- 配信日:2024.01.01
- 更新日:2024.06.17
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【2024年】年初インタビュー「製造業を取り巻く変化について」|横河電機株式会社
2023 年は AI の革新的進歩をはじめ、外的環境の変化が著しい 1 年でした。同年、リンカーズのセミナーにご登壇いただいたイノベーション推進者、経営者、実務家の皆さまが、この変化をどのように捉えているのか。イノベーション活動に変化をもたらしたもの(こと)、注目技術、そして 2024 年の企業の役割・課題などについて、2024 年の年始インタビューとしてお話を伺いました。
本記事では、横河電機株式会社 常務執行役員 マーケティング本部 本部長 CMO 博士(技術経営)の阿部 剛士 氏にお話を伺いました。
※所属企業・肩書は 2023 年 12 月時点のものです。
◆目次
・2024 年、製造業が果たしてゆくべき役割や課題
・今、危機感を持っていることについて
・自社のイノベーション活動に変化をもたらすもの(こと)
・注目している技術
・2024 年、オープンイノベーションに関して
2024年、製造業が果たしてゆくべき役割や課題
ーー今、製造業が果たしてゆくべき役割、その役割を果たすにあたっての課題について、どのように考えていますか。
阿部氏:
・ダブルマテリアリティの観点で、財務的マテリアリティと環境/社会マテリアリティの両立をどのようにマネジメントしていくか。
・現在の世界の地政学的状況を踏まえて、安定供給の立場からサプライチェーンをどのように整え、コロナや紛争などの影響を最小限にしていくか。
・テクノロジーと社会がいかにして共存できるか?今世紀はテクノロジーの劇的な変化は自身のあり方や世界に対する認識につて思いを巡らせるよい機会だが、テクノロジーが実現し、可能にしてくれる社会モデルについて考える時代。すべてのステークホルダー(利害関係者)の信頼を得て産業全体の発展を促すエコシステム( System of Systems )を構築することを念頭に置くこと。
・生成 AI などの台頭を鑑み、従来の顧客満足、品質確保、生産性向上だけではなく、製造業としての枠を超え、新価値創造、新市場創造、新事業創造を目指すべし。産業全体の発展を担う。
ーー上記の役割や課題について、重要性や緊急性などは変化しているでしょうか。
阿部氏:VUCA ワールド下、全人類のチャレンジ(リスク)は、ますます大きくなり、サスティナビリティの観点でもその重要性・緊急性は増すばかり。企業(とくに経営層)は世界観を持ち、よきシナリオに向かうように努力すべき。
今、危機感を持っていることについて
ーー今後、製造業を取り巻く環境の変化に対して、もっとも危機感を持っていることを教えてください。
阿部氏:「優秀な人材の採用難、退職」です。無形資産の1つである人的資産の確保・向上は最重要課題。組織や従業員の高年齢化、ならびにデジタル人財の採用・育成は、外部環境変化のスピードに追い付く必要があり、国内だけではなくグローバルに人財の確保・育成は急務。また、働き方としてギグ・ワーカーの利活用なども人財戦略のスコープに入れるべき。
自社のイノベーション活動に変化をもたらすもの(こと)
ーー2023 年、貴社のイノベーション活動に変化をもたらすと考えられる外的環境変化や、技術革新はありましたか。
阿部氏:紛争などのよる地政学的課題はますます増えているのが現状。また、技術では生成 AI などのデジタル技術が醸成され、「人と技術」による新しい働き方を設計しなければならない。
ーー2024 年以降、どのようなことがイノベーション活動の大きな変化につながると注視していますか。
阿部氏:人と技術がどう折り合いをつけるか。デジタル技術の発展により発生する「光と影」で、よい点ばかりが目立つが、その反面「影」の部分にも注視しなければならない。今後のマクロ環境下において人口動態、紛争、人権問題、気候変動問題、エージング問題などを踏まえ、環境・社会資本に正のインパクトを与える事業のためのイノベーション活動に取り組まなければならない。
注目している技術
ーー注目している技術、技術カテゴリについて教えてください。
阿部氏:シンギュラリティの観点から「生成 AI 」、「量子コンピュータ」、「量子センサー」、「ファンデーションモデル」などはさまざまな産業界に大きな技術変曲点を与えるゲーム・チェンジの要素を包含するため重要。さらにサイバー攻撃に対抗する技術(ポスト量子暗号技術)なども注目したい。
また、個人的にはシリコンベースの半導体素子から DNA ベースへの転換も興味あり。
2024年、オープンイノベーションに関して
ーーリンカーズのようなオープンイノベーション支援のビジネスマッチング仲介会社に期待する役割などに変化はありますか。
阿部氏:マーケティングの観点では、今後 G-DL、S-DL から C-DL( Community Dominant Logic )に移行しなければならず、オープンイノベーションによる他社や学術界との協業は必須であるため、仲介会社には企業のニーズを広く理解し、適切なタイミングで良質なマッチメイキングの機会を創出してもらいたい。
回答者
阿部 剛士 氏
横河電機株式会社 常務執行役員 マーケティング本部 本部長 CMO 博士(技術経営)
アムニモ株式会社 取締役
横河バイオフロンティア株式会社 取締役
シンクレスト株式会社 取締役(非常勤)
【略歴】
1985 年、現インテル株式会社に⼊社。インテル・アーキテクチャ技術本部本部⻑、マーケティング本部本部⻑、技術開発・製造技術本部本部⻑を歴任。
2009 年以降、取締役、取締役 副社⻑、取締役 兼 副社⻑執行役員に就任。
2016 年横河電機株式会社に⼊社し、R&D、M&A、知財、新事業開拓、事業計画、標準化戦略、オープンイノベーション、工業デザインなどを傘下にマーケティング本部を統括。
常務執行役員 マーケティング本部本部⻑ CMO として現在に至る。
リンカーズの実施する Web セミナーにご登壇いただいた皆さまに年始の特集インタビューとしてお話を頂戴しております。他の皆さまへのインタビューはぜひこちらをご覧ください。
リンカーズでは 170 回以上のセミナーを実施しており、これまで開催してきた Web セミナーでは社外の各分野の有識者の方々にご登壇いただいております。
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