世界で初めて国際標準化がなされた ISO 56002 / ISO 56000 シリーズであるイノベーション・マネジメントシステム( IMS )に則してオープンイノベーションの仕組みを創り、活動することが大切です。

オープンイノベーションは試行錯誤のプロセスに則って行う

オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

オープンイノベーションも、上記の図にある試行錯誤のプロセスに則して実践するできだと私は思っています。
つまり「どういうイノベーションによって、どういう価値を生み出すか」という目的を明確にしながら、「機会をしっかり特定する。」つまり新たなテーマを設定するということです。

テーマについては「コンセプトを創造する」こと、ここではビジネスモデルをしっかり描くことが大切です。

また検証せずに「ソリューションの開発・導入」をして失敗するケースが多いので、「コンセプトの検証」が重要です。これらのプロセスを行ったり来たりの試行錯誤をしっかりやるべきだと私は考えます。

オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

「イノベーターの活動」を支えるためには、「組織の状況」をしっかりと把握して全体をマネジメントする「リーダーシップ」とイノベーターを支援する「支援体制」があることが必要です。私はオープンイノベーション推進には「支援体制」が最も大事だと思っています。この役割を果たすのがオープンイノベーション推進者であったり、オープンイノベーション室であったりします。
全体をしっかりマネジメントできる組織体制ができていないと、いくら仕組みを作っても起動しないのです。

オープンイノベーションを日本で成功させるための 3 つの要素


オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

日本でオープンイノベーションを成功させるには、3 つの要素が必要です。

まず「トップの本気のコミットメント」。
それを引っ張り出すのがミドルの役割で、「イノベーション推進チーム・機能」が当てはまります。ミドルの頑張りが、日本のオープンイノベーションには重要なのです。トップを説得して,“本気のトップダウン”に持ち込むこと。
しかしこの 2 つだけでは成功しません。もう 1 つ「現場のやる気」も当然必要です。現場の技術者や研究者の“意識改革”もミドルの役割です。
日本に必要な事は,本気のトップダウンと現場のやる気を引き出せるミドルの存在です。ミドル・トップ & ダウンこそ日本で成功する「オープンイノベーション」推進だと考えます。

トップの本気のコミットメント:ミドルの創意工夫によって導き出す

オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

私がオープンイノベーションを始めた当時の尾崎社長から「イノベーションの仕組み・システムを創れ」というこの言葉を引き出した背景には、一冊の本が関わっています。「ゲームの変革者(ゲーム・チェンジャー)」という本です。筆者のラフリーさんというのは、P&G の CEO に就任した 2000 年にクローズドイノベーションからオープンイノベーションに見事シフトさせた方で、その変遷を本書に書いています。

私は尾崎社長の秘書を通じて、この本を読んでもらいました。さらに尾崎社長だけでなく役員たちや部門長たちにも、その後出版された「オープン・イノベーションの教科書」を読んでもらいました。
トップの本気のコミットメントを引き出すには、ミドルがこういった創意工夫をしながら「オープンイノベーションがなぜ大事なのか。我が社になぜ必要であるか」ということを伝える必要があるのです。私はトップを説得しようとこの本を読んでもらいました。説得する方法は様々です。
尾崎社長が 2009 年に 新たな経営ビジョン「 Field of dreams 」 を発信し、私に「オープンイノベーション室を作れ」と言ったのが 2010 年 4 月のこと。その 7 月には全社員に「ゲーム・チェンジャーになれ」と言いました。この本を読んでもらったことがかなり効果的だったように感じます。

「イノベーション推進チーム・機能」: オープンイノベーションに乗り出すまで

オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

私がオープンイノベーションをなぜ始めたかというと、 2008 年に社長に就任した尾崎裕社長が、新しい経営ビジョン( Field of Dreams )で「これから大阪ガスはオープンイノベーションにより迅速で効率的な技術開発を行う」という宣言を出したことがきっかけです。

当時、尾崎社長は私にこう言いました。
「エネルギー競争激化の中で、大阪ガスにイノベーションが全く興っていない。何が原因かというと仕組み、システムがないからだ。イノベーションが興る仕組みを作れ。」
そこで私は、オープンイノベーションの仕組み作りに専念し始めました。それについては、後に触れさせていただきます。

「現場のやる気」:プロセスを評価し挑戦する風土を高める

オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

2009 年 6 月に尾崎社長は、ある雑誌のインタビューで「プロセスを評価し、挑戦する風土をもっと高めたい。社員がどれだけチャレンジしたかを評価したい」と答えていました。
イノベーションの議論の中で「新事業をやる時に、どこまでリスクが認められるのか」という話題が非常に多いのですが、プロセスをしっかり踏んでいれば、大きなリスクを取ってでもチャレンジするべきだということを尾崎社長は言ったのです。
実際、アメリカのシェールガスの初期のプロジェクトで大きなの損失を出しても果敢にチャレンジしたことを社長が高く評価しました。これにより若手のプロジェクトメンバーは奮起して、その後大成功したという事例もあります。

日本のオープンイノベーションの課題


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大阪ガスのオープンイノベーションにおいて、私は Henry Chesbrough (ヘンリー・チェスブロウ)が提唱した「アウトバウンド型」「インバウンド型」 2 つの流れを取りたいと考えていました。
(下に続く)

チェスブロウが提唱したオープンイノベーションについての話は、リンカーズが掲載している「オープンイノベーションとは? ~ 技術の価値を最大化する事業開発 ~」の記事をぜひ参照してください。

まずはインバウンド型から始めて、後にアウトバウンド型も実践するという流れです。
インバウンド型というのは、徹底して外部のアイデアと技術を活用するという手法です。これを実現するには、社内のほぼ全ての技術者・研究者が抱えている課題やニーズを掘り起こす必要があると考えました。そうしなければ、外部のパートナーも真剣にシーズを提案してくれず、成功確率が高まらないと予想したからです。
徹底的なニーズの掘り起こしのために行ったのが大阪ガスの有名な「キャラバン制度」です。キャラバン制度については後述します。
その後、アウトバウンド型を実践。大阪ガスの強い技術を外部に思い切って公開することにより、新しい外部のパートナーと新しい事業創造を行うという 2 つの流れを作りました。

オープンイノベーションのプラットフォーム作りを開始

オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

社外のパートナーと新しい事業創造をするには、掘り起こされたニーズに対するシーズを探す強み、つまりプラットフォームがないと実現は難しいでしょう。そこで私は膨大オープンイノベーションのプラットフォーム作りを始めました。
大学、大手・中堅企業、公的研究機関、海外、ベンチャー、中小企業との強靭なネットワークを作るのに相当な労力をかけました。これができたのは、私が大阪ガスの人事部門の子会社で立ち上げた、 MOT ( Management of Technology 「技術経営」: 技術力をベースにし、研究開発の成果を商品・事業に結び付け、経済的な価値を実践的につけること)の教育ビジネスに関わる講師の方々が、様々なシーズを紹介してくれたからです。

そのような経験値がない方が同じようなプラットフォームをゼロから作るのは難しいと思います。そこで大阪ガスは 2014 年からリンカーズの活用を始めました。リンカーズが持っているプラットフォームをフル活用し、リンカーズの強みをうまく分析しながら課題・ニーズに最適なプログラムを活用する。
このようにしてオープンイノベションを自前主義でやるのではなく、オープンイノベーションの活動こそオープンイノベーションでやるという方針に大きく切り替えたのです。

オープンイノベーション室の役割


オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

大阪ガスの社内の支援体制として、このような仕組みを作りました。技術開発部門から始めて 2 年後には全社に、さらにグループ会社にまで展開。全社からニーズを掘り起こす仕組みです。

オープンイノベーション室の目的は、社内と社外をつなぐハブになることにあります。
オープンイノベーション室は社内のエージェントということで、研究者・技術者に信頼されなければニーズを預けてもらえません。

小林製薬のオープンイノベーションの責任者である羽山さんもおっしゃっていた「研究者側に立って、研究者の抱える課題の相談に乗るコンサルティングのような立場をやる」という目標で、研究者と議論を重ねました。
彼らがどんな壁に当たっているのか、なぜ商品化まで 10 年もかかるのか、なぜこれが 3 年でできないのか。その為にはどのような壁(課題・ニーズ)をぶち破れば達成出来るのか。徹底したキャラバンを通じた議論で課題を導き出し、相談に乗れるような、信頼される「イノベーションエージェント」になろうという活動をしていたのです。
その一方、私がいくら社内で信用されても外部の大学や中小企業に信頼されるわけではありません。そこで、外部のパートナーに信頼されている外部のイノベーションエージェントが必要でした。そこで、外部の中小企業とのマッチングにも注力してきました。

実例・事例を社内に伝える

大事なのは、実例・事例を社内に伝えるということです。私はオランダのフィリップスの事例を伝えました。フィリップスは 2010 年以降、 50% の製品についてその差別化の鍵となる技術を社外組織から取り込むことでオープンイノベーションを推進してきました。非常に有名なのが、油を使わなくても揚げ物ができる調理器です。

オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

開発のきっかけは、トップによる新しい機会の特定でした。「健康」の領域において「肌の健康」「運動のモチベーション」「低カロリー調理」の分野では、社外の技術やアイデアを取り込みたい、というものだったのです。

トップが発信した途端ミドルが頑張ります。そこで熱風を使って油を使わない調理器の検討・開発が始まりました。しかし、どうしても熱風を満遍なく循環させられず、フィリップスでは失敗の連続だったのです。

ここでオープンイノベーションが力を発揮しました。鍵となったの僅か 2 名の会社 APDS 社の「ラピッド・エアー技術」。このラピッド・エアー技術の確かさを見抜いたフィリップスはすぐに協業。商品はすぐに大ヒットしました。
フィリップスの素晴らしかった点は、 APDS 社に「技術を調理に利用する分だけは協業の中で共同の権利を持つ。場合によってはフィリップスに知財権を渡してほしい。その代わり、調理以外なら技術を自由に使っていい」という交渉をしたことです。日本の大手企業はベンチャーと組む時、ベンチャーの保有する特許などを全て取ろうとします。これではうまくいきません。
このような協業により、 APDS 社はラピッド・エラー技術を他の技術へと展開できます。しかも、フィリップスに使われた技術であるということが彼らにとって大きなメリットになり、その後 APDS 社は企業としても成長しました。
このような事例を社内で発信することも大切です。

オープンイノベーションの実現に重要な 4 つの枠組み


オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

これはチェスブロウより前、2002 年に Gawer & Cusumano(ガワー & クスマノ) が提唱したオープンイノベーションの実現に重要な 4Lever (4つのレバー)を表しています。MOT スクールの講師をお願いしていた大阪大学の小林敏夫教授(当時)が監訳され講義で教材として使用されていました。

【 Gawer & Cusumano の 4 つのレバー】

  • 1. 「企業の範囲」
    2. 「技術の構造化・ビジネスの構造化」
    3. 「外部パートナーとの関係」
    4. 「内部の組織づくり」
  • まず「企業の範囲」。つまり何を自社で行なって何を他社に任せるべきかという戦略作りが大切です。
    次に「技術の構造化・ビジネスの構造化」。これはアーキテクチャとも言いますが、何を自社で行なって何を他社に任せるべきかを考えるためにモジュール化が必要となります。
    そして「外部パートナーとの関係」。 WIN-WIN の関係をどう作るのか、協調と競争の枠組みをどう構築するのか、合意形成をどのように持っていくのか、利害対立をどのようにハンドリングするのか。これらを実践するには信頼されるオープンイノベーション仲介会社の効率的かつダイナミックな活用が大事だということを、大阪ガスは 2014 年に気づきました。それまでの大阪ガスにおけるオープンイノベーションは完全に自前主義でした。大阪ガスでは探索依頼がキャラバン活動の効果で、年間 80 〜 100 件もあります。これにより探索の手間も増えてくるため、その手間を引き取ってくれる、信頼できる仲介会社の効率的な活用が必要だったのです。

    また「内部の組織づくり」も重要です。

    イノベーション推進リーダーがやるべきこと


    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    オープンイノベーションにはミドルトップアンドダウン、つまりオープンイノベーション推進リーダーが重要だと説明しました。ここでイノベーション推進リーダーは何をすべきかを紹介します。

    オープンイノベーションの方針の策定。
    方針には、会社の経営方針を反映させなければダメだと私は思います。それを経営陣に魅力的に伝えて合意を得て、予算をしっかり確保する必要があるからです。

    オープンイノベーションプロセスの構築・改善、ツールの整備。
    つまり外部ネットワークへリーチする手段をしっかりと考え、それぞれの手段の長所・短所をしっかりと分析することです。言い換えると、オープンイノベーションの自前主義はやめて、仲介会社リンカーズの強み・弱みをしっかり分析し、強いところをしっかり使うということです。そして、社外組織や技術を社内共有するデータベースをしっかり構築します。

    啓蒙・育成活動。
    オープンイノベーションのビジョン・方針に共感してもらわないと研究者・技術者はニーズを預けてくれません。社内も認めてくれません。活用目的や従来の活動との違い、必要性を経営陣・ミドルマネジメント・リーダー・担当者と、階層別に十分に伝えながら共感を得る啓蒙活動が必要です。

    実践支援としては「必要に応じてオープンイノベーション室の利用を促す」「足りない技術や課題の難しさの見極めを手伝う」「足りない技術を取り込む最善の方法を考える」、それらをもっとも知り尽くしているオープンイノベーションリーダーになるということが大事です。

    探索先の選定、社内外の仲介・翻訳などを担当者だけに任せず、常にアクセラレートする。研究者・技術者と一緒に走る、一緒にイノベーションを起こすようなアクセラレーター(加速支援者)になることがリーダーには必要となります。

    以下、さらに詳細にこれらの説明をします。

    オープンイノベーション実践のための予算確保の重要性


    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    予算をしっかり確保しない限りにおいて、オープンイノベーションはうまくいきません。協業先を見つけるための予算を取るためには、オープンイノベーションの重要性を社内に説いて回ることが大切です。
    さらに、協業を実践するための予算も必要となります。大阪ガスでは研究開発部隊がこの予算を使うという仕組みでしたが、場合によってはオープンイノベーション室がそのプロトタイプ、フェーズ 1 を受け持つということもやってました。

    3 社の予算確保の実例

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    予算の確保をうまくやったのが O 社です。海外調査費や探査費などの大きな額を確保しました。協業を実践する予算として、技術のビジネス化のための予算も O 社はきちんと確保しています。

    A 社は戦略部門が外部を使った探索活動の予算を確保し、会社として優先度の高いテーマに対し選択的に活用していました。協業を実践する予算については、戦略部門が期の途中から期末までの予算を確保していました。

    Y 社は選ばれたオープンイノベーション実践メンバーが、現業部門とオープンイノベーション部門との兼務になり、両方において工数と予算を振り分けました。これは理想的な形です。つまり財布が 2 つあるということになります。これによりオープンイノベーション部門として割り振られた工数・予算を使えるため、いろんな制約を受けずに動けるようにしました。

    オープンイノベーションの自前主義はやめる


    ここまで説明しただけでもかなり手間がかかることがわかります。これを実践することが果たして可能でしょうか?つまり実現性を担保するにはオープンイノベーションの自前主義はやめ、徹底的にオープンイノベーションの仲介会社を使いこなすべきです。

    リンカーズには多様なプログラムがあります。それを知り尽くすことが大切です。また、 Linkers Sourcing というのは技術探索のプログラムではありますが、さまざまなシーンで使える可能性があるので、その可能性をきちんと見極めることも重要と言えます。

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    他にもリンカーズは様々な役割をこなせる仲介会社のため、その役割を分析し、知り尽くすということが大切です。どの場面に何のサービスを使うのかを徹底的に分析します。

    その上で「自分たちでやるべきこと、やれることはこれ」「膨大な手間のかかるところは仲介会社に頼む」という判断をするべきです。

    大阪ガスでは年 1 回のイベントをリンカーズに依頼

    2011 年の大阪ガスの話に戻りますが、当時の大阪ガスには常設のイノベーションハブのようなものはありませんでした

    年に 1 回イベントを通じて協業先を見つける。技術を展示しながらニーズを公開して協業先を見つけるという形式をとっていたのです。

    さらに、イベントフェアに併催という形で「オープン・イノベーション・カンファレンス」を行い、大阪ガス機転で日本にオープンイノベーションを盛り上げようという活動を毎年やっていました。

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    これは 2012 年のイベントの様子です。エネルギー事業部という一番大きな事業部を巻き込んで開催しました。様々な展示や、オープンイノベーションコーナーを設置するということを毎年行っていたのです。

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    こちらは 2012 年に開催したオープン・イノベーション・カンファレンスの詳細です。

    2013 年には、東京で日本のオープンイノベーションを盛り上げるためにこのようなカンファレンスを大阪ガス主体でやりました。

    しかし年に 1 回イベントをやるというのは相当な手間と費用がかかります。それを引き取ってくれる仲介会社がリンカーズでした。 今では Web 展示会サービス「 TechMesse(テックメッセ) 」というサービスも持ってます。

    このようなイベントを開催していたり、常設のハブを作ったりしている企業も、オープンイノベーションの自前主義はやめるべきです。もっとも強いパートナーを見つけ、場合によってはダイナミックに活用することで手間や費用の削減、実行のスピードアップ、そして成功率の向上につながります。

    オープンイノベーションで上流から下流への全過程を実施


    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    大阪ガスではオープンイノベーションの推進体制ということで、イノベーションの上流から下流までのプロセスを全てオープンイノベーションで進めるというプロセスを作りました。
    ニーズの公開・保有する技術の公開というのは大阪ガスの大きな特徴でした。ニーズと課題と強みを公開すると多くの外部組織が興味を抱いてくれます。そして興味を持ってアライアンスパートナー、エージェントが提案してくれるというようなプロセスを作成しました。

    その中でも、有名な大阪ガスのキャラバン活動というものがあります。これについてどんなことをやっているのかについて説明します。

    大阪ガスの「キャラバン活動」で行っていたこと

    2014 年を例に挙げると、 2013 年までは技術探索中心だったのが、 2014 年からは新規テーマ創出・保有する技術のビジネス化に時間を割くということで、技術探索をより効率的にやる必要がありました。
    経営資源が限られているため、技術探索に多くの時間は取れません。しかしニーズの掘り起こし、研究者・技術者との議論、探索方針作り、社内情報の共有化の時間を減らしたくないという思いがありました。その時に必要だったのが、技術探索の過程をダイナミックに外部の仲介会社に依頼するということでした。そこで大阪ガスは 2014 年からリンカーズを活用し始めたという背景があります。

    2014 年度のオープンイノベーション活動の結果 68 件のニーズが集まり、効率のよいシーズの探索方法を工夫し、様々な外部パートナーと連携しながらアライアンスの提案増加が図れました。

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    このようなことをキャラバンで報告しながら、さらに全社に対してオープンイノベーション室を活用してもらえるよう新規ニーズ・技術探索の募集もしていました。

    オープンイノベーションの戦略/戦略的提携

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    前述のキャラバンで、研究者・技術者とどんなことを議論すのかというと、オープンイノベーションの戦略ついて話していました。

    スライドの右側で、全体が 1 つの商品だとしたら、まずは徹底的にモジューラー化(技術の構造化)を実施して、大阪ガスのコア技術をどこに隠し持ち、従来のパートナーとの共同開発はこれでいいのかという議論をするのです。

    赤の部分(技術ニーズ外部探索新パートナー)だけは新たなパートナーを見つけないと達成出来ない新規探索課題を見つけます。つまりニーズの掘り起こしを研究者・技術者と全体を議論しながら新パートナーを確定していくというような活動をしていました。

    これからの時代は、内製では遅すぎる上、投資リスクが高いというデメリットがあります。一方、いきなり M&A (事業買収)をやっても失敗ばかりというリスクもあるのです。

    まずは戦略的提携(言い換えるとオープンイノベーション)から入って必要に応じて M&A を行うべきでしょう。

    オープンイノベーションの「見える化」の重要性


    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    戦略にもとづいて、オープンイノベーションの活動を進めてゆくのですが、その活動についてお話します。
    2014 年の活動では、各組織(7 組織)の幹部会議(マネージャー会議)に私が出向いて報告しながら、その後チームグループ単位に 33 ヶ所で説明しニーズを募集しました。
    ニーズが集まってきたらテーマレビューをしつつ研究者・技術者と探索方針の打ち合わせをして、合意を得てから方針を確定します。

    いよいよシーズ探しが始まると、まず上期にテーマレビューを行い、結果のフォローを行いました。見つからないテーマについては探索方針についてニーズ担当者と合意を得て変更します。

    「大阪ガスのオープンイノベーションの仕組みではどうしてもパートナーが見つからなかった。」「見つかっても提案数が少なかった。」「ならばリンカーズを仕組みに組み込むことによって提案数をもっと増やそう」という流れで進めつつ、ステップ管理を行いました。

  • ステップ 1 「オープンイノベーション室に外部から集まった技術の数」
    ステップ 2 「社内に説明して紹介した数」
    ステップ 3 「導入に向けて検討が始まった数」
    ステップ 4 「アライアンスができた数」
  • このようなステップを毎年作成して、オープンイノベーションの「活動の見える化」を行います。

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    2014 年度のステップ管理表を図に示します。これを提案者分類だけでなく、組織別チーム別ニーズ別にも作成して活動の見える化により、オープンイノベーションが動いているんだと経営者にも、ミドルにも、研究者にもわかるようにすることが非常に重要です。

    オープンイノベーションの成果の「見える化」

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    オープンイノベーションの「活動の見える化」と同様に、「成果の見える化」が大切です。私はアンゾフのマトリクスに則って、オープンイノベーションの成果の見える化をしてきました。まず始めたのが既存の技術に近しい技術を活用して、今ある大阪ガスの技術をなんとか効率的に商品化につなげることでした。有名なのが燃料電池の開発・商品化です。

    オープンイノベーションによる燃料電池の開発

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    最初、京セラからの画期的なセルの提案がありました。

    大阪ガスも相当なお金をかけて SOC セルの開発をしており、世界最高レベルのデータを出したり、プレス発表したりしていたのです。しかし、さらに画期的なセルの提案があったので、大阪ガスの技術を捨てて京セラと組むことにしました。

    当時の京セラの社長であった西口泰夫さんが大英断をしました。

    「これから京セラは部材メーカーにとどまっていてはダメだ。システムメーカー、エネルギーシステムをやる会社に変わるんだ。」

    ということで、この燃料電池システムの協業に応じてくれたのです。

    ただ 1 対 1 ではないものが多すぎて商品化が見えませんでした。そこで京セラ・大阪ガスには無いシステム化の強みを持ってトヨタ/アイシンを加えた 4 社体制を組むことで、わずか 2 年で世界最高の発電効率を達成して商品化に成功しました。発電効率はどんどん上がっています。

    ただ、最初の商品化のキーになったのは、画期的な断熱材でした。これは 4 社の技術ではなく、これまで付き合いのなかった中小企業の断熱材だったのです。これをインソーシングすることによって、一気にコンパクト化が進み、商品化につながったという例があります。

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    その後、もっと効率を上げたいということでいろんな課題を預かり、全てオープンイノベーションで解決しました。

    例えば「集電材料は大手材料メーカーが」、「寿命予測は産学連携で阪大の AI の研究者が」、「スタック精密加工技術が劣化の原因になるという大問題は中小企業が」それぞれ解決してくれました。また「ブロアーの樹脂化はベンチャーが」達成してれました。

    この時に大切だったのは、絶対に必須で達成する「必要目標」と、背伸びし工夫すれば達成できる「ストレッチ目標」まで作ることだったのです。この事例では、オープンイノベーションによってストレッチ目標までリーチできました。

    保有する技術のビジネス化


    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    次に、保有する技術のビジネス化の事例に話を移します。つまりアウトバウンド型のオープンイノベーションです。これにはどの企業も苦労されてると思います。

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    大阪ガスでもスポットサイレンサー(音で音を消す、振動で振動を消すアクティブノイズキャンセラー)を研究していましたが、商品化までなかなか辿り着きませんでした。

    そこで協業先を探したら、モノづくり企業が試作機を作ってくれて一気に商品化につながったという事例があります。

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    またフルオレンセルロースナノファイバーやナノ添加剤などを他の分野につなげる時も、イノベーション室がニーズを有しているアライアンスパートナーを探して、インタビュー・議論に答えてもらい、上手くいきました。

    このようにシーズアウトは相当苦労します。成功例は日本でも非常に少ないと思います。

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    これは、最近大阪ガスが開発した素材・材料を使った放射冷却テクノロジーで、熱を宇宙に逃すという技術です。これにより地球を外気より低温にする、まさに画期的な地球温暖化対策が可能となります。これについては最近ベンチャーを作りました。

    しかし、もっと他の分野で用途があるのではないかと、現在は用途探索を行っているところです。

    アウトバウンド型オープンイノベーションを効率化するリンカーズのサービス

    リンカーズを使えば、アウトバウンド型オープンイノベーションの効率化が可能です。例えばリンカーズには Linkers Markting (リンカーズマーケティング)というサービスがあります。

    これは、自社技術や製品の新たなユーザーを探すことができるサービスです。
    リンカーズが保有する 10,000 名以上のものづくり技術者ネットワークから有望な企業を絞り込むことができるほか、リンカーズが技術提案や面談調整を代行して実施してくれるので、限られた人員でのアウトバウンド型オープンイノベーションを強力に支援するサービスではないかと感じています。

    またシーズ探索の依頼書をわかりやすくするのにも相当時間がかかります。私も依頼書を見たら難しすぎてわかりにくいということがよくありました。

    技術紹介シートをわかりやすく作成することもリンカーズなら対応可能です。依頼書に必要な内容をしっかり書き込んでくれる仲介会社があれば非常に便利だと思います。
    (下に続く)

    自社技術や製品の新たなユーザーを探すことができるアウトバウンド型オープンイノベーション支援サービス 「Linkers Markting (リンカーズマーケティング)」の詳細はこちら

    「 新規テーマの創出」


    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    新規テーマ創出についてお話しします。

    最近、大阪ガスのオープンイノベーション室は新規テーマ創出にも積極的に取り組んでいます。

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    新規テーマ創出については、大学と連携し新しいシーズに基づいてテーマを作るという包括連携協定書を京都大学と結んで、1 つ実現できました。京都大学が民間企業と包括提携協定書を結んだ第 1 号が大阪ガス・オープンイノベーション室です。
    すぐに大きな枠組みのテーマ創出に成功して京大エコキャンパス実証実験を共同で実施しました。

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    その他の新規テーマ創出の事例として「熱マネジメント」についても見てみます。

    「蓄熱材料」「低温排熱材料」「熱電変換技術」「直接火炎型の燃料電池」などを、様々な海外のパートナーや日本の大手企業、大学などに調査を依頼しました。

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    しかし、バラバラの調査会社を使うより 1 つの会社に依頼した方が効率的です。この事例の場合、Linkers Sourcing(リンカーズソーシング)Linkers Research(リンカーズリサーチ)を上手く組み合わせれば、もっと効率的に調査できた可能性があります。

    新事業創造にはプラットフォームが必要

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    続いて、新規事業創出について説明します。

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    大阪ガスでは以前、新事業創造のためにベンチャーピッチコンテストを行っていました。ベンチャーピッチは全く成果が出ないと日本では言われています。

    ベンチャーピッチコンテストの成功において大事なのは「なんでもいいから提案しろ」と言うのではなく「自分たちの手の内を見せる」ということです。

    私は「機会の特定」として7分野に戦略分野を絞って、コンセプトをそれぞれ 1 個ずつ作りました「コンセプトの創造」。「コンセプトの検証」は提案があったベンチャーの社長と、大阪ガスの新規テーマ創出ワーキングメンバーとの激しい議論でもって共創の場を作り、結果ビッグプロジェクトが 3 つできました。

    工場の排水処理システム。これは「ソリューションの開発」を実施してお客様にすぐ導入が図れました「ソリューションの導入」。

    新規蓄電池システム。これは画期的なベンチャーだったので現在も続いているようですが、時間的には本来長期のテーマです。

    熱だけでなく音からでも発電ができる画期的なシステムの提案があり、これは開発して海外に売ろうというフェーズに入っています。

    「機会の特定」によって分野を絞り手の内を見せることで、これらのプロジェクト作成に成功しました。
    このように成功した実践を検証すると ISO 化されたイノベーション・マネジメントシステム( IMS )のイノベーション活動の5段階「機会の特定」「コンセプトの創造」「コンセプトの検証」「ソリューションの開発」「ソリューションの導入」をしっかりと試行錯誤していることが分かります。

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    このような枠組みを定量的にやろうと思うと、プラットフォームが必要です。

    1 対 1 ではないものが多い。 N 対 N は、国がやると失敗するケースが多いです。かえって遅くなります。

    1 対 N の場合、これがプラットフォーム型に当たります。以前は大阪ガスが 1 になることを狙っていたのですが、今の時代、企業がリーダーに座ると競合企業から警戒されてしまうのです。したがって 1 に座るのは中立的な組織が向いています。

    例えばリンカーズは今、オープンイノベーションのコミュニティ作りを進めようとしています。 1 というリーダーシップではなく「場」を作るということです。そこに企業が集まって協業、あるいは教育、あるいはワークショップを行う。そういったことを実践する 1 になりうるのがリンカーズです。

    新事業を成功に導く3大要素「やるべきか?」「できるのか?」「やりたいか?」

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    新事業の場合、非常に重要なキーワードとして「やるべきか?」「できるか?」「やりたいか?」の 3 つがあります。

    まず「やるべきか?」に応えられるかどうか。これは新事業に顧客ニーズがあるのか、市場ニーズがあるのかを調べるということです。

    これについては、例えば Linkers Research(リンカーズリサーチ)を使えば「世界にはこういうトレンドがある」ということを調査可能です。その結果をもとに「これはニーズがある」「これはやるべきである」「社会課題である」という分析ができ、会社や事業の方針を決められます。

    2 つ目は「できるか?」に応えられるかどうか。これはまさに「競争戦略を作れるのか」「イノベーション戦略を作れるのか」ということです。これについては私の作った MOT 教育が実力を発揮します。

    最後は「やりたいか?」に応えられるか。これにはアントレプレナーシップイノベーション教育が非常に大切です。日本には事務局的な人はいますが、イノベーターになりたがる人は多くありません。そんな中でイノベーターをどう育成するのか、発掘するのかが肝となります。

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    これは国際規格化されたイノベーション・マネジメントシステム( IMS )のイノベーション活動の図です。「機会を特定」し、「コンセプトを創造」、「コンセプトの検証」をして、「ソリューションの開発」、「ソリューションの導入」につなげるということを表しています。

    この国際標準のイノベーション活動の随所で仲介会社をどう使いこなすのか、しっかり分析して上手く使うことが大切です。

    大阪ガスのオープンイノベーションの活用事例


    ここまでに上げた事例の通り、オープンイノベーションの活用として、テーマ創出、研究開発、商品開発、事業化に向けた進展、大阪ガスの独特インフラの高度化まで、様々なパートナーとの提携がありました。これについても、具体例とともにキャラバンで伝えてきました。

    例えば、オールシーズン型空調機。ガスで冷房も暖房もできるというのが大阪ガスの悲願でしたが、湿度をコントロールするためには吸湿剤が必要でした。

    探索会社を通じてパートナーを探した結果、画期的な吸湿剤が見つかり、それを開発しているベンチャー企業と協業することになったのです。

    大手企業はベンチャーと組むときに特許を全部取ろうとします。私はフォリップスの例に倣って、そのベンチャーには「空調用だけは大阪ガスと技術の特許を共有してください。場合によっては、この分については大阪ガスに権利をください。空調以外は自由に使っていただいて構いません」という交渉をしました。

    オープンイノベーションに必要な作業をリンカーズが代行

    このような実例を示しながら、私はマニュアルまで作りました。

    情報の流れを見える化し、オープンイノベーションの仕組みをシステムにする。フロー図、ニーズの管理表、データベース、依頼書、マッチングの流れのマニュアル、プロセス、大量のシーズの管理データも作りました。

    オープンイノベーションを行う上で、このような手間がどんどん増えていきます。これらを全て引き取ってくれるリンカーズを 2014 年から活用し始めたのは前述のとおりです。

    当時活用していたのは、Linkers Sourcing(リンカーズソーシング) という技術パートナー探索を支援するサービスです。
    パートナーに求める要件をまとめる「案件シート」の作成から、実際の探索、マッチングに向けた面談の調整を一貫して支援してもらえます。
    リンカーズが保有する全国のコーディネーターネットワークと中小企業のデータベースを活用し、スピーディーにパートナーを探索することが可能です。
    さらに、探索の結果見つかったパートナー候補から「生の声」を集め、一覧で比較することができるデータを提出してくれるので、パートナーの絞り込みもスムーズに進めることができます。

    データベースを充実しながら結果的には候補となるパートナーを絞り込み、選ぶという部分がオープンイノベーション室の役割です。その役割に特化するということがオープンイノベーション室にとって大事だと私は思います。
    (下に続く)

    自社の技術課題を解決できる最適な技術パートナーを探索するサービス「 Linkers Sourcing (リンカーズソーシング)」の詳細はこちら。

    大阪ガスのオープンイノベーションの成果


    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    大阪ガスのオープンイノベーションは 2009 年の経営ビジョンから始まり、 2019 年でちょうど 10 年。毎年成果を出し続けたことが評価され、私の後任の部隊は社長表彰を受けました。昨年が 12 年目。今年が 13 年目に当たります。

    上の図にある「ステップ 5 」が協業、すなわち新事業の成果です。協業が 62 件から 100 件にまで増えました。つまり年間 8 件の新商品、新事業が生まれているということになります。

    このようなステップを管理し、見える化することがオープンイノベーションにおいて重要です。スライドのステップ 0 「ニーズを紹介」は 10 年間で 669 件。ステップ 1 「シーズの提案」が外部から 5,934 件。ステップ 2、3 はオープンイノベーション室が面談し、原局の面談に進んだうち ⅓ が何かしらの発展を遂げて協業につながり、成果になっています。

    大阪ガスは膨大なシステムを作っています。オージス総研が作ったグループウェアの上にオープンイノベーションのコーナーを作って情報の共有化を行い、全てデジタルデータでもって研究者・技術者とのやりとりを行っています。そのようなデータシステムが内部にはできているのです。

    問題は外部のデータと仕組み。外と中をつなげるには LFB (エルエフビー:Linkers for BANK / Linkers for Business を含むサービス名の総称)というマッチングシステムが効果的です。

    これを利用すれば、大阪ガスのようにオージス総研が何億もかけて作ったグループウェアのシステムがなくても、もっと安い価格でオープンイノベーションマッチングのシステムかできます。

    オープンイノベーションは「成果が出る仕組み作り」が重要

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    このように大阪ガスではオープンイノベーションの成果を出してきましたが、オープンイノベーションの仕組みは、最初は成果が出なくても問題はありません。

    大阪ガスのキャラバンでも、オープンイノベーションの必要性を解いて、なんとか研究者・技術者とのコミュニケーションでもって、課題が見つかったらその課題を預けてもらうというところから始めました。

    しかし、 2 年後、 3 年後には成果が出てくることが大事です。

    そして経済産業省の審議会の資料に、オープンイノベーション先駆的取組企業 TOP3 として P&G 、フィリップスに並んで大阪ガスが掲載されるまでの成果を残したのです。

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    ご静聴ありがとうございました。

    講演者紹介

    オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

    松本 毅 氏

    リンカーズ株式会社 オープンイノベーション・エバンジェリスト
    元 大阪ガス株式会社 オープンイノベーション室長
    一般社団法人 Japan Innovation Network 常務理事

    1981 年に大阪ガス株式会社入社後、冷熱利用技術開発、凍結粉砕機開発、受託粉砕ビジネス立ち上げ、薄膜型ガスセンサーの研究開発、技術開発国家プロジェクト、燃料電池プロジェクト、水素エネルギー製造・貯蔵プロジェクト、GTL・DMEプロジェクトなどの立ち上げに従事。大阪ガスの全社技術戦略の企画立案。海外との技術アライアンス戦略などを推進。
    人事部で MOT (技術経営)スクールを設立し、教育事業を推進。
    2008 年 9 月、技術戦略部オープンイノベーション担当部長、2009年4月、オープンイノベーション室長。
    2016 年 4 月より株式会社ナインシグマ・ジャパン ヴァイスプレジデント、2019 年 3 月より一般社団法人 Japan Innovation Network 常務理事に就任。2020 年 11 月よりリンカーズ株式会社 オープンイノベーション・エバンジェリスト就任。