- 配信日:2024.02.06
- 更新日:2024.11.22
オープンイノベーション Open with Linkers
フードテックとは?トレンドや注目企業を紹介
注目のフードテック企業
Formo Bio GmbH
精密発酵を用いた事例です。Formo Bio GmbHというドイツのベンチャーは、微生物に対し、ゲノム編集を用いてホエイやカゼインなどの乳タンパクを生み出す能力を付与しております。
詳細は不明ですが、遺伝子組み換えなしで生産した GMO フリー、アニマルフリーの完全植物性ミルクやチーズということを売りにしています。代替タンパク質の目的の一つに、家畜産業の環境負荷低減があり、その効果も高いとしています。今後、アニマルフリーチーズの販売も予定しているとのことです。
PoLoPo Ltd
次に、注目されている植物分子農業の事例です。イスラエルの PoLoPo Ltd. というベンチャーでは、鶏の卵白タンパク質を生産する、遺伝子組み換えジャガイモを開発しています。大掛かりな加工技術を必要とせず、デンプン抽出処理と、たんぱく抽出処理により乾燥パウダー状原料とし、活用します。育てやすい植物を分子生産工場とすることで、生産規模の拡張などが容易であるとしています。また同社の技術は、植物分子農業の技術プラットフォームとしての提供も行うことが可能とのことです。
この企業のほか、大豆の種子中に動物性たんぱく質を作らせたり、培養肉用の成長因子を作らせたりする技術もあり、代替タンパク質の領域では、向こう数年は注目技術と思われます。
株式会社グリラス
次は、昆虫食における技術です。IoT や自動化などの大量生産技術の色合いが強いなか、徳島大学の株式会社グリラスは、ゲノム編集を用いた品種改良を検討しています。これにより、生産コストを下げることができるとのことですが、実際のところ、消費者受容が低く、ゲノム編集コオロギの実用化はなされておらず、通常の品種改良で作ったコオロギのみを販売しているそうです。世界でみても、遺伝子操作の有無にかかわらず、昆虫食の消費者受容は低く、飼料利用の色合いが強い印象です。
リージョナルフィッシュ株式会社
こちらはゲノム編集食品についての事例です。現在ゲノム編集技術を用いて作られた食品は、遺伝子組み換え( GMO )と見なすかどうか議論が分かれており、日本国内においては、非 GMO として扱われています。
すでに届出がなされている事例として、リージョナルフィッシュ株式会社のマダイ、トラフグ、ヒラメが挙げられます。外来遺伝子の導入がなく、もともと持っている遺伝子を欠失させることで、筋細胞の増殖や、成長速度を抑制するリミッターを解除し、大きく育てるそうです。
リージョナルフィッシュ株式会社は、ゲノム編集による品種改良のノウハウはありますが、大規模生産については、NTT や荏原製作所(えばらせいさくしょ)と協業することで実用化に至ったとのことです。この企業のほか、ゲノム編集した GABA 高含有トマトのサナテックシードなどの届出がなされており、今後少しずつ増えていくと思われます。
Eat Just, Inc.
次は、いま注目されている細胞性食品、培養肉の話題です。ようやく、今年6月に米国で培養鶏肉の許可がおりたと話題になりました。Eat Just, Inc. の強みとしては、培養肉の元となる細胞バンキングに関する技術、大量培養技術、3D プリンティングによる加工技術とのことです。まずは第一歩ということで、今後はコストダウンの技術や、味の向上に関する技術などが重要になってくるのではないでしょうか。
インテグリカルチャー株式会社
次も細胞性食品に関する話題です。こちらは日本国内ベンチャー企業であるインテグリカルチャー株式会社による、汎用大規模細胞培養技術を用いた生産コスト低減に寄与する技術です。ひと昔前まで、培養肉の生産コストは非常に高く、その一つの一因として血清や成長因子の利用がありました。この技術では、複数細胞の組み合わせにより、体内環境を疑似的に構築し、血清・成長因子を使わずに培養可能とすることにメリットがあります。
話は変わりますが、このような培養条件の工夫によるもののほか、先に紹介した精密発酵や植物分子農業を用いて成長因子を製造するプレイヤーも存在しており、培養肉のコスト低減化が進んでいくと期待されます。
Innit LLC
バイオ系の話はここまでで、次はヘルスフードテックの事例紹介です。ヘルスフードテックと言われると、かなり広範囲で多くのプレイヤーが存在しますが、注目されている領域としてパーソナライズ栄養管理が挙げられます。
Innit LLC は、もともとは調理家電を IoT で繋げてソリューション提供を行う、キッチン OS やスマートキッチンと呼ばれる技術を強みとするベンチャーでしたが、最近、生成 AI を導入し、健康的な食事を支援するソリューションへ進化しています。同社は自社で家電やデバイス開発を行うわけでなく、他社製品とつなげるプラットフォームであるため、他のヘルスフードテックが進化すればするほど、有用性が増すものと思います。
Voyage Foods
次はアップサイクル * に関する話題です。児童労働や環境負荷の課題に対するソリューションとしてカカオ代替食品があります。その中で注目したのは、チョコレートの成分分析により、分子レベルでアップサイクルを行っている企業、Voyage Foods です。
原料としてぶどうのタネなどの農業廃棄物残渣から、有機化合物を抽出し、チョコレート様の成分構成に再構築しているそうです。この分子レベルでの再現手法は近年注目されており、フレーバー系の食品や飲料を皮切りに、嗅覚・味覚などの官能センサと成分情報を組み合わせ、分子レベルでの代替食品、模倣食品開発が進むのではないかと思われます。
*アップサイクル=廃棄予定の物に新たな付加価値を与えること。
Soft Robotics Inc.
次はスマート食品産業ということで、Soft Robotics Inc. の事例を紹介します。同社は、センサ、AI、ロボットを組み合わせた食品パッキング用の自動化ソリューションを開発しました。三次元的に物体を捉え、AI とソフトグリップ技術により、掴みにくいものも高速ピッキング可能な技術となります。この領域は、AI や IoT、ロボット活用がメインと思われ、技術的には割と成熟したイメージがあります。
先日、フードテックジャパンに行ったところ、惣菜用の自動パッキングロボットを扱うコネクティッドロボティクスや、調理ロボットを扱う TechMagic が活況であり、実用化レベルであると感じました。
ここからどう進化するかは汎用性アップ、小型化、コストダウンなど、日本が強みとする領域なのではないでしょうか。
Botrista Technology Inc.
次は消費者向けのソリューションとして、Botrista Technology Inc. の事例を紹介します。同社は、全自動型の調合可能な飲料ディスペンサーを開発しました。ポンプ制御により粘度の高い液体を輸送可能とし、好みの配合で迅速に提供することが可能とのことです。先端技術というわけではないですが、高品質の飲食物を自動で提供するソリューションは、人手不足もあり注目度が高いようです。
既存技術を用いた注目の国内フードテック企業
最後に、注目の国内事例ということで、先端バイオや AI だけがフードテックではないという意味で、既存技術の改良などにより独自技術を開発した、勢いのある国内スタートアップを紹介します。
sPods株式会社
1社目は、既存技術をうまく使っていると感じた事例です。sPods株式会社は、新たなノンアルコール飲料向けの成分抽出技術を開発しました。
熱に弱い成分を含む素材の場合、水出し抽出する必要がありますが、時間がかかりすぎるという課題があります。減圧をメインとし、必要に応じて超音波も用いることで、短時間の低温抽出処理を可能とするそうです。エスプレッソマシンのように高温加圧抽出する技術ではカバーできなかった成分抽出技術として、消費者向けだけでなく、機能性成分の抽出などの他領域にも拡がりが期待できる技術だと思います。
デイブレイク株式会社
2社目は、冷凍技術の事例です。こちらも、既存技術を見つめなおし、改良を施して性能を向上させた事例です。
急速冷凍技術の一つ、冷気を吹きかけるエアブラスト方式は広く利用されていますが、従来は一定方向から冷気を送風するだけでした。このため、食品の一部にしか冷気があたらず、氷の結晶が形成される温度域( 0~マイナス 5℃ )に滞留する時間が長く、品質劣化の原因となっていると言われています。そこでデイブレイク株式会社は、送風ファンの形状や数、配置により、食品全体に冷気があたるように設計し、凍結時間の大幅短縮に成功しています。
このように、既存技術で検討されてこなかった部分に着目し、ブレイクスルーするという点で、他の食品加工分野においても、まだまだ改良の余地があるのでは、と期待を持っています。
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講演者紹介
黒田 昇平
リンカーズ株式会社 リサーチプラットフォーム事業本部 オープンイノベーション研究所 リサーチマネージャー
九州大学工学府物質プロセス工学専攻修士課程修了。
大手化粧品メーカー、大手電機メーカーなどで研究開発・事業開発に従事。
2022年より現職にて、主にメディカル・ヘルスケア、日用品・消費財系の技術動向調査を行う。
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