• 配信日:2024.01.10
  • 更新日:2024.06.10

オープンイノベーション Open with Linkers

イノベーションとは?定義・種類・事例などを紹介

日本企業におけるイノベーションの事例


ーーイノベーションはトップダウンで進めていかなければ難しいのでしょうか。

谷村氏:必ずしもトップダウンでないとできないわけではないと考えています。現場の担当者レベルの人やミドルクラスの人が「これはやるべきだし、やりたいと思える」と感じたことがきっかけでイノベーションが生まれることもあると思います。

ーートップ以外の人が指揮をとってイノベーションを起こした事例はありますか。

谷村氏:あくまで一般的な情報からだけでご説明しますが、必要なイノベーションを現場から起こそうとしているという意味では、ダイキン工業様のケースが当てはまるのではないでしょうか。

ダイキン工業と聞くと、これまでは「エアコンのメーカー」というイメージが強かったのではないかと思います。しかしグローバルの空調市場を見れば住宅用よりも業務用の方が規模は大きく、シェアから考えればダイキン工業の売上構成もまた、業務用の比率が大きいと推測されます。

業務用の大口顧客には、例えばデータセンターがあります。GAFAM と呼ばれるビッグテックは大規模なデータセンターを持ち、いろんなところにセンサーを置いて温度の滞留している場所はないか・空気の流れが滞っている場所はないかチェックし、環境の良いサーバールームを作っています。そして、ダイキン工業のエアコンはその中の大切なパーツの1つになっています。

しかしこのような関係では、ダイキン工業は GAFAM などの下の立場になってしまいます。データセンターを持っている企業の言うがままエアコンを作るだけで、本質的な付加価値である空気のマネジメントには直接かかわることができません。他社の言うがまま、最終的な理由もよく教えてくれないままただパーツを作ることにやりがいを見出せるでしょうか?
まさに、冒頭で定義したようなイノベーションが必要な状況であったと推察されます。

このような状況において、ダイキン工業は「私たちは空気のプラットフォーマーである」ということを宣言されています。自社のポジションをエアコンメーカーではなく、空気のマネジメントにチェンジしたわけです。そして、たしかにこの宣言こそトップダウンだったかもしれませんが、ではこの宣言を実現するためのイノベーティブな取り組みはどうかというと、かなりボトムアップであるようにみえます。

なにしろ空気のプラットフォーマーになるとはいっても、そう簡単な話ではありません。そのためにはこれまでに培ってきたもの以外の知見と技術開発≒イノベーションが必要になります。ハードウェアとしてのエアコンを作る技術だけでなく、空間の温湿度や埃(ほこり)を検知するセンサーの技術、室内のどこに風を流すと良いのか分析するソフトウェアの機能など、新しい機能が必要になるわけです。
ダイキン工業ではそれを AI などを使って実現しようとしています。「ダイキン技術大学」という社内大学を作って、まず社員全員が AI の素養を持つことと、社内に AI 技術者を育成することを目指し、そして育成した AI 技術者を現場で HW 系の技術者と交流させて新たなテーマを産みだしています。

ダイキン工業は、少なくとも外側から見れば、トップダウンでテーマを指定するのではなく、方向性だけ示して実際のイノベーションは現場から生まれるように向けている、ボトムアップのイノベーションの良い事例ではないでしょうか。
もちろん、実際には多くの課題を抱えていると思いますが、1つの参考とすべき取り組みではないかと思います。

イノベーション人材と教育の関係性


ーーある書籍で、本人の育った環境や両親がイノベーションに関係すると紹介されていました。私自身、親として子供たちに、自分の楽しいことの延長線上で社会貢献をしたり、イノベーションを起こしてくれたりすると嬉しいなと思っています。谷村様は、イノベーションに教育は関係すると考えていますか。

谷村氏:たしかに従業員個人の特性は、企業のイノベーションにも大きく影響すると私も思います。生まれ持った性格や才能はもちろん、教育、個人的体験、家庭や周囲の人間の考え方といった環境が大きく影響して成立した個性は、結果的に企業活動にどんな貢献をしてくれる人になるのか違いをもたらします。

そのような様々な個性の中で、比較的イノベーションの活動に貢献してくれやすいのはどのような個性になるのでしょうか。私の意見ですが「そもそも自分がやりたいことや、できることは何かを探し続けている人か」が重要になると考えています。

日本企業が抱える課題のところでもお話したように、事業を我が事ととらえ、情熱をもって邁進してくれる人材はとても貴重であり、イノベーションを産みたい企業が大切にすべき人材です。そして「我が事ととらえる」ためには、そもそも自分自身が大切なものは何かわかっていなければ成り立ちません。

同じ人でも、やりたいことや大切なものは年齢と共に変化していくものだと思いますが、「(少なくとも自分の価値観に照らせば)これは価値ある取り組みなのか」をつどつど判断できる人になるよう、教育の場でも機会を提供することが必要ではないかと思います。
子供に対しても「人生で成し遂げたいことは何か」を本気で探してもらうようなことも有用であると思いますし、これは何も起業家になるという話ではなく、企業の一従業員でもイノベーションを担当するには必要なことだと思います。これが見つかって初めて、イノベーターのスタートラインに立てるのではないでしょうか。

ーーイノベーション人材に関して、谷村様が「企業がイノベーションを起こすために、人材面でこれが重要だ」と考えていることはありますか。

谷村氏:そうですね、例えばイノベーション推進の担当者が「たまたま配属されて、たまたま上司から指示されたから」といったセンスで仕事をしていれば、活動に推進力は生まれようもなく、やがて破綻(はたん)していってもなんら不思議ではありません。

従業員個人の情熱と、組織全体の情熱を同じ方向に向かって動かせるかはとても重要になります。よく言われる「適切な人をバスに乗せる」ではありませんが、レディ(準備万端)になっている人を運転席に乗せ、そうでない人は一度バスから降ろしてからレディになるような成長機会を与えるべきだと思います。
私の経験からくる印象ですが、大企業のタレントマネジメントは決してうまく機能しているところばかりではないと思います。本人の情熱が組織の情熱と一致しているのか考えもせずに役割を与えたり、単純に年次で座る席を決めていたりすれば、それは自ら難しい状況を作ってしまっているとも言えるのではないでしょうか。
その意味で、誰に任せるかこそ重要だと言えるかもしれませんね。

そして上記のようなタレントマネジメントが機能している前提で、レディでない人をどうレディにまで持っていくのかという人材育成の話になるのだと思います。

ーー人材育成の観点で、イノベーションを産む可能性を上げるために、今すぐできることはないのでしょうか。

谷村氏:まず人の内面に関わるような深いことでなくとも、もちろん表面的なテクニックはたくさんあります。これはスキルアップの文脈で語られるもので、例えば情報収集や整理の仕方を1つとってみても、学ぶべきスキルはたくさんあるでしょう。企業レベルの取り組みであれば、情熱はあるがそれを上手くビジネスとして自己表現できていない方に社内教育を提供することは意義深いと思います。これはイノベーションを産む可能性も高めてくれると思います。

一方で、国レベルの取り組みで教育を考えるのならば、そうしたスキル論にいきすぎずに、より本質的な議論をすべきと考えます。自分の内面を掘り下げる作業は大変な作業であり、情熱や覚悟というものは、必要になったからといってパッと簡単に浮き出てくれるものではありません。日頃の積み重ねが必要な作業であり、急がば回れではありませんが、子供のころから考えていく機会を与えることが重要だと思います。

イノベーションを起こす企業の理想的な在り方


ーーイノベーションを起こす組織の理想的な在り方はあるのでしょうか。あるいは企業ごとに違うのでしょうか。

谷村氏:細部の話をしていけば、企業ごとに理想的な在り方は異なると思います。ただ、根本的な部分について話すなら、重要なのは組織の情熱と個人の情熱を結びつけるマネジメントです。現場で活動している担当者と組織の情熱が同じくらいのレベルで、同じ方向を向いていることが大切だと思います。

組織の情熱と個人の情熱が合致していないと、イノベーションが途中でフェードアウトしてしまう可能性があります。よくあるのが、 1,000 個のアイデアを産んで3つの事業を作ろうと順々にステージを登ってきたけど、最後の最後で頓挫(とんざ)して3つではなくゼロになってしまうケース。この場合、往々にして組織の情熱と個人の情熱にレベル差がある場合が多いように思います。

例えば、「締め切りが迫ってきたから何となくこの辺りで提案しておこう」といった考えで始めたものが、たまたま上手くいってしまい、最後まで残ったという場合があります。この場合、個人としては「論文レベルの成果も上がったので人事評価的には十分だろう。これ以上、下手に進めてボロが出ると逆に評価が落ちるかもしれないし、本気でやろうと思って提案したテーマではないからこの辺でやめておこう」と落とし所を決めてしまうことも少なくありません。すると最後の最後で個人の情熱が追いついてこず、イノベーションは失敗してしまいます。

研究テーマを形として残すには、もちろん雇用主と従業員という立場の違いはありますが、事業を起こすためのパートナー的な感覚で、責任と成果をシェアするような関係が必要ではないかと思います。

日本でのイノベーションを活発化させるために必要なこと


ーー今後、日本でイノベーションが活発化するにはどのような課題を解決する必要があるでしょうか。

谷村氏:やはり人材の重要性が課題としてあります。

例えば立派な音楽ホールを作ったとしても、演奏家がいなければ音楽のステージは成り立ちません。同じことがイノベーションにおいても起こっていると感じています。いくら環境や制度をきれいに整えたとしても、その中で活躍する人がいなければイノベーションを生み出す母体にはならないと思います。

鶏が先か卵が先かの議論ではありますが、それでも現状、日本で起きている議論は周りの環境や制度の方に向かいすぎているのではと思います。仮に本当に理想的な環境や制度が作れたとしても、その中で活躍できる人はいるのかというと疑問に感じる部分です。すでに人材として素晴らしい人たちがたくさんいて、彼らが活躍する環境をどう作るかという方向で議論が進んでいるならそれでよいのですが、そもそも活躍できる人材が生まれる環境とは何かという部分から議論しなければいけないと思っています。

こういう話をする際によくあるパターンとして、「ならばシリコンバレーに学べ」と安直な話題があがりがちです。しかし求められているのはその時代の先駆者たる人物であり、 10 年前に先駆者だった人物のコピーではありません。根本的に、何かに学ぶとかロールモデルを探すという話になること自体に大きな違和感を覚えます。そうではなく、学ぶべきロールモデルが存在しない状況において、最適だと思えることを自力で探す胆力を持つ人を作ることこそが重要だと思います。

ーーイノベーションを起こすためには何が必要なのか、考え続けることが大切ということでしょうか。

谷村氏:はい。自己反芻(じこはんすう)することが重要だと思います。

日本の産業はすでに長い歴史を刻んでおり、国や産業として 10 代の若者というわけではありません。すでに成熟した大人と呼べる領域に入っているので、それに見合った働き方が求められます。若者と同じ土俵で、若者がやる仕事をより効率的に行おうという考え方をしていたのではいけません。中堅ならではの働き方、自分で仕事を作れる力を育んでいく教育が今の日本に求められているのではないでしょうか。

*谷村氏へのインタビューはここまでです。

「イノベーションは革新を生む」と信じて取り組む


イノベーションは、常に進化し続けるビジネス環境において重要な要素です。この記事では、イノベーションの概念と種類、そして理想的な組織の在り方などについて紹介しました。

イノベーションは、ビジネスの世界で成功するための鍵といえます。最新のトレンドやテクノロジーを追い求めるだけでなく、自己改革と組織の進化を促すことも重要です。常に新たなアイデアを追求し、リスクを取りながら挑戦することで、イノベーションは生まれます。

私たちがイノベーションを追求することで、世の中に革新をもたらす可能性があることを忘れてはなりません。さまざまな規模や業界の組織がイノベーションの力を発揮し、社会や経済の発展に貢献することが期待されます。

インタビュイーの紹介

イノベーションとは?定義・種類・事例などを紹介

谷村 勇平 氏
マグナリープ株式会社 代表取締役社長 / 一般社団法人 新技術応用推進基盤 代表理事
リンカーズ株式会社 オープンイノベーション研究所 客員研究員

【略歴】
東京工業大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科修了。
国内大手通信企業においてクラウドサービスの企画・開発・運用にたずさわった後、
米国系大手戦略コンサルティングファーム 2 社にて、トレンド技術の事業化や技術開発戦略の構築を支援した。
現在は表情解析の AI ツール等を提供するマグナリープ株式会社にて代表取締役をつとめつつ、「技術とビジネスをつなげ、新事業を創出する」ことをテーマとした一般社団法人 新技術応用推進基盤にて代表理事をつとめる。

「執筆 / 講演等(抜粋)」
・近未来の働き方を想像する:もしも銭形警部が人工知能を使いこなしたら、警察はルパンを逮捕できるのか?( IT media )
・Chat-GPTを用いた研究開発の効率化と実験短縮への応用(株式会社技術情報協会)
・ポスト製造業の世界と化学企業の未来(月刊化学経済)

・B2B 産業の開発新世代~研究開発企画の今を追う(主催:リンカーズ株式会社)
ほか多数

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