• 配信日:2022.11.25
  • 更新日:2022.11.30

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カーボンニュートラルWebセミナーレポート
カーボンニュートラル・サステナブル2022注目技術

2022 年 11 月2日開催の Web セミナーでは、カーボンニュートラルや SDGs の実現に向けた、世界各国の低環境負荷でサステナブルな先端技術 20 選を紹介しました。( CO2 の回収・再利用技術、バイオ素材、環境汚染を低減する処理技術や可視化技術、都市のごみ問題を解決するための技術など)
以下はセミナーでお話をした概要になりますが、セミナーで使用した講演資料をダウンロードいただけますので、ぜひ本文と合わせてご覧ください。

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カーボンニュートラル・サステナブル技術の紹介


カーボンニュートラル技術「CO2 の回収 / 貯蔵 / 再利用 技術」

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空気中や産業排気物から CO2 を回収する技術は、吸収 / 吸着材を用いたものとフィルタを用いたものに大きく分類できますが、現在は液体系の吸収材を用いたものが主流となっています。次世代技術として固体吸着材やフィルタ技術が注目されているという状況です。
液体系の吸収材としてはアミン系の液を用いたものが一番多く用いられています。
アミン系の液体吸収剤を用いて、産業排気物から CO2 を回収する技術は、既に実用化段階にきており、大手企業のプラントでも実用化事例が多く見られます。
ただ、アミン系の液体吸収剤は、CO2 を回収した後に CO2 を取り出すプロセスにおいて、120℃ ほどに加熱する必要があるため、そこで多くのエネルギーが必要になり、エネルギー消費量もコストも大きいといった課題があります。
こうした課題に対して、いくつかの改善の方向性があります。その一つは、CO2 の再放出を低い温度で実現可能なアミン系溶液を開発するというものです。液の構成を工夫することで、80℃ 程度でも再放出が可能な液が開発されており、エネルギー消費量の大幅な削減が可能となっています。また、アミン系溶液は腐食性が高く、設備に使用できる素材に制約があるという課題もあるのですが、液の腐食性を低減する開発も進められています。
さらに、アミン系以外の溶液を使って CO2 を回収する技術も開発が進められています。主な材料としては、水酸化カリウムや炭酸カリウムを用いたものが見られます。
また、アンモニアは CO2 の再放出温度を劇的に下げることができる材料として大きく注目されています。例えばアメリカの Innovator Energy 社は、68℃ で CO2 の再放出が可能なアンモニア液系溶液を用いたプロセスを開発しています。これが実用化されれば、CO2 回収のオペレーションコストがアミン系材料に比べて最大 1/10 程度まで下げられるのではないかと期待されています。
他にも、CO2 回収コストを下げる方向性として期待されているのが、固体系の吸着材を用いた技術です。固体系吸着材は、液体系の吸収材に比べて再放出時のエネルギーを低減しやすく、また、システムも比較的シンプルに構築できるため、中小型のCO2 回収装置に向いていると考えられます。
固体系の吸着材のなかでも、特に MOF(金属有機構造体)は、高度な吸着特性の設計が可能であり、吸着性能やコストを劇的に改善できる可能性があるため、期待が大きい材料系です。まだ基礎研究段階のものが多く、恐らくコストの面でも改善が必要ですが、今後研究開発が進展するにつれて実用化事例も増えてくるのではないかと考えられます。

カーボンボンニュートラル技術「発電 / 蓄電 / エネルギーマネジメントに関する技術」

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発電 / 蓄電 / エネルギーマネジメントに関しても多くの技術があるのですが、今回は水素化技術とアンモニア技術について紹介します。

水素製造技術

水素を液体に取り込ませて運搬できるようにする LOHC(液体有機水素担体)について紹介します。
LOHC は液体として水素を運搬できるため、大量に輸送する際に既存のタンカーなどを利用できるというメリットがあります。ベンジルトルエン系などの有機材料に水素を取り込ませ、利用時には触媒を用いて水素を取り出す方法が一般的であり、より低コストで効率の良い溶液や触媒の開発が活発に進められています。

アンモニア技術

アンモニアも水素運搬用のキャリアとして期待されている材料です。また、アンモニアは直接燃料として燃やしても CO2 を発生しないため、クリーンな燃料としての実用化も期待されています。
アンモニアは従来、肥料の原料として工業的に生産されていますが、近年では再生可能エネルギーを用いたグリーンアンモニアの生産技術や、プラントなどで地産地消できる小型のアンモニア製造設備を開発する企業が注目されています。
また、アンモニアの製造には、窒素と水素を原料として高温・高圧で合成するハーバーボッシュ法と呼ばれる手法が用いられることが多いですが、多くのエネルギーや化石燃料が必要となるため、より低温、低圧でアンモニアの製造が可能な新規触媒の研究がアカデミアを中心に活発に進められています。こうした触媒の開発は日本も非常に競争力を持っている分野です。

カーボンニュートラル技術「低炭素材料 / 素材 / リサイクル技術」

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バイオ燃料やバイオプラスチックなど、化石燃料を使わない燃料・素材開発が進められています。燃料にしてもプラスチックにしても、初期はトウモロコシなど食用の材料を用いていましたが、最近は食料不足との競合が起こらない非食用の植物を用いた燃料 / 素材の開発が実用化されてきています。さらに、次世代の技術として微細藻類などの微生物を活用した技術開発が進められています。微細藻類は農地ではなくチューブやプールで生産できるため、農地を必要とせず工場内で生産できることが大きなメリットとなっています。
こうした微細藻類や微生物由来のバイオ燃料は、ベンチャー企業を中心に研究開発が進められています。例えば、アメリカの AlgenolBiofuels Inc. は太陽光、海水、廃棄 CO2 を糖類に変換するハイブリッド藻類と、その糖類をエタノールとバイオマスに変換する技術を有しています。ただ、2015 年前後からバイオ燃料事業ではなく、パーソナルケア成分や食品などの事業を主に進めているようです。
微細藻類を用いたビジネスとして、バイオ燃料より食品や飼料分野の実用化が先に進んでいます。特に、魚の養殖や動物の飼料に必要なオメガ3脂肪酸やタンパク質は、これまで魚から製造していましたが、これらの過剰搾取が問題となっており、微細藻類がその代替手段として期待されています。
一方、バイオプラスチック分野では、バイオマス材料由来プラスチックの特性改善が顕著であり、近年では車の内装やシンクなど、人目につき、かつ化学的・物理的な安定性が求められる部分にもバイオプラスチックが用いられる事例が出てきています。特性としてもエンプラレベル性能をうたっている製品が多く開発されており、今後も実用化される材料が増えてくると予想されます。
また、別の観点として、セメントやコンクリート材料に CO2 を吸収させて固定化する技術も、建築業界を中心に期待を集めています。酸化カルシウムに CO2 を反応させて炭酸カルシウムとして固定化する手法が一般的であり、一般的なコンクリートと同等の強度を持つ材料も開発されており、多くの企業が開発に参入しています。

サステナブル社会の実現に向けた事例紹介


最後に、カーボンニュートラルというよりはサステナブル社会の実現に向けた技術として、環境汚染の低減 / 希少資源の有効活用について、いくつか事例を紹介します。

サステナブル関連技術「空気の清浄化」

BreezoMeter は、都市の空気質をマップとして表示するサービスを提供しているイスラエルの企業です。最近では iPhone の天気アプリにもその都市の現在の空気質情報を提供しているので、利用している方もいるかもしれません。PM2.5、NO2、SO2、オゾン、花粉等種類別の空気質を路上レベルの精度で提供しており、同社とコラボレーションした様々なサービスが実用化されています。
空気の清浄化もサステナブル社会の実現には重要な要素となります。
現在の空気清浄機などには、空気中の0.3μm以上の粒子を捕集することができる HEPA( High Efficiency Particulate Air )フィルタが用いられていますが、ウイルスはそれよりも小さいため、HEPA フィルタでは捕捉できません。そのため、HEPA フィルタよりさらに細かい物質を捕捉でき、さらにはウイルスの不活性化ができるようなフィルタが開発されています。

サステナブル関連技術「排水の処理」

産業排水の処理も大きな社会課題となっています。特に有機成分や油脂を排水から取り除くことは、コストがかかることが多いのですが、低コストの吸収材や長寿命の逆浸透膜などの技術が開発されており、こうした技術の普及により排水処理のコスト削減に繋がることが期待されます。
また、排水処理に用いる酸化剤として環境にやさしい酸化鉄を用いることも期待されています。資料には載せていませんが、使い捨てカイロの酸化鉄を再利用して有機汚泥を分解することに取り組んでいるプロジェクトもあり、注目度の高い技術となっています。
最後に、家庭のシャワーの排水を浄化して再利用する技術も注目されています。水が豊富な日本ではあまりイメージがしにくいですが、世界的には水資源の枯渇は大きな社会問題となっており、家庭で使用する水を節約する技術も大きなビジネスになっていくと予想されます。

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リンカーズでは、カーボンニュートラルに向けた技術を「広く」「深く」知ることのできる、「カーボンニュートラル最新技術動向マルチクライアント調査」レポートをご提供しております。リンカーズの技術リサーチャーがグローバルの先端技術情報をピックアップし、専門家の目で情報を整理しているため、効率的な情報収集が可能です。

2022 年版はこちらをご覧ください。

講演者紹介

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浅野 佑策
リンカーズ株式会社 オープンイノベーション研究所 所長

【略歴】
東北大学工学部卒業( 2006 年)、東北大学大学院工学研究科修了( 2008 年)。
株式会社東芝 生産技術センターにおいて半導体製造プロセスの研究開発に従事。
その後、アクセンチュア株式会社にて大手製造業における工場デジタル化や業務自動化などのデジタルトランスフォーメーションを複数推進。
現職では、メーカーでの研究開発とコンサルティングの経験を活かしてエレクトロニクス領域を中心に、先端技術動向調査、技術マッチング、技術情報を効率的に収集するための技術開発など、製造業向けのイノベーション創出を支援している。

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