• 配信日:2021.02.02
  • 更新日:2024.05.16

オープンイノベーション Open with Linkers

5G ビジネスの最前線と 6G の最新技術 ① ~ Web セミナーレポート ~

2020年3月に5Gのサービスが開始し、5Gとテクノロジーを活用したビジネスが登場しました。これにより、その場に人がいなくても成立するビジネスプロセスの変革、ビジネルモデルの転換が進んでいます。

遠隔地にいても、まるでその場にいるかのようなバーチャル体験が5Gの大容量、高速通信、低遅延、多数接続で可能です。

身近な例では、エンタメ分野において、VRを使ったバーチャル仮想空間や、スマホ端末から360°視点映像の視聴が一般に浸透してきました。

ビジネスの分野でも、リモートで、複数端末から同時接続したライブ映像を使ったソリューションが次々に生まれています。

また、もうすでに6Gを見据えたbeyond 5Gの動きも見られます。2030年に実用化が見込まれている6Gの大容量や高速無線通信の高度化に必要な技術開発や各国の主導権争いが始まっています。

記事の前半では、5Gの特徴、5Gを活用したビジネスプロセスの変革やビジネルモデルの転換事例を紹介し、後半では、6Gを見据えたbeyond5Gの素子・材料開発の最新動向や事例をお伝えします。

本記事は前半パートになります。
★後半パートはこちらからご覧ください。

○登壇者
株式会社NTTドコモ 5G・IoTビジネス部 ビジネスデザイン担当 奥島 啓介様



5G始動!未来を変える新ビジネスの力


NTTドコモ・奥島啓介様
私はNTTドコモの5G・IoTビジネス部で、5Gを使った事業や社会の課題を解決する仕事をしています。

2019年のラグビーW杯では、スポンサーとして一足早く会場周辺に5Gの電波を提供し、そこから多くのパートナー企業と実証・社会実装を進めてきました。

これらの経験から得た5Gのビジネス事例を交えて、5Gの最新動向をお伝えします。

 

モバイルネットワークの進化

まずは、5Gの進化の歴史について触れます。「5G」とは5th Generation、第五世代の略称です。 第一世代である1Gは、音声のみを伝える肩からかけるショルダーフォンからはじまりました。

通信速度は、1993年の1Gが2.4kbpsで、2020年の4GLTEは最新仕様で1.7Gbpsとなっており、27年で70万倍のスピードに進化しました。

ムーアの法則(半導体の集積率の進化するスピード)では、半導体であれば27年で26万倍になるところを、モバイルネットワークはその3倍の速度で進化しているのです。

5Gの特徴は3つあり、高速・大容量、低遅延、多数接続です。

5Gはこれらの特徴において、4Gの約10倍のスペックを目指しています。 高速・大容量に関しては、ピークレート20Gbpsで4Gの10倍以上です。

低遅延に関しては、無線区間の伝送遅延(=反応速度)1ms以下も4Gの10倍、多数接続に関しては、LTEは1㎢に10万台収容できますが、5Gは4Gの10倍の100万台のデバイスが収容可能というスペックが標準化上の要求条件となっています。



5Gの特徴と目指す世界

2020年3月より5Gが商用化され、現在5Gを活用するためのネットワーク、デバイス、ソリューション、リソースが出揃ってきましたので、実際の5G始動状況を紹介していきましょう。

5Gのネットワーク




5G新周波数の割り当て

4Gと5Gの帯域の違いを例えると、4Gが2車線道路だったところ、5Gは20車線になります。その道路の上で、大量の車=データを行き来させることができます。



高速通信の展開

ドコモでは、5G用の新しい周波数帯を「瞬速5G」と呼んでいます。瞬速ではない5Gがあるので、「瞬速5G」と区別するためです。

実は、既存の4G周波数帯を転用して5G通信をすることができます。しかしこの場合、5Gとして通信していても実際は4Gの帯域を使っているので、4Gと同じ速度しか出ないということが起こります。

ドコモでは、こうした4Gの転用ではなく、新しい5Gの周波数の基地局を立てて、エリアを広げ、高速で高品質な顧客体験を追求しています。

モバイルキャリアのうち、4.5GHzの周波数帯を使えるのは現在ドコモだけとなっています。その特性を生かして、キャリアアグリゲーション(=複数の異なる周波数帯の電波を束ねて、1つに通信回線としてデータの送受信を行う技術)の開発に成功しています。

5G周波数帯を活用したキャリアアグリケーションを使うことで、最大4.2Gbpsの速度を提供することが可能になります。これは、2020年10月時点技術規格上国内最速です。

そして現在、この「瞬速5G」が使えるエリアを、積極的に展開中です。 5G提供開始時の2020年3月における5G基地局数は500局でしたが、2022年3月には人口カバー率55%に相当する2万局、2023年度には70%をカバーすべく3万2,000局を展開予定です。

5Gが使えるデバイス


2020年11月に実施したドコモの新商品発表会では、5G対応のスマートホンやモバイルルーターのラインナップが全12機種となり、新しいモデルもどんどん追加しています。

なお、5Gは、スマートホンだけではなく、高速・大容量という特性を活かして、様々なデバイスとの接続が進んでいくことが想定されます。

そこでドコモは、デバイスレンタルサービス「kikito」を2021年3月に開始予定です。 既に多様なデバイスが登場していますが、高価な場合もあるので、まずはレンタルで体験してから、購入を検討して頂けるサービスです。



5Gデバイスのレンタル提供

5Gを活用したソリューション


ドコモでは、5Gを用いてお客様の課題を解決する2つのサービスを提供します。

1. お客様の課題解決を支援する、5Gソリューション
2. より最適なネットワーク環境を提供する、ネットワークマスタマイゼーション

まず、「2. より最適なネットワーク環境を提供する、ネットワークマスタマイゼーション」からご紹介しましょう。

「ネットワークカスタマイゼーション」は、5Gをはじめとした通信ネットワークをお客さまのご要望に合わせて、エリア調査から構築設計・導入支援までをサポートするネットワークの総合的なコンサルティングサービスで、複数のネットワークソリューションで構成されています。


キャリー5G™

キャリー5G™は、可搬型の5G基地局です。イベントや建設現場で5Gを一定期間利用可能とするサービスです。5Gがまだ提供されていないエリアで5Gをご利用になりたい場合に、従来のような大規模な工事を伴うことなく、ご要望の場所に素早く5Gエリアをお届けします。


■ローカル5G構築支援

ローカル5Gによるネットワーク構築は、エリア設計をはじめ、免許申請などの専門知識が必要となります。 ドコモは、電気通信事業者として培ってきた5Gの無線システムの構築・運用ノウハウを活かし、お客さまのローカル5Gのネットワーク構築を支援します。


ドコモオープンイノベーションクラウド™



ドコモオープンイノベーションクラウド™

通常ドコモのモバイル端末からAWSやAzureといった一般的なクラウドサーバを利用する場合、ドコモ網からインターネットに出るルートで接続されます。このためインターネット区間の輻輳で遅延が発生したり、セキュリティ面でも不特定多数の悪意のあるアクセスから通信を守る必要が生じます。

これに対してドコモオープンイノベーションクラウド™は、ドコモのモバイル端末を番号認証することで、ドコモ網からインターネットに出ずに、クラウド基盤へダイレクトに接続できます。

インターネットに出ない、かつ、番号認証による接続管理を行うことで、低遅延で高いセキュリティを実現します。 また、ドコモオープンイノベーションクラウド™は、5Gソリューションのサーバーとしても活用されています。



ドコモオープンイノベーションクラウド™事例:Virtual DesiGn Atelier™️


Virtual Design Atelier™は、クラウドを活用した、遠隔地からの共同3Dデザイン制作を実現する生産性向上ソリューションです。

今まで、製造業等の設計作業は、紙にデザインし、それをCADに起こし、デジタル化し、モックを作っていましたが、本アプリケーションはVRグラスとコントローラを用いて、これらの一連の設計作業を全てバーチャルで完結させます。

そして、このアプリケーションをドコモオープンイノベーションクラウド™上に構築し、5G端末で接続することで、高速・低遅延性を活かし、アプリケーション内に用意されている多様な設計パーツを使うことができるため、遠隔地にいる複数のデザイナーがあたかも同じ空間にいるように円滑に作業ができ、生産性が格段に上がります。

続いて、「1. お客様の課題解決を支援する、5Gソリューション」について紹介します。

これまで対応してきた200を超える実証実験、社会実装案件で、5Gの使い所が見えてきました。 ソリューションの技術軸では、高速大容量を生かした、映像伝送ソリューションが最も多く、次に仮想空間、ロボティクス、IoT、AIという順で活用されています。

どういった産業分野で活用できるかという軸では、自治体、教育、放送局、製造業、医療で期待されている傾向が伺えます。ドコモでは、このような傾向を踏まえて、すぐにご利用頂けるソリューションパッケージを用意しています。

5Gソリューションは、パートナーとの協創によりどんどん増やしており、そのラインナップは今年3月に22ソリューション、11月には7ソリューション追加しました。

ここから、本5Gソリューションとその事例についてご紹介します。

5Gソリューション紹介


■映像伝送の事例:Swipe Video



SwipesVideo

SwipesVideoは、スマホの画面をスワイプするとあらゆる角度から映像を視聴できるサービスです。無観客コンサートでアーティストを撮影すると、様々な角度のライブやアーティストをファンに届けられます。

360°視聴ができるコンテンツを作る場合、カメラがたくさん必要で、さらに合成して編集する手間がかかります。手間暇コストがかかるところを、Swipe Videoなら、被写体を囲む形で複数のスマホを三脚で設置し、スマホのアプリから一斉に撮影するだけです。

編集も一挙にでき、リアルタイムで360°の映像が合成できます。本サービスの活用により、低コストで画期的で高度なコンテンツができます。


■映像伝送の事例:UMリモート監査™



UMリモート監査™

UMリモート監査は、遠隔の監査員と現場をつないでリアルタイムリモート監査を行うクラウドシステムです。製造業や店舗には監査がつきものです。専門の監査員を派遣しなくても、現地の従業員がスマホで操作して、歩き回るだけで、一連の監査、チェックリスト作成、映像保存、報告書作成までいっきにできます。

用意するものは通信環境とスマホ、アプリケーションだけですので、簡易にご利用頂けます。


■XRの事例:ABAL®️システム



ABAL®️システム

ABALシステムは、VRで見れる仮想空間に店舗等を作るソリューションです。VRグラスを着用し、仮想上の店舗を回遊して、陳列した商品を見ることができます。

VRグラスを使うと、アパレル店舗にいるような感覚で展示商品を確認できるだけでなく、同じようにVRグラスを使っている他のユーザーのアバターも視覚に入ってきても、ユーザー同士ぶつかることなく、仮想空間を動きまわって頂くことができます。

また、階層が変えられるので、他のフロアで別の商品を見ることができます。多階層化すると、利用者の実際の移動場所の広さに囚われず仮想空間を構築できるため、いろいろなフロアで様々な商品を見て頂くことができます。


■ARの事例:Ace Real



Ace Real

AceRealは、遠隔から作業支援を行うソリューションです。半透明のメガネ型のARグラスにカメラがついており、そのカメラの映像を遠隔地に送ることができます。また、ARグラスを通して遠隔地からの指示画像や音声を提供することも可能です。

そのため、現地の新人作業者が装着したARグラスの映像を本社の熟練スタッフが見ながら、新人作業者に指示を送って作業を円滑に進めることができます。すでに、工場の修理作業やエアコン取り付け作業などに活用されています。


■ロボティクスの事例:newme



newme

newmeは、カメラとディスプレイに移動できるタイヤがついたアバターロボットで、遠隔操作をしながら映像と音声でコミュニケーションを図ることができます。

ユーザーの顔がnewmeのディスプレイに表示され、現場で対応をしているスタッフや環境がnewmeのカメラを通してユーザーに伝わるとともに、遠隔操作で自由に現場を回遊して頂けます。

コロナ禍で現地に行けない、移動ができないような時でも、遠隔から病院でお見舞いをしたり、ミュージアム鑑賞したり、店舗でのショッピングを体験することができます。


■ロボティクスの事例:テレワークロボット



テレワークロボット

テレワークロボは、遠隔でロボットを操作して、店舗での配膳、運搬に利用できるロボットです。 最近は殺菌灯を搭載して室内を自動で殺菌するという使い方にひきあいが増えています。コロナ禍において従業員を使わずに安心かつ効率的に殺菌作業ができます。


■IoTの事例:EDGEMATRIX



EDGEMATRIX

EDGEMATRIXは、カメラの映像を現場(エッジ)で解析するソリューションです。 EDGEMATRIXストアで提供されるAIアプリより、現場の映像解析に適したAIアプリを選択・設定して頂くことで、簡単にAIをご活用頂けます。

現在EDGEMATRIXストアでは侵入検知、火災検知密接、密集検知、発熱検知といったAIアプリを提供しています。これらAIアプリの活用において、密な状態や発熱者がいるという解析結果が検出された場合は、アラームをあげ、現場の映像を遠隔から確認することもできます。


■IoTの事例:現場機器を遠隔操作



現場機器を遠隔操作するIoTモデル

ロボットやショベルカーなどの重機を遠隔操作したり、変電所で点検を行うロボットをリアルタイムに制御したりすることができます。人がやらないといけない作業を自動化・リモート化し、ビジネスプロセスの変革に貢献しています。


■海外展開の事例:5Gクロスボーダー基盤(5G X-Border Platform)



5Gクロスボーダー基盤(5G X-Border Platform)

ドコモオープンイノベーションクラウド™で提供するソリューションを海外の5G環境でもご利用頂けるよう、クラウド基盤を専用ネットワークで他国の5Gとつなげる取り組みを開始しました。

例えば、先ほどご紹介したAceReaをこの5Gクロスボーダー基盤に構築・接続することで、ARグラスを通じて日本の本社からタイの現地工場へ指示・指導をするプレサービスを開始しています。


5Gソリューションの拡大にむけて


続いて、ドコモがどのように5Gソリューションの拡大、社会実装を進めているか紹介します。


■オープンパートナープログラム™️



オープンパートナープログラム™️

ドコモでは、5Gにおけるニーズとシーズを結ぶビジネスマッチングを推進するために、「ドコモオープンパートナープログラム」を無償で提供しています。本プログラムには、技術のあるパートナー企業が多数参加しており、ドコモと共に5Gソリューションの創出に取り組んで頂いております。

また、そうした技術提供だけでなく、5Gを活用して課題を解決したいと考える自治体や企業の方々にも参加していただいており、現在3,500社を超える登録社数となっています。

本プログラムの主な取り組みをご紹介します。


取組み:情報・環境の提供

会員専用のWEBサイトで5Gに関わる最新情報や取り組み事例を提供しています。また、国内10箇所とグアムの計11箇所で、端末やソリューションを含めた5G環境をすぐにご利用頂ける検証環境も提供しています。


取組み:個別商談(マッチング支援)

5Gの特徴を活かしたソリューション技術をもつパートナー企業と、課題を解決したいパートナー企業をマッチングさせ、新たなソリューションやサービスを作りながら課題を解決していく活動も積極的に行っています。


取組み:docomo 5G DX AWARDS



5Gソリューションアセット発掘

5Gソリューションアセットを発掘するために、5GDXアワードというコンテストを開催しました。 100社以上の企業から応募があり、書類選考を通った10社にプレゼンテーションを行って頂き、大学の先生たちと審査を行い、最終的に4社を選出しました。

この中で、最優秀賞を受賞したのが「Swipe Video」で、先ほどご紹介したとおり、既に5Gソリューション化しています。「テレワークロボット」も選出から2ヶ月で5Gソリューション化を実現し、殺菌、配膳ロボットを提供しています。

<docomo 5G DX AWARDS™ 2020 最終選考会(2020/9/15)映像>



取組み:5Gマスター制度

5Gの活用を悩んでいる法人のお客様やパートナー様に向けて、ドコモでは5Gマスターという資格制度を作りました。5Gの技術や活用事例に精通した人材を増やし、法人のお客様やパートナー企業とスクラムを組んで、5Gの活用シーンを広げてみなさまのDXをどんどん加速させていきます。

また、5Gオープンパートナープログラムだけではなく、「Biz Solution by docomo」という会員プログラムもございます。本日ご説明したような5Gの活用事例や最新情報も含め、ビジネスで役に立つ情報をドコモからメルマガ、セミナー、コラム等を提供しています。

本記事は前半パートになります。
後半パートでは6Gを見据えたbeyond5Gの素子・材料開発の最新動向をご紹介していますので、こちらからご覧ください。