
- 配信日:2025.02.26
- 更新日:2025.03.05
オープンイノベーション Open with Linkers
【CES 2025】最新技術&トレンド徹底解剖!AI、IoT、デジタルヘルスなど
CES 2025 ソフトウェア/XR/AI 分野|注目技術と今後の展望
続いてはソフトウェアや VR / AR 、AI など、多様な分野についての技術を紹介していきます
エッジAIの基盤技術

CES 2025 におけるソフトウェア、 XR 、AI 分野の展示では、例年と比較して特に AI 関連の出展企業が顕著に増加しており、産業界全体への浸透が進んでいることが印象的でした。注目すべき点は、 AI が単なる付加機能ではなく、多くの技術の基盤として組み込まれるようになってきていることです。
特に大きな潮流として、クラウドでの処理からエッジ AI (デバイス上での AI 処理)へのシフトが急速に進んでいます。エッジ AI にはプライバシーとセキュリティの強化、リアルタイム処理、データ転送コストの削減といった利点があり、その重要性は今後さらに高まると予想されます。実際に昨年はクラウド処理を行っていた企業が、今年はエッジ AI へ移行している例も見受けられました。
エッジ AI を支える基盤技術の展示も多数ありました。例えば、画像左側のアメリカの企業、Ambient Scientificは、ニューラルネットワークの演算処理をアナログ回路で実現する低消費電力技術を発表しました。この技術によりコイン型電池1個で数年間の常時稼働が可能となり、ドライバー監視システムやウェアラブルデバイスへの応用が期待されています。
真ん中のシンガポールの企業、EdgeCortix Pte. Ltd. は、エッジ処理用の AI アクセラレータを展示していました。画像解析、運転支援、スマートシティなどへの応用を想定しており、特にIoTや自動車分野での需要拡大が見込まれています。
画像右側のカナダの企業、Blumind は、エッジ AI 向けのアナログコンピューティング技術を開発しました。独自設計により、プロセス電圧や温度のドリフト変動を抑制し、 AD/DA コンバーターを不要とすることでシステムの小型化と省電力化を実現しています。この技術は、ロボティクスやスマートモビリティへの適用が想定されています。
ARの日常生活への浸透と障害者支援への応用

次に AR / VR / XR の分野からいくつか技術を紹介します。
まずスマートグラスについて、先進的な光学技術、 AI 、特殊なハードウェアを融合したソリューションが多数登場しています。特に注目すべきは、スタートアップ企業による日常生活に溶け込む軽量な設計のデバイスが増加していることです。例えば画像にあるシンガポールやアメリカの企業が展示した 30、40 グラム程度の軽量なスマートグラスは、 AR 技術の生活への浸透を予感させるものでした。
画像左側、シンガポールのスタートアップ企業であるGyges Labsは、網膜に直接光を投射するスマートグラスを展示していました。フレームに搭載された小型プロジェクターが緑色の光を網膜上に投影し、あたかも目の前にディスプレイがあるかのような映像を実現します。このシステムはカメラを使用せず、光漏れの問題もなく、表示内容が他者から見えないという利点があります。現在は主にテキストデータの表示に特化しており、翻訳ツールとしての活用が想定されています。
真ん中のアメリカの企業、Captify Inc.は、レンズに直接表示機能を組み込んだスマートグラスを出展していました。このデバイスは、特定の話者の音声のみをキャプチャーして翻訳する機能を備えています。元々は難聴者向けに開発されましたが、海外旅行時のリアルタイム翻訳ツールとしての活用も期待されています。
画像右側、アメリカの Soliddd という企業は、独創的なアプローチのスマートグラスを展示していました。このデバイスは、視野の中心部が見えにくい症状を持つ患者向けに設計されました。マイクロレンズのアレイを使用して外界の画像を網膜全体に投影し、脳の視覚情報処理機能を活用して欠落部分を補完する仕組みです。展示された試作品では、視野の中央部への直接的な画像投影がないにもかかわらず、実際に覗き込むと補完された完全な映像として認識できることが実証されていました。
これらの展示から、AR技術が日常生活への浸透を進めるとともに、障害者支援などの社会的課題解決にも応用範囲を広げていることが伺えました。
XRのための次世代インターフェース

続いて XR のための次世代インターフェースの事例を紹介します。
CES 2025 の XR 分野では、操作性とインタラクションのあり方を革新するインターフェース技術が多数展示されました。特に、身体の一部を操作手段として活用する技術が注目を集めており、直感的で没入感のある体験を提供できることから、医療や産業分野への応用が期待されています。
画像左側のイスラエルの企業、Wearable Devices Ltdは、手首に装着するバンド型デバイスを展示していました。このデバイスは、指をつまむような動作を生体電位センサーで検知し、 AI で解析する仕組みを採用しています。特筆すべき点は、親指と人差し指、親指と中指といった、使用している指の組み合わせまで正確に識別できることです。また、慣性計測ユニットも搭載されており、手首の上下動作と指のつまむ動作を組み合わせた操作が可能です。展示ブースでは、画面上のオブジェクトをつまんで操作するデモンストレーションが行われました。
真ん中のアメリカの企業、Augmental Technologiesは、舌を使ったハンズフリーのコンピュータ制御システムを発表していました。マウスピースタイプのデバイスで舌の位置と圧力を感知し、カーソル制御やコマンド入力に変換します。このシステムは障害者支援だけでなく、外科手術や工場作業など、 AR インターフェースを使用する際のハンズフリー操作を実現します。
画像右側のカナダの企業、Haply Roboticsは、高度な触覚フィードバック機能を備えたペン型デバイスを展示していました。このデバイスは、仮想空間内の物体の質感、抵抗、弾力性、粘性などの特性を3次元的に再現できる触覚マウスです。展示ブースでは、ゴム状の凹凸のある表面をなぞる体験や、裸眼立体視ディスプレイに表示された骨の構造を触診するようなデモンストレーションを行っていました。触覚フィードバックは非常にリアルで、実物と見分けがつかないほどの精密さを実現しています。
CES 2025 Emerging tech分野|注目技術と持続可能性への貢献

最後に Emerging tech ということで、その他の分野からサステナビリティに関する技術を紹介します。
サステナビリティ分野は、過去数年間で非常に高い注目を集めてきましたが、 CES 2025 ではやや落ち着きを見せ始めた印象を受けました。しかし革新的な技術開発は着実に進んでおり、特に従来の概念を超えるエネルギー貯蔵ソリューションや環境配慮型材料の実用化が進展しています。
例えば画像の左側、シンガポールの企業の Flint が開発したペーパーバッテリーは、従来の電池の概念を覆す新しいエネルギー貯蔵技術として注目を集めています。またプラスチックの代替材料として、デンプンを基材とした新素材の開発も進んでいます。特に印象的だったのは、 100 % 生分解可能なデプンベースの素材を展示していたことです。この素材を使用したプラスチック袋や歯ブラシなどの実用例が紹介されていました。プラスチック袋の代替製品からはキャラメルのような香りが漂っていましたが、物性は従来のプラスチックと遜色なく、実用化に向けた期待が高まっています。
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講演者紹介

久米 大将
株式会社リンカーズOI研究所 オープンイノベーション研究所 リサーチマネージャー 博士(工学)
【略歴】
東京大学大学院 工学系研究科 博士課程修了。日本学術振興会特別研究員(DC1)として工業製品を対象とした超解像光学顕微技術を研究、博士号取得。同課程では、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)生体医用光学研究室にて生体観察用の超解像光学の研究にも従事。2022年 株式会社リンカーズ オープンイノベーション研究所入社。主にセンサ・機械・ソフトウェア分野における先端技術動向調査により、製造業の活性化を支援している。

渡辺 彩子
株式会社リンカーズOI研究所 オープンイノベーション研究所 リサーチマネージャー 博士(農学)
【略歴】
名古屋大学大学院 生命農学研究科 博士課程修了。2021年 藤田医科大学 消化器内科にて博士研究員を務め、消化器系疾病と腸内細菌叢の研究に取り組む。2023 年よりリンカーズ オープンイノベーション研究所に入社し、医学、ヘルスケア、バイオテクノロジー領域を中心に先端技術動向調査を行う。

蒲原 知宏
株式会社リンカーズOI研究所 オープンイノベーション研究所 リサーチマネージャー 博士(工学)
【略歴】
東京工業大学大学院 理工学研究科修了。
東陽テクニカにて、自動車ソフトウェア向け静的コードチェッカーや大容量デジタルアセットの高速管理ソフトウェアの技術営業に従事。その後、シーメンスにて構造物振動計測・解析、および騒音源探査ソリューションのプリセールスを行う。
2020 年よりリンカーズに入社し、オープンイノベーション研究所のプロジェクトマネージャーとして、自動車、建設、ヘルスケアなど、多岐にわたる最新技術動向調査を行う。
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