• 配信日:2023.07.19
  • 更新日:2024.07.01

オープンイノベーション Open with Linkers

オープンイノベーションを成功させる思考

この記事は、リンカーズ株式会社が主催した Web セミナー『オープンイノベーションを成功させる思考とは~オープンイノベーション徹底解剖~』のお話を編集したものです。

ヤンマーホールディングス株式会社でオープンイノベーションに取り組み、新規事業創出や産学連携などを担当された、 同社 技術本部 共創推進室 専任部長の鶴 英明 (つる ひであき)様に、ご自身の経験から、どのような思考がオープンイノベーションを成功に近づけるのか、お話しいただきました。

オープンイノベーションに取り組むにあたってどのような思考や意識が必要なのか、知りたい方はぜひお読みください。

オープンイノベーションにはポジティブシンキングで臨む


今回の「思考」という観点で考えたときに、オープンイノベーションに重要なのはエネルギッシュでポジティブでアクティブであることだと思います。オープンイノベーションでは、会社の中でクローズドに行っていることをオープンにし、それを楽しむことができると考えています。皆様がオープンイノベーションに関わる中で新しい世界を見ることができる、あるいは予想もしなかった結果をもたらす出会いがあるような、ポジティブシンキングでオープンイノベーションに取り組んでほしいです。

新しい日本のオープンイノベーションを進めていくタイミングが来ている


オープンイノベーションを成功させる思考

2022 年2月に岸田総理大臣が、オープンイノベーションを加速していくためにスタートアップを中心に支援を始めています。去年まで 546 億円あったスタートアップへの助成金を倍増していくという話も出ています。

これは、単にスタートアップだけでなく既存の企業にとってもイノベーションエコシステムを使ってスタートアップと一緒に共存・共創・共栄していくチャンスが増えていると捉えるべきでしょう。

そもそもオープン思考とは何か


オープンイノベーションを成功させる思考

今回のテーマにした「オープン思考」とはそもそも何かについて説明していきます。

まず、オープンイノベーションの「イノベーション」の言い換えとして「技術革新」という言葉が使われがちですが、新しい技術や革新的な技術である必要はないというのが昨今の正しい認識です。既存の技術の中でも「異結合」「新結合」が生まれ、新しいプロダクトが生まれていくということがイノベーションの考え方だと思っています。

イノベーティブに活動を進めるという志は重要ですが、イノベーションかどうかは市場・顧客が決めることです。結果的に後から振り返るとイノベーション活動だったということもあります。

一方で前半の「オープン」の部分ですが、日本の企業は世界的に見ても自社の力で右肩上がりの成長をしてきたケースが多く、自社内で R & D を持ち、さまざまな成功を収めてきたという背景があります。特にクローズドイノベーションは日本企業にとって得意技だったのです。

クローズドで今後も成長が期待でき、新しいイノベーションを起こせるのであればそれでいいのですが、私たち日本企業や日本の環境の変化だけでなく、世界の環境も変化してきています。特に日本企業が大切にしている商品やサービスの質とスピードを両立するためには、クローズドイノベーションでは限界がきているというのが日本の現状です。

一方で大企業以外でも「新結合」を生み出しやすい世界になっています。この要因は、さまざまなリソースを供給・調達でき、これまでは大企業が専売特許的に保有していたクローズドイノベーションの良いところが、オープン環境になっていくことでどの企業でもできないことはない、特にスタートアップや中小企業、新興国の新しい企業でもできるような環境になってきたことです。

日本企業には、この環境を観察してもなお、クローズドイノベーションを進めるというやり方も残されているのかもしれません。ただ、これからさらに事業が成長することや市場が拡大することを考えたときに、日本企業は必然的にオープン戦略を採用していかねばならない、もしくは身に付けて自分達の武器としていく必要があると思います。

クローズドイノベーションとオープンイノベーションを組み合わせる


オープンイノベーションを成功させる思考

ここまでに説明したことをまとめたのが上記の表です。

従来のクローズドイノベーションは表左下の青枠で囲んだ部分です。日本企業はこのクローズドイノベーションが得意だったのですが、市場が広がりグローバル化し、プレイヤーがどんどん増え、顧客も多様化していく環境では、アカデミアやスタートアップなどの新しい技術を利用して、表の薄いピンク色の部分に当たるクローズドイノベーションに、オープンイノベーションを加えて上手に活用していき、事業が成長する新しい機会が増えていくと思います。

一方で新しい課題に取り組んでいく場合、特に新規事業はそうですが、当然土地勘が無かったり、顧客のニーズが分からなかったりします。分からない部分については自社単独で足を伸ばしていくだけではなく、社外の既存のプレイヤーやさまざまな知見を持つ組織などと手を組むことで、新しい事業として興していけるでしょう。

オープンイノベーションはクローズドイノベーションと全く異なるものかというと、決してそうではありません。クローズドイノベーションの中で賄いきれない部分を、オープンイノベーションを含めることで加速させたり、リスクを下げたりすることにつながると思っています。

どのタイミングでオープンイノベーションを取り入れるか


オープンイノベーションを成功させる思考

上記画像は、アイデアをオープンイノベーションによってどのように事業化していくかを示したプロセスマップです。

私の経験では、各プロセスがオープン化されたときに、自社のクローズドなやり方とどう変わっていくのかをしっかりイメージしていくことが必要だと思います。

オープンイノベーションを行っている部門の人たちが一生懸命走り回って「オープン化すべき」「こんな新しい技術がある」という情報を社外から持ち込んでそれを社内に紹介していくわけですが、その情報を受け取った側もジャッジする側も、それを経営に乗っけていく側も「オープン化することに新しい可能性がある」という意識が共有できないとオープンイノベーションを進めることは難しいでしょう。

ヤンマーの場合は、 2016 年にリンカーズの力を借りてプロセスマップでいう真ん中の開発、特に事業部の開発の部分にあるニーズや課題を社外の技術を使って解決することに取り組みました。これがヤンマーにおけるオープンイノベーションのスタート地点でした。

当時感じたことは、新しい技術、それが社内で解決できないことだったとしても、困っていること、すなわち消費者が欲しているものがあればオープンイノベーションの検討は必然的に前に進んでいくということです。

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一方でプロセスが商品化など後流の方へ進んでいくと、特に大きな企業にとっては設計・製造・コスト・品質保証という、企業にとってはこれまでに培ってきた文化や考え方が重視されるフェーズになります。このフェーズは、強固な枠組みが自社内に既にできていることが多く、この部分に新しい考え方や取り組みを組み込むのは難しいのが現実です。

オープンイノベーションを成功させる思考

マップの上流の部分は、新規事業や新結合を産むうえで最も成功確率が高く、新しい事象が生まれやすい部分です。特に社内で研究開発部門を持つ企業に関しては新しいアイデアがグローバルに、あるいは新しい融合として取り組めるでしょう。

ただこの場合によく起きるのが、研究開発部門の方々が他社を競争相手と考えてしまうことです。そうではなく共創のパートナーであるということを、オープンイノベーションに取り組む前にしっかり認識しておく、または共有しておくことが大切だと思います。