- 配信日:2022.08.05
- 更新日:2022.08.05
ビジネスマッチング事例
既存の枠組みに捉われない信用金庫のビジネスマッチング
ー 取引先の課題を顕在化する方法 ー
前田 : お客さんの課題を掘り起こして、適切なソリューションを提案するマッチング方法として、どのような取り組みをされていますか。
宇佐美 : お客様の課題をお聞きする取り組みは、現在も行っていますが、その課題の解決策の提案に苦労しています。
当金庫では、独自に契約をした専門家の先生にご同行いただくことで、ニーズをしっかりヒアリングし、課題解決の第一歩を一緒にご提案しております。
前田 : どういった専門家がいらっしゃるのでしょうか。
宇佐美 : ITコーディネーター、専門的な大学の先生、変わったところでいえば、農業のご支援をされる方、フードコーディネーター、非常に多岐に渡る専門家の先生と契約をしております。
昨年は約1,800件、当金庫の費用負担で専門家の先生を派遣しています。解決の第一歩に向けて職員とともにヒアリングをし、その後の具体的なマッチングつなげるやり方が、当金庫のスタイルです。
前田 : 年間1,800件だと月間150件ぐらいありますよね。
宇佐美 : 昨年は補助金のニーズが非常に高かったので、イレギュラーです。例年1,300件を超える専門家派遣をさせていただいております。
前田 : それによって課題を掘り起こしていく感じでしょうか。
宇佐美 : はい、そうですね。
前田 : 専門家に頼りすぎると、職員の能力値は改善されないという懸念はないでしょうか。
宇佐美 : おっしゃる通りです。専門家の先生にお願いする場合も、必ず職員を同席させます。そこで、ヒアリングの正しい順番や、課題を引き出す方法など、先生の持っているノウハウを学ばせていただいています。
先生がお答えする全てを、すぐには吸収できませんが、回数を重ねることで、少しずつ職員からもお話しできるようになってきます。
前田 : ちなみに、専門家を主体としたマッチングを始めたのは、何年ぐらい前ですか。
宇佐美 : 15年ぐらい前からです。 前田 : 世界のメガトレンドに従って、お客様課題は変わってくるのでしょうか。 宇佐美 : おっしゃるとおりですね。 前田 : 1,800回もやっていると、同業種のお客さんは課題が似通っているのがわかってくるのではないでしょうか。 宇佐美 : 非常に似ています。大きくまとめれば20ぐらいの課題に絞られてくると思います。 前田 : つまり2:8の法則ですね。我々も中小企業にヒアリングする活動をやっているのですが、20ぐらいのソリューションを持っていれば、ある程度は対応できます。専門家と回っていると、職員の方も鍛えられて、やはり専門家と二人三脚で対応することは重要ですね。 丸山 : 中小企業の経営者は、経営能力に長けていらっしゃる一方で、勘や経験則に頼って事業を進めることも多いため、事業の見える化ができてないというのも課題の一つです。そこで弊庫では、15年前から国の予算が付いた新現役交流会と新現役制度というものを活用しています。
元々大手企業で特定の分野に特化していた方が、中小企業の課題解決に一緒に取り組んでおります。お客様と新現役という専門家を引き合わせる時に、必ず私どもの職員が同席をしています。同席することで、知見を吸収し、同席した職員の成長にもつながります。
経営者だけではなくて、後継者が中心になるケースが多いです。そういった意味でも、非常に効果があると思っております。
前田 : おっしゃる通りソリューションプッシュ型だと的を射ておらずマッチングが進まないこともあります。専門家の力を借りて、本質的な課題を表に上げていくことが本当に重要だと思っています。
今後、専門家と一緒に二人三脚で進めながら、様々な成功事例ができてくると思います。そういった成功事例、あるいは各社が作ったソリューションを上手く支え合ったり、シェアしていったりする文化が必要だと思っています。