• 配信日:2024.06.05
  • 更新日:2024.06.05

オープンイノベーション Open with Linkers

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

この記事は、リンカーズ株式会社が主催した Web セミナー『産学連携学会会長 × ダイキン執行役員 産学対談~これからの産学連携について~』のうち、ダイキン工業株式会社 執行役員 テクノロジー・イノベーションセンター 副センター長の 河原 克己(かわはら かつみ)様による講演を編集したものです。

ダイキン工業の産学連携を中心としたオープンイノベーションの取り組みについて、お話しいただきました。

製造業におけるオープンイノベーションや、大学との連携に興味がある方は、ぜひお読みください。

ダイキン工業の経営・事業環境と「当社独自の強み」


まずは弊社(ダイキン工業株式会社)でオープンイノベーションを行う意義を知っていただくために、経営・事業環境についてお伝えします。

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

2000 年代は「失われた 20 年間」と呼ばれることもあります。その間に弊社は海外市場での事業成長をベースとしながら非常に大きな成長を遂げることができました。売上規模は7倍、従業員数は 10 万人に迫っているところです。事業展開国数も、国連加盟国 193 カ国のうち 170 カ国以上に達しています。生産拠点も 105 拠点以上と大幅に増加。グローバルに展開してきました。

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

事業内容は、画像にある円グラフは 2022 年度のものですが、 2023 年度は連結売上高が初めて4兆円を超える見込みです。売上のうち空調機器の販売事業が 90 % を占めます。現在は技術領域の裾野を広げる必要性を感じており、それがオープンイノベーションに取り組んでいる背景です。

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

画像は弊社の空調事業の売上推移を取り出したグラフで、一番下の水色の部分が日本国内事業の売上です。約 5,000 億円規模で安定しています。上の紺色の部分がアメリカ市場の売上です。空調最大市場かつ空調機発祥地のアメリカで本当の No.1企業になりたいということで提携・連携・ M&A を駆使しながら成長を続けています。

IEA という国際エネルギー機関の予測によると、空調市場は 2050 年までに3倍に成長するといわれています。グローバルサウスを中心にまだまだエアコンの需要は伸びるということで、その中でどういった協創戦略で成長を拡大していくかが弊社の基本戦略になっています。

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

こういった取り組みを社内で振り返り、弊社独自の強みとしては当然モーター、インバーターをはじめとした省エネ技術・環境技術・空気関連技術の強さ、それから世界中に広がっている強固な販売網、集中生産ではなく市場の最寄地で生産・販売する地産地消型のモノづくりがあると定義づけています。ただ、もう一段深ぼりした弊社の独自性として、弊社会長である井上が引っ張ってきたヒトを基軸におく経営もあると考えています。後ほど少し出てきますが技術力、企画力、販売力などのスキルは全て人間の力です。一人ひとりの社員がヒトとして成長することで、その総和が弊社の成長につながることを本気で信じ、ヒトを成長させることにさまざまな方法で注力しています。

戦略経営計画「FUSION25」について


将来のイノベーションに向けて現在取り組んでいる「 FUSION25 」という戦略経営計画についてお伝えします。

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

経済価値として我々は 2025 年に売上 4.5 兆円、営業利益 5,000 億円を目指しています。加えてグローバルにビジネスを展開するために地球環境への配慮・貢献といった意味での社会価値を伸ばしていくことも欠かせない目標です。したがって日本政府に先駆けて自らカーボンニュートラルを宣言し、 2030 年に排出量半減、 2050 年に排出量ゼロを目指しています。

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

グローバル化に向けて既存事業を北米・インド・グローバルバルサウスへと展開していくことはもちろんですが、カーボンニュートラルを達成する中で新規事業の発掘への挑戦をしていくこと、そして機械をお客様に提供して終わりではなくお客様とつながるソリューション事業として価値創造していき、空気を通して安心で安全な空間を提供する「コトづくりビジネス」へと事業を拡大していくことという大きな成長戦略を立てています。この成長戦略を進めるために外部との協創活動、オープンイノベーションが必須です。

グローバルR&Dをリードするテクノロジー・イノベーションセンター


産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

現在テクノロジー・イノベーションセンターが中心となり、弊社全体のオープンイノベーションを牽引(けんいん)しています。空調事業が世界トップになった頃、世界に通じる R&D センターを作ろうとしたときに、これだけ技術進歩が早い世の中で全てを自前主義で行うのは対応できないので、きっちり連携・提携することを通じて価値創造できる R&D センターを、「協創」をコンセプトに作ろうということが当初から決まっていました。

「 FUSION25 」のドメインを広げ、私たちがエアコンメーカーとして培ってきた機械技術、電気・電子技術をエアコンの領域名に落とすと、ヒートポンプ技術やモーター・インバーター技術に分けられます。こういった技術の強化はもちろん、ソリューションやエネルギー問題、環境問題や人間のウェルビーイング、ヘルスケア問題まで視野に入れていこうとすると、不足している技術ドメインや技術領域はたくさんあるのです。その足りない部分を大学の専門家の先生やベンチャー企業の方々、異業種の方々と連携して加速するために協創活動、オープンイノベーションを強化しています。

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

テクノロジー・イノベーションセンターの特徴を紹介します。大きな企業になると、自動車メーカーでも家電メーカーでも基礎研究所・応用研究所・商品開発センターと細かく分かれていくと思います。一方弊社は研究所と事業部門の先行開発部隊を一体化する方向を選びました。そのほうがイノベーション創出や技術の商品化・事業化は加速できるという考え方で、社内も渾然一体(こんぜんいったい)となり、研究者のみでなく事業部の先行開発技術者が同居したテクノロジー・イノベーションセンターとなっています。

次のページ:ダイキンの産学連携の事例などを紹介します。