• 配信日:2023.11.09
  • 更新日:2024.06.17

オープンイノベーション Open with Linkers

食品サプライチェーン領域の最新技術

この記事は、リンカーズ株式会社が主催した Web セミナー『食品サプライチェーン~効率化と持続可能性を追求する最新技術~』のお話を編集したものです。

農林水産省 農林水産研究所 客員研究員の大野 泰敬(おおの やすのり)様に、サプライチェーン領域のトレンドと日本国内外のフードテック・デリバリー企業の動きについてお話しいただきました。

世界のサプライチェーンの現状と、最新のフードデリバリーサービスについて知りたい方は、ぜひお読みください。

サプライチェーン領域のトレンド


サプライチェーンの世界は、ここ数年で大きな変化を遂げており、市場全体のトレンドとしては、リスク管理を強化していく動きが見て取れます。そして、在庫管理を最適化し、適切な在庫レベルを維持することが供給を安定化させるうえで非常に重要なポイントになるため、各社はここを強化しています。

また、世界的に見るとサステナビリティへの取り組みが重視されています。日本では、大企業であればサステナビリティに対応する動きは早いうちからとっているように感じられますが、中小企業を見ると、世界に比べてまだ遅れている印象です。

そして DX (デジタルトランスフォーメーション)を強化する動きも進んできています。 AI やロボット技術の進化によって今までの物流や倉庫の管理の仕方というものが大きく変わろうとしてきています。それに伴って、今まで表に出てこなかったような企業、注目されてこなかった技術を持つ企業が台頭してきているという状況です。

DX 化が進むことでサプライチェーン全体が可視化され、リスクを早期発見し、対策を打てるようになる。そして効率化を図ってコスト削減につなげていく、というような傾向がトレンドとしてあります。

海外企業の動き/事例


サプライチェーンのトレンドを踏まえて、海外の企業がどういった動きをしているのか、紹介します。

Flexport

食品サプライチェーン領域の最新技術

Flexport は世界で最も注目されている企業の1つです。物流など海外とのやり取りをすると、海外への支払いや信用状の送付、請求書の作成・送信、保険の手続きなど、紙ベースで行なっているものが多くありました。Flexport はそれらを全てデジタル化しようと活動しています。

Flexport は、オンライン上で見積もり、予約、貨物の追跡などができるプラットフォームを準備しており、それを使ってリアルタイムに情報を見ることが可能です。その情報を使って予測・分析をし、企業がサプライチェーンをより効果的に管理できるような形でプラットフォームを構築しています。今後、物流や貨物の輸送に関して、世界シェアを拡大していくでしょう。

REEF Technology

食品サプライチェーン領域の最新技術

REEF Technology は、個人的に最も注目している企業で、アメリカのマイアミを拠点に活動しています。 REEF Technology の事業は、移動式のコンテナ型クラウドキッチンの提供と駐車場の運営です。REEF Technology は都市部にある駐車場をレストランに変えクラウドキッチンにしたり、デリバリーの拠点にしたりするという取り組みをしています。

駐車場を利用でき、物流と飲食業界をつないで、新しいビジネスを創っていくことが REEF Technology の大きな特徴といえるでしょう。

FourKites

食品サプライチェーン領域の最新技術

FourKites はシカゴを拠点とする、リーディングサプライチェーンを可視化するサービスを提供する企業です。具体的には、キャリアーのイベントや分割された貨物、予約に焦点を当てて、ダッシュボードで分かりやすく見せてくれるサービスを提供しています。

このサービスの注目すべきポイントはスピードと精度です。サプライチェーンがリアルタイムで正確に可視化されます。

Gopuff

食品サプライチェーン領域の最新技術

Gopuff はオンデマンドのデリバリープラットフォームです。最初はデリバリーから始まり、今では食用品、日用品、医薬品などさまざまなものを運搬するサービスになっています。

特徴は、24 時間 365 日デリバリーに対応していることです。日本では、まだ 24 時間 365 日対応しているデリバリーサービスはほとんどないのですが、海外では普及しつつあります。

美団

食品サプライチェーン領域の最新技術

美団は中国の企業で、生活サービスプラットフォームを提供しています。食品の配達やレストランのレビューなどを中心に事業を展開してきて、旅行やエンターテイメントなど第三者サービスを提供する一体型のスーパーアップ * に進化してきました。

*スーパーアップ=1つのアプリで生活に必要なインフラを全て押さえたもの

Ecom Express

食品サプライチェーン領域の最新技術

Ecom Express はインド全土で物流サービスを提供している企業です。オンラインで注文された商品を売り手の倉庫から最終的に顧客のところに届けるまでを一括で対応するサービスを提供しています。

特徴は、自動システムと AI を駆使し、オンラインで注文された商品のピックアップと配送を同時に行っている点です。配送エリアとして、インド全体の 92 % をカバーしています。

今後ビジネスを拡大するために、Ecom Express は現在 IPO(新規上場)を控えており、それに向けて1億〜1億 5,000 万ドルのプライベート資金調達をしています。

Ninja Van

食品サプライチェーン領域の最新技術

Ninja Van は東南アジアで急速に成長している物流企業です。 B2B 向けと B2C 向けの両方に対応したサービスを展開しており、一般的なパッケージの配送から大規模な商業用貨物の配送までさまざまなニーズに対応可能です。

Ninja Van の特徴は、テクノロジーと地域密着型のサービスにあります。自社の物流ネットワークと先進的なテクノロジーを組み合わせることで、迅速に効率的な配送を実現しています。地域の状態や文化を深く理解し、各国の特性に合わせてサービスを展開していくような、かなりきめ細かい対応をしているといえます。

Grofers

食品サプライチェーン領域の最新技術

Grofers はインドのオンラインスーパーマーケットで、食品や家庭用品などさまざまな商品を提供しています。スマートフォンで注文された商品を指定時間までに届けるというサービスを展開中です。

最大の特徴は、商品の品質を担保しているという点にあります。インドは商品の品質にバラつきがあるため、商品の在庫管理や配送プロセスに力を入れて、効率化を図る企業が多く見られます。

インドでは Grofers のように配送の質を担保するというサービスは非常に珍しく、この部分で地位を強化し拡大を目指しているところです。

次のページ:引き続き、海外・日本企業の動きを紹介します。