- 配信日:2024.03.11
- 更新日:2024.06.03
オープンイノベーション Open with Linkers
カーボンニュートラル注目材料~MOF・ペロブスカイト材料・ナノ触媒材料~
この記事は、 Mi-6 株式会社とリンカーズ株式会社(弊社)が主催した Web セミナー『カーボンニュートラル材料とマテリアルズ・インフォマティクス活用で実現するサステナブル社会』のうち、弊社によるお話を編集したものです。
カーボンニュートラルとサステナブル社会を実現する注目材料として、「 MOF (モフ)」「ペロブスカイト材料」「ナノ触媒材料」の概要や研究事例を紹介しました。
セミナーで使用した講演資料を記事の最後の方で無料ダウンロードいただけます。
将来的なカーボンニュートラル/サステナブル社会の実現に、どのような材料が着目され、研究が進んでいるかを知りたい方は、ぜひお読みください。
◆目次
・カーボンニュートラルとは
・MOF(金属有機構造体:Metal Organic Frameworks)の技術概要
・MOF の研究事例
・ペロブスカイト材料の技術概要
・ペロブスカイト材料の研究事例
・ナノ触媒材料の技術概要
・ナノ触媒材料の研究事例
・カーボンニュートラル最新技術動向マルチクライアント調査レポートのご案内*より詳しく知りたい方にオススメ
カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルについてはさまざまな定義の仕方がありますが、環境省の『脱炭素ポータル』というサイトでは以下のように定義されています。
温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること。
ポイントは2つあります。まず温室効果ガスという書き方をしており、 CO2 とは表記していない点。つまり CO2 だけでなくメタンなど音質効果のあるガス全てが対象になるということです。
もう1つは「排出量と吸収量を均衡させる」という点。温室効果ガスを出さないようにするだけでなく、排出してしまったとしても何らかの方法で吸収したり固定化したりできればそれもカーボンニュートラルだと捉えるということです。
MOF(金属有機構造体:Metal Organic Frameworks)の技術概要
MOF は近年注目が集まっている新しい材料です。金属有機構造体という名前の通り、金属材料と有機材料を組み合わせたようなもので、有機物でできた棒を金属イオンがつないでできたジャングルジムのような構造体になっています。この有機材料や金属イオンを、他の有機材料・金属イオンに変える選択の自由度が高いので、例えば長い有機材料を使えば、ジャングルジムのような構造体の1つの辺を長くすることができ、隙間を増やすことができます。こうした MOF は表面積が非常に大きいという特性があります。また、何かしらガスを吸着させたり、水分を吸収したり、触媒反応を起こさせたりなどといった反応性の高さも特性の一つです。MOF を構成する有機材料を選択することで、隙間の大きさも調整できますし、有機配位子や金属イオンの選択により、特定の反応を促進させることも可能です。
MOF は現在、ガス貯蔵や触媒、磁性材料などへの応用が検討されています。
MOF は有機配位子の棒と金属イオンの点をつなげたような構造ですが、これと似た構造に COF( Covalent Organic Framework )があります。こちらは有機配位子だけで作ったジャングルジムのような構造体です。他にも、PDF( Porous Aromatic Framework )という多孔質の材料など、 MOF に近い他の構造体も近年提案されてきており、研究分野として盛り上がっています。
MOFの研究事例
カーボンニュートラルやサステナブル社会を実現するために、MOF を用いてどのような研究が行われているのか、ごく一部ですが事例を紹介します。
Nuadaの事例
イギリスのベンチャー企業である Nuada では、 CO2 を空気中から回収する装置を作っています。その回収材として MOF を使用しています。以前は MOF Technologies という企業名で、 MOF を産業利用するために立ち上げられた会社です。
この装置を使うことで CO2 の効率的な回収が可能で、従来のアミンを用いた回収方法に比べて必要なエネルギーが 80 % 削減できるといいます。
Mosaic Materialsの事例
アメリカのベンチャー企業である Mosaic Materials でも、 MOF を使って CO2 を回収する技術を開発しています。 MOF を使って CO2 を回収することで、一度吸着させた CO2 を少ないエネルギーで追い出すことが可能です。
このように MOF を活用した技術は増えていますが、課題として MOF を安価で大量に生産する技術が発展途上であるという点が挙げられます。
Water Harvestingの事例
こちらは CO2 の吸着以外で MOF を活用している事例です。アメリカのベンチャー企業である Water Harvesting では、 MOF の組成をコントロールすることで空気中の水分を回収し、飲み水を生み出す技術を開発しています。