• 配信日:2024.02.26
  • 更新日:2024.05.08

オープンイノベーション Open with Linkers

CES2024レポート(後編)~カテゴリー別の注目技術〜

ソフトウェア/Web3の注目技術事例


CES2024レポート(後編)~カテゴリー別の注目技術〜

続いて、ソフトウェア / Web3 分野の注目技術事例を紹介していきます。

AR/VR/XR/Metaverse(メタバース)

CES2024レポート(後編)~カテゴリー別の注目技術〜

まずは、 AR / VR / XR / Metaverse の事例です。さまざまな技術がありましたが、特に映像投影に関する新しい技術が印象に残りました。

Leia Inc.は、裸眼立体視のディスプレイをコンパクトに作れる技術を開発しました。ライトフィールド型ディスプレイと呼ばれるもので、例えばノートパソコンの画面を奥側に立体的な映像として見ることができ、視点を動かしても立体的に見えます。ライトフィールド型ディスプレイのコンセプト自体は昔からあったものの、最近はノートパソコンに付けられるくらいコンパクトに実現できるようになり、実用化レベルに近づいたことを感じます。

韓国の LetinAR は、AR 向けスマートグラスを開発しています。グラス自体に液晶パネルなどが入っているわけではなく、光を反射する回折格子(かいせつこうし)が入っていて、グラスを通して見ると映像が空中に浮いているように見えるというものになっています。独自の方法でコンパクトかつ簡便に空中に浮かんだ映像を見ることができる技術が出てきたように感じ、取り上げました。

Muxwave Technology が開発しているのは、透明ディスプレイです。例えば LG Electronics 社 は透明 OLED を使って透明ディスプレイを実現していますが、こちらは格子状のメッシュの交点に小さな LED が付いた構造で、その LED を光らせることで映像を投影します。格子状の構造になっているため、ディスプレイの後ろは透けて見えます。この企業以外にも、後ろが透けて見えるディスプレイを開発している企業が多く見られました。今後、ディスプレイの新しいトレンドになるかもしれません。

AR / VR に関しては、これまでゴーグルで両目に違う映像を映すことで立体感を表現していましたが、他の方法でも実現できるようになってきたと調査を通じて思いました。

Web3/NFT

CES2024レポート(後編)~カテゴリー別の注目技術〜

次は Web3 や NFT 分野の注目技術事例です。Web3 と NFT は特に期待している分野なのですが、2024年は冬の時代になっていると感じました。昨年の CES と比較して Web3 と NFT のタグを付けている企業自体が少なく、タグを付けている企業も昨年と比べて新しい取り組みやアプローチを示しているかというと、そうではない印象を受けました。昨年の注目度が異常だったとも言えます。

ただ、前向きに捉えると、例えば Galeon SAS はブロックチェーンと医療データを結び付け、医療データを安全に管理できる仕組みを開発していたり、Zkrypto Inc. はブロックチェーンと投票をひも付け、安全かつ確実な投票を行うプラットフォームを開発していたりと、粛々(しゅくしゅく)とビジネスになり得るような技術が成熟してきていると捉えることもできます。実用化事例が増えていくことで、今後また Web3 と NFT に注目が集まって、新しいソリューションが生まれる可能性が考えられます。

Cybersecurity(サイバーセキュリティ)

CES2024レポート(後編)~カテゴリー別の注目技術〜

セキュリティに関してもさまざまな出展がありましたが、今年の CES で目立っていたと感じたのは物理的な識別情報を使ったセキュリティ技術でした。特に IoT などで、デバイスが何百万〜何億個になると、それらをソフトウェアで識別してセキュリティ対策を施していくことが困難になると考えられます。このような課題に対して、例えば Intrinsic IDは、半導体デバイス自体の動作のランダム性を活用して、一つひとつのチップに固有の識別記号を当てる技術を開発しています。これが実現すると、チップ自体の物理的なランダム性に基づく識別信号が実現し、基本的に改ざん・複製できないことになります。

SandGrain も近いコンセプトの研究をしているのですが、こちらは電子基板に固有の識別情報をハードコーティングすることで、後から改ざん・複製できないようにする技術です。

このように物理的識別情報を用いたセキュリティ技術を発表している企業が見られました。

Idyllic Technology も、面白いアイデアの研究をしています。プレートの上にアルミ箔(はく)のようなものが並び、これが RFID* の代わりになり、無線で様々なデータを読み取ることができるものです。バーコードに近い技術ですが、こちらは例えばパッケージの中に入っていて外から見えなくても、無線情報で中の商品の識別などが可能です。 RFID は電子チップが必要でありコストが高くなりますが、こちらは金属のバーの寸法や間隔に情報を埋め込んでいるため、非常に安く作ることができます。

*RFID(Radio Frequency Identification)=電波(電磁波)を用いて無線でデータの読み取りを行い、モノの識別や管理を行うシステムのこと。

Emerging Techの注目技術事例


CES2024レポート(後編)~カテゴリー別の注目技術〜

Emerging Tech(イマージングテック) 、すなわち新興(しんこう)技術として一般的には Web3 や AI も含まれることが多いのですが、今回は CES のカテゴリーの中で、弊社として次の4つを Emerging Tech と捉えています。

  • ・ Food Technology
  • ・ Smart Cities and Resilience
  • ・ Sustainability
  • ・ Energy / Power

事例を紹介するのは、 Food Technology と Energy / Power です。

Food Technology(フードテック)

Food Technology の分野で最も多かったのは、やはり AI 搭載、アプリ連携の調理家電です。アプリ上で料理のレシピをインプットすれば装置が自動で調理してくれるといった技術が多く見られました。

調理の範疇(はんちゅう)は、混ぜる・炒める・焼くといった総合的な調理全般ができるものから、どれか一つの調理方法に特化したものもありました。シーズ(技術)としては共通しており、あとはどういったニーズに刺していくのかといったところに企業ごとの特徴が出ているように思えました。

今回の CES では、 AI やアプリを使った調理家電ではなく、弊社がスタートアップに期待しているような、新しい技術やビジネスモデルに関する出展を探しました。

CES2024レポート(後編)~カテゴリー別の注目技術〜

左側のオランダの企業は、新しい加熱方式を開発しました。オーブンやレンジのような加熱方法ではなく、食品自体を抵抗と捉えて、電気を通して熱を生み出し、均一加熱を可能にしています。これにより消費電力と調理時間を削減可能で、加熱ムラがないので、栄養素が逃げていくことがないのも特徴です。

右側は韓国の企業で、食品をカメラで撮影してデータベース上に食品の画像を認識して、カロリー計算などをする技術を開発しています。この技術自体は数年前からあったものですが、この企業の技術は、食べる前と後の差分を写真から解析し、実際に食べた量を正確に測れるのが特徴です。またこの技術を利用する企業側にとってはどの食材の食べ残しが多いのかなどがデータで集まるので、メニューや量の改善にも役立てられます。

CES2024レポート(後編)~カテゴリー別の注目技術〜

こちらはアメリカの企業です。昨今、家庭で本格的な飲食を楽しもうという傾向が強まりつつあると感じます。家電量販店に行くと個人宅で使えるビールサーバーなどを見かけるようになりました。この企業は、ビールの醸造を家庭でもできる技術を開発しています。アプリの中にさまざまなメニューがあり、原料をデバイスに投入すると3〜 30 日ほどで、いちから醸造した出来立てのビールを飲むことができます。

Energy/Power(エネルギー/パワー)

CES2024レポート(後編)~カテゴリー別の注目技術〜

Energy / Power も、やはり韓国が力を入れている印象です。 Hyundai や Doosan など韓国の大手企業が、水素の製造・輸送・貯蔵を行うことを大々的に掲(かか)げていました。それを受けてという形になると思いますが、スタートアップもエネルギーの分野でいうと水素、つまり燃料電池系の技術を研究しているケースが多いと感じました。

ただ、スタートアップで大規模な研究開発はできないので、水素の文脈で研究開発しているスタートアップは、家庭用の小型化した水素燃料電池の技術を出展している印象を受けました。

課題としては、水素タンクを使うという前提のため、インフラの整備があります。

Smart City/Sustainability(スマートシティ/サステナビリティ)

CES2024レポート(後編)~カテゴリー別の注目技術〜

最後に Smart City / Sustainability 分野の展示について、まとめてお伝えします。Smart City 分野では、エリア内の移動手段としてさまざまな技術が提案されていました。また City 内では、太陽光発電を使用し、持続可能なエネルギーを確保する取り組みが標準となっている印象を持ちました。画像の左側中央にあるのは太陽光パネルを貼ったベンチです。それからエネハベ(エネルギーハーベスト:環境発電)も存在感がありました。

Sustainability は、省エネ家電などさまざまな企業で付けられていたタグですが、弊社は今回、水とアグリ(農業)分野に注目し、技術事例や傾向を見てきました。

『 CES 2024 テックベンチャーの先端技術動向調査レポート』の中では、これらについてもより詳しく紹介しております。

『CES2024テックベンチャーの先端技術動向調査レポート』のご案内※より詳しく知りたい方におすすめ


CES2024レポート(後編)~カテゴリー別の注目技術〜

リンカーズでは毎年 CES の会場に行き、調査レポートを作成しています。今年 2024 年版は以下の注目領域に関する技術事例や調査員目線での情報などを、特にベンチャー企業にフォーカスしてまとめています。

・デジタルヘルス / ウェルネス
・モビリティ / ロボティクス / IoT
・ソフトウェア / Web 3
・Emerging Tech (エネルギー、サステナビリティ、フードテック、スマートシティなど)

レポート内容は以下の通りです。

・注目出展技術リスト(約 300 件)
・動向レポート(約 80 ページ)

注目出展技術リストでは、 CES に出展したベンチャー企業の中から興味深い技術を研究している事例を 300 件ピックアップし、それぞれについてどのような研究をしているのかレポート化しています。 CES の出展者一覧よりもはるかに深掘りしたレポートになっています。このリストを参照していただくことで、世界の先端技術がどの方向に成長しているのか、どのようなベンチャー企業が注目されているのか感覚をつかむヒントを得られることでしょう。

興味のある方は、ぜひ以下からお問い合わせください。

CES2024レポート(後編)~カテゴリー別の注目技術〜

調査対象を絞り、貴社の業務目的に合わせた調査をご希望の場合は、調査サービス Linkers Research(リンカーズリサーチ)にてご支援が可能です。

講演資料のダウンロードについて

本記事に関するセミナー講演資料を、以下のボタン先の申込フォームからお申込みいただけます。申込フォームに情報を入力後、送信ボタンを押してください。その後、自動的にページが切り替わりますので、そちらから講演資料をダウンロードしてください。

講演者紹介

CES2024レポート(後編)~カテゴリー別の注目技術〜

浅野 佑策
リンカーズ株式会社 リサーチプラットフォーム事業本部 オープンイノベーション研究所

東北大学工学部卒業( 2006 年)、東北大学大学院工学研究科修了( 2008 年)
株式会社東芝 生産技術センターにおいて半導体製造プロセスの研究開発に従事。
その後、アクセンチュア株式会社にて大手製造業における、工場デジタル化や業務自動化などのデジタルトランスフォーメーションを複数推進。
現職では、メーカーでの研究開発とコンサルティングの経験を活かして、エレクトロニクス領域を中心に、先端技術動向調査、技術マッチング、技術情報を効率的に収集するための技術開発など、製造業向けのイノベーション創出を支援している。

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喜多村 悦至
リンカーズ株式会社 リサーチプラットフォーム事業本部 オープンイノベーション研究所 シニアリサーチフェロー 博士(農学)

東北大学加齢医学研究所研究員。 鹿児島大学大学院 連合農学研究科 生物利用科学専攻 博士課程修了。
2003 年英国 Dundee 大学 Life Sciences 学部 博士研究員、2011 年同学部 Senior research associate、2017 年熊本大学発生医学研究所教員を務め、DNA 複製機構や染色体均等分配機構の研究、解明に取り組む。2018 年よりリンカーズ オープンイノベーション研究所に入社し、アカデミアバックグランドを活かして、バイオテクノロジー領域を中心に先端技術動向調査、産学連携促進活動など、製造業向けの技術マッチング活動を支援している。

CES2024レポート(後編)~カテゴリー別の注目技術〜

蒲原 知宏
リンカーズ株式会社 リサーチプラットフォーム事業本部 オープンイノベーション研究所 プロジェクトマネージャー 博士(工学)

東京工業大学大学院 理工学研究科修了。
東陽テクニカにて、自動車ソフトウェア向け静的コードチェッカーや大容量デジタルアセットの高速管理ソフトウェアの技術営業に従事。
その後、シーメンスにて構造物振動計測・解析、および騒音源探査ソリューションのプリセールスを行う。
2020 年よりリンカーズに入社し、オープンイノベーション研究所のプロジェクトマネージャーとして、自動車、建設、ヘルスケアなど、多岐にわたる最新技術動向調査を行う。

CES2024レポート(後編)~カテゴリー別の注目技術〜

伊藤 崇倫
リンカーズ株式会社 リサーチプラットフォーム事業本部 オープンイノベーション研究所 プロジェクトマネージャー

名古屋大学大学院 工学研究科 応用化学専攻
化学系メーカーにて、ディスプレイやバッテリーに使用される素材の研究開発、同社経営企画部門にて、新事業開発に取り組む。
その後、TOC(制約理論)をベースにしたコンサルティング会社にて、製造業の研究開発マネジメントの支援を行う。
2021 年よりリンカーズに入社し、先端素材、環境関連技術、食品、アグリ分野などの先端技術調査、用途開拓支援、ビジネス全般に関する調査など広範な領域を担当する。

オープンイノベーションを支援するリンカーズの各種サービス

技術情報の収集には「 Linkers Research(リンカーズリサーチ)」
Linkers Research は、貴社の業務目的に合わせたグローバル先端技術調査サービスです。各分野の専門家、構築したリサーチャネットワーク、独自技術データベースを活用することで先端技術を「広く」かつ「深く」調査することが可能です。研究・技術パートナー探し、新規事業検討や R&D のテーマ検討のための技術ベンチマーク調査、出資先や提携先検討のための有力企業発掘など様々な目的でご利用いただけます。

技術パートナーの探索には「 Linkers Sourcing(リンカーズソーシング)」
Linkers Sourcing は、全国の産業コーディネーター・中小企業ネットワークやリンカーズの独自データベースを活用して、貴社の技術課題を解決できる最適な技術パートナーを探索するサービスです。ものづくり業界の皆様が抱える、共同研究・共同開発、試作設計、プロセス改善、生産委託・量産委託、事業連携など様々なお悩みを、スピーディに解決へと導きます。

技術の販路開拓/ユーザー開拓には「 Linkers Marketing(リンカーズマーケティング)」
Linkers Marketing は、貴社の技術・製品・サービスを、弊社独自の企業ネットワークに向けて紹介し、関心を持っていただいた企業様との面談機会を提供するサービスです。面談にいたらなかった企業についても、フィードバックコメントが可視化されることにより、今後の営業・マーケティング活動の改善に繋げていただけます。

オープンイノベーションの推進についてお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
「まだ方向性が決まっていない」
「今は情報収集段階で、将来的には検討したい」

など、具体的な相談でなくても構いません。
リンカーズが皆さまのお悩みや課題を伺い、今後の進め方を具体化するご支援をさせていただきます。

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