• 配信日:2023.02.08
  • 更新日:2024.07.22

オープンイノベーション Open with Linkers

大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

この記事は、リンカーズ株式会社が主催した Web セミナー「高い技術力で世界に注目される大学発ベンチャー」を書き起こしたものです。

ウェビナーでは、マイクロ波化学株式会社 事業開発本部 本部長 菅野 雅皓(かんの まさひろ)さまに、『マイクロ波で実現するカーボンニュートラル 〜 GX のためのキーテクノロジー』というテーマでお話しいただきました。

優れた技術を持つ大学発ベンチャーの取り組みに興味のある方、カーボンニュートラルに取り組んでいる方は、ぜひご覧ください。

マイクロ波化学株式会社の概要


大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

マイクロ波化学株式会社は大阪大学発のベンチャー企業として、 2007 年に創業しました。創業者は、大阪大学で研究者であった塚原と、三井物産で化学品営業を行っていた吉野の2名です。本社は大阪大学の吹田キャンパス内にあります。
後述しますが、弊社のビジネスはマイクロ波を工場で使っていただくべく、R&Dからエンジニアリングに至るまでのソリューションを提供することです。従業員数は 60 名ほどで、マイクロ波技術の専門家集団として、化学メーカー出身者やエンジニアリング会社出身者などで構成されています。

マイクロ波による製造業における加熱工程のイノベーション


大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

弊社のターゲットは、化学・食品・医薬などといった各種製造業における加熱工程です。何らかの化学品を作る場合、しばしば熱を加えることが必要になります。これまでの熱の伝え方は、画像のように、加熱するものよりも高い温度の熱源を用意し、温度差を利用して外部から間接的に全体を温めていきます。
外部から温めるがゆえにエネルギーロスがあるなど効率が悪く、設備も大きくなり、そして化石燃料を使う場合には CO2 が発生したりするなどの課題が発生します。

大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

すでに時代は化石燃料から電気へと移りつつあり、化学産業においてもエネルギーの電化が必要だといわれています。
そこで弊社が注目しているのが、一般家庭の電子レンジにも使われているマイクロ波という電磁波です。マイクロ波を、化学産業をはじめとするモノづくりにおける新たなエネルギーとして使っていく取り組みをしています。

マイクロ波とは


大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

マイクロ波とは電磁波の一種です。電子レンジや無線通信など、私たちの生活にも広く使われています。これを加熱手段として使おうというのが弊社の発想です。
従来の加熱方法では、まず釜を温め、次に釜内部にある液体や個体が温まっていくというように、間接的にエネルギーが伝わるのが一般的でした。しかし、温めるものの体積が増えるほど、加熱体積に対してエネルギーを伝えられる面積の比率は下がっていくため、加熱の効率が下がります。
一方、マイクロ波は加熱したいものに対して、直接的・選択的に熱を伝えることが可能です。従来の方法とは全く異なるエネルギーの伝え方だといえます。

マイクロ波プロセスのベネフィット


マイクロ波は、弊社が創業する前からすでに、アカデミアを中心に世の中に知られていた技術です。なぜ広く認識されていたのかというと、マイクロ波ならではのベネフィットが影響しています。

大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

脱炭素化につながる

先ほどマイクロ波は電磁波の一種だと説明しましたが、マイクロ波発振器という装置によって、電気から作られます。そのため、CO2フリー電気を活用すれば、工場の電化が実現可能です。化石燃料を使う場合に比べ 80 〜 90 %ほどの CO2排出削減ができ、脱炭素化に貢献できます。

大学発ベンチャーの先端技術~マイクロ波によるカーボンニュートラルの実現(マイクロ波化学株式会社)

製造プロセスそのもののイノベーションができる

加熱にマイクロ波を活用することで、CO2排出削減だけでなく、製造プロセスそのもののイノベーションも可能です。例えば、消費エネルギーや加熱時間の大幅な削減などが実現でき、設備コンパクト化も可能になります。
昨今はカーボンニュートラルの対応のために、各メーカーで保有している工場の製造プロセスの見直しを行っていることでしょう。このカーボンニュートラルを良い契機と捉え、ただ脱炭素化するだけでなくプロセスイノベーションも合わせて実現いただこうというのが弊社の考えです。
とはいえ、モノづくりにおいて実績のないプロセスを導入することは難しいと思われます。そこで弊社は創業当初、世界初のマイクロ波化学工場ということで大阪に1号機を設立しました。ここでは1日約 10 トン、年間で約 3300 トンの化学品生産を実現しました。