- 配信日:2022.01.04
- 更新日:2024.08.07
オープンイノベーション Open with Linkers
オープンイノベーション事例 ~ 大阪ガスの成功事例を徹底解説 〜
大阪ガスのオープンイノベーションの活用事例
ここまでに上げた事例の通り、オープンイノベーションの活用として、テーマ創出、研究開発、商品開発、事業化に向けた進展、大阪ガスの独特インフラの高度化まで。様々なパートナーとの提携がありました。
これについても、具体例とともにキャラバンで伝えてきました。
例えば、オールシーズン型空調機。ガスで冷房も暖房もできるというのが大阪ガスの悲願でしたが、湿度をコントロールするためには吸湿剤が必要でした。探索会社を通じてパートナーを探した結果、画期的な吸湿剤が見つかり、それを開発しているベンチャー企業と協業することになったのです。
大手企業はベンチャーと組むときに特許を全部取ろうとします。私はフィリップスの例に倣って、そのベンチャーには「空調用だけは大阪ガスと技術の特許を共有してください。場合によっては、この分については大阪ガスに権利をください。空調以外は自由に使っていただいて構いません」という交渉をしました。
オープンイノベーションに必要な作業をリンカーズが代行
このような実例を示しながら、私はマニュアルまで作りました。
情報の流れを見える化し、オープンイノベーションの仕組みをシステムにする。
フロー図、ニーズの管理表、データベース、依頼書、マッチングの流れのマニュアル、プロセス、大量のシーズの管理データも作りました。
オープンイノベーションを行う上で、このような手間がどんどん増えていきます。これらを全て引き取ってくれるリンカーズを 2014 年から活用し始めたのは前述のとおりです。
当時活用していたのは、Linkers Sourcing(リンカーズソーシング) という技術パートナー探索を支援するサービスです。
パートナーに求める要件をまとめる「案件シート」の作成から、実際の探索、マッチングに向けた面談の調整を一貫して支援してもらえます。
リンカーズが保有する全国のコーディネーターネットワークと中小企業のデータベースを活用し、スピーディーにパートナーを探索することが可能です。
さらに、探索の結果見つかったパートナー候補から「生の声」を集め、一覧で比較することができるデータを提出してくれるので、パートナーの絞り込みもスムーズに進めることができました。
データベースを充実しながら結果的には候補となるパートナーを絞り込み、選ぶという部分がオープンイノベーション室の役割です。その役割に特化するということがオープンイノベーション室にとって大事だと私は思います。
(下に続く)
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大阪ガスのオープンイノベーションの成果
大阪ガスのオープンイノベーションは 2009 年の経営ビジョンから始まり、 2019 年でちょうど 10 年。毎年成果を出し続けたことが評価され、私の後任の部隊は社長表彰を受けました。
昨年が 12 年目。今年が 13 年目に当たります。
上の図にある「ステップ 5 」が協業、すなわち新事業の成果です。
協業が 62 件から 100 件にまで増えました。つまり年間 8 件の新商品、新事業が生まれているということになります。
このようなステップを管理し、見える化することがオープンイノベーションにおいて重要です。
スライドのステップ 0 「ニーズを紹介」は 10 年間で 669 件。ステップ 1 「シーズの提案」が外部から 5,934 件。ステップ 2、3 はオープンイノベーション室が面談し、原局の面談に進んだうち ⅓ が何かしらの発展を遂げて協業につながり、成果になっています。
大阪ガスは膨大なシステムを作っています。オージス総研が作ったグループウェアの上にオープンイノベーションのコーナーを作って情報の共有化を行い、全てデジタルデータでもって研究者・技術者とのやりとりを行っています。そのようなデータシステムが内部にはできているのです。
問題は外部のデータと仕組み。外と中をつなげるには LFB (エルエフビー:Linkers for BANK / Linkers for Business を含むサービス名の総称)というマッチングシステムが効果的です。
これを利用すれば、大阪ガスのようにオージス総研が何億もかけて作ったグループウェアのシステムがなくても、もっと安い価格でオープンイノベーションマッチングのシステムができます。
オープンイノベーションは「成果が出る仕組み作り」が重要
このように大阪ガスではオープンイノベーションの成果を出してきましたが、オープンイノベーションの仕組みは、最初は成果が出なくても問題はありません。
大阪ガスのキャラバンでも、オープンイノベーションの必要性を解いて、なんとか研究者・技術者とのコミュニケーションでもって、課題が見つかったらその課題を預けてもらうというところから始めました。
しかし、 2 年後、 3 年後には成果が出てくることが大事だと考えています。
結果として、経済産業省の審議会の資料に、オープンイノベーション先駆的取組企業 TOP3 として P&G 、フィリップスに並んで大阪ガスが掲載されるまでの成果を残したのです。
ご静聴ありがとうございました。
講演者紹介
松本 毅 氏
リンカーズ株式会社 オープンイノベーション・エバンジェリスト
元 大阪ガス株式会社 オープンイノベーション室長
一般社団法人 Japan Innovation Network 常務理事
1981 年に大阪ガス株式会社入社後、冷熱利用技術開発、凍結粉砕機開発、受託粉砕ビジネス立ち上げ、薄膜型ガスセンサーの研究開発、技術開発国家プロジェクト、燃料電池プロジェクト、水素エネルギー製造・貯蔵プロジェクト、GTL・DMEプロジェクトなどの立ち上げに従事。大阪ガスの全社技術戦略の企画立案。海外との技術アライアンス戦略などを推進。
人事部で MOT (技術経営)スクールを設立し、教育事業を推進。
2008 年 9 月、技術戦略部オープンイノベーション担当部長、2009年4月、オープンイノベーション室長。
2016 年 4 月より株式会社ナインシグマ・ジャパン ヴァイスプレジデント、2019 年 3 月より一般社団法人 Japan Innovation Network 常務理事に就任。2020 年 11 月よりリンカーズ株式会社 オープンイノベーション・エバンジェリスト就任。
オープンイノベーションを支援するリンカーズの各種サービス
◆ 「Linkers Sourcing」サービス紹介ページ
Linkers Sourcing は、全国の産業コーディネーター・中小企業ネットワークやリンカーズの独自データベースを活用して、貴社の技術課題を解決できる最適な技術パートナーを探索するサービスです。ものづくり業界の皆様が抱える、共同研究・共同開発、試作設計、プロセス改善、生産委託・量産委託、事業連携など様々なお悩みを、スピーディに解決へと導きます。
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貴社の技術・製品・サービスを、弊社独自の企業ネットワークに向けて紹介し、関心を持っていただいた企業様との面談機会を提供します。面談にいたらなかった企業についても、フィードバックコメントを可視化することにより、今後の営業・マーケティング活動の改善に繋げます。
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リンカーズのグローバルな専門家ネットワークや独自のリサーチテクノロジーを駆使し、貴社の要望に合わせて、世界の技術動向を調査します。調査領域は素材、素子、製品、ITシステム、AIアルゴリズムまで幅広く、日本を代表する大手メーカーを中心に90社以上から年間130件以上の調査支援実績があります。
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