• 配信日:2023.12.13
  • 更新日:2024.09.18

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カーボンニュートラルの注目技術20選~発電・蓄電・エネルギーマネジメント編~

電動化/水素化技術の事例


カーボンニュートラルの注目技術20選~発電・蓄電・エネルギーマネジメント編~

次は、電動化 / 水素化技術の事例を紹介します。電動化とは、ボイラーやヒーター、エンジンなど、これまでは化石燃料を使って動かしていたものを電気で賄う(まかなう)技術です。最近はマイクロ波を使って、工場の加熱工程や乾燥工程などをより高い精度で、省エネルギーで行おうという取り組みが増えてきています。

水素化技術としては、水素を製造する技術があります。その技術もさまざまな方法があり、ベンチャー企業を中心に既存システムのモジュール化 * に取り組む企業が欧米を中心に増加中です。

*モジュール化=製品・システムなどのまとまった単位を、部品など小さな単位に分割すること。

Fricke und Mallah Microwave Technology GmbH の事例

カーボンニュートラルの注目技術20選~発電・蓄電・エネルギーマネジメント編~

Fricke und Mallah Microwave Technology GmbH というドイツの企業では、電動化の技術として、マイクロ波を発生させるために従来使われてきたマグネトロンではなく、窒化(ちっか)ガリウムをマイクロ波の発生源にできる技術を開発しています。マグネトロンを使うよりもエネルギーの変換効率を高めることができ、電力の制御もしやすいなどのメリットがあり、消費電力を 25 % 削減できるとされています。

Aurora Hydrogen の事例

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Aurora Hydrogen というアメリカの企業では、マイクロ波を使ってメタンから CO2 を発生させることなく水素と固体の炭素を作る技術を研究しています。他の企業では水を電気分解して水素を作るという取り組みをしているケースが多いのですが、また異なる角度からのアプローチです。

Pollish Academy of Sciences の事例

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Pollish Academy of Sciences というポーランドの研究機関では、レーザーを照射して水や食塩水から水素を生成する技術を研究しています。グラフェンエアロゲルを光触媒として用い、赤外線レーザーを当てることで水や食塩水から水素を発生させられることが分かりました。将来、クリーンな水素生成のシステムとして実用化されるかもしれません。

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マイクロ波プロセスの技術プラットフォームを提供している、大阪大学発のベンチャー企業であるマイクロ波化学株式会社に、「マイクロ波で実現するカーボンニュートラル 〜 GX のためのキーテクノロジー」というテーマで弊社セミナーでお話しいただきました。こちらのレポート記事もぜひご覧ください。

水素の貯蔵/運搬、利用技術


カーボンニュートラルの注目技術20選~発電・蓄電・エネルギーマネジメント編~

水素の貯蔵 / 運搬・利用についてもさまざまな技術が開発されています。

Northwestern University の事例

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水素を貯蔵する技術として Northwestern University の事例を紹介します。水素の貯蔵方法は多種多様ですが、近年開発が活発なのが、水素貯蔵合金 / 化合物です。この分野での新しい研究が、 Northwestern University で行われており、金属有機構造体と呼ばれる物質の中で水素貯蔵能力の高い材料を、シミュレーションを使ってスクリーニングする方法を確立しました。

有機金属構造体とは、有機物を使って骨格を作り、骨格が交差し合う点の部分に金属を組み合わせた構造物です。

AmmPower Corp. の事例

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AmmPower Corp. というカナダの企業では、モジュール式でスケーラブル(拡張・縮小可能)なグリーンアンモニア製造システムを開発しました。コンテナの中にアンモニア製造に必要な要素を全て詰め込み、コンテナを設置すればその場所でアンモニアが製造可能になります。

廃熱の利用技術


カーボンニュートラルの注目技術20選~発電・蓄電・エネルギーマネジメント編~

廃熱の利活用でもさまざまな技術が開発されています。

Nostromo Energy Ltd の事例

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Nostromo Energy Ltd というイスラエルの企業では、熱を蓄えるという目的に対して、水が氷に変換する過程で熱が吸収されることを利用して貯蔵する技術を開発しました。この技術は、個人的に実用化が難しいのではないかと感じていましたが、現在実用化に向けて開発が進んでおり、 2023 年になってからは現場にシステムを設置できるようなモジュールの設計が完了していたり、さまざまな企業から投資を集めていたりなど、積極的に実用化に向けて進んでいるようです。

University of Birmingham の事例

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University of Birmingham では、材料の相変化(そうへんか)* を使って熱を貯蔵するシステムを開発しました。昨今、蓄熱材として相変化を利用することがトレンドになっている印象です。

*相変化=物質の状態が気体、液体、固体などに変化すること。

カーボンニュートラルの注目技術20選~発電・蓄電・エネルギーマネジメント編~

パナソニック株式会社の事例

カーボンニュートラルの注目技術20選~発電・蓄電・エネルギーマネジメント編~

パナソニック株式会社では、熱電素子をチューブ状に成形することで、高熱の液体が通るチューブからの発電効率を高める技術を研究しています。個人的に興味深い技術として注目しています。

株式会社 E サーモジェンテックの事例

カーボンニュートラルの注目技術20選~発電・蓄電・エネルギーマネジメント編~

株式会社 E サーモジェンテックでは、従来の固い熱電素子を曲面に這(は)わせることができる技術を開発しています。柔らかい樹脂製の基盤上に小さい熱電素子をたくさん並べることで、曲げることを可能にしています。工場やプラントの配管などから効率良く電気を発生させるための技術として注目されています。

カーボンニュートラルの注目技術20選~発電・蓄電・エネルギーマネジメント編~

Biohm Ltd. の事例

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Biohm Ltd というイギリスの企業では、食品廃棄物を真菌に食べさせて、真菌が作る菌糸を集合・成長させて断熱材を作るという取り組みをしています。食品廃棄物由来で、プラスチックや木材に代わる断熱材を作ることができるということで、サステナビリティの観点で注目されています。

カーボンニュートラルの注目技術20選~発電・蓄電・エネルギーマネジメント編~

断熱材は人体への影響や環境への負荷が大きい材料 を使うことが多いのですが、最近はなるべく負荷を減らす断熱材を開発する動きが、欧米を中心に活発化しています。

エネルギーマネジメントの事例


カーボンニュートラルの注目技術20選~発電・蓄電・エネルギーマネジメント編~

工業などのエネルギーを管理するエネルギーマネジメントシステムや、 B2B での電力取引システム、ブロックチェーンの技術を使ったカーボンオフセットの管理などの事例を紹介します。

JustCarbon の事例

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JustCarbon というイギリスの企業では、大気への炭素の発生量を減らしたり、大気から炭素を除去したりすることができたときに、ブロックチェーン技術を使って改変不可能なトークンとして炭素の除去を考慮することで、大気から除去した炭素の分を、例えば他の企業が購入して、その企業がカーボンオフセットのような形で自社の低炭素化のために償却することなどを全てブロックチェーン上でできるシステムを開発しています。

さまざまな企業が、 CO2 の除去や、カーボンオフセットとして売買できるマーケットプレイスを開発していますが、まだ整備されていない状況です。ブロックチェーンならこの状況が解決できるわけではないのですが、有効な技術要素ではないかと考えられています。

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ブロックチェーンなどの WEB3 技術について、概要や、ビジネスでの実用例などを弊社セミナーで紹介し、その内容をレポート記事にいたしました。記事内では、セミナーで使用した講演資料を無料ダウンロードいただけます。こちらの記事もぜひご覧ください。

Nori LLC の事例

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Nori LLC というアメリカの企業では、農業に特化した CO2 の低量化や取引を可能にするプラットフォームを開発しています。

他にもさまざまな企業が独自のプラットフォームを展開しています。

Aera VC の事例

カーボンニュートラルの注目技術20選~発電・蓄電・エネルギーマネジメント編~

Aera VC というニュージーランドの企業では、気候や炭素関連の課題に取り組むプロジェクトに投資する、その投資先となる DAO ( Decentralized Autonomous Organization :分散型自立組織)を立ち上げました。このプロジェクトで得た収益はコミュニティのメンバーに配分されるという仕組みで活動しています。

カーボンニュートラルの注目技術20選~発電・蓄電・エネルギーマネジメント編~

カーボンニュートラルを支援する DAO もあれば、デジタルヘルスなど医療系の DAO など、目的別にさまざまな DAO が世界中に立ち上げられています。

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講演者紹介

カーボンニュートラルの注目技術20選~発電・蓄電・エネルギーマネジメント編~

浅野 佑策
リンカーズ株式会社 リサーチプラットフォーム事業本部 オープンイノベーション研究所

東北大学工学部卒業( 2006 年)、東北大学大学院工学研究科修了( 2008 年)
株式会社東芝 生産技術センターにおいて半導体製造プロセスの研究開発に従事。
その後、アクセンチュア株式会社にて大手製造業における、工場デジタル化や業務自動化などのデジタルトランスフォーメーションを複数推進。
現職では、メーカーでの研究開発とコンサルティングの経験を活かして、エレクトロニクス領域を中心に、先端技術動向調査、技術マッチング、技術情報を効率的に収集するための技術開発など、製造業向けのイノベーション創出を支援している。

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