
- 配信日:2025.07.16
- 更新日:2025.07.16
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【2025年最新】AIからロボットまで!先端技術トレンド4選
2025年最新技術トレンド3:進化する3Dプリンティング技術

3Dプリンティングも進化を続けており、航空宇宙産業のエンジン部品から、建設現場の巨大な構造物、一人ひとりに最適化された医療インプラントまで、試作品だけではなく最終製品を製造する「AM(Additive Manufacturing:付加製造)」技術として、ものづくりの常識を塗り替えています。
大型・高強度を実現する「金属3Dプリンティング」
特に進化が著しいのが、金属材料を扱う3Dプリンティングです。従来の鋳造や切削加工では製造が困難だった、複雑な内部構造を持つ軽量かつ高強度な部品を一体で造形できるため、航空機や自動車の燃費向上、性能向上に大きく貢献しています。
関連事例
・高密度な金属造形が可能なAFSD技術 by MELDの事例
住友商事株式会社は米国のMELD社が開発したAFSD(Additive Friction Stir Deposition)を用いた装置を日本市場に導入しました。この技術は、回転するツールヘッドを金属材料に押し付け、発生する摩擦熱で材料を溶融させずに軟化させ、練りつけるように積層します。熱による歪みや割れが少なく、内部欠陥のない高密度な造形が可能です。そのため、溶接が難しいアルミニウム合金や銅など、多様な金属材料で鍛造品同等の組織と強度を実現します。
・溶接技術を応用したWAAM技術 by MX3Dの事例
日揮グローバルはオランダのMX3D社との共同研究により、溶接技術を応用したWAAM(Wire Arc Additive Manufacturing)をプラントの炭素鋼配管部材に適用しました。これはロボットアームの先端に溶接トーチを取り付け、金属ワイヤをアーク熱で溶かしながら肉盛りしていく技術です。材料の供給速度が毎時数kgと非常に速く、数メートル級の大型構造物の製造を得意とします。安価な溶接ワイヤを使用するためコストを抑えられ、既存の溶接技術や設備を応用できる点も大きな利点です。
・ロケットの主要構造物を3Dプリンタで製造 by Relativity Spaceの事例
米国の宇宙ベンチャーRelativity Space社は、独自に開発した巨大な金属3Dプリンター「Stargate」を用いて、ロケットの主要構造物の95%を製造するという野心的な計画を推進しています。これにより、部品点数を100分の1に削減し、製造期間を大幅に短縮することを目指しています。
・複雑な金属構造物を製造可能なレーザー粉末床溶融結合技術 by Velo3Dの事例
Velo3D社は、レーザー粉末床溶融結合(LPBF)方式を基盤とした独自の「Intelligent Fusion®」技術で業界をリードしています。造形前に形状を解析して最適なプロセスを決定するプリント準備ソフトウェア「Flow™」と、非接触型リコーター(粉末を敷き詰める機構)などの特殊なハードウェアを組み合わせ、従来は必須だったサポート構造を大幅に削減し、ほぼ水平(低角度)な面や複雑な内部流路を持つ部品の「サポートフリー」での造形を可能にしました。この技術は、ロケットのターボポンプや燃料噴射装置など、流体の効率が性能を左右する最先端部品の製造に不可欠となっています。
「建設3Dプリンティング」が変える建築の未来

建設業界が抱える深刻な人手不足や工期長期化といった課題に対する解決策として、コンクリート3Dプリンティングへの期待が高まっています。ノズルから特殊なコンクリート材料を吐出して積層していくことで、型枠を組む必要がなく、省人化と工期短縮を同時に実現します。また、コンピュータ制御により、曲線や複雑な形状の壁なども自由に設計・施工できるためデザイン性の高い建築物を生み出す可能性も秘めています。
関連事例
・3Dプリンターを活用した消波ブロックの整備 by 大林組の事例
神奈川県の海岸に設置する潜水突堤(消波ブロック)の整備工事において、3Dプリンターで製造したプレキャスト部材を適用しました。部材を一体化して軽量化し、海中での組立工程を簡素化することで、工期を15日から6日に大幅短縮し、作業の安全性も向上させています。
・3Dプリンティングを用いた建設部材構築技術「WAV3D」 by 前田建設工業の事例
前田建設工業は3Dプリンターで製造したユニークな形状のブロックを現場で組み立てる新しい工法を開発しました。波形の連環部でブロック同士を接続し、採光や換気のための開口部も同時に造形できます。型枠が不要で材料ロスを抑えられる上、解体や再利用も容易な循環型の設計が特徴です。
・迅速かつ低コストで住宅を提供する3Dプリンティング技術 by ICONの事例
米国テキサス州に本拠を置くICON社は、建設3Dプリンティング技術のパイオニアです。同社は、災害に強い住宅や低所得者向け住宅を迅速かつ低コストで提供するプロジェクトを世界各地で展開しています。最近では、著名な建築家と協力し、テキサス州に100戸からなる世界最大の3Dプリント住宅コミュニティ「Wolf Ranch」の建設を進めています。
最新技術トレンド4:フォトニクス技術が拓く光の未来

21世紀の産業を支える基幹技術として、電子(エレクトロニクス)に代わり、光子(フォトニクス)の重要性が増しています。光の速さ、大容量、低消費電力といった特性を活かすフォトニクス技術は、情報通信から医療、産業加工、センシングまで、あらゆる分野で技術革新のエンジンとなっています。
「シリコンフォトニクス」が支える超情報化社会
日々増大する世界のデータ通信量を支えるデータセンターでは、通信性能の向上と消費電力の抑制が喫緊の課題です。この課題を解決する切り札が「シリコンフォトニクス」と言われています。従来の半導体製造で培われた微細加工技術を応用し、シリコン基板上に光の回路(光導波路、光変調器、受光素子など)を高密度に集積する技術を用いて電気信号を光信号に変換する「光トランシーバ」などの部品を小型化・高性能化・低コスト化し、データセンターの通信能力を大幅に向上させます。
NTTが提唱する「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」構想も、このフォトニクス技術をチップ内部の配線にまで適用し、圧倒的な低消費電力・大容量・低遅延を実現することを目指すものです。
関連事例
・100mW級のDFBレーザダイオードチップ by 古河電気工業の事例
シリコンフォトニクス光トランシーバに搭載される光源として、電力変換効率を従来比で大幅に向上させた100mW級のDFBレーザダイオードチップを開発しました。これにより、800Gbpsを超える次世代の超大容量通信の低消費電力化に貢献します。
・高温環境でも安定して動作する「量子ドットレーザ」 by QDレーザの事例
独自の量子ドット技術により、摂氏100度といった高温環境でも安定して動作する「量子ドットレーザ」の量産を開始しました。高温になりがちなデータセンターや5G/6G基地局において、冷却装置の負荷を軽減し、システム全体の省エネに繋がる技術として期待されています。
・チップ同士を光で直接接続する「オプティカルI/O」by Ayar Labsの事例
データの移動は、AIコンピューティングにおける最大のボトルネックの一つです。米国のスタートアップAyar Labs社は、CPUやGPUといったチップ同士を電気配線ではなく光で直接接続する「オプティカルI/O」チップレットを開発しています。これにより、チップ間の通信帯域幅を劇的に向上させ、消費電力を大幅に削減することが可能になり、次世代のスーパーコンピュータやAIクラスターの性能を飛躍させると期待されています。
「メディカルフォトニクス」が実現する低侵襲医療

光技術は、私たちの身体を守る医療の分野でも目覚ましい進化を遂げています。身体への負担(侵襲)を最小限に抑えながら、診断や治療の精度を高める「低侵襲医療」の実現にフォトニクス技術は大きく寄与します。
関連事例
・血管内のプラークを分子レベルで分解/蒸散させる血管内治療システム by フィリップスの事例
特定の波長の光で病変部のみを破壊するレーザー治療は様々な領域で応用されています。同社は、エキシマレーザという紫外線をカテーテル先端から照射し、血管内のプラークを分子レベルで分解・蒸散させる血管内治療システムを開発しました。熱による周辺組織へのダメージを抑え、従来の治療法では難しかった複雑な病変へのアプローチを可能にしています。
・レンズ径0.1~0.5mmの超細硬性内視鏡 by 慶應義塾大学の事例
慶應義塾大学とエア・ウォーター社が共同で開発した超細硬性内視鏡は、先端のレンズ径が注射針と同等の0.1~0.5mmという驚異的な細さを実現しており、大掛かりな装置が必要だった関節内部の観察などを、外来で局所麻酔下で行うことで、患者と医療スタッフ双方の負担を大幅に軽減することが期待されます。
・超小型のバイタルサインモニタリングデバイス by Rockley Photonicsの事例
同社は、手首に装着するウェアラブルデバイス向けの、超小型の光分光分析センサープラットフォームを開発しています。従来のLEDを用いたセンサーとは異なり、レーザー光を用いることで、血中のグルコース(血糖値)や乳酸値、アルコール濃度、血圧といった、これまで採血が必要だった様々なバイタルサインを非侵襲で連続的にモニタリングすることを目指しています。これが実現すれば、糖尿病などの生活習慣病の管理や、個人の健康状態に合わせたパーソナライズドヘルスケアが大きく前進することになります。
今後、これらの技術は単独で進化するだけでなく、互いに融合しながら、より大きな変革を生み出していくでしょう。特にエージェンティックAIを中心としたAI技術が技術開発プロセスの高速化をもたらすことで、あらゆる分野でこれまでとは違うスピード感で開発が進められると予想されます。
以上が、2025年下期に特に注目すべき4つの技術トレンドの紹介でした。これらの最新技術トレンドは、今後のビジネスや社会のあり方を大きく変える可能性を秘めています。
リンカーズ株式会社では、このような技術トレンドをいち早く捉え、貴社のイノベーション推進を加速させるための様々なサービスをご提供しています。例えば、最適な技術パートナーの探索、先端技術の調査、そしてAIの活用事例を含む最新情報の提供を通じて、貴社の技術課題解決や新規事業創出を強力に支援いたします。
最新技術トレンドの活用や、具体的なイノベーション推進でお困りのことがございましたら、ぜひお気軽にリンカーズ株式会社までお問い合わせください。
講演者紹介

浅野 佑策
リンカーズ株式会社 イノベーション推進事業本部
【略歴】
東北大学工学部卒業( 2006 年)、東北大学大学院工学研究科修了( 2008 年)
株式会社東芝 生産技術センターにおいて半導体製造プロセスの研究開発に従事。
その後、アクセンチュア株式会社にて大手製造業における、工場デジタル化や業務自動化などのデジタルトランスフォーメーションを複数推進。
現職では、メーカーでの研究開発とコンサルティングの経験を活かして、エレクトロニクス領域を中心に、先端技術動向調査、技術マッチング、技術情報を効率的に収集するための技術開発など、製造業向けのイノベーション創出を支援している。
オープンイノベーションを支援するリンカーズの各種サービス
リンカーズ株式会社は、ものづくり企業向けにイノベーション・オープンイノベーションを支援している会社です。技術パートナー探索やユーザー開拓など、ものづくり企業の様々な課題に対してビジネスマッチングを軸にしたソリューションをご提供しています。またあらゆる技術テーマでのグローバル先端技術調査も承っております。
◆技術パートナーの探索には「 Linkers Sourcing(リンカーズソーシング)」
Linkers Sourcing は、全国の産業コーディネーター・中小企業ネットワークやリンカーズの独自データベースを活用して、貴社の技術課題を解決できる最適な技術パートナーを探索するサービスです。ものづくり業界の皆様が抱える、共同研究・共同開発、試作設計、プロセス改善、生産委託・量産委託、事業連携など様々なお悩みを、スピーディに解決へと導きます。
◆技術の販路開拓/ユーザー開拓には「 Linkers Marketing(リンカーズマーケティング)」
Linkers Marketing は、貴社の技術・製品・サービスを、弊社独自の企業ネットワークに向けて紹介し、関心を持っていただいた企業様との面談機会を提供するサービスです。面談に至らなかった企業についても、フィードバックコメントが可視化されることにより、今後の営業・マーケティング活動の改善に繋げていただけます。
◆技術情報の収集には「 Linkers Research(リンカーズリサーチ)」
Linkers Research は、貴社の業務目的に合わせたグローバル先端技術調査サービスです。各分野の専門家、構築したリサーチャネットワーク、独自技術データベースを活用することで先端技術を「広く」かつ「深く」調査することが可能です。研究・技術パートナー探し、新規事業検討や R&D のテーマ検討のための技術ベンチマーク調査、出資先や提携先検討のための有力企業発掘など様々な目的でご利用いただけます。
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