• 配信日:2022.09.01
  • 更新日:2023.11.09

オープンイノベーション Open with Linkers

スケールフリーネットワークで起こす DX 2.0 と QX

この記事は、リンカーズ株式会社が主催した 2021 年 12 月 22 日の Web セミナー「~ 東芝から学ぶ ~ オープンイノベーション徹底解剖」のお話を編集したものです。
ウェビナーでは、株式会社東芝の代表執行役社長 CEO(講演時は執行役上席常務 最高デジタル責任者)の島田 太郎 様に「スケールフリーネットワークで起こす DX 2.0 と QX( Quantum Tranformation )」についてお話しいただきました。
DX 推進や、量子産業について興味がある方は、ぜひご一読ください。

スケールフリーネットワークとは


「スケールフリーネットワーク」について説明していきます。
Web サイトのリンクを保有している人を多い順に並べると「スケールフリーネットワーク」という、不公平な形になってしまいます。
保有しているリンクの数が平等な世界では、真ん中ぐらいの保有数が一番多くなる正規分布になります。
対して「スケールフリーネットワーク」は、たくさんのリンクを持つわずかな人たちと、ほとんどリンクを持たない大多数の人たちで構成されます。
Web のリンクは人間が貼っているため、人間の行動がそのまま反映されているといえるでしょう。
「スケールフリーネットワーク」が完成すると、様々なことが起こります。
例えば「パンデミック現象」です。
これは SNS が普及したときに私たちが体験した現象そのものです。
『 Facebook 』のユーザーがそのデータをシェアしたり「いいね」をしたりすることで、スケールフリーなネットワークが自動的に生成されていくのです。

「東芝方式」でスケールフリーネットワークを作る

私が考えた「東芝方式」を紹介します。
「東芝方式」とは、アセットオープン化方式です。
私たちが提供している比較的ありふれた技術のアセットをオープンにして、コストを抑えて素早くネットワークを生成しようという狙いがあります。
昔、「パソコンといえば 〇〇」といわれるほど代表的な製品だった PC がありました。
その後、 別会社が AT互換機というものを公開しましたことで新規参入企業が急増しました。
結果として 当時の代表的な PC は市場から姿を消してしまいました。
すなわち「身近なアセットをオープン化することによってスケールフリーネットワークの土台を作れば良いのではないか」というのが「東芝方式」の考え方です。

オープンイノベーション成功のための工夫


また東芝では、オープンイノベーションとして社外の組織と連携する際に、さまざまな工夫を凝らしています。
オープンイノベーションの流れを従来と逆にしました。
東芝側が、おそらく世の中にないと思われる技術をオープンにして、ベンチャー企業を募る形にしたのです。これがとても上手くいきました。

「みんなの DX ・ CPS 」活動


東芝では DX ・ CPS (サイバーフィジカルシステム)に取り組むにあたって特別なチームを作りません。会社全体が DX に向かって進む「みんなの DX 」を重視し、ピッチ大会を行っています。
ピッチ大会で出たアイデアは社内ファンドなどで加速させ、現在は 100 を超えるアイデアが実現に向かって動いています。

成功事例『スマートレシート』

ピッチ大会で出たアイデアが本格的な展開に至り、成功した取り組みの1つに『スマートレシート』があります。
『スマートレシート』とは、スマホアプリをダウンロードして『スマートレシート』が使える店舗での会計時にバーコードを提示すると、紙のレシートが出ずに決済データがアプリへ届くというものです。
『スマートレシート』は地域創生にもぴったりです。
現在『会津財布』という会津若松市のスマートシティの取り組みで、データの紐付けを担っております。会津財布を使うとレシートが出てきて、アプリにコインが貯まるという仕組みです。
『スマートレシート』を使った地域創生のなにが良いかというと、巨大な EC でしかできなかった、ユーザーへの商品リコメンドや、デジタルを使った分析などを商店街でもできるようになるという点です。

データの主権に関する問題

ここで問題となるのが「集めたデータは誰のものなのか」ということです。
私たち東芝は、購入物や購買行動といった情報は、全てその本人のものだと考えています。
これは GDPR ( General Data Protection Regulation :一般データ保護規則 ) の考え方をさらに追求したものです。
そのため、データの主権を個人に戻さなければなりません。
すなわち「データの徹底した見える化」と「ユーザー自身がデータを管理できること」を、サービス提供側が明確にした状態で、データを扱う必要があります。
そこで、私たちは「 Privacy statement (プライバシーステートメント)」を作りました。
私たちの基本的な考え方は、「企業ではなく人を中心に考えた、信頼できるデータ社会の確立」です。