• 配信日:2022.01.04
  • 更新日:2022.07.13

オープンイノベーション Open with Linkers

オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

オープンイノベーション室の役割


オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

大阪ガスの社内の支援体制として、上の図のような仕組みを作りました。
技術開発部門から始めて 2 年後には全社に、さらにグループ会社にまで展開。全社からニーズを掘り起こす仕組みです。

オープンイノベーション室の目的は、社内と社外をつなぐハブになることにあります。
オープンイノベーション室は社内のエージェントということで、研究者・技術者に信頼されなければニーズを預けてもらえません。

小林製薬のオープンイノベーションの責任者である羽山さんもおっしゃっていた
「研究者側に立って、研究者の抱える課題の相談に乗るコンサルティングのような立場をやる」
という目標で、研究者と議論を重ねました。
彼らがどんな壁に当たっているのか。
なぜ商品化まで 10 年もかかるのか。
なぜこれが 3 年でできないのか。
その為にはどのような壁(課題・ニーズ)をぶち破れば達成出来るのか …
徹底したキャラバンを通じた議論で課題を導き出し、相談に乗れるような、信頼される「イノベーションエージェント」になろうという活動をしていたのです。
その一方、私がいくら社内で信用されても外部の大学や中小企業に信頼されるわけではありません。
そこで、外部のパートナーに信頼されている外部のイノベーションエージェントが必要でした。そこで、外部の中小企業とのマッチングにも注力してゆきました。

実例・事例を社内に伝える

大事なのは、実例・事例を社内に伝えるということです。
私はオランダのフィリップスの事例を伝えました。フィリップスは 2010 年以降、 50% の製品についてその差別化の鍵となる技術を社外組織から取り込むことでオープンイノベーションを推進してきました。
非常に有名なのが、油を使わなくても揚げ物ができる調理器です。

オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

開発のきっかけは、トップによる新しい機会の特定でした。
「健康」の領域において「肌の健康」「運動のモチベーション」「低カロリー調理」の分野では、社外の技術やアイデアを取り込みたい、というものだったのです。

トップが発信した途端ミドルが頑張ります。
そこで熱風を使って油を使わない調理器の検討・開発が始まりました。しかし、どうしても熱風を満遍なく循環させられず、フィリップスでは失敗の連続だったのです。

ここでオープンイノベーションが力を発揮しています。
鍵となったの僅か 2 名の会社 APDS 社の「ラピッド・エアー技術」です。このラピッド・エアー技術の確かさを見抜いたフィリップスはすぐに協業。商品はすぐに大ヒットしました。
フィリップスの素晴らしかった点は、 APDS 社に「技術を調理に利用する分だけは協業の中で共同の権利を持つ。場合によってはフィリップスに知財権を渡してほしい。その代わり、調理以外なら技術を自由に使っていい」という交渉をしたことです。
日本の大手企業はベンチャーと組む時、ベンチャーの保有する特許などを全て取ろうとします。これではうまくいきません。
このような協業により、 APDS 社はラピッド・エラー技術を他の技術へと展開できます。しかも、フィリップスに使われた技術であるということが彼らにとって大きなメリットになり、その後 APDS 社は企業としても成長しました。
このような事例を社内で発信することも大切なのです。

オープンイノベーションの実現に重要な 4 つの枠組み


オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

これはチェスブロウより前、2002 年に Gawer & Cusumano(ガワー & クスマノ) が提唱したオープンイノベーションの実現に重要な 4Lever (4つのレバー)を表しています。MOT スクールの講師をお願いしていた大阪大学の小林敏男教授(当時)が監訳され講義の教材として使用されていました。

【 Gawer & Cusumano の 4 つのレバー】
1. 「企業の範囲」
2. 「技術の構造化・ビジネスの構造化」
3. 「外部パートナーとの関係」
4. 「内部の組織づくり」

まず「企業の範囲」
つまり何を自社で行なって何を他社に任せるべきかという戦略作りが大切です。
次に「技術の構造化・ビジネスの構造化」
これはアーキテクチャとも言いますが、何を自社で行なって何を他社に任せるべきかを考えるためにモジュール化が必要となります。
そして「外部パートナーとの関係」
WIN-WIN の関係をどう作るのか、協調と競争の枠組みをどう構築するのか、合意形成をどのように持っていくのか、利害対立をどのようにハンドリングするのか。
これらを実践するには信頼されるオープンイノベーション仲介会社の、効率的かつダイナミックな活用が大事だということを、大阪ガスは 2014 年に気づきました。それまでの大阪ガスにおけるオープンイノベーションは完全に自前主義でしたが、大阪ガスでは探索依頼がキャラバン活動の効果で、年間 80 〜 100 件もあります。
これにより探索の手間も増えてくるため、その手間を引き取ってくれる、信頼できる仲介会社の効率的な活用が必要だったのです。
また「内部の組織づくり」も重要です。

イノベーション推進リーダーがやるべきこと


オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

オープンイノベーションにはミドルトップアンドダウン、つまりオープンイノベーション推進リーダーが重要だと説明しました。
ここでイノベーション推進リーダーは何をすべきかを紹介します。

オープンイノベーションの方針の策定
方針には、会社の経営方針を反映させなければダメだと私は思います。それを経営陣に魅力的に伝えて合意を得て、予算をしっかり確保する必要があるからです。

オープンイノベーションプロセスの構築・改善、ツールの整備
つまり外部ネットワークへリーチする手段をしっかりと考え、それぞれの手段の長所・短所をしっかりと分析することです。言い換えると、オープンイノベーションの自前主義はやめて、仲介会社リンカーズの強み・弱みをしっかり分析し、強いところをしっかり使うということです。そして、社外組織や技術を社内共有するデータベースをしっかり構築します。

啓蒙・育成活動
オープンイノベーションのビジョン・方針に共感してもらわないと研究者・技術者はニーズを預けてくれません。社内も認めてくれません。活用目的や従来の活動との違い、必要性を経営陣・ミドルマネジメント・リーダー・担当者と、階層別に十分に伝えながら共感を得る啓蒙活動が必要です。

実践支援としては「必要に応じてオープンイノベーション室の利用を促す」「足りない技術や課題の難しさの見極めを手伝う」「足りない技術を取り込む最善の方法を考える」、それらをもっとも知り尽くしているオープンイノベーションリーダーになるということが大事です。

探索先の選定、社内外の仲介・翻訳などを担当者だけに任せず、常にアクセラレートする。研究者・技術者と一緒に走る、一緒にイノベーションを起こすようなアクセラレーター(加速支援者)になることがリーダーには必要となります。

以下、さらに詳細にこれらの説明をします。

オープンイノベーション実践のための予算確保の重要性


オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

予算をしっかり確保しない限りにおいて、オープンイノベーションはうまくいきません。
協業先を見つけるための予算を取るためには、オープンイノベーションの重要性を社内に説いて回ることが大切です。さらに、協業を実践するための予算も必要となります。
大阪ガスでは研究開発部隊がこの予算を使うという仕組みでしたが、場合によってはオープンイノベーション室がそのプロトタイプ、フェーズ 1 を受け持っていました。

3 社の予算確保の実例

オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜

上のスライドにて、予算の確保をうまくやったのが O 社です。
海外調査費や探査費などの大きな額を確保しました。協業を実践する予算として、技術のビジネス化のための予算も O 社はきちんと確保しています。

A 社は戦略部門が外部を使った探索活動の予算を確保し、会社として優先度の高いテーマに対し選択的に活用していました。
協業を実践する予算については、戦略部門が期の途中から期末までの予算を確保していました。

Y 社は選ばれたオープンイノベーション実践メンバーが、現業部門とオープンイノベーション部門との兼務になり、両方において工数と予算を振り分けました。これは理想的な形です。
つまり財布が 2 つあるということになります。これによりオープンイノベーション部門として割り振られた工数・予算を使えるため、いろんな制約を受けずに動けるようにしました。