- 配信日:2021.12.22
- 更新日:2024.11.19
オープンイノベーション Open with Linkers
オープンイノベーションの必要性
リンカーズはこれまで様々な企業のオープンイノベーション推進者の皆さまより、オープンイノベーションに対する考え方や進め方をお伺いしてまいりました。
今回は過去リンカーズが主催した Web セミナーに登壇いただいたオープンイノベーション実践者の皆さまをはじめ、ものづくり企業にてオープンイノベーションを推進されている皆さまに、2022 年のオープンイノベーションのあり方や、カーボンニュートラルに対する取り組みについてお話いただきました。
2022 年のオープンイノベーションをうらなう貴重なコメントをいただいておりますので、ぜひご覧ください。
◆ 目次
・ 2022 年、オープンイノベーションで解決を目指したい社会課題
・ 2022 年、カーボンニュートラルの動向
◆ インタビューにご協力いただいた皆さま( 50 音順)
・ 河原 克己 氏(ダイキン工業株式会社 執行役員)
・ 竹林 一 氏(オムロン株式会社 イノベーション推進本部 インキュベーションセンタ長)
・ 西口 仁視 氏(日立建機株式会社 研究・開発本部 先行開発センタ 研究企画グループ 主任技師)
・ 松本 毅 氏(リンカーズ株式会社 オープンイノベーション・エバンジェリスト)
2022 年、オープンイノベーションの役割
阿部 剛士 氏
横河電機株式会社 常務執行役員
マーケティング本部本部長 CMO 博士(技術経営)
「~ 横河電機から学ぶ ~ オープンイノベーション徹底解剖( 2021 年 11 月開催)」登壇者
すでに変化が起こっています。とくにそのスピードは顕著です。
NIH シンドロームでは今の外部環境変化に対して到底追いつけることは難しく、企業にとっては「何を自社で行い、何を行わないか?」をさらに強く推し進める必要性が高まっています。
とくに最近は ○○Tech とさまざまな産業界にイノベーションがすでに発生しています。弊社も企業スローガン “ Co-innovation Tomorrow ” のもと、外部のステークホルダーとの協業を強化しています。5 年前とくらべると外部ネットワークのタッチポイントも 10 倍以上になりました。
とくに産業界におけるフォローワからリーダーになるためには、社内外の技術マネジメント向上が必須であり、さらにタッチポイントも従来の顧客はもちろんのこと、コンソーシア(含む学術)、競合他社、補完業者(含むサプライヤ)、コミュニティ、官庁・政府機関などすべてにおいての接点を持つことが重要です。
河原 克己 氏
ダイキン工業株式会社 執行役員
テクノロジー・イノベーションセンター 副センター長
「~ ダイキン工業から学ぶ ~ オープンイノベーション徹底解剖( 2021 年 8 月開催)」登壇者
これまでの変化がより加速されると思われる。
DX・GX など、大きくパラダイムシフトが進む中、課題解決型の技術シーズ開発型のオープンイノベーションに加えて、問いから考える、課題設定型のオープンイノベーションの重要性が益々増大してくる。DX・GX などの変革の時代において、「何をなすべきか?」を、産官学の様々なステークホルダーが協創して考える時代となる。(既に始まっているが。)
さらに加えて、本格的に人材交流を伴った組織対組織での包括連携が益々活発化してくるであろう。
竹林 一 氏
オムロン株式会社
イノベーション推進本部 インキュベーションセンタ長
時代と共に対応を求められる社会的課題はより複雑化しています。
もはや一社単独では複雑化する社会的課題を解決する事は困難だと考えていますので、当然オープンイノベーションの役割も変化してくるものだと思います。
また、オープンイノベーションは、様々な階層(技術、商品、市場)で革新をおこしているもので、決して他社から技術を調達してくるだけのものではありません。
「技術を革新するのか」、「新商品をつくるのか」、さらには「新しい市場をつくるのか」で考え方やアプローチが異なります。
「他社と競争する」為に自社技術、自社商品を強化するオープンイノベーションと、各社がお互いの強みを持ち寄り、共に新市場を創り出していく「他社と共創する」オープンイノベーションを分けて考えることがより一層求められるのではないかと考えます。
西口 仁視 氏
日立建機株式会社
研究・開発本部 先行開発センタ 研究企画グループ 主任技師
明確に変化しています。
従来のオープンイノベーションは自前開発のお手伝いの色合いが強くありました。ともすれば、単なる開発外注となることもありました。
しかしながら、VUCA の時代と言われる今日、社会経済環境が極めて予測困難な状況において、従来の製品価値はコモディティ化しつつあり、ICT・ソフトウェアを軸にした製品付加価値の創造に加え、価値創造のプロセス自体が、顧客協創、すなわち、顧客とともに価値を創造するプロセスへの事業変革が求められています。つまり、「イノベーション協創時代」に突入したということであり、従来は企業活動の傍流であったオープンイノベーションは、今日、本流へと変化してきたということです。
松本 毅 氏
リンカーズ株式会社 オープンイノベーション・エバンジェリスト
元 大阪ガス株式会社 オープンイノベーション室長
一般社団法人 Japan Innovation Network 常務理事
WHAT TO DO から HOW TO DO へとシームレスでスピーデイなオープン・イノベーションが加速する
WHAT TO DO とは「なにをすべきか(= WHAT )を発想する為のオープン・イノベーション」、HOW TO DO とは「目標達成の為のオープン・イノベーション」です。
全体を取り仕切り加速支援する「推進リーダー」の存在が必須だと考えます。
流行りのアプリに飛びつく活動から、しっかりとした OS を構築して、最新の OS (仕組み・システム)の上で、成果を出し続ける活動に大きく舵を切る
日本における現在のオープンイノベーションの課題は、スマホに例えるなら「最新のアプリに飛びつくものの、全く成果が出ない」状況と言えます。
これはアプリに課題があるのではなく、スマホの OS が古いことが問題です。古い OS では最新のアプリを導入しても成果が出ません。
OS に相当する部分に世界が合意した最新のイノベーション・マネジメントシステムを導入する必要があります。
ISO に則したイノベーションのマネジメントシステムが浸透して、イノベーションのプロセス全般にオープン・イノベーションの適用範囲が拡がっていく
ISO 化されたイノベーション・マネジメントシステム( IMS )に則した仕組み創りが加速すると考えます。
新たなコアコンピタンス創生の為の戦略的提携が進化する
2022 年からは、新たなコアコンピタンスの創生を目指したオープンイノベーションに大きくシフトする可能性が高いと考えます。
インバウンド型のオープンイノベーションだけでなく、アウトバウンド型のオープンイノベーションが拡がっていくと考えます。
2022 年、オープンイノベーションで解決を目指したい社会課題
阿部 剛士 氏
横河電機株式会社 常務執行役員
マーケティング本部本部長 CMO 博士(技術経営)
YOKOGAWA は自社の3つのコア・コンピタンス(計測、制御、情報)によって、SDGs17 の 11 以上のタイルに貢献できると考えています。
さらに昨年社内で実施した未来シナリオ作成において、人類にとってよりよい2つのシナリオ(1.The dawn of regeneration :リジェネレーションの夜明け、2.Everyday innovation :日々是イノベーション)になるためには自社は何ができるかという観点に立ち、社内における R&D テーマを立案しています。
その中でもっとも懸念している全人類的課題が、自社で「 Triple Shortage 」と呼んでいる「水」、「フード」、「エネルギー」の3つのアセットが連鎖的に欠落するかもしれない未来課題に対して、すでに取り組んでいます。もちろんエネルギー産業のみならずカーボン・ニュートラル領域の課題解決にも“ 1.5℃ シナリオ”達成を鑑み貢献していきます。
河原 克己 氏
ダイキン工業株式会社 執行役員
テクノロジー・イノベーションセンター 副センター長
大きくは、DX と GX であることは間違いない。
何れも、大きな社会変化・業界再編など、自社のみに留まらない広範囲での情報分析と、知識・知恵が必要となる。
まず、DX については大きくはデジタル技術を駆使したプロダクト・ビジネスイノベーションと、社内の業務改革を中心としたプロセスイノベーションが必要であるが、特に新しい商品・サービスを生み出したり、事業構造変革を実現するようなプロダクト・ビジネスイノベーションに関するオープンイノベーションが必須である。サプライヤー/顧客/同業種・異業種の企業/ベンチャー企業/官公庁といった広い範囲でのオープンイノベーションが必要となってくる。
GX に関しては、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなど、やはりグローバルレベルでの情報分析と、業界を超えた広い知識・知恵が必要となってくる。
様々なパートナーとのオープンイノベーションは必須である。
竹林 一 氏
オムロン株式会社
イノベーション推進本部 インキュベーションセンタ長
それぞれが自律した、真に持続可能な社会の実現です。
1970 年にオムロン創業者・立石一真氏らが発表した「 SINIC 理論」 では、社会は工業化社会から最適化社会、そして自律社会へと移り変わっていくとあります。
これまで工業社会を推進する中で我々は物質的な豊かさを手に入れてきました。しかしその一方で環境や健康等様々な問題が発生してきました。
最適化社会は、これらの問題の解決を目的とし、いわゆる SDGs を推進していく事であると考えています。
しかし、私は SDGs の先にみんなの笑顔があるのだろうかとも考えます。 SDGs を実現した先に自律的に持続的な仕組みはできているのでしょうか。
その実現のためにはデジタルを活用し、トランスフォーメーションを加速する必要があります。
誰でもがネットワークとデータを活用して複雑化する社会的課題を解決できる社会の実現に向けて、今後も様々なオープンイノベーションの取り組みを進めたいと考えています。
西口 仁視 氏
日立建機株式会社
研究・開発本部 先行開発センタ 研究企画グループ 主任技師
カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミーの実現、加えて、少子高齢化・労働人口減少への対応など、様々な社会課題に対してオープンイノベーションによって解決にチャレンジしたいと考えています。
弊社は「豊かな大地、豊かな街を未来へ・・・快適な生活空間づくりに貢献する日立建機」を企業ビジョンとしています。
少しわかりにくいところがあるかもしれませんが、実はオープンイノベーションが前提になっています。
私たちのお客様は、国や地域の発展と維持、生産活動や社会活動の維持のために機械を使う仕事に係わっていらっしゃる方々です。私たちの事業は、お客様が国や地域の発展や生産活動の維持、社会活動の維持をするために最適な機械、ソリューションを供給し続けることです。その結果として、道が、水道が、街ができ、国が栄え、人々の生活が豊かになる。お客様が快適な生活空間の象徴である「豊かな大地」「豊かな街」をつくることに最大限の役割を果たし、貢献したい、これが弊社の企業ビジョンです。
つまり、お客様とのオープンイノベーションによって未来をつくることを目指しています。
松本 毅 氏
リンカーズ株式会社 オープンイノベーション・エバンジェリスト
社会課題である SDGs に取り組みたいと考えています。
今後、社会課題をもとに新規事業の戦略を構築する時代が本格化すると考えています。
SDGs 起点の新規事業で重要なのは以下の通りです。
■『やるべきか』
社会に取ってやるべき課題( SDGs )か、どのような社会的価値を生み出すか
■『やれるのか』
必要な強みは何か、自社に無ければオープン・イノベーションで新たなコアコンピタンスを構築する
■『やりたいか』
起業家精神を醸成し、新たなニーズを発見し、リスクを取りチャレンジして新市場創造・新規事業創出が出来る Super Innovation Leader や Super Innovation Thinkerを育成する
企業のオープン・イノベーション加速支援機能と研究シーズの分析・融合と事業化支援を担うイノベーション・エージェントの構築と、イノベーターを発掘し、イノベーションの過程をプロセス化して、加速支援するイノベーション・エージェントとしての推進リーダーの役割は益々重要になってきていると考えます。
2022 年、カーボンニュートラルの動向
阿部 剛士 氏
横河電機株式会社 常務執行役員
マーケティング本部本部長 CMO 博士(技術経営)
1.5℃ シナリオに対して人類はその達成にさらに参加強化が必要です。さらに参加だけではなく、脱ハイドロカーボンに対する施策を急ぐ必要もあります。
エネルギー領域では水素、アンモニア、メタネーションといったテーマに対して、その製造だけではなく、輸送や貯蔵まで視野を広げてサプライチェーン全体のための製品やサービス、ソリューションのポートフォリオを強化します。
上記3つの代替エネルギー源は、おそらく地域性があり、適材適所のように世界のそれぞれの場所でポジションを作っていくのではないかと予測しています。
並行して、今後製品原価にはカーボンフットプリントを考慮しなければならず、ルール( Policy & Regulatory )の世界の動向にはさらに注意が必要です。
さらにIRの観点でも TCFD だけではなく、近い将来は TNFD 、さらに ESG 会計なども考慮して会計情報開示を実施することも必要だと考えています。
河原 克己 氏
ダイキン工業株式会社 執行役員
テクノロジー・イノベーションセンター 副センター長
エネルギーミックスの最適解が最も重要であることは言うまでもないが、当社においては、省エネルギー製品(インバータ空調機、暖房用ヒートポンプ等)の開発とグローバルへのさらなる普及、販売後のエネルギーソリューションの拡大、低 GWP 冷媒の研究開発などを注力していくことが基本戦略であり、さらにそれだけに留まらない広い視野での取組みが必要と考えている。
製品販売後の運転時のエネルギーマネジメントや再生可能エネルギーの活用、冷媒の回収・再生や、様々なカーボンオフセットの施策検討が必要である。何れにせよ、各取組みが本格的に定着するためには、それぞれの施策についての経済合理性が重要である。
西口 仁視 氏
日立建機株式会社
研究・開発本部 先行開発センタ 研究企画グループ 主任技師
弊社は建設機械メーカーです。
カーボンニュートラルへの取り組みは企業として当然の責務であり、「気候変動に挑む製品・技術開発」を重要課題(マテリアリティ)の一つとして特定し、活動しています。
カーボンニュートラルについては、「工場」と「製品」の両面から取り組んでいます。「工場」においては、エネルギー使用量の見える化や生産技術の革新による CO2 排出量の削減、再生可能エネルギー拡大などに取り組んでいます。「製品」においては、従来から取り組んでいる高効率油圧システムの開発はもちろん、電動化の開発も進めています。
また、 ICT と AI の活用による現場での使い方の改善による CO2 削減にも取り組んでいます。
松本 毅 氏
リンカーズ株式会社 オープンイノベーション・エバンジェリスト
日本は、2020 年 10 月に 2050 年カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。世界に勝てる可能性の高い分野だと考えます。
2050 年カーボンニュートラルの実現は、並大抵の努力では実現できず、エネルギー・産業部門の構造転換、大胆な投資によるイノベーションの創出といった取組を、大きく加速することが必要です。
経済産業省が中心となり、関係省庁と連携して「 2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。グリーン成長戦略では、産業政策・エネルギー政策の両面から、成長が期待される 14 の重要分野について実行計画を策定し、国として高い目標を掲げ、可能な限り、具体的な見通しを示しております。また、こうした目標の実現を目指すには企業の取組みだけでは実現出来ません。産官学が一体となった前向きな挑戦「攻めの産学連携オープン・イノベーション」が求められます。
国、経済産業省、研究開発法人、企業・大学・ベンチャーの取組みを情報収集した上でダイナミックなオープンイノベーションが求められます。
2022 年以降、オープンイノベーションのあり方が大きく変わろうとしています。
SDGs やカーボンニュートラルの実現といった社会課題の解決は、1 社単独では困難です。
企業や団体が、業界や領域の枠組みを超えて連携し、社会課題の解決に向けて協力するようなオープンイノベーションが必要だと考えています。
リンカーズはオープンイノベーションを支援する企業として、社会課題の解決に向けたソリューションを提供し続けられるよう、尽力してまいります。
2022 年もリンカーズはオープンイノベーション推進に関する情報を様々なかたちでお届けいたしますので、引き続きよろしくお願いいたします。
オープンイノベーションとは
「オープンイノベーション」は、2003 年に経営学者のヘンリー・チェスブロウ氏が発表した概念です。
「組織内のイノベーションを促進するために、意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイディアなどの資源流出入を活用し、その結果組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすこと」と定義されています。
「製品ライフサイクルの短命化」と「融合領域の拡大」、そして「目まぐるしく変わる外的環境」などを理由に、今日、オープンイノベーションの必要性が一層高まっています。
オープンイノベーションは主に、「事業開発型」「技術探索型」「シーズアウト型」の類型があります。
詳しくは…
▶▶オープンイノベーションとは?を解説いたしました記事を是非ご覧ください。
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