• 配信日:2023.11.06
  • 更新日:2024.04.19

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カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選

回収したCO2を固定化する技術の事例


カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選

回収した CO2 を変換する技術として、大きく分けて「固定化」「利用化」の2つがあります。

固定化とは、回収した CO2 を地下に埋めるなど、地球のどこかに溜め込むことです。

この固定化の研究開発事例を紹介します。

事例10:44.01

カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選

イギリスの 44.01 という企業では、回収した CO2 を炭酸塩の形で地球の岩層に保存するシステムを研究しています。

他の企業でも同じように、 CO2 と無機物を反応させて、化合物として保存する技術が研究されています。近いうちに実用化の事例も増えていくでしょう。

事例11:GEA Carbon Capture AS

カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選

ノルウェーの GEA Carbon Capture AS という企業では、マリンスノーというものを使い、 CO2 を海底に沈降させる技術を研究しています。マリンスノーとは、プランクトンの死骸や死骸に付随する細菌などが海底に降り積もる現象のことです。このマリンスノーの発生を推進することで、海底に CO2 を溜め込む研究を進めています。

CO2の直接利用および有用物質へ変換する技術の事例


カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選

回収した CO2 を何らかの化学物質に変換する方法にはさまざまなアプローチがあります。主には画像にあるアプローチが挙げられます。

カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選

弊社では、 CO2 の材料技術を 160 件ほど調べ、どのアプローチがどの程度の研究段階かをレポートにしました。結果、電解還元、触媒プロセス、人工光合成などが活発な領域であることが分かりました。

カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選

電解還元に絞って詳細に調べ、どのような生成物を作ろうとしているのかをまとめました。最も多いのが低級アルコール / 低級オレフィン、続いてギ酸、一酸化炭素 / 合成ガスが多いという結果になりました。

こうした電解還元の中で、興味深い研究事例を紹介します。

事例12:Argonne National Laboratory

カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選

Argonne National Laboratory という研究機関では、 CO2 と水からエタノールを生成する電解還元技術に用いる触媒として、金属有機構造体と呼ばれる構造物( MOF )の適用を検討しています。特徴としては、骨となる有機構造体の材料を選ぶことで構造物の隙間の多さや隙間のサイズなどを柔軟に設計できるという点。また構造物の節の部分にある金属粒子の種類を選ぶことで、化学的な特性や触媒的特性を付加させられる点も特徴です。

材料の組み合わせ次第で、狙い通りの特徴を持つ構造物を生成できます。

事例13:University of California, Los Angeles

カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選

CO2 をエタノールやエチレンに変えるときの触媒として使われるのは銅が一般的なのですが、 University of California, Los Angeles では銅をナノ粒子化して表面積を上げるなど、銅の触媒作用を高める研究をしています。

この研究では、銅のナノワイヤーを作り、そのナノワイヤーの形状を崩すことで触媒の効果が高められることを発見しました。

事例14:RMIT University

カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選

RMIT University では、 CO2 から固体の炭素を作る技術を研究しています。通常、触媒を使って CO2 から炭素を作ると、生成した固体の炭素が触媒の表面にくっついてしまい、触媒が不活性化してしまうという問題が発生します。 RMIT University は、触媒の不活性化を防ぐために、触媒自体を液体金属で賄(まかな)おうということに取り組んでいます。低音で液化するような合金を使って液体の金属に電気を流して、 CO2 を炭化水素に変換するという仕組みです。すると、生成した固体炭素は液体金属の表面には吸着せずポロポロと落ちていくことが分かっています。半永久的に触媒の作用が続くということです。

触媒プロセスによるCO2の再利用技術の事例


カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選

こちらは触媒の存在下で CO2 を何かしらの反応性のガスと混ぜることで反応を起こします。最も分かりやすいのはメタンです。 CO2 と水素を触媒の存在下で反応させることでメタンが生成される。これが触媒プロセスの代表的な反応です。

触媒プロセスの事例も紹介します。

事例15:早稲田大学の事例

カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選

早稲田大学では、 CO2 を効率良く一酸化炭素やメタンなどへ資源化する技術を研究しています。通常、触媒プロセスは電気を流さず自然な環境下で行うのですが、この技術ではあえて触媒に電圧をかけることで反応性が変わることについて研究しています。

事例16:Novomer, Inc の事例

カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選

Novomer, Inc という企業では、触媒プロセスでプラスチックを作るという技術に関連して、ポリカーボネートを CO2 から生成する研究をしています。他の企業でも同様の取り組みをしているのですが、 Novomer, Inc は大量生産に成功したと発表しています。

光還元/人工光合成によるCO2再利用技術の事例


カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選

光還元 / 人工光合成によって CO2 を何らかの物質に変えていく技術の事例を紹介します。

事例17:東京工業大学

カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選

東京工業大学では、鉄さびの主成分を使って二酸化炭素を再資源化する技術を研究しています。人工光合成には触媒を使うのですが、触媒の材料が非常に高価であることが多いです。

こちらの研究グループでは、鉄さびの主成分である鉄と酸素と水素が結合した、材料としては非常に安く手に入るものを使ってギ酸を作ることが可能になったと発表しています。触媒コストの低減が期待されている技術です。

事例18:日産自動車株式会社

カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選

人工光合成の際に使われる光の波長帯は限られた範囲のものしか使わないことが多いですが、日産自動車株式会社では太陽の光の波長を変換させることで、なるべく多くのエネルギーを反応に使えるようにする研究に取り組んでいます。

太陽光発電という文脈で光の波長を変えていくという事例はよく聞くのですが、人工光合成ではあまり例が少ない取り組みです。

事例19:Green & Cooi World Refrigeration

カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選

人工光合成とは異なるその他のアプローチという位置付けになりますが、 Green & Cooi World Refrigeration では、CO2 を他の物質に変換することなくそのまま再利用する技術を研究しています。 こちらは、冷蔵庫などの冷媒に、従来の代替フロンガスの代わりに CO2 を使用する取り組みです。

事例20:国立標準技術研究所

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こちらも人工光合成とは異なるアプローチです。国立標準技術研究所では、 CO2 を CO に変換する技術を研究しているのですが、特徴的な点として、これまでの電解還元や触媒反応、光還元などとは異なり、グラファイト上のアルミナノ粒子に電子ビームを照射すると、局在表面プラズモンが共鳴し、 CO2 を CO に変換する反応が生じます。まだ発見段階で今後研究されていくフェーズですが、特徴のある研究だと個人的に感じています。

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講演者紹介

カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選

浅野 佑策
リンカーズ株式会社 リサーチプラットフォーム事業本部 オープンイノベーション研究所

東北大学工学部卒業( 2006 年)、東北大学大学院工学研究科修了( 2008 年)
株式会社東芝 生産技術センターにおいて半導体製造プロセスの研究開発に従事。
その後、アクセンチュア株式会社にて大手製造業における、工場デジタル化や業務自動化などのデジタルトランスフォーメーションを複数推進。
現職では、メーカーでの研究開発とコンサルティングの経験を活かして、エレクトロニクス領域を中心に、先端技術動向調査、技術マッチング、技術情報を効率的に収集するための技術開発など、製造業向けのイノベーション創出を支援している。

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