• 配信日:2024.10.24
  • 更新日:2024.11.22

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スマート農業の注目技術~スマート農業技術活用促進法で見直したい「農業×AI/IoT」~

スマート農業の注目技術/事例:AIと機械学習による農業病害検出技術

スマート農業の注目技術~スマート農業技術活用促進法で見直したい「農業×AI/IoT」~

こちらは野菜の病気を早期に検出する技術です。病気の早期発見は収穫量にも影響します。また病気になりそうな野菜を発見した場合にどのくらい農薬を使うのか判断することにも関係する技術です。

AIと機械学習による農業病害検出技術の進化

スマート農業の注目技術~スマート農業技術活用促進法で見直したい「農業×AI/IoT」~

画像処理技術とディープラーニングを組み合わせることで、画像からこの植物は病気にかかっているかなどを早期に検出する技術の研究がトレンドとなっています。

論文の例の一番上のものは個人的に面白い技術だと感じています。デジタルツイン技術を使って農場全体のデジタルレプリカを作成し、作物の健康と収量を改善するという研究です。栄養不足の作物などを早期発見することに貢献します。

IoTとAIによるスマート農業病害管理

スマート農業の注目技術~スマート農業技術活用促進法で見直したい「農業×AI/IoT」~

こちらは IoT センサーを活用して収集したデータを解析して病害を発見することに主眼を置いた研究で、近年活発に取り組まれています。

画像だけでなくセンサーを使うことで土や空気の状態を分析し、植物の病気になりやすさを測定することもこの分野に含まれます。

スマート農業の注目技術~スマート農業技術活用促進法で見直したい「農業×AI/IoT」~

農作物の病害検出技術に取り組む企業も増加中です。

日本農薬株式会社の事例では、植物をスマートフォンで撮影すると、その画像を解析してどういった農薬を処方すべきか、どういう虫が付いていてどんな対策が必要かなどを測定するアプリを開発しました。

NTTコミュニケーションズの事例では、 AI とドローンを使って雑草を精密に特定し、ピンポイントで雑草のみに農薬を散布する技術を開発しています。

Intelinair という企業の事例では、画像と気象データを使って作物の健康状態を予測する技術を開発しています。

スマート農業の注目技術/事例:IoTおよびAIを活用した農業向けのスマート灌漑およびリアルタイム土壌監視技術

スマート農業の注目技術~スマート農業技術活用促進法で見直したい「農業×AI/IoT」~

水やりや土壌の状態を監視する技術です。この分野のトレンドをいくつか紹介していきます。

IoTとAIによるスマート灌漑システムの最適化

スマート農業の注目技術~スマート農業技術活用促進法で見直したい「農業×AI/IoT」~

こちらは IoT を活用することで土壌の水分量などの状態をリアルタイムで監視して、状態に応じて自動的に水やりをする技術です。最近は天候の予測を組み合わせることで水やりをし過ぎないようにし、水の使用量を削減するという取り組みも進められています。

水資源が少ない地域では、農業における水の使用量をいかに減らすかが重要な課題となっており、その解決策の一つとしてこちらの技術が役立つのではないかと思われます。

IoTセンサーによるリアルタイム土壌監視技術の進化

スマート農業の注目技術~スマート農業技術活用促進法で見直したい「農業×AI/IoT」~

こちらは土壌の監視に特化した研究です。例えば、センサーを使って土の ph や水分量、栄養素などを正確に測定し、クラウドを通じて分析することでどこにどれくらいの肥料を与えれば良いか、この土地にはどの作物が適しているかなどを判断することができる技術です。

スマート農業におけるセンサー技術の進化

スマート農業の注目技術~スマート農業技術活用促進法で見直したい「農業×AI/IoT」~

スマート農業を進めるうえでセンサー自体も進化しており、今まで検出できていなかったパラメータのデータを収集できるようにすることも開発トレンドの一つとなっています。

この分野も面白い研究が多く、例えば画像右半分の5つの論文の上から2つ目( doc id:830)では、作物の表面を通る水蒸気や二酸化炭素の流れを測定するデバイスを開発する研究などが行われています。精密な農業を行うには灌漑や土壌だけでなく空気中の水蒸気・二酸化炭素がどう流れていくかというところまで考えていく必要があるのかもしれません。

上から3つ目( doc id:12450)も個人的に面白いと感じた論文です。 e スキンという薄い電子基盤のようなものを植物の葉に付けることで、その葉の水盤の動きや状態などを直接的に観測する研究もされています。

スマート農業の注目技術~スマート農業技術活用促進法で見直したい「農業×AI/IoT」~

センサーを活用した灌漑や土壌の監視を行う技術事例も増えてきています。

DXAS 社の事例では、AI を活用して少量多頻度灌漑により、水の量を減らしたトマト栽培を行うシステムを開発しています。

Agrology の事例では、LoRaWAN 技術という低消費電力で無線通信が行える技術を持っている企業で、農家のデータ収集のために応用しようと取り組んでいます。

Quectel Wireless Solutions の事例では、土壌の状態や気象データを分析して、作物に適している肥沃な地域を探すという技術を開発しています。特に海外の大規模農業を行う際にどの土地でやるのが適切なのか判断することに役立つと思われます。

スマート農業の注目技術/事例:データ分析による農業意思決定支援技術

スマート農業の注目技術~スマート農業技術活用促進法で見直したい「農業×AI/IoT」~

どの作物を育てるべきか、作物の収量がどれくらいになるかなどといった意思決定に関する分析を AI を使って行うという技術も多く開発されています。

気候変動対応の作物収量予測技術

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気候変動のデータから作物収量を予測する AI 技術の研究もトレンドになっています。気象データから気候が作物にどのような影響を与えるかモデル化するという分野の研究です。

機械学習による作物推奨システムの進化

スマート農業の注目技術~スマート農業技術活用促進法で見直したい「農業×AI/IoT」~

どの作物を育てるべきかを推奨する AI の開発も進んでいます。土壌の特性や気象データを分析することで、この土地ではこの植物を育てると収穫量が最大化されるということを予想するといった研究です。

この技術が進化した未来では、例えば都道府県単位でどの畑でどの野菜を育てるのがベストかを予測できるようになるかもしれません。

スマート農業の注目技術/事例:IoT技術を用いた農業および畜産向けの環境監視と制御システム

スマート農業の注目技術~スマート農業技術活用促進法で見直したい「農業×AI/IoT」~

今までの事例は農業に偏っていましたが、最後は農業だけでなく畜産も対象となる技術分野について紹介します。

IoT技術による畜産業と健康管理

スマート農業の注目技術~スマート農業技術活用促進法で見直したい「農業×AI/IoT」~

電子タグなどを、例えば牛につけてその牛の健康状態などを監視したり、病気を検出したりするシステムの研究が進んでいます。

具体的には、画像の論文の上から2つ目( doc id:4692 )、口蹄疫や乳房炎を家畜の温度や動作、発する音などを使って検出する AI 技術が開発されています。それから4つ目( doc id:15323 )、熱のストレスがかかったときに乳牛のミルク生産量が変化するか予測する技術なども研究されています。また一番下の論文( doc id:10871 )は、埋め込み型のバイオセンサーで乳牛の体温をリアルタイムで監視し、熱ストレスを分析するといった研究の事例です。

IoTによる畜産業の制御

スマート農業の注目技術~スマート農業技術活用促進法で見直したい「農業×AI/IoT」~

動物の状態をセンシングしたり、環境を制御したりすることを絡めて取り組んでいる研究も活発化しています。

スマート農業の注目技術~スマート農業技術活用促進法で見直したい「農業×AI/IoT」~

畜産に関する AI や IoT の活用に関する技術事例も増加しています。

HerdStrong 社の事例では、飲む胃カメラのようなイメージのデバイスを開発しています。複数のセンサーを搭載したカプセルを牛に飲み込ませて、牛の行動を監視します。すぐに体外に排泄されることはなく体内に残り、牛の反芻や運動量、体温などを常に測定できるようになります。

KDDI の事例では、養殖に関して IoT センサーを使って養殖条件を最適化し、安定供給を目指す技術を開発しています。

株式会社アクボニの事例では、アクアポニックスと呼ばれる植物を IoT を使って効率的に生産するシステムを開発しています。

以上が Web セミナー『スマート農業/畜産の成功事例~食料供給困難事態対策法、基本法の改正から見直して考える』でお話をした内容となります。このように私どもリンカーズは、国内外の様々な技術情報を分析し、その結果をお伝えすることが可能です。もし、農業基本法の改正、食料供給困難事態対策法や、スマート農業技術活用促進法の施行によって直面している様々な課題の解決法や、その前段の課題の解像度を上げるために必要な情報を収集したいなどのご要望がございましたら、下のボタンか、ページ右上の問い合わせより面談のご要望をいただけますと、お力添えも可能かもしれません。些細なことで構いませんので、ぜひお話を伺わせてください。

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講演者紹介

スマート農業の注目技術~スマート農業技術活用促進法で見直したい「農業×AI/IoT」~

浅野 佑策
リンカーズ株式会社 イノベーション推進事業本部

東北大学工学部卒業( 2006 年)、東北大学大学院工学研究科修了( 2008 年)
株式会社東芝 生産技術センターにおいて半導体製造プロセスの研究開発に従事。
その後、アクセンチュア株式会社にて大手製造業における、工場デジタル化や業務自動化などのデジタルトランスフォーメーションを複数推進。
現職では、メーカーでの研究開発とコンサルティングの経験を活かして、エレクトロニクス領域を中心に、先端技術動向調査、技術マッチング、技術情報を効率的に収集するための技術開発など、製造業向けのイノベーション創出を支援している。

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