• 配信日:2024.06.12
  • 更新日:2024.07.18

シーズ技術の顧客開拓事例

製造業2社が語る「保有技術の戦略的活用事例」~三菱電機株式会社編~

この記事は、リンカーズ株式会社が主催した Web セミナー『製造業2社が語る「保有技術の戦略的活用事例」』のお話を編集したものです。

三菱電機株式会社 知的財産センター 知財戦略部 技術資産活用グループ 主任の田村 大生(たむら ひろき)氏より、技術販路開拓サービス「 Linkers Marketing(リンカーズマーケティング)」の活用事例と、サービスを利用した感想をお話しいただきました。

知財部門の方はもちろん、それ以外の方も参考になる内容となっておりますので、ぜひご覧ください。

三菱電機株式会社の知財部門について


まずはリンカーズのサービスの利用に至った背景を説明するうえで、弊社(三菱電機株式会社)の知財部門の活動について紹介いたします。

製造業2社が語る「保有技術の戦略的活用事例」~三菱電機株式会社編~

弊社は非常に多くの知的財産権を保有しています。この知的財産権を何に使っていたかというと、従来は自社の事業を守るためという色合いが強い状況でした。言い換えると他社と競い合うために保有していました。しかし、近年の外部環境の変化などを踏まえると技術を一社で独占していてもその変化に対応できなかったり、複雑化する社会課題に対応できなかったりといった課題があり、知的財産権を、技術を守るため・独占するために使うのではなく、技術を起点として他社様と共創するために活用するということが大切だろうという発想の転換に至りました。

製造業2社が語る「保有技術の戦略的活用事例」~三菱電機株式会社編~

こういった発想のもと、現在行なっている活動が『 Open Technology Bank 』というものです。特許権に限らずノウハウも含めた弊社の技術資産をパートナー企業の技術や知恵、アイデアなどと掛け合わせることによって新たなビジネスを創出したり、社会課題の解決をしたりするという取り組みです。

弊社はいわゆる総合電機メーカーであり、幅広い分野の課題解決に資する技術を豊富に保有しています。そういった技術を独占するのではなくさまざまなパートナー企業様の持っている技術や知見と掛け合わせることによってより多くの社会課題を解決できるのではないかと考えています。

製造業2社が語る「保有技術の戦略的活用事例」~三菱電機株式会社編~

本活動は私たち知財部門が主導しているため、入口としては「弊社の技術を使ってみませんか」というようなお声掛けをパートナーとなる企業にさせていただくことが多いです。出口としてはライセンスアウトだけでなく、他社と PoC( Proof of Concept:概念実証) や共同開発をしたり、紹介した技術に多くの企業・業界の方々から関心を寄せてもらえるのであれば技術として出すのではなく、技術を使った製品・サービスとして自社で事業化をして提供したりということも見据えた活動です。休眠特許をライセンスしたり、開発したけれど上手くいかなかった技術を切り売りしてマネタイズを図ったりといった活動ではなく、自社で使っている技術を新たな用途で使えないかパートナー企業とお話しさせていただきながら模索しています。

リンカーズとの関わり


補足)画像内に記載の「提案活動」について、シーズ配信サービスに登録の大手企業数は 300 社超から 450 社超に数字が更新されています。( 2023 年 6 月末時点の数字)
補足)画像内に記載の「提案活動」について、シーズ配信サービスに登録の大手企業数は 300 社超から 450 社超に数字が更新されています。( 2023 年 6 月末時点の数字)

リンカーズとの関わりでいうと、パートナー企業を探すところでお世話になっています。

『 Open Technology Bank 』活動を始めた 2021 年当時は課題が山積みでした。私たち知財部門が上層部からの承認を取って活動をスタートしましたが、知財部門自体が他社と共創できるような技術を持っているかというとそうではなく、それらを有しているのは事業部門や研究開発をしている部門です。そのためまずは他部門の協力が必要だということで、部門ひとつひとつに『 Open Technology Bank 』活動の趣旨やメリットを説明して回りました。そうすると「やるべき活動だと思うけれど、自分たちには目の前の事業がある中でそういったプラス α のことをするのは難しい」と協力を渋られてしまうこともありました。私たちとしても既存事業に注力することが前提にあることを認識していたため、なるべく工数がかからない形で良いので協力してくださいと技術部門の協力を仰ぎました。

そういった調整を行いながら、最低限 Technology Bank といえるくらいの技術が集まったところで、社外の方々の意見を伺うフェーズに移ったところ、社外とのコネクションがほとんどないという壁に阻まれました。私たちは知財部門であるため他社の知財部門の方とは話ができるのですが、知財部門同士で話をすると技術は独占できるのか、ライセンス料はいくらなのかといった話になりがちだったのです。これは私たちがやりたいことではなく、他社の知財部門と話すのは最適な進め方ではないという判断に至りました。では、弊社の技術部門に他社との接点があるか聞いたところ、回答は「無い」とのことでした。既存顧客の技術部門の人とは製品やサービスに関してやり取りをすることはあるものの、今まで関わりのなかった企業の技術部門とのコネクションはなく、弊社の営業部門に聞いても技術を新しい用途で使えるかどうかに関する話をするのは難しいという意見が返ってきたのです。このように、技術は集められたものの他社とのコンタクトに悩んでいました。

さまざまな施策を考え、効果的な方法を探す中で、モノづくりに関するビジネスマッチングに関して高い評価を得ていたリンカーズを見つけ、話を聞いてみることにしました。
いざ話を聞いてみると、まずは弊社が売り込みたいシーズ技術の紹介資料を作ってくれるとのことでした。そのうえで、その技術を弊社とリンカーズで決めた 50 社に積極的に売り込みをしてくださるとのことでした。それ以外にもリンカーズが持っているアカウント網に資料を送っていただいて引き合いがあれば面談につないでいただけるとも伺いました。面談というのは当事者間のみで行えば良く、リンカーズを介することで特別な制約はないとのことで、まさに弊社が課題に感じていたことを補ってもらえるサービスと感じて利用を開始しました。

Linkers Marketingを活用した事例(防汚コーティング技術)


実際にどのような案件で利用したかというと、何十件もお願いしているのでそのうちの一つにはなるのですが、防汚(ぼうお)コーティング技術があります。元々は弊社のルームエアコンなどに使っていた技術で、簡単に説明すると汚れにくくするためのコーティング技術です。エアコンの汚れを防ぐために開発した技術ではあるのですが、当然汚れにくくしたいという意味では異業種でもお使いいただける技術だろうという思いがあったので、リンカーズを使って異業種の企業にコンタクトを取りました。

当時、候補リストとして 50 社に絞りました。ターゲット業界としては、医療機器、住宅設備、分析機器、掃除用具、自動車など。結果として7社と面談をしました。面談をした企業にはコーティング剤のサンプルなども提供してサンプル評価をしていただき、高い評価を受けることができました。一方で、7社のうち2社がもともとターゲットにしていた 50 社に含まれていた企業で、残りの5社はリンカーズが行った、アカウント網への一斉情報配信をきっかけに面談に至った企業でした。元々、単なる技術のライセンスではなく事業化をしたいとの構想はありましたが、一足飛びでこの技術を使って事業化するのは難しいというのが社内的な感覚ではあったのですが、リンカーズ経由で面談した企業から高評価をいただいて、単に技術をライセンスして自前でコーティング剤を作ってくださいというよりかは、コーティング剤として販売してほしいという声をたくさんいただけたので、弊社グループで事業化して販売しようというような判断に社内でも方針が変わりました。

リンカーズのサービスを利用してとても良いと感じたポイントとして、提案を辞退する企業からもその理由をいただけることがあります。防汚コーティング技術でいうと、辞退の理由として多かったのが、「コーティング剤が透明だったら良かったのに」というものです。このコーティング剤を用いると白濁色になってしまうため、自動車のボディや屋根の瓦などには使いにくいという声をいただきました。裏を返すと透明であればニーズが高いということで、コストをかけてでも改良してみようという方針になり、透明度の高いコーティング剤の開発に至りました。そうしたことで、エアコンにのみ使っていた防汚コーティング剤を弊社内の別事業でも使えるようにもなりました。技術に対する要望を他社からもらえると、自社内でも新しい用途の発見にもつながるので、非常にありがたいと感じました。

Linkers Marketingを活用した事例(プラスチックのマテリアルリサイクル技術)


製造業2社が語る「保有技術の戦略的活用事例」~三菱電機株式会社編~

もう一つ簡単に事例紹介をしますと、弊社にはプラスチックのマテリアルリサイクル技術があります。これは元々、弊社の家電をリサイクルするために使っていた技術です。しかし家電以外でもプラスチックであればリサイクルできるだろうということで、リンカーズのサービスを利用して社外にも PR させていただきました。すると多くの企業から高評価をいただき、「ライセンスではなく三菱電機としてプラスチックリサイクル事業をやってほしい」という声をたくさん得られたので、 2024 年度中の事業化に向けて準備を進めています。

このようにリンカーズのサービスは、弊社の『 Open Technology Bank 』活動を進めるための、他者とのパイプとして欠かせない存在になっています。

【登壇者】

製造業2社が語る「保有技術の戦略的活用事例」~三菱電機株式会社編~

田村 大生 氏
三菱電機株式会社 開発本部 知的財産センター 知財戦略部 技術資産活用グループ 主任

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こちらは三菱電機株式会社の知財部門の3名の方へのインタビュー記事です。一部内容が重複している箇所もございますが、Linkers Marketing をユーザーとして何度もご活用いただいている田村氏より、Linkers Marketing を上手く使いこなすポイントのほか、決裁者の方々のご意見も掲載しています。こちらもぜひご覧ください。

三菱電機株式会社の知財部門で何度もご利用いただいている、
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