• 配信日:2020.08.05
  • 更新日:2023.09.01

オープンイノベーション Open with Linkers

モノづくりマッチングインタビュー「建設現場で使用する鉄筋棒材の自動溶接装置の設計、試作、量産パートナー探索」【サンアロー株式会社】

※本記事は、Innovation by Linkersに過去掲載した記事の再掲載記事となります。

CB工法協会様からリンカーズがパートナー探しの依頼を受けた「建設現場で使用する鉄筋棒材の自動溶接装置の設計、試作、量産パートナー探索」の案件にスピードマッチングし、「鉄筋自動溶接機」の製作を受注いただいたサンアロー株式会社様と、コーディネーターとしてリンカーズにサンアロー株式会社様をご紹介くださった北越銀行様に、お話を伺いました。前半ではサンアロー株式会社様の技術と案件について、後半では高い案件登録およびマッチング率を誇る受注企業ならではの”Linkers活用術”についてお伺いしました。 ※発注企業からの視点は:CB工法協会様インタビューで掲載済みですので、こちらもぜひご覧ください

鉄筋自動溶接機 開発パートナー探索 マッチングの流れ

サンアロー株式会社の技術とリンカーズのモノづくりマッチングサービスとの出会い

サンアロー株式会社様 左から 新潟工場管理部課長 遠藤 節子様、新潟工場開発部開発1課課長 岡山 茂樹様、取締役工場長 吉田 実様、新潟工場開発部次長 佐藤 良様

技術を活かして県外でも活躍してほしいと、北越銀行様がつないで下さった

リンカーズ 尾形

リンカーズとの出会いは北越銀行様からの案件ご相談という形だったかと思いますが、どのくらい前になりますか

サンアロー 遠藤様

2016年の11月14日からで、2017年12月までに10数件立候補させていただきました。

リンカーズ 尾形

―北越銀行様がサンアローさんをご推薦いただいたポイントをお教えください。

北越銀行 徳橋様

弊行でもビジネスマッチングはあるのですが、どうしても県内企業同士のマッチングが中心になってしまう部分があるので、サンアローさんのように技術力をお持ちで実績もある企業様を広く県外にも紹介したいと思い、リンカーズさんに紹介させていただきました。


―Linkersでは日本全国の産業コーディネーターさんと業務提携をさせていただいていますが、地銀さんは新規のご参画もとても多く、おかげさまでより広く全国の企業様から立候補をいただけております。
―それではサンアロー様について、お取り扱いの製品や技術、企業の特色などをお教えください。

サンアロー 吉田様

弊社は1959年設立し、2018年で59期目を迎えます。工業用ゴム製品のゴム開発から始まりまして、ゴムの中に導電体、電気を流す仕組みを確立し、リモコンなどのボタンとして採用いただきました。ボタンが主力商品でしたが携帯電話の普及につれてキーシート製造技術に特化した開発に注力し、ゴムや樹脂のコンポジット製品・加飾工法を確立するなど、製品の多様化を経て内製加工技術を構築してまいりました。



左:導電シリコーンゴム 右上:車載ラバーコンタクト 右下:携帯電話キーシート

徐々に携帯がスマートフォンに移行し、リモコンもタッチパネル式になるなど、ボタンの需要が少なくなるにつれ、スマートフォンや医療の関係に移行してきたのですが、最近は働き方改革の影響などで様々な工程や作業の自動化、省人化というテーマに携わっております。当然このモノづくりの過程で自動化を図るためには現場の経験値が必要になってきます。 今回CB工法協会さんの案件はまさにこの自動化に関わる案件で弊社には自動化に携わったことのある設備開発の部署があったという事ですね。 現在はこういった携帯端末から、医療や自動車部品などを手掛けております。その一つの中に設備を作る部署がございます。 1992年からは設備を内製化して自動化の設備を作り始めました。中小企業でこういった設備を作れる会社は多くないと思いますし、そこは非常に大きな強みです。
―ゴムの開発から始まって、現在では扱う製品群は増えたのでしょうか?
まだまだこれからです。92年当時は活況でしたが、現在は他事業開拓にも尽力しておりまして、最近ようやく医療や車の分野に広がり始めました。
―手術トレーニングツール(外科の先生がオペの練習をするツール)」」という商品を伺って、扱う商品の広さに驚きました。今回のように建設業界とのお仕事というのは?
初めてです。他事業に進出するには営業力だけでは接点が非常に限られますが、案件情報をいただくことで我々の技術がどの企業さんから接点を持っていただけるのかが分かるので、非常に利点のある取り組みに参加させていただいているなと思います。
―ありがとうございます。ご依頼主様からもどういうところから提案が上がってくるか分からないのがLinkersを使う醍醐味だと仰っていただいたのですが、双方向からお喜びいただけているのかと思いました。御社は今後どういったところを強化されるのでしょうか?
弊社はひとつの企業の中に設計から金型の製作、生産技術や開発などいろいろな技術を持った人間がいるので、その技術を活かしてもらえるような案件や分野であれば、ぜひ様々なところに応募したいと思っています。

マッチングのエピソード、鉄筋自動溶接機製作と苦労した点

「鉄筋自動溶接機」製作の流れについて

リンカーズ 尾形

それでは今回の案件についてお伺いします。まずは受注が決定されてから現在まではどのような流れだったのでしょうか。

サンアロー 岡山様

今回の発注案件のご担当者であるCB工法協会の近藤さんは非常にレスポンスの早い方で、
弊社がwebで回答した後、実際直接面談でお会いするまでが約一月でした。回答後、すぐにお声がけいただいて名古屋の事務所で会長さんを含めてお会いしたのですが、CB工法協会さんがどんなコスト感でどのような設備を作りたいのか、どのくらいの規模で販売を考えられているのかなど、分からなかった疑問は全て伺いました。実際にお会いすることで会長さんも非常にアグレッシブで前向きな方だと感じましたし、これはもう間違いない、ぜひやってみよう、という流れになりました。


―リンカーズから提供した最初の案件シートの資料にCB工法協会さんが以前内製で作られた自動溶接機の図面がありましたが、実機はご覧になりましたか?面談の際に「図面の機械であれば2週間くらいでできる」というお答えが先方としては非常に頼もしかったと伺いました。
資料の機械とは別の、その後に独自で実験機として作成されていたXYZの簡単なロボットのようなデモ機を拝見しました。同じものを作るのは正直面白くないので、折角作るのであれば弊社の技術を使ってより良いものを作っていきましょうとご提案しました。
―このご提案でCB工法協会さんのテンションが上がられたと伺いました(笑)。実は案件ご依頼時から近藤さんは「鉄筋EXPO2017」に出したいと仰っていたんです。初日に伺った際に、その日1番人が集まったブースだと仰ってましたが、今回のデモ機が完成したのは11月15日ですよね
はい。10月の中旬頃に「鉄筋EXPO2017」に出したいと伺いまして、11月24日から3日間、デモ展示を行いました。 試作のデモ機は一号機みたいなもので改善点が多々あります。溶接はもちろんできますが、さらに見栄えをよくして、量産につなげていくという意味でも改造が必要です。今はその段階に進んでいます。 溶接には”曲げ試験”や”引っ張り試験”というテストがあるのですが、やはり単純に溶接したのでは強度がなかなか出ないです。強度も出せる”人の手の動き”を”自動で再現する”のは難しくて、自動は自動なりの条件を洗い出す必要があるので、その条件出しとテストをしていきます。鉄筋の太さのサイズも9種類くらいあるので、それに対しても条件出しが必要で、1年くらいは時間を要するかもしれないです。実験と量産を平行して進めようかと思っています。春ぐらいまでテストをして、そこから量産の形状検討に入るかもしれないです。
―来年には1,000台くらい売りたいというお話もありましたが、量産も御社でご対応いただけそうですか?また、価格についてもお話しされているのでしょうか?
はい。1,000という台数は多い方ではなく、多いとその×100という場合もありますから。
―CB工法協会の近藤様のインタビューでは、現在約700人の国内のCB工法継手職人さんに使用いただく需要として1,000台が目標というお話しでした。ですが、この溶接工法を東南アジアなどにも普及させたいという意向もありましたし、おそらくあまり長いスパンではないグローバル展開も視野に入れられているんだろうと思います。
ターゲットされるコスト感は最初の面談時にしました。
―末端価格が15万円くらいと伺って「安い!」と思いました!「鉄筋EXPO」でも「数十万円くらいなら買うよ」という声もあったほど安価な設定ですよね。生産性や品質の安定化など、メリットの多い製品なのでもう少し付加価値高く売ってもいいんじゃないかと感じたくらいです。
溶接機そのものがそんなに高くないので”溶接の道具”としての感覚は意外と合っていると思います。 最初の面談時にその話はありました。これから作っていく中で、15万という価格に収まるかどうかはこれからですが、目標とするところを先に聞けると思想も変わってきますよね。カスタムも変わってきます。やはりビジネス論を考える時に、最初にそういう話を聞かさせていただくのは重要だと思います。作ってもコストが高くて次につながらなかったり、イメージが合わなくて途中で止まる事態を避けられますから。 これからどういう話になるかはまだ分かりませんが、コスト感によっては部品点数も変わってくるかもしれません。そういう意味では値段とターゲット、どちらも重要だと思います。折角開発したものがコストが合わないために商品化できないというのはよくないですからね。
―こういう案件を溶接の協会が行っているということは嬉しいニュースだとゼネコンの方も言ってくださっていますし、これからもっと革新的になっていくのかなと思っています。


左:「鉄筋自動溶接機」試作機      右:溶接部分(拡大)

発注企業「CB工法協会」様からの”一番気になる質問”

CB協会 近藤様

「”本件の受注に興味を持たれたポイント”をすごく知りたいです!!」

リンカーズ 尾形

初回面談時は技術的にできるかどうかというお話のみで、その後の生産計画といった話は一切されてなかったですよね?翌年から何台作りましょうといった具体的なところもなく受けていただけたことが、ご依頼主様の方ではすごく嬉しかったと伺いました。

サンアロー 岡山様

実はLinkersさんの申し込みを始めたばかりで、正直なところ、絶対溶接をやりたいんだ!といったわけではなく…あくまでもできそうだなという案件の中の一つだったんです。

サンアロー 吉田様

しかし、面談で名古屋までお邪魔させていただいて尾形会長と近藤さんとお話しさせていただいて、「これを普及させたい!」という強い熱意を感じました。ビジネスは熱意から先行していくと思うので、同じ熱意で取り組む思いというのもやはり重要だと思うんです。弊社の会長の駒形も熱く語るタイプですので、尾形会長とぜひご面談を実現させたいです!!

リンカーズ 尾形

CB工法協会様も同じことを仰っていて、実は面談でお会いする前から「御社がきっと一番可能性がある!」と感じていらしたようです。パッションが伝わっているかどうかは結構文字にも出るらしくて、実はどの案件でも文字だけでも可能性を印象付けることが多いようです。

今回は発注企業様が会いに行かれるという珍しいパターンでした。通常は候補企業様がご訪問して技術ディスカッションをするのですが、近藤様ご自身がスピーディーな進行と、現場を含めた企業の雰囲気をご覧になりたいという熱いマインドをお持ちの方だったというところも共鳴するポイントだったのかと思います。


―それでは技術的な開発についてお教えください。苦労されたポイントはどこだったのでしょう。
特に資料もなくCB工法の知識を習得しつつの装置設計で、とにかく直接拝見して設計しなくてはならず、ポイントがなかなか難しかったです。 溶接部分には”全体のトーチ”があるのですが、そのトーチをどう動かしたらいいのかいろいろ意見が出ました。 全体を複雑に動かしたらいいとか、人の手のようになればいいなというご意見もありました。多関節ロボットに人間の複雑な動きを全て再現させればできるのでしょうが、かなり大きく高額になってしまいます。過去に2億円くらいかけて開発して失敗したという事例も実際にあるようです。 それでは路線が外れてしまうので、やはりそこは単純化=簡単な動きでできるだろうと、考え方自体を少し変えました。   
―ご面談の技術ディスカッション最後に、実は似たような開発をされたことがあると写真を出されていましたね。
大きさは全然違いますが、半年ほど前に自動溶接機というものは作っていました。そのため、溶接機は制御の部分がメーカーやマニュアルに因る部分があると経験していたので、こちらからこういう制御がしたい、といった提案ができました。
後半:マッチング企業のLinkers活用術

Linkers利用について ~案件エントリーの判断

リンカーズ 尾形

サンアロー様には受注候補企業として既にご登録いただいておりますが、弊社内でも貴社にはかなり安心感と信頼感を寄せている声があります。案件を社内で検討下さっていることが案件へのご回答にも現れていると思うのですが、Linkersの案件はどのような流れでチェックしてくださっているのでしょうか?

サンアロー 遠藤様

先ずは私が拝見させていただいて社内展開しています。今は定期的に全ての案件を主要メンバーで集まって、エントリーするしないというところを決定しています。

サンアロー 吉田様

弊社も化学など多様な技術者がいるので、各部門長ができそうな案件にエントリーさせていただくのですが、その音頭を取っているのが遠藤です。定期的―できれば週1、できなければ2、3週間たまるというケースもありますが、その中からエントリーするものを決めています。

サンアロー 遠藤様

当初は私がやれそうなものだけを展開していましたが、途中からそれはやめたんです。
実は今回のCB工法協会さんの案件を社内展開した際に「検討対象外です」と配信したんです。添付の写真も建設現場という感じだったので、これはうちの会社ではないなと思ったのですが、主要メンバーで集まった際「少し前に自動溶接機を制作したという実績は、建設現場にも活かせるんじゃない?」という一言から、180度変わって、エントリーしましょうという話になったのです。今は基本私が検討対象外ですと決定せずに案件を洗い出して、主要メンバーで集まって検討するスタイルになりました。配信希望にチェックしている業界の全ての案件を社内共有、検討しています。


―うわー、ありがとうございます!! 弊社では窓口の方のみでご判断というケースが多いとお見受けしているのですが、だからこそサンアロー様のエントリー案件は業界も幅広く、回答も的確なのですね!! 平均どのくらいの案件数を社内でご検討いただいているのでしょうか?
3週間に1回しか検討できていないので多いときは20件くらいを見ていますが、そのうち2、3件が検討候補になることもあります。
―弊社でも発注企業様には探索開始から4週間で候補の企業さんをリストアップさせていただく、というのがモデルプランでもあるのですが、3週間であればその期間内にご覧いただけているのですね。ちなみに検討会は何名くらいの方で行われていますか?
このメンバープラス2名なので、計6名です。

サンアロー株式会社様からの学び

今回、リンカーズのモノづくりマッチング「建設現場で使用する鉄筋棒材の自動溶接装置の設計、試作、量産パートナー探索」で受注企業となったサンアロー株式会社様ですが、最初は対象外の内容と思っていてエントリーをしない可能性が高かったと伺い、驚きました。
現状の技術に完全にマッチするもののみでなく可能性を見出して積極的にエントリーしていただけると何かに繋がる可能性もあり、私たちとしても本当に嬉しい事です。

サンアロー株式会社様は、高い技術力に加え異業種への案件エントリーや至急の試作品作成にも対応する柔軟性も持った素晴らしい企業で、今回インタビューも応じて下さったことに感謝いたします。


※CB工法協会様側のインタビューもぜひご覧ください(https://corp.linkers.net/blog/openwithlinkers/674/