- 配信日:2023.05.11
- 更新日:2024.09.24
オープンイノベーション Open with Linkers
ウェルネステック(ヘルステック・フードテック・ビューティーテック他)xパーソナライズ注目技術20選
この記事は、リンカーズ株式会社(以下、弊社)が 2023 年4月5日に主催した Web セミナー『パーソナライズxウェルネスを促進する最新サービスや製品技術のご紹介』を書き起こしたものです。
弊社では、生体センシングや AI 技術を用いて個人の情報を収集/解析し、個々に最適化(=パーソナライズ)したウェルネスサービスを実現する先端技術とトレンドを調査し、その結果をまとめた「パーソナライズxウェルネス関連技術マルチクライアント調査レポート」というものを作っています。
このレポートの中から、「ヘルスケア」「食(フード)」「ビューティー」「フィットネス / スポーツ」それぞれの分野における「パーソナライズ」の注目技術を一部抜粋して紹介します。
セミナーで使用した講演資料を記事の最後の方で無料ダウンロードいただけますので、ぜひ本文と合わせてご覧ください。
◆目次
・拡大を続けるウェルネステック領域の市場規模
・ヘルステックxパーソナライズ領域
・フードテックxパーソナライズ領域
・ビューティーテックxパーソナライズ領域
・フィットネス/スポーツテックxパーソナライズ領域
・パーソナライズxウェルネス関連技術マルチクライアント調査レポートのご案内(より詳しく知りたい方にオススメ)
拡大を続けるウェルネステック領域の市場規模
人生 100 年時代といわれ、社会環境や個々のライフスタイルなど多様な価値観があり、私たちの手元にはさまざまな形のデバイスがある昨今。弊社リンカーズでは、パーソナライズとウェルネスの掛け合わせによる技術の発展に注視しています。
さらに新型コロナウイルスが拡大したことで、人々のウェルネスビジネスへの関心も高まってきています。
アメリカの NPO 法人によるウェルネス領域の市場調査によると、 2022 年時点での市場規模は世界で 4.4 兆ドル(約 580 兆円)とされています。
経済産業省の試算では、日本のウェルネス領域全体の市場規模は 2025 年に 12.5 兆円、その中でも特に「食」「癒し(いやし)」「運動」の分野が今後大きく発展すると予想されています。
このような背景があり、日本は国としても9項目のムーンショット型研究開発制度を定めて推進しています。
世界的に見ても「〇〇テック」と呼ばれる、ある分野とテクノロジーを掛け合わせた技術が盛んに生み出されています。
ヘルステックxパーソナライズ領域
まずは「ヘルスケア」 x 「パーソナライズ」領域の技術を紹介します。
弊社では、主に以下の技術に着目しました。
- ・腸内細菌叢による健康状態分析
- ・ストレスの可視化
- ・生活習慣病の将来リスクの提示
- ・自宅でできる尿検査
- ・声による心身状態の分析
事例1:Vlome Life Science の技術「腸内細菌叢による健康状態分析」
Vlome Life Science というアメリカの企業では、腸内細菌叢(さいきんそう)の健康状態分析により、腸に適した食品やサプリメントを提案する技術を開発しています。専用の検査キットで便を採取し郵送後、スマートフォンアプリを通して食品やサプリメントの情報を受け取ることが可能です。検査を受けた個人にパーソナライズされた食品・サプリメントを紹介してもらえるという点が特徴で、病院などで受ける検査との大きな違いでもあります。
事例2:MoNoA bvba の技術「ストレスの可視化」
MoNoA bvba というベルギーの企業では、ストレスを可視化する技術を開発しています。腕時計型やベルト型の専用端末を体につけることで、皮膚電気活動( EDA )や皮膚温度などを計測し、ストレス状況を分析。結果をスマートフォンアプリに送信し、ストレス対策のためのコーチングを行うという技術です。
MoNoA bvba ではこの技術を病院やフィットネスクラブ、企業などでの活用を考えているとのことです。
事例3:株式会社ARISE analytics の技術「生活習慣病の将来リスクの提示」
株式会社ARISE analytics という日本の企業では、生活習慣病(糖尿病・高血圧症・脂質異常症など)の将来リスクを提示する技術を開発しています。
AI によってリスク予測モデルを構築。そのモデルの予測因子(個人がある疾患・障害を生じるリスクを増加させうる状況や条件)などを分析することで、生活習慣病予防を推進することが目的です。
現在は開発段階ですが、分析結果は KDDI が提供するスマートフォンアプリ『ポケットヘルスケア』で確認できるようになるとのこと。職域健康診断の有効性・効率を高めることが期待されています。
事例4:YellosIs Inc. の技術「自宅でできる尿検査」
Yellosis Inc. という韓国の企業では、潜血(せんけつ)・タンパク質・グルコース・ pH (水素イオン濃度)・ケトンの5つの検査項目に関して、より正確な検査結果を導き出せるボード型の尿検査キットを開発しています。健康診断で行う尿検査が自宅でできるようになる技術です。
専用のボードに尿を数滴垂らすと試験紙の色が変化します。その試験紙をスマートフォンアプリで読み取ることで、検査結果が表示されます。
トイレでの排尿・排便を健康管理や分析に利用しようという取り組みは、昨今非常に注目されており、多くの企業で技術開発が進んでいます。
事例5:Sonde Health, Inc. の技術「声による心身状態の分析」
Sonde Health, Inc.というアメリカの企業では、話し声から音声バイオマーカーを検出して、心身の状態を評価・分析する技術を開発しています。
バイオマーカーとは、特定の病気の有無、病状の変化、治療の効果などを測る指標となる項目・生体内の物質のことです。例えば血圧や体温などがあります。
このようなバイオマーカーを測る部位としては腕や脇、額などが一般的ですが、 Sonde Health, Inc. では通常の話し声をバイオマーカーにする技術を研究しています。
スマートフォンに専用のアプリをダウンロードし、スマートフォンに話しかけることで心身の健康状態が測れます。さらにコーチングとして健康改善に向けた情報提供や、専門の医療機関を紹介などのアドバイスを行うプラットフォームを展開しています。
フードテックxパーソナライズ領域
続いて紹介する「食(フード)」x 「パーソナライズ」の領域では、大きく分けて3つの技術要素を用いたソリューション開発が進んでいる印象です。
- 1. AI 解析技術
- 2. AI 解析するためのデータ取得技術
- 3. 解析したデータをアウトプットする技術
これらを踏まえて、5つの事例を紹介します。
事例6:株式会社おいしい健康の技術「AIx栄養管理」
株式会社おいしい健康という日本の企業では、 AI による食事提案と栄養管理を行うアプリを開発しています。特徴は、健康な人の疾患予防だけでなく、さまざまな疾患を持つ患者それぞれに対応する栄養管理・メニュー提案も行えるという点です。
栄養管理策やメニューを提案されても、受け取った人の行動変容が起きなければ意味はありません。そこでユーザーが簡単に無理なくできる提案を行うという設計になっています。
また同社では、食事の写真を撮影すると栄養などを分析・管理できるアプリを開発した企業と提携し、より簡単に栄養状態を把握できる機能も開発しています。そのデータを元にメニューを提案し、ユーザーが料理を作るというサイクルを回すことで健康な状態を維持・増進できると期待されています。
事例7:AlgoCare Corp. の技術「サプリメント提案」
AlgoCare Corp. という韓国の企業では、サプリメントのサーバーを用いて個人の栄養状態に合わせて適切なサプリメントを提供する技術を開発しています。医療専門家による数千のジャーナル分析を行って、 AI のアルゴリズムを開発。その AI に個人の体組成、病歴、投薬歴、日常生活の健康データ、習慣などの情報をインプットすると、その人に合った必要栄養量が提示されます。その必要栄養量に応じたサプリメントがサーバーから提供されるという仕組みです。
今後、尿検査、毛髪検査、遺伝子検査などといった生体データと組み合わせることで、より精密な栄養管理ができるようになると期待されています。
事例8:DayTwo Inc. の技術「血糖値管理」
DayTwo Inc. というアメリカの企業では、腸内細菌叢のデータを活用し、血糖値管理を目的とした食事管理を行う技術を開発しています。
同社は、腸内細菌叢とその他の生体データと組み合わせて分析することで、食事・食品を摂取した際の血糖値の変化に個人差があることに気づきました。その変化を腸内細菌叢のデータと AI によって予測する技術を開発しています。
例えば糖尿病のため血糖値の管理が必要な人は、こまめに血糖値の測定が必要になり体に負担がかかります。しかし同社が開発している技術を使うことで、体に負担をかけることなく血糖値の変化を予想・管理することが可能です。
この技術の臨床試験も行われており、既存の血糖値変化の予測技術よりも精度が高いという結果が出ています。
事例9:6D Bytes Inc. の技術「ロボットによるスムージー提供サービス」
6D Bytes Inc. というアメリカの企業では、ロボット型のデバイスを使い、ユーザーの好みに合わせたフレッシュなスムージーを自動で提供する技術を開発しています。 個人の購買歴や味の好みなどをアプリに入力し、AI によって自動的にスムージーが提供されます。
新型コロナウイルスの影響で非接触での食品提供需要が高まり、同社の技術がローンチされて、現在も活用が続いています。新型コロナウイルスの拡大が落ち着いてから、この技術がビジネスとしてどのように活用されているのかも注目のポイントです。
事例10:REM3DY Health Limited の技術「3 Dプリンティングによるサプリメント提供」
REM3DY Health Limited というイギリスの企業では、3 D プリンティングを活用したグミ状の栄養サプリメント成型技術を開発しています。栄養素が詰まったグミカートリッジの成分を、3 D プリント技術を搭載したロボットアームによりスタックすることで、サプリメントを生成します。個人ごとに必要な栄養素を分析し、ロボットアームによってその人に最適なサプリメントを作り出すことが可能です。
特徴は、成型されたグミ状のサプリメントにより、1回でおいしく栄養を摂取できるという点です。複数のサプリメントを大量に飲む必要がなくなり、味を楽しみながら栄養バランスを整えられることが期待されています。
美容の領域とも相性の良い技術のための Johnson & Johnson と協業し、肌の健康に特化したサプリメントグミの事業も展開しています。