• 配信日:2023.03.13
  • 更新日:2024.11.29

オープンイノベーション Open with Linkers

CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

※【 2025 年11月 29 日追記】
CES 2025 に向けて、これまでの CES の振り返りと、CES 2025 の見どころを新たな記事で掲載いたしました。
『CESとは?CES2025の注目点と、これまでの振り返り』
ぜひご覧ください。

2023 年1月5日から1月8日までアメリカで『 CES2023 』が開催されました。リンカーズから専門技術リサーチャーが約3年ぶりに現地へ赴き、さまざまな情報を得たので、報告します。
以下は 2023 年2月8日開催のウェビナーでお話をした概要になりますが、セミナーで使用した講演資料を記事の最後の方で無料ダウンロードいただけますので、ぜひ本文と合わせてご覧ください。

CESとは?リンカーズがCESに注目する理由


CES とは、年に1回アメリカのラスベガスで開催される、世界最大のテックイベントです。CTA ( Consumer Technology Association )が主催し、メディアの注目も高く、テックリーダーやベンチャー企業などが広報を行う場として活用しています。

CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

弊社が CES に注目している理由は、大きく分けて3つあります。

1つ目の理由は、 CES は元々家電がメインターゲットでしたが、最近はその枠を超えて IoT や AI ヘルスケア、ゲーム、フードテックなど多くの分野のテクノロジーが展示されているためです。

2つ目の理由は、出展している大手企業が自社の最新製品を展示するだけでなく、中長期のテクノロジービジョンや新しいコンセプトを、実物を用いて発表する展示を行っていることです。これらの展示から今後のテクノロジートレンドを予測することも可能なため、注目しています。

3つ目の理由は、独自の技術を開発しているテックベンチャーが集結していることです。現時点では黎明(れいめい)期にあたる技術にいち早く触れることができるため、 CES に注目しています。

出展組織数の推移とCES2023の見どころ・注目ポイント


CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

上記は CES に出展している組織数、参加者数を表したグラフです。 2020 年以降、コロナ禍のために出展組織数・参加者数とも大幅に減少していることが分かります。

2023 年は現地開催とオンライン開催の両方を行い、現地で出展する組織・参加者の割合が回復傾向にあります。コロナ禍前の7割ほどまで回復しつつあるため、今後も CES の出展組織数・参加者数は増加していくのではないでしょうか。

CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

画像は、 CES に出展している組織の国別の数を表したグラフです。上位6カ国(アメリカ・韓国・中国・フランス・台湾・オランダ)は 2020 年から変化はありません。しかし、コロナ禍の余波により、一時的に中国からの出展数が著しく減った時期がありました。 2023 年の中国の出展数は2位の韓国と同じ水準まで戻ってきています。このことから、中国は一度内需に特化したものの、改めてグローバル化に乗り出しているのではないかと考えられます。

さらに 2022 〜 2023 年でトルコの出展数が急増しているのも注目すべきポイントです。国としてベンチャー企業のサポートを開始しているのではないでしょうか。

日本は 2023 年のグラフを見ると出展数が少なく感じますが、毎年 60 〜 70 社が出展するという数値は変わっていません。

CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

こちらの画像は、 カテゴリ別の出展数の順位です。最も多いのが「 Startup (スタートアップ)」で、毎年1位か2位に入っています。 2023 年の特徴は、 2021 年に 16 位だった「 Sustainability (サステナビリティ)」が年々順位を上げて、トレンドになりつつあるという点です。昨今のサステナビリティは環境だけでなく、さまざまな技術を使ってどのような取り組みができるかが、付加価値としてではなくメインの価値になってきている印象を受けます。

また「 Accessories (アクセサリーズ)」も急増しています。このことからソフトウェアや AI などさまざまな技術の小型化が可能になり、製品に組み込めるようになってきていることが伺えます。

CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

CES2023 では、暗号通貨や Web3などといったソフトウェア関連のカテゴリが新規追加されました。

ここまで、 CES に出展されたさまざまな分野について触れてきました。次に、弊社が注目する分野として以下の4つを挙げ、それぞれの印象的だった技術を紹介します。

  • ●デジタルヘルス / ウェルネス
  • ●ソフトウェア / Web3
  • ●ロボティクス / モビリティ
  • ●その他(スマートホーム / シティー・フードテック・センシングなど)

デジタルヘルス/ウェルネス分野の注目技術


CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

私たちがデジタルヘルス / ウェルネスの分野で注目しているのが、「新型コロナウイルス感染症関連」と「自宅の保健室化(遠隔医療・在宅医療)」です。実際に CES2023 に行ってみたところ、自宅の保健室化については、保健室どころか「自宅の病院化」といっても良いくらいに発展した技術も目にしました。

また私たちが見た技術は基本的に人を対象にしたものが多かったのですが、デジタルウェルス / ヘルスケアの技術をペット向けに応用している企業も見られました。

CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

MedWand Solutions の技術

画像の左側にある MedWand Solutions というアメリカの企業では、手のひらに収まるマウスのようなハンドヘルドデバイスを開発しています。これにはマイクや電極、カメラなどが集約されており、1つのデバイスで心部体温・脈拍・心電信号・聴診・咽頭鏡検査・耳鏡検査・皮膚検査を可能にしています。

またこのメーカーではアプリ開発も行っていて、デバイスによる診断結果を医療機関と共有することで、家にいながら定期健康診断よりもクオリティの高い診断サービスを受けることが可能です。現在は欧米を中心にサービスを展開しています。

Shyld AI の技術

画像の真ん中にある Shyld AI というこちらもアメリカの企業で、カメラと UV 照射機能を兼ね備えたデバイスを開発し、ここに AI を組み込んでウイルス感染症に適した効率的な消毒を可能にしています。

UV-C の光が指向性を持っており、空間の構造や中にある物などを判断して、ウイルスの感染経路になる確率が高い場所に重点的に UV を照射し、ウイルス感染症の低減を目指す技術です。人や UV に弱いデバイスなどへの照射を避けることもできます。

個室に対応したデバイスだけでなく、オープンスペース対応のものやロボット型などもあり、医療機関だけでなくオフィスなどでも利用可能です。

NuraLogix Corporation の技術

画像の右側にある NuraLogix Corporation というカナダの企業では、スマートフォンにアプリをインストールして、顔の特定のポイントの血流からその人の健康状態や血圧・心拍数などを計測してくれるシステムを開発しています。この技術に AI やビッグデータを掛け合わせると、測定した人が将来どのような病気になる可能性があるか予測することが可能になっています。

FEELIN の技術

デジタルヘルス / ウェルネスの分野では、感情推定を行う技術の開発が盛んに行われています。

CESとは?CES2023の見どころ・注目の最新技術を紹介

画像の左にある技術は、ベルギーの FEELIN という企業のものです。 この企業では、独自のアルゴリズムを用いて表情や血流などを読み取って、その人がどれだけ興奮しているか、どれだけストレスを感じているかなどを推定する技術を開発しました。この技術の特徴は、監視カメラなどに導入することで、映っている人複数人の感情を同時に読み取れることです。

Oline Diagnostics の技術

画像の真ん中にあるイスラエルの Oline Diagnostics という企業では、トイレの便座につけられるセンサーを開発し、尿などから健康状態を測ることを可能にしました。このセンサーは、あらかじめトイレの利用者を登録しておくことで、複数人がそれぞれの情報を個別に管理することができます。

サントリーグローバルイノベーションセンターの技術

画像の右にあるサントリーグローバルイノベーションセンターは、日本の企業です。スマートフォンのマイクを使って蠕動音(ぜんどうおん)で腸の健康状態を診断する技術を開発しています。

また、歩行する必要なく、マットの上に立つだけで足の裏の接地情報を解析し、歩き方や姿勢の癖などを分析する技術や、耳の後ろに「 XHRO 」というセンサーを取り付けて、生体リズムを評価し、健康状態を推定するという技術も開発しています。