- 配信日:2024.01.22
- 更新日:2024.06.10
オープンイノベーション Open with Linkers
カーボンニュートラル技術20選〜材料・素材・リサイクル技術編~
この記事は、リンカーズ株式会社(以下、弊社)が主催した Web セミナー『材料・素材・リサイクル技術 カーボンニュートラル2023年注目技術20選~第3弾(全4回)~』のお話を書き起こしたものです。
弊社では、カーボンニュートラルの先端技術とトレンドを調査し、その結果をまとめた「カーボンニュートラル最新技術動向マルチクライアント調査レポート」を作成しています。このレポートの中から、低炭素化を実現する素材/原料、リサイクル技術、廃棄物の資源化について注目すべき事例を 20 個抜粋して紹介します。
セミナーで使用した講演資料を記事の最後の方で無料ダウンロードいただけます。
カーボンニュートラルに興味がある方は、ぜひお読みください。
◆目次
・カーボンニュートラルとは
・低炭素化を実現する素材/原料の事例
・リサイクル技術の事例
・廃棄物の資源化の事例
・カーボンニュートラル最新技術動向マルチクライアント調査レポートのご案内*より詳しく知りたい方にオススメ
カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します。例えば、製品を作る際に CO2 をなるべく排出しないような素材を使ったり、廃棄物から有用な燃料を作ったりすることなどが挙げられます。
低炭素化を実現する素材/原料の事例
今回の調査で対象とした低炭素化を実現する素材/原料は、大きく5つに分類されます。
- 1. バイオマス由来燃料(食用にならない穀物や皮、木材チップなどを用いて生成されるエタノールなどの燃料)
- 2. 微生物由来燃料/食品(藻類を用いて生成するバイオ燃料)
- 3. バイオマス由来プラスチック(バイオマスを一部、もしくは全部を用いて製造されたプラスチック材料)
- 4. 微生物由来プラスチック(微生物や藻類を用いてバイオプラスチックを生成することで、農地を必要とせずバイオリアクターなどで燃料を生成できる)
- 5. CO2 吸収セメント/コンクリート(炭酸カルシウムなど、化学反応により CO2 を吸収させたセメントやコンクリート)
これらの技術事例を紹介していきます。
AlgenolBiofuels Inc.の事例
AlgenolBiofuels Inc. では、藻類、太陽光、塩水、廃棄 CO2 から価格競争力のあるバイオ燃料を生成する技術を開発しています。特徴として、藻類の育成に太陽光と海水を使えるため、淡水を使う必要がなく環境に優しいという点が挙げられます。
藻(そう)類を、エタノールやバイオマスに変換して、エタノールを回収・精製するような設備を開発。低コストでエタノールを回収し、燃料にする技術の研究が進んでいます。
株式会社IHIの事例
株式会社IHI では、微細藻類から製造したバイオジェット燃料を開発しました。油分の多い微細藻類ボツリオコッカス・ブラウニーという改良された微生物を開発して、そこから油を生成して燃料にするという技術です。すでに一部の飛行機のバイオジェット燃料として利用されているとのことです。
株式会社ユーグレナの事例
株式会社ユーグレナでは、ミドリムシ(ユーグレナ)を培養して食品や燃料など、さまざまな用途に活用しています。その一つとして、廃食油(使用済み食用油)と藻類を原料としたバイオディーゼル燃料を開発しました。実用化に向けて、量産プロセスを開発しているところとのことです。
GSアライアンス株式会社の事例
GSアライアンス株式会社では、セルロース系生分解性樹脂を基にした生分解性繊維、糸、フィルム、シートを開発しました。環境問題に対応するための素材として、使い捨てパッケージや、レジ袋などに活用されることが期待されています。
セルロースは植物から作られるものなので、最終的に燃やして CO2 が発生したとしても、原料の植物が取り込んだ CO2 が元に戻るだけです。すなわち、カーボンニュートラルの一環としての役割を果たす技術だといえます。
Woodlyの事例
Woodly では、木材セルロースを原料としたフィルム包装や、その他の用途向けプラスチックを開発しており、商業化に成功しています。
Empa(Swiss Federal Laboratories for Materials Science and Technology)の事例
Empa( Swiss Federal Laboratories for Materials Science and Technology ) では、果物や野菜の保護コーティングとして、セルロースフィルムを共同開発しました。パッケージや袋ではなく、食品そのものにフィルムを付けて、食品の保存期限を大幅に伸ばすという技術です。
Jiangnan Universityの事例
Jiangnan University では、植物に含まれる成分の中でセルロースに次いで量が多いリグニンという物質由来のフェノールモノマーに基づく、再生可能なバイオポリマーの研究を行っています。従来、リグニンは廃棄されることの多い物質でしたが、リグニンの使い道を見つけるために行われている研究の一つがこちらの事例です。
スーパーレジン工業株式会社の事例
スーパーレジン工業株式会社では、杉由来のグリコールリグニン(改質リグニン)を含むエポキシ樹脂、およびそれをマトリックスとした CFRP (Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維で補強・強化されたプラスチック)を開発しました。
Bosque Foods GmbHの事例
Bosque Foods GmbH では、キノコを使って代替肉を作る技術を開発しています。これまでの植物性代替肉は、1枚肉ではなく挽き肉状態で作るのが一般的でした。作れる代替肉も小さいサイズに限定されているなどの課題がありましたが、同社ではキノコの菌糸体を板状に培養して材料を混ぜて1枚肉のような代替肉の開発に取り組んでいます。
Formo Bio GmbHの事例
Formo Bio GmbH では、微生物のゲノムを編集し、精密発酵によりアニマルフリーミルクタンパク質を生産しています。植物性代替肉や微生物を使ったタンパク質は昨今注目されており、特に肉の代替が取り上げられることが多いのですが、牛乳やチーズなどの代替に取り組む企業も増加中です。
次のページ:リサイクル技術の事例などを紹介します。