- 配信日:2024.11.27
- 更新日:2024.11.27
オープンイノベーション Open with Linkers
CESとは?CES2025の注目点と、これまでの振り返り
本記事は 2024 年 9 月 JTB 主催セミナー「ビジネスパーソンのための『 CES 徹底解剖』~世界最大のテクノロジーカンファレンスを紐解く~」に登壇した、リンカーズ株式会社(以下、弊社)で先端技術調査をおこなっている浅野の講演パートを書き起こしたものです。
CES とはなにか。これまでの動向や、過去の CES で注目のスタートアップの技術、そして CES 2025 の動向について紹介しました。
セミナーで使用した講演資料を、記事の最後の方で無料ダウンロードいただけます。ぜひ資料もあわせてご覧ください。
目次
● CESとはなにか。注目される理由
● CES 2025 の注目点~ これまでの動向を踏まえて~
● CES 2025 の出展企業のカテゴリー傾向( 2024 年 9 月時点)
● CES 2025 でも注目!過去のアワード受賞スタートアップの注目技術トレンド 15 選
○ CES アワード受賞スタートアップの注目技術:生活をもう一段階快適にする技術
・Anssil Co., Ltd. の事例
・Erable Inc. の事例
・Xander 社の事例
○ CES アワード受賞スタートアップの注目技術:日常の安全・安心を改善する技術
・GHOSTPASS INC. の事例
・Akidaia の事例
・Custo の事例
・SLIMDESIGN の事例
○ CES アワード受賞スタートアップの注目技術:環境保全を実現する技術
・ANPOLY の事例
・Coplanar Technologies Inc. の事例
・Enovix Corporation の事例
・Repia Inc. の事例
・Midbar Co., Ltd. の事例
○ CES アワード受賞スタートアップの注目技術デジタル技術を革新する新たな要素
・Prophesee の事例
・Frore Systems の事例
・Idyllic Technology の事例
●「 CES2025 テックベンチャーの先端技術動向調査レポート」のご案内*より詳しく知りたい方にオススメ
CESとはなにか。注目される理由
そもそも CES とは何かからお話しし、なぜ CES が注目されるのか、その理由についてもお伝えします。
CESとは
CES とは毎年1月上旬にラスベガスで開催される大規模な展示会で、もともとは家電をメインに紹介するイベントでした。しかし最近は家電に限らず、世界中のテクノロジーが出展する祭典のようになっています。リンカーズからも毎年数名の調査員を派遣して出展された技術を紹介する調査レポートを作ったり、セミナーを開催したりしています。
CESが注目される理由
なぜ CES が注目されるのか、その理由を3つにまとめました。
1つ目は、家電だけでなく IoT や Ai 、ヘルスケア、ゲーム、フードテックなどあらゆる産業のテクノロジーが集結し、実際にその製品やサービスに触れることができることです。そのため、分野によらず幅広い先端技術動向を知る絶好の場となります。
2つ目は、世界各国の大手企業が中長期のテクノロジービジョンや新しいコンセプトを発表する場として CES を活用していることです。世界的に見てもブランド力のあるイベントとなっています。
例えば、トヨタ自動車が 2020 年に、未来都市を作る『 Woven City 』という取り組みを発表しました。世界で初めて発表する場として選んだのがこの CES です。また、ソニーが電気自動車事業に参入していこうということで、電気自動車のモックを CES で初めて展示したことも。大きな話題になりました。他にも世界の名だたる大企業が「今年はこういう取り組みを始めるんだ」と発表する場として CES を選んでいます。世界をリードする大企業の動きをいち早く知れる場として、弊社も CES に注目しています。
3つ目は、大企業だけではなくベンチャー企業も数多く出展していることです。毎年 4,000 社ほどが出展するのですが、そのうちベンチャー企業が 1,000 社以上です。これほど多くのベンチャー企業の技術が集まる展示会は世界でも貴重です。CES に出展したベンチャー企業の、次の世代を担う黎明期の技術について、弊社では毎年 200 〜 300 社分の技術を調査してレポートにまとめています。
CES2025の注目点~これまでの動向を踏まえて~
画像は出展組織数と参加者数をまとめたグラフです。直近5年間を見ると、コロナ禍が始まる直前だった 2020 年の出展組織数は 4,500 社ぐらいでした。翌年 2021 年からオンラインのみの開催になったことで参加組織数は大きく減りましたが、 2022 年、 2023 年と増加傾向になり、 2024 年にはコロナ禍前の水準に戻ってきています。来年以降も出展組織数は伸びていくと予想されます。
こちらのグラフは、出展組織を国別に分け、上位 16 カ国をまとめたグラフです。開催国であるアメリカが毎年1位にランクインしていますが、2位以下を見てみると面白い動きが見られます。
1つは韓国の出展組織数が大きく増加していることです。 2020 年の時点で3位ではあるのですが、出展組織数を見るとそこまで多くはない印象です。しかし 2021 年〜 2023 年にかけて全体で2位になっています。実際に会場を見ても韓国企業のブースが目立っていました。
他に、中国も面白い動きをしています。 2020 年の出展組織数は非常に多かったのですが、 2021 年〜 2022 年あたりの米中関係が冷え込んだ時期は数が減りました。最近になってまた増えてきているなど、国際情勢も見え隠れしています。
日本は毎年だいたい6位〜 10 位にランクインしている状況です。特に最近は日本のベンチャー企業の出展が増え、注目されつつあります。
こちらはアワード * を受賞した組織だけに絞って、その数を国別にまとめたグラフです。アワードを受賞するということは、しっかりとした技術力が認められている企業という見方ができます。グラフを見て個人的に驚いたのが、 2024 年のアワード取得企業数は韓国がアメリカを大きく引き離して1位になっていることです。 CES のアワード受賞という観点では、韓国の技術が世界で一番評価されているとも言えます。
*アワード( CES Innovation Award )とは、CES に出展された製品の中から、優れたデザインとエンジニアリングを表彰するもの。詳細はこちら。
続いては CES に出展された技術のカテゴリーです。およそ 40 個に分類されます。カテゴリーを分類しどのカテゴリーが増えたかを見ることで、その時期のテクノロジーのトレンドをある程度把握することが可能です。
オレンジ色のカテゴリーが 2022 年に新規追加されたもので、スペーステックやフードテックの注目が高まってきました。 2023 年にはメタバースや NFT( Non-Fungible Token:非代替性トークン) 、クリプトカレンシー(暗号通貨)、 Web3 などが登場しました。 2024 年はアグリテック、ビューティーテック、コンストラクションテックなどが新しいカテゴリーとして出てきました。 2025 年の CES では生成 AI などが新しいカテゴリーとして追加されるのではないかと予想しています。
こちらは、カテゴリーごとの出展組織数をまとめたグラフです。過去4年間、全出展社のうち何 % がそのカテゴリーに該当するのかをプロットしています。グラフの紫色が「スタートアップ」というタグをつけて出展している組織で、毎年全体の 20 〜 30 % ほどとなっています。
赤が AI 、青が IoT です。 AI と IoT は多くの出展企業が関連する技術として定着しているように思えます。
他に上位のカテゴリーを見ると、水色のビークルテック( Vehicle Tech:車両に関するテクノロジー)、深緑のデジタルヘルス、黄緑のサステナビリティあたりの出展組織数が多い印象です。
また最近気になっているのは、ウェルネステクノロジーというカテゴリーの減少です。「ウェルネス」という言葉を耳にすることは多いのですが、グラフで見るとオレンジ色で示しているように、関連組織は少なくなってきています。このことから技術カテゴリーにも流行り廃りがあることがわかります。
CES2025の出展企業のカテゴリー傾向(2024年9月時点)
2025 年1月に行われる CES 2025 には、2024 年9月時点で約 1,800 社が参加登録しており、技術カテゴリーを公開しています。この 1,800 社はどのカテゴリーを登録しているのか集計してみました( 2024 年9月時点の集計)。その結果、 「スタートアップ」のタグをつけている企業が少ないなど、2024 年までと傾向が違う可能性があることが見えてきました。しかし、早い段階で登録している企業は大手であることが多いので、今後カテゴリーの情勢も変わってくるとは思います。そのため、このデータだけで 2025 年の傾向を断定するのは難しく、参考までにご覧いただければと思います。
アワード受賞企業のカテゴリーを分類したのがこちらのグラフです。
デジタルヘルス、 IoT 、ビークルテックあたりは、アワードを受賞している企業が多い印象を受けます。
CES2025でも注目!過去のアワード受賞スタートアップの注目技術トレンド15選
ここからは、CES 2024 でアワードを受賞していて、弊社として特に興味深いと感じたスタートアップの技術を 15 件紹介していきます。
CESアワード受賞スタートアップの注目技術:生活をもう一段階快適にする技術
Anssil Co., Ltd.の事例
Anssil Co., Ltd. という韓国の企業では、スリープテックに関する技術を開発しています。マットレスの中にセンサーやコントローラー、体重計などを搭載し、睡眠中の動きや睡眠パターン、眠りの深さなどをリアルタイムで計測するというものです。睡眠の測定だけでなくマットレスの硬さを寝やすいように調整することまで自動で実行する機能も搭載されています。
Erable Inc.の事例
Erable Inc. というアメリカの企業もスリープテックに関する技術を開発しています。睡眠状態の測定だけでなく、睡眠の改善をするためのフィードバックを行うことまで含めた技術です。
頭に巻くヘッドバンドのようなデバイスで脳波や眼球の動き、顔の向きなどをセンシングし、睡眠状態やリラックス具合を計測。その結果をもとに、より良質な睡眠をとるための振動を、骨伝導スピーカーを使って流すという仕組みになっています。脳波計測、骨伝導スピーカー、スリープテックという今ホットな技術3つを見事に組み合わせた事例です。骨伝導スピーカーを使うので、振動や音が外に漏れないこともポイントだと思います。
Xander社の事例
Xander というアメリカの企業では、耳が不自由な方向けに、相手の喋っている言葉が文字として表示される眼鏡型のデバイスを開発しています。小型のマイクを使ったリアルタイムの文字起こし機能を組み合わせたもので、技術としては以前からあるものですが、その組み合わせ方を変えることによって新しい価値にできる。そのような事例として取り上げました。
今回取り上げた事例の他にもマイノリティの方に向けた眼鏡型のデバイスとして、例えばスーパーの商品をカメラが読み取ってそれが何かを音声で教えてくれたり、目の前に立っている人が誰で、どんな表情をしているのかを音声で教えてくれたりするようなものも開発されています。
技術的に見ると必ずしも最先端ではなくとも、組み合わせを変えることでマイノリティの方の生活を助ける新しいデバイスを生み出す事例が多く見られます。
同じ文脈で、女性特有の悩みを解決するフェムテックや、赤ちゃんを育てるうえでの課題を解決するベビーテックに関する技術も進歩しており、特定の人が抱える問題を解決するアプローチとして力を入れるベンチャー企業が増えています。