- 配信日:2024.04.12
- 更新日:2024.11.22
オープンイノベーション Open with Linkers
マテリアル/ケミカルリサイクルとアップサイクルの注目事例16選
樹脂(プラスチック)/紙/布/繊維×ケミカルリサイクルの事例
ここからはケミカルリサイクルの事例を紹介します。ケミカルリサイクルは、プラスチックを対象にしているのでほとんどが樹脂を再利用する事例ですが、1つだけ繊維をケミカルリサイクルしていると思われる事例もあったので、このセクションで紹介します。
Poseidon Plastics Ltd.の事例
Poseidon Plastics Ltd. というイギリスの企業では、溶媒と触媒の作用で廃 PET から再生 PET を生成する技術を開発しました。プラスチックのリサイクル技術として、件数が多いのはやはりペットボトルの再生技術です。同社と近い技術を研究している企業は世界各国に多数存在しています。
Lyondell Basellの事例
Lyondell Basell というオランダの企業では、低温熱分解でケミカルリサイクルをする技術を開発しました。原料をモノマー化する間に、一度オイル化するのが特徴です。同社は大手企業ということもあり、年間 55,000 トンの廃プラスチックの再生を可能としています。
現状、熱可塑性樹脂をリサイクルする際に対象となることが多いのはポリプロピレン( PP )と、ポリエチレン( PE )です。
PYROWAVEの事例
PYROWAVE というカナダの企業では、マイクロ波を使ってポリスチレンなどをはじめとしたケミカルリサイクルを行っています。マイクロ波により数百度の熱で分解し、モノマーにする前にガス化させます。タイヤメーカーなど大手企業と締結し、すでに実績を出している技術です。
Polyfuels Group ABの事例
Polyfuels Group AB というスウェーデンの企業では、熱分解技術を使って廃プラスチックや廃タイヤを油に変換する技術を開発しました。油は熱や電気を起こすために利用し、コークスは再生炭素ペレットに変換します。
廃タイヤをマテリアルリサイクルする技術もあり、ゴムもリサイクルが盛んに行われている領域といえます。
PurFi Global LLC.の事例
PurFi Global LLC. というアメリカの企業では、繊維廃棄物の布地を分解して糸に戻し、最終的に個々の繊維に戻す技術を開発しています。化学的なプロセスを経たリサイクルのため、ケミカルリサイクルとして紹介しました。すでに商品化した実績があります。
紙/布/繊維/食品/バイオマス×アップサイクルの事例
次にアップサイクルの事例を紹介します。アップサイクルはリサイクルする前のものより後のもののほうが付加価値が高くなります。ここでは主に繊維系か食品・バイオマスを対象原料としたアップサイクルの事例をまとめました。
Voyage Foodsの事例
Voyage Foods というアメリカのベンチャー企業では、ブドウの種子(農業廃棄物)をベースに代替チョコレートを作る技術を開発しました。フードテックの1つです。本来食べられないものから食べられるものを生成するという点で見ると、この技術もアップサイクルの一つと言えるでしょう。2年前に 53 億円の資金調達をするなどし、すでに商品化もされているとのことです。
Rypacs Inc.の事例
Rypacs Inc. という企業では、 CelluComp という企業と共同で、竹やサトウキビの搾(しぼ)りかすを組み合わせ、新しいパルプ繊維を作る技術を開発しました。具体的には、撥水性・酸素バリア性を備えたコーティングを施した、飲料用の紙ボトルを作っています。このコーティング材も、搾りかすから作成できるとのことです。
その他の用途/転用先事例
最後に対象材料は問わず、興味深い用途や転用先の事例を紹介します。
Mogu srlの事例
Mygu srl というイタリアのベンチャー企業では、アップサイクルされた繊維残留物と真菌菌糸体(しんきんきんしたい)を活用した複合材料を開発しています。コルクのような柔軟性とゴムのような感覚を備えた材料です。そのまま工業用途として利用するのは耐久面で問題があったものの、ポリウレタンをコーティングすることで強度の問題を解消したそうです。この材料は建築などに用いられることが多く、他にも建築に関する分野でリサイクルを進めている企業が多く見られ、業界全体的にリサイクルを重視しているのだと認識しています。
東海旅客鉄道株式会社の事例
東海旅客鉄道株式会社( JR東海)では、新幹線の廃車両から抽出した原料をリサイクルするプロジェクトを複数進めており、そのうちの一つが廃車両から抽出したアルミニウムを金属バットに転用するというものです。
この事例を取り上げた理由は、とても興味深い取り組みであること。そして公共交通機関の廃車両から材料を持ってきてリサイクルするという事業が日本国内だけでなく海外でも増えているためです。
Dell Technologies, Inc.の事例
アメリカの Dell では、 PC の製品設計の際にサーキュラーエコノミーの意識を組み込むというコンセプトを打ち出し、すでに製品化しています。技術ではなくて概念の話になるのですが、 PC の分解・修理・再組立などの時間を短縮するために電力供給や冷却能力を改善し、二酸化炭素排出量の少ない素材を使って脱炭素に最適な設計を行う。このようなプロセスを打ち出しています。結果、使用するネジの本数を従来の 1/10 に減らし、分解や修理にかかる時間を5時間短縮できることが分かっています。またネジを1本も使わずに作れる PC も開発しているとのこと。新しいリサイクルの概念として紹介しました。
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講演者紹介
石田かほり
リンカーズ株式会社 リサーチプラットフォーム事業本部 オープンイノベーション研究所 プロジェクトマネージャー
武蔵工業大学大学院 工学研究科 電子工学専攻。
脳波( EEG )における ERP 評価を用いたヒトの記憶関連の脳機能に関する研究に取り組む。
デンソーにて車載空調機器向けセンサーの開発・設計、車室内快適性製品の新規企画・開発、小型モビリティの新規企画に従事。
現職ではヘルスケア、各種センシング技術(生体、環境 etc. )、カーボンニュートラル / ネガティブ 他多数の最新技術動向調査を行う。
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