• 配信日:2020.07.30
  • 更新日:2021.01.07

オープンイノベーション Open with Linkers

ワイヤレス給電で世界一を目指す【株式会社ビー・アンド・プラス】

※本記事は、Innovation by Linkersに過去掲載した記事の再掲載記事となります。

iPhoneに導入されたことで一躍話題となった「ワイヤレス充電」。埼玉県小川町に本社を構え「ワイヤレス給電で世界一」を目指す株式会社ビー・アンド・プラスの営業部・新規営業部門長進藤さまに、ワイヤレス給電のメリットや将来性、自社の強みなどのお話を伺いました。

  • ワイヤレス「充電」と「給電」は、バッテリーに電気を蓄えるか否かの違いだけで、仕組みとしては全く同じです。本稿ではすべてワイヤレス「給電」に統一させていただきます。
  • ワイヤレス給電の詳しい仕組みはビー・アンド・プラス様のWebサイトにて公開されております。

1か月で試作を作るスピード感のある開発力 × 名刺1,500枚分の営業力

リンカーズ 長友

本日はどうぞよろしくお願いいたします。早速ですが、いつごろからワイヤレス給電の生産を本格化させたのでしょうか。

ビー・アンド・プラス 進藤さま

元々はFA(※1)に特化したワイヤレス給電を生産しておりまして、30年ほど行っておりました。今から2年ほど前ですかね、FA以外にも多くの場でワイヤレス給電の活かせる場があると感じたのは。


―最近では、どのような分野でワイヤレス給電が使われているのですか。

例えば住宅のドアですね。電子ロックがついているので電源確保が必要なのですが、ドアを何度も開閉しているうちにケーブルが断線する場合があります。ワイヤレス給電の仕組みを使えばケーブルレスで電気を送ることができるんです。 ―なるほど。FA事業に参入したのは創業のタイミングからなのでしょうか?
元々は、ドイツのBALLUFF社の日本法人として1980年に始まりまして、日本の自動車メーカーさんにセンサー類の販売をしておりました ただ、日本のメーカーさんって要望のレベルが非常に高いんです。そうした要望をドイツ(本社)に投げてもなかなか連絡をもらえなくて…、『それなら独自で始めてしまおう!』ということになりました ―(見せていただいた沿革表を見ながら)創業からほぼすぐに独自開発がはじまったのですね。 創業から半年後(1981年3月)には、小川工場(※2)が出来上がりました



  • ※1 FA:ファクトリー・オートメーションの略。工場での生産工程を自動化することをいいます。

  • ※2 同じ埼玉県小川町ですが、現在の本社兼工場とは場所が異なります。

年間に100以上もの試作品を作る

リンカーズ 長友

開発に力を入れているとのことですが、具体的にはお客さんの声を拾って製品化につなげている、といった感じなのでしょうか?

ビー・アンド・プラス 進藤さま

そうですね。ワイヤレス給電ってすでにラインアップされているものを使うより、『こんな場所に使いたいんだけど…』というのが多いんです。

試作は最低限の仕様を満足しつつ、1か月程度で作りますね。弊社が始まったきっかけに『自社以外を通すと時間がかかる』ということがあるので、スピード感を重視しています。ここ1年ぐらいで100以上の試作品を作りました
―1か月とはかなり早いペースですね?
先方さんの方で『ワイヤレス給電をやろう!』という熱があるうちに対応しないと、どんどん冷めていってしまうんですよね。なので、試作までのスピードをなるべく早く持っていくようにしています

―海外の企業様から『日本の企業って試作がでるまでに時間がかかるから…』と言われたことがあるので、御社のそのスピード感は特に海外の企業様から求められているような気がします。

大手企業でも持っていない「電波暗室」を自社で構えている

ビー・アンド・プラス 進藤さま

弊社は社内設備に自信を持っており、例えば「電波暗室(でんぱあんしつ)」という、電波や磁場を飛ばして実験を行う専用の部屋も保有しています。

ワイヤレス給電は空間に対して電力を供給する技術ですが、その際目的の場所以外に発生するノイズを抑える事が重要になります。新製品はリリース前に必ず電波暗室でノイズを測定し、必要に応じて設計変更を加えます。 ノイズの正式な数値は測定機関などが持っている10m法を利用した大型電波暗室で測定しますが、この電波暗室は3m法を利用しています。数値のあたりをつけるには3m法で十分なんです。 電波暗室は大手メーカーでも持っていないところがある特殊な設備ですので、大手企業の研究者がこの設備を利用して一緒に測定することもあるんですよ。

名刺交換は1度に1,500枚以上!?

リンカーズ 長友

お話を伺っていますと、案件を積極的に取りに行く姿勢がとても伝わってくるのですが、御社の方から営業をかけるのですか?

ビー・アンド・プラス 進藤さま

こちらで業界を探すこともありますが、さまざまな展示会に出展してPRすることの方が多いですね。

―以前、『1回の展示会で名刺の交換枚数が100枚を超える』とのお話を耳に挟んだことがありますが、問い合わせが非常に多いのでしょうか?
ブースに来てくださる企業様もいらっしゃますが、展示会では5名ほど参加する弊社スタッフがどんどん営業をかけていきます。先日の「2017国際ロボット展」にも出たのですが、そのときは1,500枚を超えていました。 少しでも多くの潜在ニーズを拾って、『見込みから製品化までを担当します』とアプローチをかけていきます。開発・営業・製造・販売がすべて自社内で行えるため、自信をもって企業様にPRすることができます さまざまなお客様のご要望にお応えしていくことで、結果的に弊社のラインナップが増えたり、事業範囲が拡大したりすることにつながっています。

開発と営業の両方が強いのは、中小企業にとっては大変大きな強みといえますね。

ワイヤレス給電で世界一を目指す

―ワイヤレス給電のメリットはどのようなところにあるのでしょうか?
弊社では「水に強い」、つまり「完全防水にできる」ことだと思っています。 特に要望が多いのは医療機器ですね。装置を清潔に保ちたいけれども、機器の都合上で端子が出ているので水洗いができない。現状だと拭く程度のことしかできないんですよ。 ワイヤレス給電を使えば完全防水にできるので、水洗いや消毒などが簡単にできるようになるんです。 「電源をつなぐ、つながないという点を気にせずに電力を送れること」も、ワイヤレス給電の魅力だと思っています。 ―医療以外にはどのような分野があるのですか?
先ほどの住宅もそうですし、ちょっと前から電動ハブラシにはワイヤレス給電が使われていますね。おもちゃにワイヤレス給電を組み入れた試作品を作ったこともあります

―最近ではiPhoneにも採用されましたね。
iPhone 8のは「Qi(チー)」と呼ばれる規格ですね。携帯端末に特化した規格です。規格自体は数年前からあったのですが、iPhoneに使われたことで急に広がりましたね ケーブル給電ではコネクター部分の破損が多いですが、ワイヤレス給電はコネクターがいらないので、そこが壊れる心配がないのもメリットです

「ワイヤレス給電×ラインナップの多さ」で他社との差別化を図っている

リンカーズ 長友

ビー・アンド・プラスさまのワイヤレス給電は、電気以外にも信号を送ることもできるのですか?

ビー・アンド・プラス 進藤さま

できます。ここでいう「信号」は「近接スイッチ(※3)」を指すことが多いですね。

例えば自動車の生産ラインだと、大きなパレットにボディを載せてラインで流すのですが、パレットにボディが載ったかを近接スイッチで確認しています。 通常はコネクターを使うのですが、その都度ラインを止める必要がありますし、そもそもコネクターや端子が壊れやすいのが難点です。 ワイヤレス給電を使って電気を送り、パレット側からの信号のやりとりができれば、ほぼ自動化ができるだけでなく工数の削減にもなります。 信号を送るにはWi-FiやBluetoothで十分な場合が多いのですが、混信による遅延が避けられません。製造装置の制御では遅延が許されないため、リアルタイム性が重要です。弊社では遅延時間1μsec以下の製品もラインナップしています。

ビー・アンド・プラス 進藤さま

また、弊社がいま一番の強みだと思っているのは「ラインナップの多さ」ですね。

というのも、ワイヤレス給電はお客様によって要望が違っているので、作ったものをそのままご提供するのは難しいんです。 弊社は商品(形状)の種類も豊富にそろえておりますし、近接スイッチ以外の信号伝送も取り扱っています。 標準品を提供することが多いものの、お客様の仕様に合わせて試作品を作り、うまくいけば標準品としてラインアップに加えていくこともあります。 ―近接スイッチ以外には具体的にどのようなものがあるのですか? 例えば、たくさんセンサーをつなげたいという場合は「フィールドバス」というのものを使います。工業用のWi-Fiみたいなもので、たくさんのデータをやりとりするのに使われます。 フィールドバスの種類として「CC-Link」「DeviceNet」などがあり、どちらも自動車メーカーで使われている信号の規格です。 「フィールドバスとワイヤレス給電の組み合わせ」は弊社ぐらいでしか見たことがないですね。

※3 近接スイッチ:当該物体にセンサーをつけ、それに別の物体が近づいた(もしくは遠ざかった)ときに、電気信号を発する。ベルトコンベア上のアルミ缶探知などが代表例。

ロボットの回転部分にこそワイヤレス給電が必要

リンカーズ 長友

最近ではどういった製品の需要が高まっていますか?

ビー・アンド・プラス 進藤さま

今はロボットハンド(アーム型のロボット)が増えてきていますね。

アームの先端である手先の部分ってとても多くのセンサーが使われていて、ここがネックになりやすいんです ワイヤレス給電だと電気と情報信号を非接触で送れるのがメリットなのですが、実は回転部分にワイヤレス給電がマッチする理由がもう一つあります。 従来のようにケーブルで電力や信号を送っていると、回転できる範囲にどうしても制限がかかります。だいたい半回転ぐらいですかね これをワイヤレス給電に変えて非接触にすることで、360°回転できるようになります!

―これからますます需要が高まりますね!

今後は幅広い分野にワイヤレス給電を

リンカーズ 長友

最後になりますが、今後はどのようなことに力をいれていきたいですか?

ビー・アンド・プラス 進藤さま

流れモノに注力していきたいですね。ドア、水周り、ロボット…、着脱が多いところを狙っていければと。

矛盾しているような感じですが、非接触のモノって壊れないんですよね(笑)。 FAも基本的に工場を建てるときにしか需要がないので、交換の需要ってあまりなくて… 世のニーズに沿いながらも、できるだけ幅広い分野にワイヤレス給電を広げていきたいですね

―お忙しい中、ありがとうございました!

株式会社 ビー・アンド・プラス

所在地:埼玉県比企郡小川町高谷2452-5 設立:1980年 電話:0493-71-6551 資本金:1億6,500万円 URL:http://www.b-plus-kk.jp/

株式会社 ビー・アンド・プラス様の魅力

  • 大手でもなかなか完備していない電波暗室を自社導入するなど、開発に大変力をいれている
  • 開発から販売まで一貫して行うことで試作を短期間でできる。また、それが営業のPRポイントにもつながる
  • 電気だけでなく信号も送れるため、幅広い分野に展開できる


あとがき

当日の取材のなかで印象的だったのが、インタビューをしているすぐ隣で商品開発が行われていることでした。1つのフロアに大半の部署のメンバーがいらっしゃるそうで、「何かあったら気軽に相談できる」と進藤さまはおっしゃっていました。こうした部門を越えた風通しのよさが、実際の商品に反映されているのでしょうね。