- 配信日:2023.11.29
- 更新日:2024.06.17
オープンイノベーション Open with Linkers
フードデリバリー領域の最新トレンドと大手IT企業の動き
世界と比較した日本でのフードデリバリー事業の動き
日本国内のデリバリー事業も、世界と同じような動きが見て取れます。
2020 年4月に新型コロナ拡大による緊急事態宣言が日本で発令され、飲食店の活動が難しくなる事態に陥りました。そこで、今までデリバリーを行っていなかった飲食店の多くがデリバリーに対応したのが同じ時期です。
実際にフードデリバリーアプリのダウンロード数や起動回数を見ても、緊急事態宣言以前の3〜5倍にまで増加しており、しかも利用者数は増加傾向で、ユーザーは一過性ではなく定期的に使い続けています。
また 2020 年4月からリモートワークを推進する動きが加速していきました。すると、今までの生活スタイルを変えることになる人が増え、会社に出社することが減ったことで外食の機会も減り、一方でデリバリーの売上が向上しました。
世界ではどうだったかというと、コロナ禍以前はフードテック企業による投資合戦が行われ、力のある企業がない企業を買収し拡大していく動きが活発でした。この流れに続くように、リアルなお店を持たないゴーストレストランが成長する動きが出てきました。さらに、ロボットで宅配する実証実験も進み、大手飲食チェーン店が連携しながら宅配技術も進歩してきています。
コロナ禍以降になると、定額制を導入する企業が増え、サービスの利便性向上を図る動きが活発化。さらに食べ物だけでなく市販薬や日用品もデリバリーできるようになりました。また、実証実験段階だったロボットなどを使った無人宅配が実践導入され始めました。
コロナ禍前の日本はどうだったのかというと、ようやくモバイルオーダーが少しずつ普及し始め、キャッシュレス化が進んできたような状況でした。軽減税率によりデリバリーやテイクアウトを利用する意識が高まり始めていた時期でもあります。
その後、コロナ禍になってからはデリバリーサービスが多様化し、日本国内においてもクラウドキッチンやゴーストレストランが増えてきました。さらに外食産業自体がデリバリーに参入する動きが見られました。
加熱するフードビジネスの裏にいる大手IT企業
急成長するフードデリバリー関連事業の裏には、大手 IT 企業の姿があります。有名な IT 企業が数兆円単位での投資をしていることが、フードデリバリー企業の成長につながっているのです。
日本国内では、唯一 SoftBank が数兆円単位での投資をしています。その総額は3年前の 2020 年で約 5.4 兆円でした。現在はさらに増えていると思われます。
SoftBank が投資をしている分野はとてもシンプルで、投資額全体の 79 % が小売と物流の分野です。他の大手 IT 企業の出資先を見ても、ほとんど同じ割合になっています。
各エリアには強い力を持つフードデリバリー企業、すなわち巨人がいるわけで、その巨人と連携できるかどうかが重要なポイントになります。実は世界のフードデリバリー企業のほとんどに SoftBank が出資をしています。
ライドシェアを押さえる SoftBank
フードデリバリーを実現するのに必要なライドシェア * という市場があり、約 90 % を SoftBank が押さえている状態です。
*ライドシェア=「相乗り」や「配車サービス」を指す
また国内の PayPay や出前館などの運営元を見ていくと、SoftBank グループにたどり着きます。 SoftBank が、なぜこれほどまでにライドシェアに出資をしているのかというと、スーパーアップの実現を目指しているからです。
現状、日本にスーパーアップは無いのですが、スーパーアップを生み出そうと最も活動的なのが SoftBank で、個人的に PayPay がスーパーアップに近いアプリではないかと考えています。
PayPay は 5,500 万人のユーザーを誇り、急成長中です。私が観測してる範囲では、 PayPay ほど急成長したサービスは、日本国内で見たことがありません。
PayPay での取引の金額は、 2022 年時点で 10 兆円規模に達しています。私たちの生活に PayPay が欠かせなくなってきているといっても良いでしょう。
実際に PayPay は将来的にスーパーアップを目指すことを公表しており、徐々にサービスを拡大しています。
世界、国内のライドシェアや宅配プラットフォームを押さえて、スーパーアップを目指していくというのが SoftBank の戦略であり、世界の企業でも見られる動きです。
SoftBankがAIと食事業に取り組む理由
(画像引用元:株式会社たねまき ウェブサイト)
SoftBank は農業にも出資をするだけでなく、『たねまき』という国内最大級のトマト農園をスタートしています。この事業を行うだけで現地に 200 人分の雇用が生まれるということで、これだけ大規模な農場は、日本には他にありません。この取り組みを茨城県常総市(じょうそうし)で行なっています。
さらに、この農場で作ったトマトを物流するためのプラットフォームも自分たちで構築しているので、既存のサプライチェーンを通していません。そのため、自分たちで売り先も押さえながら事業を展開しており、すでに黒字化の目処も立っている状態です。今後この『たねまき』を拡大し、日本国内に 10 箇所の農場を作る予定とのこと。
この『たねまき』は SoftBank プレーヤーズという会社の子会社です。SoftBank プレーヤーズは個人的に最も注目している企業で、これだけ大規模な雇用を生み出し、流通まで独自に行うというのは、日本企業としては非常に珍しい動きだと考えています。
大手IT企業が取り組む食事業といかに連携できるかがビジネス成功のカギ
私は、このフードデリバリー事業をきっかけに本格的に SoftBank が食事業に参入すると考えています。
実際に、飲食店・外食・食品小売に関する人材を募集で提示している年収は、最大で 1,300 万円 * とのこと。世界で戦えるサービスを作っていこうという熱意を感じます。
圧倒的な資金力、そしてデータ、 AI などを駆使して、SoftBank などさまざまな大手 IT 企業がフードデリバリー事業に参入してきています。彼らが取り組むビジネスと連携できるサービスを考えることで、ビジネスが成功する確率が上がっていくと思われます。
*2023年9月時点
講演者紹介
大野 泰敬 氏
株式会社スペックホルダー 代表取締役社長 / 農林水産省 農林水産研究所 客員研究員
【略歴】
複数企業を経営する事業家兼投資家。
ラジオNIKKEIの情報番組「ソウミラ」、FM 軽井沢など人気 FM ビジネス情報発信ラジオ5番組のメインパーソナリティを務める。
ソフトバンク株式会社で新規事業などを担当した後、CCC で新規事業に従事。
2008 年にソフトバンクに復帰し、当時日本初上陸の iPhone のマーケティングを担当し、シェア拡大に貢献。
独立後は、企業の事業戦略、戦術策定、M&A、資金調達などを手がけ、大手企業 14 社をサポート。
テクノロジーに精通しており、東京オリンピック大会組織委員会ITアドバイザー、農林水産省農林水産研究所客員研究員、明治大学客員研究員にも就任。
ご当地イノベーションを提唱し、省庁、自治体などの外部コンサルタントとしても活躍。
事業実績 500 億円、独立後個人事業で 10 億円のビジネスを作り出す。
著書は「ひとり会社で6億稼ぐ仕事術」「予算獲得率100%の企画のプロが教える必ず通る資料作成」など。
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