- 配信日:2022.04.28
- 更新日:2024.08.07
オープンイノベーション Open with Linkers
オープンイノベーション事例 ~ 京セラ R&D の取り組みを徹底解説 〜
オープンイノベーションで「二兎追うものは二兎を得る。」を目指す
研究開発におけるオープンイノベーションの横軸は研究グループです。私たちは常に自分たちが持っていない新たなピースを探しています。この視野をもう少し広げたり、全然違うところからピースを持ってきて、「こういうことが出来るのでは」と言ったりすることが、私たちのもう 1 つの役割だと思っています。活動としては、外の人たちと中の人たちをつなぎ合わせる支援となります。
今、わたし達が目指しているのは、「二兎追うものは二兎を得る。」です。
図は、アイディア出しの会議における、参加者の専門分野の多様性とアイディアの価値の相関を表しています。
横軸は参加者の専門分野の多様性を表していて、右側に行くほど多様性が高くなります。
縦軸は出てくるアイディアの価値を表していて、上側に行くほど価値が高くなります。
専門家集団が集まったときは、ある程度、質の高いアイディアがたくさん出てきます。しかし、イノベーションを起こせるほどのものではありません。
一方で、さまざまな専門性を持つ人が集まると、全体的なアイディアのレベルは下がりますが、たまにキラッと光るアイディアが出ることが報告されています。
私たちは、このような環境を社内外の連携で作りたいと考えています。これはわたし達の一つの使命です。
出てきた上質なアイディアを他の力を借りて、価値が高いものにしていく。この二つを目指して活動するために、さまざまな場を設けています。
人と人が出会い、交流し、協力し合う環境づくりのために、「目立つ」「つながる」「挑戦する」を合言葉に、京セラはオープンイノベーションのプラットフォームを構築しています。
京セラ R & D のオープンイノベーション
上の図に照らして見ると、京セラの社内には4つのアメーバがあります。それぞれ別の観点からオープンイノベーションを自立的に進めています。
本当は全部を統括できるといいのですが、私たちは今、上の図の中でも「機会に関する意図」を中心に、そこから新しい機会を産んで、「機会を特定」し、その「コンセプトを作り上げて」「検証する」ということを中心に活動しています。
なにか新しい良いコンセプトが出てくると、「ソリューションの開発」までいきます。わたしたちはアメーバなので、びよーんと手を伸ばせるんです。伸ばせるところは伸ばしてしていこうと思っています。
いろんなアイディアが京セラの中で生まれて、イノベーティブなアイディアを拾い上げていけるような機会を数多く作ることが、京セラの R & D としての組織のやり方です。
京セラのオープンイノベーション事例
オープンイノベーション事例:コンセプトカー(初代)
ここからは、京セラが今まで行ってきた主な取り組みの事例をご紹介します。
京セラは車載部品をたくさん作っています。
最初はそれぞれの事業部で、それぞれの営業が、それぞれのところに売りに行っていました。京セラがトータルでどんなことができるかを形にしようということで、コンセプトカー作りをはじめました。
最初のコンセプトカーは、「トミーカイラ・ZZ」です。京都の電気自動車のベンチャー企業 GLM と協力して、トミーカイラ・ZZ に京セラの様々な車載部品を搭載しました。世の中に京セラの部品を示すために、このコンセプトカーを製作しました。
オープンイノベーション事例:コンセプトカー(二代目)
去年は、二代目のコンセプトカー「モアイ」を作りました。
今あるものだけではなく、車体もオリジナルを作りました。将来、自動運転になったときに「移動」はどうなるかというコンセプトを提案しています。
モアイは自動運転を前提とするコンセプトカーなのでハンドルもありません。前回のトミーカイラ・ZZ は公道を走れましたが、モアイは公道を走れません。車内に操作タッチパネルをつけて、走り出すと前のガラスと同じ景色を映し出す技術を導入しました。コンソールをあたかも透明化し、乗っている光景になります。スピーカーは振動スピーカーで様々なインフォメーションや音楽が流れます。
外はレトロで、中は未来の車です。他にも、空中にキャラクターが浮き出る空中ディスプレイや京セラの LED 照明を使いました。京セラの素材を使いながら「未来の車とは?」を提案させてもらいました。
カーデザイン専門の会社とオープンイノベーションで作りました。
透明化の技術は、東京大学の稲見先生が攻殻機動隊をとても大好きで、将来、攻殻機動隊みたいなことがやりたいと思って研究をはじめられました。
オープンイノベーション事例:自動運転
京セラは自動運転にも取り組んでいます。
JR 東日本主催のモビリティ変革コンソーシアムで自動運転技術を実証実験しています。
車と路側機とのやりとり、普通はすれ違いの制御を無線でやりとりするところを京セラが担当しました。現在もそのバスが走っています。
また、車載ミリ波レーダーを使ったトラック隊列走行の実験を先進モビリティというベンチャーと一緒にやっています。3 台トラックが並んでいて、先頭以外に運転手はいません。2 台目、3 台目のドライバーの負担を軽減し、物流業界の人手不足を改善します。
オープンイノベーション事例:医療ヘルスケア
Possi という子供用歯ブラシです。
圧電の素子を使って、歯磨きした本人だけに音楽が聞こえます。両親の仕上げ磨きをいやがり、歯ブラシを噛んで親に磨かせない子供がたくさんいます。
開発者がそれを子育てで体験して、その課題を解決したいということで、ライオンと一緒に新しい歯ブラシを開発しました。ソニーのファーストフライトというクラウドファンディングで成功しましたが、事業化まで紆余曲折がありまして、私たちのホームページにインタビュー記事が載っているので、ぜひ読んでください。
オープンイノベーション事例:社内外ベンチャー
社外のスタートアップ、PLUG AND PLAY や Global Brain と組んで、ベンチャー育成をやっています。
また、社内にアイディア公募制度があり、社内スタートアップを育てる取り組みもしています。
自治体とのオープンイノベーション事例
自治体とのオープンイノベーション事例:環境・エネルギー
太陽光発電や産業用蓄電池などエネルギーマネジメントシステムを使って、エネルギーの地産地消率をアップする実証実験を鹿児島県日置市で行っています。
自治体とのオープンイノベーション事例:IoT
横浜市内団地の宅配ボックスに IoT 装置をつけ、運送業者が来る前から、宅配ボックスがいっぱいで入れられないのか、まだ入れる余裕があるのかがわかります。利用者側も当日荷物が来るとわかっていれば、あらかじめ宅配ボックスを予約できます。大規模団地は宅配ボックスを置く場所が限られるため、宅配ボックスを有効活用し、少人化できる実証実験をして、事業化を目指しています。
以上で京セラのオープンイノベーションのお話を終わりたいと思います。
講演者紹介
大崎 哲広 氏
京セラ株式会社 研究開発本部 オープンイノベーション推進部 責任者
1991 年に京セラ入社。
総合技術本部、中央研究所(けいはんな)にて III-V 属半導体薄膜の研究から、半導体薄膜デバイスの商品化・事業化に従事。
その後、半導体材料基板の開発を経て、2016 年にソフトウェア研究組織の立ち上げに参加。
研究企画立案や IoT 機器とシステムのトータル開発から現職。
社内外の連携イベント実施や外部コミュニティに参加し、京セラと外部のリレーション構築を担当。現在はみなとみらいの共創スペースを使ったオープンイノベーションの場づくりを進めている。
オープンイノベーションを支援するリンカーズの各種サービス
◆ 「Linkers Sourcing」サービス紹介ページ
Linkers Sourcing は、全国の産業コーディネーター・中小企業ネットワークやリンカーズの独自データベースを活用して、貴社の技術課題を解決できる最適な技術パートナーを探索するサービスです。ものづくり業界の皆様が抱える、共同研究・共同開発、試作設計、プロセス改善、生産委託・量産委託、事業連携など様々なお悩みを、スピーディに解決へと導きます。
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貴社の技術・製品・サービスを、弊社独自の企業ネットワークに向けて紹介し、関心を持っていただいた企業様との面談機会を提供します。面談にいたらなかった企業についても、フィードバックコメントを可視化することにより、今後の営業・マーケティング活動の改善に繋げます。
◆「 Linkers Research 」サービス紹介ページ
リンカーズのグローバルな専門家ネットワークや独自のリサーチテクノロジーを駆使し、貴社の要望に合わせて、世界の技術動向を調査します。調査領域は素材、素子、製品、ITシステム、AIアルゴリズムまで幅広く、日本を代表する大手メーカーを中心に90社以上から年間130件以上の調査支援実績があります。
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