• 配信日:2022.09.07
  • 更新日:2022.09.27

オープンイノベーション Open with Linkers

ニュー・ノーマルを迎える化学産業の動向実態
~”新潮流”が”標準”になった世界を生き抜く~

この記事は、一般社団法人新技術応用推進基盤代表理事の谷村勇平様から寄稿いただいた、「化学産業の動向」をテーマとしたレポートの要約記事です。
谷村様は「化学」をはじめ、「デジタル技術( AI・IoT・DX )」の活用など幅広いテーマで、リンカーズ株式会社主催の Web セミナーにも多く登壇されています。
本記事で概要をご紹介しているレポート、
「ニュー・ノーマルを迎える化学産業の動向実態 ~ ” 新潮流 ” が ” 標準 ” になった世界を生き抜く~」は、以下よりダウンロードが可能です。
今後の化学業界の動向に興味のある方は、本記事とあわせてレポートをぜひご覧ください。

【レポートのダウンロードはこちら】

はじめに


化学産業にとって、この 10 年は様々な変化が押し寄せた時代であった。1つ1つの潮流が少しずつ産業全体を変え、生まれてきた「化学産業のニュー・ノーマル」の時代においては、新たな事業を生み出し続けることのできる企業だけが勝者で居続けるだろう。
本レポートでは、一般社団法人新技術応用推進基盤の研究員がとらえた、化学産業のニュー・ノーマルについて読み解いていく。

過去 10 年で化学産業に到来した”新潮流”は定着したか?


化学産業にとっての 2022 年は、ウクライナ情勢によって混沌とした石油争奪戦の開始、そしてそれをも契機とした第二次グリーンテック・ブームの開始から幕を開けた。特に前者は、多くの国・企業にとって予想されたものではなく、石油化学産業もまた不透明な時代に突入している。
歴史上、石油価格高騰も環境テックブームも、私たちには経験がある。しかし今回もまた、それらの経験通りに行えば乗りきれるというわけではないだろう。なぜなら、そもそも石油化学産業そのものが、この 10 年ほどで変化を余儀なくされてきていたからだ。
化学産業が変化を余儀なくされた”潮流”とはなんだったか?筆者は4つの大きな潮流があったと考えている。

ニュー・ノーマルを迎える化学産業の動向実態~”新潮流”が”標準”になった世界を生き抜く~

化学産業を変えた、4つの大潮流


潮流①:スペシャリティ・ケミカルとバイオ/ヘルスケア/環境への領域拡大

石油化学産業は、大きくコモディティ・ケミカル(汎用品)とスペシャリティ・ケミカル(機能品)に分類できる。このうち、中国やサウジアラビアなど途上国/産油国の化学企業が勃興してきたことで、先進国系の化学企業はコスト面でコモディティ・ケミカル分野での競争力を急速に失った。
結果的に、より高付加価値で差別化のしやすいスペシャリティ・ケミカルに事業の柱を移していき、国内のエチレンクラッカーは、三菱化学(鹿島:約 36 万トン)、住友化学(千葉:約 40 万トン)、旭化成(水島:約 47 万トン)など、大きなプラントでも次々に停止している*。
スペシャリティ・ケミカルに柱を移すことは、よりユーザー産業のニーズにマッチした製品を作るということにもなる。そして化学品市場を牽引してきたのは、自動車および電気電子産業であった。しかし、2010 年代以降、両者の成長率にもやや鈍化がみられ、また自動車や電気電子といった産業自体にもコモディティ化の波が押し寄せたため、化学産業はこれらに代わる新たなユーザー獲得が必須となった。
多くの化学品メーカーが、次の成長産業として医薬品や環境ビジネスへの進出をはかったが、現時点で自動車や電気電子産業ほど大きく育っている企業は少ない。ただし、着実に成長もしている。
*:出所)経済産業省『我が国の主要石油化学品生産能力調査』

潮流②:化学企業の投資会社化

上記のように、ユーザー産業と密接な高機能品を作るということは、ユーザー企業のプロダクトライフサイクルに従って化学品メーカーも生産品を変えねばならないということである。結果的に、化学メーカーのポートフォリオ経営は進化した。
従来のように、どっしりとプラントの生産計画にしたがってモノを卸していれば一定の収益が約束される時代ではない。電気電子産業のプロダクトライフサイクルは短いものでは数年、自動車産業も CASE に代表される変革の中であり、素材への要望も多様化している。
BASF/BASF ベンチャーキャピタルも、経営統合した Dow/Dupont も、目新しげな技術/事業へ投資し、成長が鈍化したら別事業体として切り離す、投資会社のような動きが活発化している。

潮流③:生産技術の DX

特に、コモディティ分野はコスト面で、スペシャリティ分野は品質とスピードの面で、プラントの効率化圧力は以前にもまして強くなっている。
さらに先進国では、社員の老齢化と人手不足、技術継承の問題などから、以前のような「職人的技能で何とかする」余白が許されるスペースはどんどん小さくなっている。
結果的に、OT(OperationalTechnology)が主戦場であったプラントの世界で、IT や AI が果たす役割が拡大した。これは生産するモノに関してだけでなく、非熟練の方が増えることにともなった予防保全や労務・災害など、安全に関するものを含めた幅広いプラント経営に対してである。

潮流④:R&D の思想変化とマテリアルズ・インフォマティクス

潮流①/②で、先進国系の化学メーカーはスペシャリティ・ケミカルに事業の柱を移したと書いたが、もちろん途上国系の化学メーカーも、この高収益事業にチャレンジしている。
彼らは石油やコモディティ・ケミカルの領域で蓄えた潤沢な資金力と、比較的安価で優秀な自国の技術者をもちいて、技術力に追いつき追い越せと莫大な投資をしている。勝つべき研究テーマを設定して、そこに従来の感覚の数十倍の人員を投下し、人海戦術的に勝ちにきている。
このような環境下において、生産技術の DX 同様、R&D 分野でも効率化の圧力が高まっている。試験など工数と時間がかかるものの短縮、実験計画法的に調査対象外としてしまいがちだった未知領域の当たり付けなどは特に求められているものであり、化学品 R&D への AI の活用すなわちマテリアルズ・インフォマティクスの導入が進んでいる。

本レポートについて~化学産業のニュー・ノーマルとは~


本レポートはこうした化学産業が被ってきた4つの潮流を読み解きながら、変容していく業界の姿を炙りだしていく。
化学産業は、”オールドエコノミー”と揶揄されるように、比較的変化に対する受容度が低い産業であった。それは、変化はまずユーザーとの接地面から起こり、それの原料まで変化が波及してくるのには時間がかかるものということもあるし、プラントという巨大な設備投資産業でもあることから身動きがしづらいということもある。
そんな化学産業にとって、今はまさに、変化の過渡期にあるといえるだろう。これは経営規模の話でも、従業員の働き方や仕事の思想レベルの話でもそうだ。日系化学メーカーが”次”を考えるにあたって、あるいは化学メーカーとタッグを組む製品メーカーや投資会社などが化学産業の”今”を理解するにあたって、本レポートが参考になれば幸いである。

※本レポートは一般社団法人新技術応用推進基盤が作成しており、その権利は当団体に所属し、許可なく複製・再配布することを禁じています。
※また本レポートは、研究員の調査に基づいた個人的見解を含むものであり、団体として何某かの立場を表明したものではございません。

著者紹介

ニュー・ノーマルを迎える化学産業の動向実態~”新潮流”が”標準”になった世界を生き抜く~

谷村 勇平 氏

一般社団法人新技術応用推進基盤代表理事

【略歴】
東京工業大学大学院イノベーション・マネジメント研究科修了、技術経営学修士( MOT )取得。
大手通信企業にて、クラウドを軸とした自社サービスの企画・開発・ローンチ・運用まで、事業開発の全工程を経験。
その後、外資系コンサルティングファーム2社で「新技術と関連した新規事業創出のコンサルティング」に従事した。
特にデジタル技術( AI・IoT・DX )を活用した、新事業創出やビジネスモデル変革を実行。
「技術を事業に」を軸として多方面での経験を有する。
現在は一般社団法人新技術応用推進基盤の代表理事として、特に AI・IoT・DX を用いた事業創出支援や人材教育、SDGs などメガトレンドと関連した技術/事業開発の支援を行う。

【著書・講演(抜粋)】
▪『実践者に学ぶ~ AI の社会実装のリアル~』(リンカーズ株式会社オープンイノベーション研究所)
▪『近未来の働き方を想像する:もしも銭形警部が人工知能を使いこなしたら、警察はルパンを逮捕できるのか?』( ITmedia )
▪『ポスト製造業と化学企業の未来』(化学工業日報社)

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