- 配信日:2026.01.06
- 更新日:2026.01.06
オープンイノベーション Open with Linkers
D&I推進の切り札!フェムテック/エイジテック注目技術10選:ロンジェビティ&生体センシング技術解説
この記事は、リンカーズ株式会社が主催したWebセミナー『生体センシング技術紹介 ダイバーシティ&インクルージョンを推進する最新技術』の内容を編集したものです。
株式会社リンカーズOI研究所の渡辺 彩子(わたなべ あやこ)、喜多村 悦至(きたむら えつし)の両名が、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)をテクノロジーで支援するFem-Tech(フェムテック)、Inclusive-Tech(インクルーシブテック)、Longevity & Age-Tech(ロンジェビティ&エイジテック)の3つの領域に焦点を当て、生体センシング技術を用いた最新事例を詳細に解説しました。
また、多岐にわたる分野から選りすぐった注目技術10選を、その技術的特長と応用可能性とともに紹介しています。
記事の最後の方では、セミナーで使用した講演資料を無料ダウンロードいただけますので、あわせてご覧ください。
目次
●テクノロジーが推進するダイバーシティ&インクルージョン(D&I)
・D&Iの定義とSDGsとの関連
・D&Iを技術で支援する3つの主要領域
●Fem-Tech(女性特有の健康課題支援)の最新技術
・女性のライフステージと健康課題
・注目技術事例(Fem-Tech分野)
●Inclusive-Tech(障がい・マイノリティの生活支援)の最新技術
・注目技術事例(Inclusive-Tech分野)
●ロンジェビティとエイジテック(健康寿命延伸・自立支援)の最新技術
・注目技術事例(Longevity & Age-Tech分野)
●生体センシング技術調査レポートのご紹介
●講演者紹介
●リンカーズサービスのご紹介
テクノロジーが推進するダイバーシティ&インクルージョン(D&I)
D&Iの定義とSDGsとの関連
D&Iとは、Diversity(ダイバーシティ)とInclusion(インクルージョン)を組み合わせた概念です。
・ダイバーシティ(多様性):性別、年齢、障がい、国籍、価値観など、多様な特性や背景を持つ人材を受け入れた状態を指します。
・インクルージョン(包括性):受け入れた多様な人材が、その個性や能力を最大限に発揮し、活躍できる環境が整い、多様性が活かされている状態を意味します。
特に近年は、高齢者の社会参加も含めた、すべての人を対象とする社会の実現が重視されており、「誰一人取り残さない (leave no one behind)」というSDGsの理念とも深く関わっています。
| SDGsのゴール | D&Iとの関係 |
|---|---|
| 3. すべての人に健康と福祉を | 多様な健康課題への対応と福祉技術の推進 |
| 5. ジェンダー平等を実現しよう | 女性特有の健康課題への対応と、働きやすい環境の促進 |
| 8. 働きがいも経済成長も | 多様な人材の能力発揮と、生産性向上の両立 |
D&Iを技術で支援する3つの主要領域
D&Iの推進は、単なる組織改革に留まらず、生体センシングとAIを組み合わせたテクノロジーによる「ヒト支援技術」を通じて実現されようとしています。その中でも、特に革新が期待される3つの領域があります。
1. Fem-Tech(女性特有の健康課題支援):月経・PMSケア * 、妊活、女性特有疾患、更年期ケアなど、女性が抱える特有の健康課題を支援する技術です。
2. Inclusive-Tech(障がい・マイノリティの生活支援):視覚・聴覚・身体機能支援など、障がい者やマイノリティの日常生活における障壁を取り除く技術です。
3. Longevity & Age-Tech(健康寿命延伸・自立支援):フレイル予防 * 、認知機能維持、リハビリ・介護者支援、慢性疾患ケアなど、生涯にわたる健康維持と高齢者の自立を支援する技術です。
*PMSケア:月経前症候群(PMS)は、月経前の3~10日間に現れる、イライラや腹痛、頭痛などの精神的・身体的な不調で、月経開始とともに軽快・消失するものです。「PMSケア」は、これらの不調を軽減・管理することを目的としています。
*フレイル予防:加齢に伴い心身の活力(筋力や認知機能など)が低下した状態を「フレイル」と呼び、「フレイル予防」は、この状態を防ぎ健康寿命の延伸を目指すことを意味します。
Fem-Tech(女性特有の健康課題支援)の最新技術
女性のライフステージと健康課題
女性の健康は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量の変動に大きく影響されます。ライフステージに応じて、以下のような特有の健康課題を抱えることがあります。
・性成熟期(約20〜40代):月経前症候群(PMS)、月経不順、無月経、妊娠・出産、不妊、子宮内膜症、子宮筋腫、貧血、子宮頸がんなどです。
・更年期(閉経前後5年間):更年期障害、甲状腺疾病、うつ病などです。
・老年期(約60代以降):骨粗しょう症、認知症、子宮体がん、卵巣がんなどです。
これらの課題をテクノロジーで解決・支援するFem-Techへの注目は、2021年以降の日本における女性政策(女性活躍・男女共同参画の重点方針)とも連動し、一過性の流行ではなく、Google検索のデータでも継続的に高まっています。
注目技術事例(Fem-Tech分野)
月経・PMSケア:スマート月経カップ「Emm」
・概要: イギリスのベンチャー企業Emm Technology Ltdが開発中の、バイオセンサを内蔵したスマート月経カップです。
・技術的特長: 医療グレードのシリコン製カップに、静電容量式バイオセンサ、加速度計、温度センサを搭載し、体内で経血量、流速、色、凝固などのデータを最大12時間自動収集します。
・応用と価値: 手動記録や推測に頼らず、月経周期の健康状態を客観的に把握でき、子宮内膜症や子宮筋腫などの疾患兆候の早期発見に繋がる可能性があります。スマート月経カップで体内の正確なデータを直接取得する点に新規性があります。
産後ケア:在宅心血管モニタリングシステム
・概要: Georgia Institute of Technology(ジョージア工科大学)の研究グループが開発した、産後女性の在宅心血管モニタリングを目的とする胸骨貼付型ソフト・ナノメンブレンウェアラブルシステムです。
・技術的特長: 心電図(ECG)、光電式容積脈波(PPG)、温度センサ、Bluetooth通信を統合します。心拍数(HR)、心拍変動(HRV)、血中酸素飽和度(SpO2)、呼吸数(RR)、皮膚温に加え、PPG由来の深層学習によりカフレス血圧予測をリアルタイムで実現します。
・応用と価値: 出産後の女性(特に高リスク層)の心血管状態を非侵襲的に連続モニタリングし、遠隔医療を支援します。検証は、高血圧リスクのある黒人出産後女性20名を対象に実施されました。
日常健康管理・更年期ケア:ホルモンリアルタイム連続測定デバイス
・概要: イギリスのベンチャー企業LEVEL ZERO HEALTH LIMITEDが開発中の、DNAベースのセンサを搭載した微侵襲パッチ型デバイスです。
・技術的特長: 腕に装着する微侵襲パッチにより、間質液中のコルチゾール、プロゲステロン、エストロゲン、テストステロンなど4種のホルモンを、アプタマー技術(DNAベースのセンサ)を用いてリアルタイムで連続測定します。
・応用と価値: 従来の採血による一時点の測定と異なり、装着型で日常生活を妨げず、継続的なホルモンレベルの可視化が可能です。不妊治療や更年期、テストステロン補充療法などの臨床現場での個別化医療への貢献が期待されています。
日常健康管理:スマートリング「SOXAI RING 1.1」
・概要: 株式会社SOXAI(日本)が開発・販売する、バイタルセンシング機能を搭載した超小型・超軽量のチタン製スマートリングです。
・技術的特長: 光学式心拍センサ、血中酸素センサ、皮膚温度センサ、3D加速度センサを搭載します。取得データを独自アルゴリズムで解析して睡眠・体調・活動・ストレスをスコア化し、月経周期のトラッキング(温度変化に基づく排卵日推定を含む)にも対応します 。最大9日間連続駆動が可能です。
・応用と価値: 装着者に負担をかけず、個人のセルフケアから職域の健康経営まで幅広く活用され、未病対策を支援します。2025年2月に神奈川県主導の未病改善実証に参画したことも注目されています。
次のページ:Inclusive-Tech(障がい・マイノリティの生活支援)とLongevity & Age-Tech(健康寿命延伸・自立支援)の最先端事例を続けてご紹介します。