• 配信日:2026.03.03
  • 更新日:2026.03.03

オープンイノベーション Open with Linkers

【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

沖電気工業株式会社(OKI)常務理事、イノベーション責任者、デジタル責任者 兼 イノベーション推進室長の藤原 雄彦 氏が、製造業として世界初となる「ISO 56001」認証取得の舞台裏と、同社独自のイノベーション・マネジメントシステム(IMS)「Yume Pro」の全容を解説。組織文化の変革から生成AIの活用、具体的なイノベーション創出事例まで、持続的なイノベーションを実現するための実践知を詳説します。

※この記事は、リンカーズ株式会社が主催したWebセミナー『ISO 56001に基づく「全員参加型イノベーション」― OKI Yume Pro がもたらす価値創造の仕組み ―』の内容を編集したものです。

OKIが定義するイノベーションとは


日本の競争力低下に対する危機感

【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

現在、グローバルにおける日本の競争力は著しく低下しています。IMD「世界競争力ランキング 2025」において、日本は総合 35 位まで順位を落としており、特にビジネスの効率性は 51 位と、非常に残念な状況にあります。社会課題は多く存在するものの、新しい事業がなかなか生まれないという壁に、多くの日本企業が直面しているのが実態です。

マーケティングとイノベーションの使い分け:潜在ニーズの発見

【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

ピーター・ドラッカーは「ビジネスに必要なものはマーケティングとイノベーションである」と言っています。OKIでは、これらを明確に使い分けています。

マーケティングが既に顕在化した顧客課題を解決するのに対し、イノベーションは潜在的な顧客ニーズを探索し、顧客と一緒に価値を創造することを指します。現在は既に、安全で便利な世の中になっており、顕在化している課題は少なくなっています。だからこそ、私たちOKIは現場に入り込み、顧客自身も気づいていない課題を見つけ出す力が不可欠だと考えています。

イノベーションマネジメントシステム(IMS)の重要性:「新しいアイデア × 古いマネジメント = 売上ゼロ」

【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

イノベーションが進まない最大の要因は、アイデアそのものではなく、マネジメントのあり方にあります。私(藤原氏)がよく紹介するのは、「新しいアイデア × 古いマネジメント = 売上ゼロ」という方程式です。どんなに優れたアイデアがあっても、既存事業の尺度だけで測る古いマネジメントのままでは収益には結びつきません。成功のためには、マネジメントのやり方や仕組み、プロセスを変えることが重要です。

製造業初、ISO 56001の認証を取得したOKI「Yume Pro」


全員参加型イノベーション「Yume Pro」:一部の天才に頼らない組織作り

【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

私たちが目指しているのは、「全員が価値創造の主役」になり、「社会の大丈夫をつくっていく」ことです。一部の天才が起こすものではなく、社員一人ひとりがイノベーションの考え方を持ち、行動する「全員参加型イノベーション」を推進しています。その活動の基盤として、独自のマネジメントシステム「Yume Pro」を構築しました。

国際規格ISO 56001に基づくIMSの全社実装

【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

OKIは 2024 年、イノベーション・マネジメントシステムの国際規格である「ISO 56001」の認証を、国内初、かつグローバルでも製造業として初めて取得しました。認証取得そのものが目的ではありません。縮小しつつある主力事業(ATMやプリンターなど)を補う新しい柱を立てるため、全社で統一された「新しいやり方」を実装することが私たちの真の狙いです。

現場の課題を特定する「デザイン思考」とプロセス

【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

製造業が得意とする ISO 9001 のプロセスは「ソリューションの開発」から始まります。しかし、イノベーションにおいてはその前段が重要です。私たちは「機会の特定」と「コンセプトの創造」という解像度を高めるプロセスに最も重きを置いています。

「課題は現場にある」という考えのもと、現場に入り込んで顧客を観察し、問いを繰り返す「デザイン思考」や「アート思考」を取り入れています。顧客自身も気づいていない課題を見つけることで、初めてマネタイズ可能なビジネスが生まれるのです。

全員参加型イノベーション「Yume Pro」:トップのコミットメントと人材育成


社長が社員と直接語り合う「2時間の対話」

【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

イノベーションを文化として定着させるため、私たちのトップは自ら行動しています。社長の森は、月に数回、10 〜 15 名程度の社員と 2 時間じっくり直接話す「ダイアログ」を実施しています。

資料によれば、2018 年度から開始したこの活動には、これまでに延べ約 1,600 名が参加しました。社長自らがファシリテートを伴いながら「イノベーションの話を 2 時間がっちりやる」場を持つことで、経営層が「やめない」という意思を社員に示し続け、社内のカルチャーを徐々に変革しています。

1,426件の応募を生んだビジネスアイデアコンテストの進化

【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

「Yume Pro チャレンジ」というビジネスアイデアコンテストも重要な役割を果たしています。開始当初の 2 年間は私のようなイノベーション部隊からの応募が中心で 40 件程度でしたが、2020 年に事業部が初めて大賞を受賞したことで社内の雰囲気が一変しました。

それ以降、応募数は急増し、7 年間で累計 1,426 件もの応募が集まっています。現在は最終審査に 18 名の役員全員が参加し、上位に入った案件は事業部長が自ら「手挙げ制」で引き取るなど、全社を挙げた事業化の仕組みが整っています。

生成AI「ダ・ビンチ グラフ®」によるイノベーション創出


「Yume Pro」から誕生:IMSプロセスを組み込んだイノベーション創出支援

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イノベーションの「質・量・スピード」を劇的に上げるため、生成AIを活用したイノベーション創出支援システム「ダ・ビンチ グラフ®」を開発しました。これは、社内のビジネスアイデアコンテスト「Yume Pro チャレンジ 2023」で準大賞を受賞したアイデアから生まれたもので、現在は来年度の商用化に向けた開発の真っ最中です。このツールは、AI 自体が IMS の思考プロセスを搭載している点が特徴です。

AI が「機会の特定は十分か」「顧客に提案して何と言われたか」といった問いかけを行い、ユーザーがプロセスの抜け漏れに気づき、ビジネスの解像度を引き上げられるよう支援します。

蓄積した「知」を活用する社内データベース連携

このシステムの大きな特徴は、社内のデータベースと連携している点です。OKIであれば私たちが持つ技術情報を、他社さんであればその会社自身の技術情報を入れ込みます。そうすることで、AIが「これを活用したらどうですか?」と具体的な提案をチャット形式で行い、組織内の「知」をアイデアの初期段階から活用できるようにしています。

高度遠隔運用・物流・医療・半導体分野のイノベーション事例


ここからは、OKIのイノベーション創出事例を紹介します。

高度遠隔運用分野のイノベーション事例

リモートDXを支えるプラットフォーム「REMOWAY®」


【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

人手不足を解決するためのリモート DX 事例です。マルチベンダーのロボットやセンサーを統合管理し、遠隔から警備や受付、巡回業務を一元化します。ショッピングモールやオフィスビルなどの現場で、人とエッジデバイスが協調する運用を実現しています。

物流・倉庫業界の課題を解決するイノベーション事例

配送ルートを最適化する「LocoMoses ®」


【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

物流分野では、配送の「積載」と「ルート」を同時に最適化する AI ソリューションを展開しています。中小配送業者との実証実験では、配送コスト(燃料費+高速道路代)を 8 % 削減し、CO2 排出量の抑制にも貢献しました。

倉庫内の荷物探索を効率化する「SHO-XYZ ®」


【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

スマホで保管場所を可視化するシステムです。現場に深く入り込んだ設計により、作業工数を 75 % 削減するという劇的な成果を上げています。

ヘルスケア・医療現場を支えるイノベーション事例

行動変容サービス「Wellbit ®」による健康増進


【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

京都大学やヘルステック研究所と共同開発したサービスです。学術的知見に基づいたメッセージ介入で睡眠改善を促す「Wellbit ® Sleep」や、オフィス内の移動・階段利用を促し、偶発的なコミュニケーションや適切な休憩を誘発する「Wellbit ® Office」を展開しています。

体育ICTソリューションによる児童の安全管理


【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

大阪教育大学との共同研究により、体育授業での熱中症等の安全管理を行うシステムを開発しました。ウェアラブルデバイスを通じて児童の心拍数や活動量をリアルタイムでモニタリングし、先生がタブレットで確認できる仕組みを現場と議論しながら作り上げました。

看護師の負担を軽減する「尿監視支援システム」


【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

看護師の目視作業を自動化するため、私自身が病院の看護部長に頭を下げて現場に入り込みました。装置が「足に当たった瞬間に使わない」といった現場の厳しい声を受け止め、サイズ感までこだわって使い勝手を徹底追求しています。

次世代半導体分野の技術事例

低炭素社会を支える「CFB®技術」


【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

LED プリンター事業で培った独自の接合技術「CFB®」を応用し、信越化学工業と共同で次世代パワー半導体の開発を進めています。GaN(窒化ガリウム)を大口径化・縦型導電化させる技術は、データセンターの省電力化を支えるキーテクノロジーとして期待されています。

イノベーション・マネジメントシステム(IMS)ノウハウの開放:日本の競争力アップへ


シリコンバレー・ベルリン拠点による「知」の探索

【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

世界中から技術やアイデアを取り入れるため、シリコンバレーとベルリンにラボを設置しています。シリコンバレーでは「ベンチャークライアントモデル」によりスタートアップ技術を探索し、ベルリンではフォトニクス技術とオプトメカトロ技術の共同研究を推進しています。世界中の英知を組み合わせてイノベーションを創出することが私たちのスタイルです。

私たちのノウハウを外部へ提供する「IMS支援サービス」

私たちが 8 年間かけて培った文化改革や人材育成のノウハウを外部へ提供する「IMS支援サービス」を開始しました。私は、自社のノウハウを隠すのではなく、共通言語(IMS)として広めることで、企業間の共創を加速させたいと考えています。共通の言語で語り合えるパートナーを増やすことが、結果として日本の産業界全体の活性化に繋がると確信しています。

まとめ:現場基点の課題解決で「社会の大丈夫」をつくる


【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

イノベーションを成功させる鍵は、現場に入り込んで真の課題を見つけ、IMS という仕組みを使って粘り強く仮説を磨き続けることにあります。私たちは、現場に入り込んだ課題解決に真摯に向き合い、エッジ(現場)における圧倒的なポジションを確保することを目指しています。これが、不確実な未来において「社会の大丈夫」を支え続け、日本の国際競争力を再び引き上げる力になると信じています。

講演者紹介

【製造業初/ISO 56001】OKI「Yume Pro」1,426件のアイデアを生んだIMSの秘密

藤原 雄彦(ふじわら ゆうひこ) 氏
沖電気工業株式会社 常務理事 イノベーション責任者 デジタル責任者 兼イノベーション推進室長

【略歴】
1987年沖電気工業入社。電話交換機の開発に従事し、2001年北米向け交換機サブシステムのプロダクトマネジャー。
2004年サービスプラットフォームのマーケティング部長、共通技術センター長、情報通信事業本部IoTアプリケーション推進部長を歴任。
2021年 同社執行役員に就任しイノベーション責任者、2023年にデジタル責任者を拝命。
ISO 56001に基づいた「全員参加型のイノベーション」(Yume Pro)で、企業文化の改革とパートナー企業との共創活動を推進。
新規事業領域での社会実装に向け最前線で活躍中。

リンカーズのサービス紹介

リンカーズ株式会社は、ものづくり企業向けにイノベーション・オープンイノベーションを支援している会社です。技術パートナー探索やユーザー開拓など、ものづくり企業の様々な課題に対してビジネスマッチングを軸にしたソリューションをご提供しています。またあらゆる技術テーマでのグローバル先端技術調査も承っております。

技術パートナーの探索には「 Linkers Sourcing(リンカーズソーシング)」
Linkers Sourcing は、全国の産業コーディネーター・中小企業ネットワークやリンカーズの独自データベースを活用して、貴社の技術課題を解決できる最適な技術パートナーを探索するサービスです。ものづくり業界の皆様が抱える、共同研究・共同開発、試作設計、プロセス改善、生産委託・量産委託、事業連携など様々なお悩みを、スピーディに解決へと導きます。

技術の販路開拓/ユーザー開拓には「 Linkers Marketing(リンカーズマーケティング)」
Linkers Marketing は、貴社の技術・製品・サービスを、弊社独自の企業ネットワークに向けて紹介し、関心を持っていただいた企業様との面談機会を提供するサービスです。面談に至らなかった企業についても、フィードバックコメントが可視化されることにより、今後の営業・マーケティング活動の改善に繋げていただけます。

技術情報の収集には「 Linkers Research(リンカーズリサーチ)」
Linkers Research は、貴社の業務目的に合わせたグローバル先端技術調査サービスです。各分野の専門家、構築したリサーチャネットワーク、独自技術データベースを活用することで先端技術を「広く」かつ「深く」調査することが可能です。研究・技術パートナー探し、新規事業検討や R&D のテーマ検討のための技術ベンチマーク調査、出資先や提携先検討のための有力企業発掘など様々な目的でご利用いただけます。

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