• 配信日:2023.04.28
  • 更新日:2024.04.19

オープンイノベーション Open with Linkers

オープンイノベーション事例~味の素冷凍食品の取り組みを徹底解説

この記事は、リンカーズ株式会社が主催した Web セミナー『味の素冷凍食品から学ぶ~オープンイノベーション徹底解剖~』のお話を編集したものです。

味の素冷凍食品株式会社のオープンイノベーション推進担当である、同社 研究・開発センター 研究開発推進部 企画推進グループ長の今泉 圭介(いまいずみ けいすけ)様に、味の素冷凍食品におけるオープンイノベーションの取り組みについてお話しいただきました。

オープンイノベーションに興味のある方は、ぜひご覧ください。

味の素グループの紹介


味の素冷凍食品は、味の素グループに所属する会社の1つです。そのため、まずは味の素グループの紹介から始めます。

味の素グループ創業の志と現在

オープンイノベーション事例~味の素冷凍食品の取り組みを徹底解説

味の素グループは 1909 年に昆布だしに含まれるアミノ酸のうま味成分から『味の素』を商品化した会社です。

創業時の志は「食を通じた社会への貢献」で、うま味を通じて日本人の栄養を改善することを目標に事業に取り組んできました。現在は「事業を通じた社会課題の解決による社会貢献と経済価値の創出」に取り組んでおり、この取り組みを味の素では「 ASV ( Ajinomoto Group Shared Value )と呼んでいます。

味の素グループの事業領域

オープンイノベーション事例~味の素冷凍食品の取り組みを徹底解説

味の素グループは「食品事業」と「アミノサイエンス事業」の2つの事業領域に分かれ、食品事業はさらに常温で流通される「調味料・食品」と − 18 ℃ 以下で保管・流通される「冷凍食品」に分かれています。味の素冷凍食品は、冷凍商品事業の一翼を担う企業です。

味の素グループの冷凍食品事業

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味の素グループ全体における冷凍食品事業の売上高は、 2021 年度の数字を見ると 2,217 億円でした。この売上高を日本とそれ以外の地域で分けると、日本が 894 億円、海外が 1,323 億円で、海外の方がやや売上が多い状況です。

味の素冷凍食品株式会社の事業は、主に日本で 894 億円の売上を出しています。

味の素グループのR&D


オープンイノベーション事例~味の素冷凍食品の取り組みを徹底解説

2021年3月までは、味の素グループの食品事業は冷凍食品と常温食品に分かれ、それぞれ別の拠点に研究所が存在していました。この2つの研究所に加えて味の素 AGF の研究所が川崎市鈴木町の拠点に集約されることになったのです。これによりグループ3社の技術を融合して、より革新的な製品を生み出す取り組みを開始しました。

味の素冷凍食品株式会社のR&D部門

オープンイノベーション事例~味の素冷凍食品の取り組みを徹底解説

川崎にできた味の素冷凍食品の新しい研究所( Frozen Food Tech & Design Station )は、冷凍食品の新しいテクノロジーを生み出して、顧客視点に立った商品をデザインしていくために、世界中から冷凍食品に携わる技術者を募って技術を発信する場となることを目標にしています。

オープンイノベーション事例~味の素冷凍食品の取り組みを徹底解説

Frozen Food Tech & Design Station ( FTD )の中には R & D 部門として研究・開発センターと生産技術開発部という2つの部署が入っています。

研究・開発センターの役割は短期(6〜 12 カ月)の製品開発を担うことと、配合や製法など中長期に及ぶ技術開発を行うことです。生産技術開発部の役割は生産設備の開発(エンジニアリング)と包装材料の開発という形に分かれています。

研究・開発センターと生産技術開発部の間をつないでいるのが研究開発推進部です。研究開発推進部では FTD 全体のマネジメントと、研究・開発センターと生産技術開発部が同じ方向を向いて研究開発を進められるような戦略の策定、そして両部署におけるオープンイノベーションの推進を担当しています。

味の素冷凍食品のオープンイノベーションの強み


オープンイノベーション事例~味の素冷凍食品の取り組みを徹底解説

味の素冷凍食品のオープンイノベーションの強みとして、2つの点が挙げられます。

1つ目は味の素グループというネームバリューです。「味の素」という名前を出すと会って話を聞いてくれる方が多く、幅広い分野で外部協業先として認識してもらえます。

2つ目は味の素社、 AGF 社とのグループ連携におけるシナジー効果です。今までは研究所が分散していたため研究者同士で議論を交わすことが難しい状況でした。現在はグループの R & D の知見が一カ所に集まって同じ場所で活動しているので、自社だけでは見えない広い視点でオープンイノベーションを進められています。

味の素冷凍食品がオープンイノベーション推進で実現したいR&Dの姿


オープンイノベーション事例~味の素冷凍食品の取り組みを徹底解説

味の素冷凍食品がオープンイノベーション推進で実現したい R & D の姿としてまず挙げられるのが、現在の課題の解決です。すなわちオープンイノベーションを推進することで既存事業をスピード・スケールアップしてより大きな事業に育てていくことと言い換えられます。

もう1つ、未来への貢献という形で新しいアイデアを創出してオープンイノベーションを使って新しい未来の事業の芽を生み出すことが挙げられます。いわゆる新規事業を創出するオープンイノベーションの使い方です。

現在と未来の双方に貢献できるような、既存と新規事業の両方で事業化に貢献する R & D 組織になるためにオープンイノベーションという考えを推進していこうと考えています。

オープンイノベーションの進め方〜既存テーマのスピードアップ〜


オープンイノベーション事例~味の素冷凍食品の取り組みを徹底解説

既存テーマのスピードアップの際に、オープンイノベーション担当者と R & D の技術者とパートナー企業とで、取り組んでいることを説明します。

毎年2〜3回 R & D の技術者とオープンイノベーションの担当者が「オープンイノベーション先探索セッション」を行います。内容は各技術テーマの課題のヒアリングを行い、 R & D の技術者とオープンイノベーションの担当者が課題や問題点などを洗い出します。この際、リンカーズのようなマッチング会社の担当の方にも参加してもらい客観的な視点からアドバイスをもらうようにする場合もあります。

課題が言語化できたらオープンイノベーション担当者がパートナー探索の段階に入り、さまざまなツールを活用しながらパートナー探索を実施。パートナー候補が見つかったら R & D の技術者またはオープンイノベーションの担当者からコンタクトを取り、協業するかどうかを R & D の技術者たちと検討し、契約内容の整備や取り組み内容のすり合わせなどへと進めていきます。

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