• 配信日:2024.05.21
  • 更新日:2024.05.23

オープンイノベーション Open with Linkers

2024年の技術トレンド16選:生成AIからHMI、進化するディスプレイ技術まで

リンカーズ株式会社は、ものづくり企業向けの、ビジネスマッチングによるオープンイノベーション支援サービスに加え、さまざまな分野の先端技術調査(素材、材料、デバイス、システム、AI 技術、ビジネスモデルほか)を年間で 300 件超実施しています。

こうした膨大な調査データをもとに、今回は、リンカーズの専門技術リサーチャーである浅野佑策の視点で、2024 年に注目すべき技術トレンドと、それぞれの具体的な技術事例 16 選を紹介していきます。

2024年の技術トレンド1:産業利用が始まった生成AI技術


2024年の技術トレンド16選:生成AIからHMI、進化するディスプレイ技術まで

2024 年の注目技術を語るうえで生成 AI は避けて通ることはできません。2022 年 11 月 30 日に ChatGPT が公開されて以降、驚異的なスピードで精度やプラットフォームが進化を遂げ、2024 年4月現在では、一般消費者だけでなく事業運営においても欠かすことができない技術となっています。
ここでは、特に産業利用にフォーカスし、

  • ・ウェアラブルデバイスへの生成 AI の融合
  • ・生成 AI 技術を用いたドキュメントデータ活用の促進
  • ・生成 AI 技術を用いた社内ナレッジ活用の促進

という3つのテーマで生成 AI の進化を深ぼりしていきたいと思います。

ウェアラブルデバイスへの生成AIの融合

ChatGPT などの生成 AI 技術を取り入れることで自然言語での操作やアナウンスを実現するウェアラブルデバイスデバイスが早速登場しています。
Solos Technology の開発した「AirGo3」はアスリート向けの AR グラスであり、ChatGPT を用いて音声で観光地を訪ねたり、料理のレシピを聞いたりすることが可能です。また、WHOOP 社のスマートリストバンド「WHOOP 4.0」は、リストバンドで計測した生体情報をもとに、生成 AI 技術を用いて健康に関する質問やアドバイスを実現しています。
このように、ウェアラブルデバイスに生成 AI を組み合わせることで、いつでもどこでも自然言語で気軽な質問や相談ができるようになっています。

事例1:GPSやステレオスピーカー等を内蔵しChatGPTによるサポートが可能なスポーツ用ARグラス「AirGo3」 by Solos Technology

香港のベンチャー企業 Solos Technology Limited は、サイクリストやランナー等のアスリートに向けた AR グラスを開発しました。 同製品には GPS 、指向性ステレオスピーカーが搭載されており、ChatGPT を用いて音声で観光地を尋ねたり、料理中にレシピの作り方を尋ねたりすることもできます。 同 AR グラスは、ランニングやサイクリング時の経路ナビやスピード、移動距離、心拍数が表示され、ステレオスピーカーを通じてテキスト、Teams 等の受信メッセージの自動的音声読み上げや、音声検索、翻訳、テキスト入力なども可能です。軽量かつシンプルな構造のため、着用しても運動の妨げにはなりません。また、同 AR グラスは、スマホアプリと連動することで特定のポーズをとったときの操作設定登録ができ、またグラスをタップするだけで音楽を停止/再生する機能を有します。

事例2:多種センサを活用して心身の健康状態や筋力トレーニング・睡眠の質の評価を可能にするスマートリストバンド「WHOOP 4.0」 by WHOOP

Harvard University 発のスタートアップ企業ある WHOOP, Inc. は、血中酸素濃度・皮膚温度・心拍数などを計測するスマートリストバンド「 WHOOP 4.0 」を開発・提供しています。 同デバイスは、光電容積脈波計・モーションセンサ・温度センサ・パルスオキシメーターを搭載したスマートリストバンドで、独自の機械学習アルゴリズムによりノイズ信号を取り除きながら、安静時心拍数・心拍数変動・呼吸数・血中酸素濃度・皮膚温度を測定し、専用アプリにて身体活動・精神的負荷・睡眠の質・健康状態を評価します。 同デバイスにより、睡眠の質や心身の健康、体の回復傾向を把握することが可能となり、エクササイズ・トレーニングの質の向上に繋げられるとしています。また、同デバイスは、生成 AI を活用したソフトウェア「 WHOOP Coach 」と連携し、健康・フィットネス・ウェルネスに関するユーザーからの質問に対して、生体データや目標に基づいて個別化された会話型のアドバイスを提供しています。

生成AI技術を用いた社内ナレッジ活用の促進

事業会社において、これまで蓄積した仕様書や設計書、営業データ、各種報告書などのドキュメントは大きな資産ですが、様々なフォーマットやファイル形式で保存されたこれらのデータを効率的に検索・利活用することは難しい課題でした。
しかし、生成 AI を活用することで、こうしたドキュメントから必要な情報を抽出したり、質問の意図をより正確に反映させた検索を行ったりすることが可能となり、社内ナレッジの有効活用を促進できることが期待されます。
こうした生成 AI を活用したナレッジ管理・活用ソリューションは今後ますます発展していくことが予想されます。

事例3:ChatGPTを活用した企業の社内ナレッジ活用チャットボット「カイセツ」 by 株式会社ナレッジコンサルティング

株式会社ナレッジコンサルティングは ChatGPT を活用し、企業の社内ナレッジ活用を効率化するチャットボット「カイセツ」の新プラン、「スタンダードプラン」を開発・リリースしました。 カイセツは、企業の情報やノウハウを整理・集約し、顧客や社内向けに自然言語で簡単にアクセスできるチャットボット・FAQ を立ち上げられるサービスです。ChatGPT を活用することで、いつでも自然言語で簡単に検索が可能であり、事前の情報整理も不要で、10 分程度でチャットボット・FAQ の立ち上げが可能です。スタンダードプランでは、誤回答を防ぐ DAS 技術、セキュリティ機能、豊富な回答形式、ファインチューニング作成支援機能などが提供されます。これにより、ビジネスの効率化と情報管理の向上が実現されます。

事例4:企業向け回答自動生成型検索サービスを提供するAIチャットボット「Alli」 by Allganize Japan

Allganize Japan は、ChatGPT を活用し、企業向け AI ソリューション「 Alli 」の新機能として回答自動生成型の検索サービスをリリースします。Alli の新機能では、OpenAI のGPT-3.5 API と同社の独自技術を組み合わせ、情報ソースの指定と絞り込み、社内情報への対応、最新情報への対応を実現します。特定の情報ソースを追加・指定し、確度の高い回答を提示できます。また、最新情報を検索対象に含めることができます。 新機能を利用することで、最新情報の把握や社内のナレッジ共有、顧客対応の自動化が可能となります。例えば、税制改訂などの変化する情報に対応した検索結果を提示できるほか、バックオフィスの問い合わせ対応やヘルプデスク、研究開発時の情報検索、新入社員教育などでも活用可能です。

新商品企画への生成AIの活用

生成 AI を活用して多様な消費者のペルソナとして振る舞わせることで、仮想的な VoC( Voice Of Customer )収集やアイデア出しを行うことができます。
Fantasy 社は、様々な背景や個性を持つ AI キャラクターを作成して商品企画に活用するソリューションを開発しています。また、GrowGroup株式会社も生成 AI を活用することで、商品企画に役立つ AI ペルソナモデルを開発しています。
生成 AI を活用することで、特定の製品やサービスについて、様々な立場の消費者の意見を簡単に収集できるため、企画の初期段階のアイデア出しや課題抽出に有効であると考えられます。

事例5:機械学習技術と民族研究を組み合わせた人工知能キャラクター「Synthetic Humans」 by Fantasy

Fantasy は、機械学習技術と民族研究を組み合わせた個性豊かな人工知能キャラクター「 Synthetic Humans 」を開発しています。 同技術では、OpenAI の ChatGPT やグーグルの Bard のような会話型 AI を用いて、実際の人間の環境や行動の観察に基づくさまざまな個性をキャラクターに与えます。さらに、キャラクターに既存の製品や会社の知識を持たせることで、クライアント企業の製品についても話すことができるようにしています。 これにより、さまざまな個性を持った人工知能キャラクターと実際の人間が参加するフォーカスグループを作成し、各種トピックや製品のアイデアについて議論することで新しいアイデアの創出を促すことが可能です。同技術は、スマートシティプロジェクトや製品開発など、幅広い分野でのアイデア創出や意見交換に活用されています。

事例6:BtoB・BtoC向けのペルソナ作成支援AI by GrowGroup

GrowGroup株式会社は、ChatGPT を利用して、BtoB・BtoC 向けのターゲットユーザー層に適応したペルソナを自動生成できる「ペルソナAI」をリリースしました。 「ペルソナAI」は、ユーザーが BtoB 向けか BtoC 向けかを選択し、基本情報を入力することで、AI がペルソナを自動生成するシステムです。生成されるペルソナには、ユーザーペルソナ概要、ニーズ(利用検討の理由)、抱える課題(サービスで重要視したい点)、ペルソナのゴール・シナリオなどが含まれます。また、生成されたペルソナを確認し、必要に応じて基本情報と出力結果を入力し直すことも可能です。 このシステムにより、ユーザーは簡単な手順でターゲットユーザー層に適応したペルソナを自動生成でき、マーケティングや広告制作に活用することができます。生成されたペルソナは PDF 形式などで保存したりダウンロードしたりできます。

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