• 配信日:2023.12.12
  • 更新日:2024.06.17

オープンイノベーション Open with Linkers

オープンイノベーション事例~日立建機の取り組みを徹底解説~

日立建機における新たな価値創造スキーム(IMS)の必要性


オープンイノベーション事例~日立建機の取り組みを徹底解説~

ビジネスやプロダクトが大きく変わらないのであれば、改善的な価値創造で成長していくことができます。しかし、その延長線では、プロダクトはやがてコモディティ化し、ビジネスは衰退してしまいます。

そのため、私たちのプロダクトである建設機械に新しい価値を加えたり、建設機械でないものと組み合わせたりして、よりイノベーティブなソリューションを生み出し、顧客に価値を提供する必要があります。この方向にシフトさせていこうとすると、新たな価値創造スキームが必要になるでしょう。それが日立建機にとってのイノベーションマネジメントシステム( IMS )だと捉えています。

イノベーションに向けて日立建機がやってきた取り組みの事例


新たな価値創造スキーム構築のために、ここ5〜 10 年ほどで取り組んできたことを紹介します。

オープンイノベーション事例~日立建機の取り組みを徹底解説~

2016 年、当時の日立製作所の中西 宏明(なかにし ひろあき)社長が、日立工機と日立建機を売却する可能性について言及しました。

最終的に、日立建機の日立グループからの分離独立までには、それから5年ほど時間がありました。この期間があったことが幸いで、その間に R&D に関する、さまざまな改革をすることができました。

オープンイノベーション事例~日立建機の取り組みを徹底解説~

課題は4つありました。課題の1つ目が、日立グループからの独立で懸念される、特にデジタル・新分野などでの R&D のリソース確保です。そのために、 2017 年からオープンイノベーションを掲げて、その啓発、支援を行う専門チームを構築しました。

課題の2つ目が、ビジネスの戦略がなかなか構築しにくい中で、個別の R&D のテーマと上位戦略との整合性をとるのが難しい状況だったということです。それに対して、新しい R&D のシステムを一から構築・導入し、そこに R&D の情報を集約。特にロードマッピングを重要視しました。どういうロードマップがあって、どういうプロダクトや研究テーマがあるのかという紐付けをできるようにしました。

課題の3つ目が R&D 計画の柔軟性とスピードです。いくら計画を立てても、 VUCA と呼ばれる現代では不確定な要素が多いので、計画通りにいかないことが頻繁にあります。日立建機もそうですが、多くの会社が、各年度の予算計画にもとづき R&D を実施していると思います。しかし、年度予算の中でフレキシブルに動くということの本質的な難しさがあります。そこでいつでも申請できるオープンイノベーション予算枠を設け、年度予算にとらわれない研究開発プロジェクトを実行できるしくみを作りました。

課題の4つ目はまだ ToDo の段階ですが、 これからは「コト」も自在に生み出す価値創造のしくみへ変革していくべく、自社にマッチした形での IMS を実装していくことが必要です。

日立建機のオープンイノベーション推進室の活動事例


オープンイノベーション事例~日立建機の取り組みを徹底解説~

現在、私たちオープンイノベーション推進室が行っている活動を紹介します。

オープンイノベーション推進室は 2023 年4月に、研究・開発本部 先行開発センタから独立しました。現在は8名で活動しています。

私たちのミッションは「イノベーション創出活動の加速」です。そのために、3つのことに取り組んでいます。

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1つ目が社内コンサルティングです。各部門のイノベーション創出、高品質な試行錯誤のための支援を行っています。

「自前主義」という言葉がありますが、自前主義におちいる理由のひとつは、社外のパートナーとのプロジェクトは開始までの難易度が高いからです。自社でやる場合、人やお金などをアサインすればプロジェクトを開始することは簡単です。

しかし、社外のパートナーとの協創の場合、課題整理などが曖昧(あいまい)なまま話し合いをしてもプロジェクトがうまくいかないケースが多いです。課題整理だけでなくパートナー探しや交渉、契約など、プロジェクトをスタートするまでに越えなければならないハードルがたくさんあります。この部分をオープンイノベーション推進室が支援しています。

オープンイノベーション事例~日立建機の取り組みを徹底解説~
オープンイノベーション事例~日立建機の取り組みを徹底解説~

2つ目が、しくみづくりとマインドの醸成です。

まず、しくみづくりについて。弊社の研究開発に当たっている人員のほとんどが日立建機土浦工場にいるのですが、そこから車で 15 分ほどの場所に、かすみがうら市の廃校を利用して「かすみがうら VCH 」という研究開発・オープンイノベーションの拠点を立ち上げています。

マインド醸成については、各社のイノベーションリーダやベンチャ企業創業者などによるセミナーや弊社社員とのパネルディスカッション、多数のパートナー候補企業を招いたマッチングイベントなどを開催したりしています。

オープンイノベーション事例~日立建機の取り組みを徹底解説~

3つ目がオープンイノベーションの実践です。将来の土木施工のデジタル化や自動化を目指して、一般社団法人セーフティグローバル推進機構を通じて、国土交通省主催の建設機械施工の自動化・自律化施工協議会に参画しています。また、社外の IoTスタートアップに出資し、共同で土木施工現場のリアルタイムデジタルツインの開発を行っています。

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今後は自社にマッチした形での IMS を実装できるように進めていく予定です。

講演者紹介

オープンイノベーション事例~日立建機の取り組みを徹底解説~

枝村 学 氏
日立建機株式会社 研究・開発本部 技監(兼)オープンイノベーション推進室長

【略歴】
1990 年、日立製作所に入社。同社機械研究所にて、半導体製造装置の研究開発に従事。
2005 年、日立建機ファインテック株式会社に移り、半導体検査用原子間力顕微鏡の開発設計に従事。
2008 年、プラズマプロセスを研究テーマとして京都大学より博士号(工学)取得。
2008 年より、日立建機株式会社において、ハイブリッド油圧ショベル/ホイールローダ、半自動 ICT 油圧ショベルなどの先端製品開発プロジェクトを指揮。
2017 年より研究開発本部 先行開発センタ長として、協調型建設機械プラットフォーム ZCORE などの先端技術や基盤技術開発の取り纏め。
2023 年4月より、オープンイノベーション推進室長。
現在、一般社団法人セーフティグローバル推進機構 建設委員会副委員長、国土交通省 建設機械施工の自動化・自律化協議会 基本・安全ワーキンググループメンバ。

オープンイノベーションを支援するリンカーズの各種サービス

技術パートナーの探索には「 Linkers Sourcing(リンカーズソーシング)」
Linkers Sourcing は、全国の産業コーディネーター・中小企業ネットワークやリンカーズの独自データベースを活用して、貴社の技術課題を解決できる最適な技術パートナーを探索するサービスです。ものづくり業界の皆様が抱える、共同研究・共同開発、試作設計、プロセス改善、生産委託・量産委託、事業連携など様々なお悩みを、スピーディに解決へと導きます。

技術の販路開拓/ユーザー開拓には「 Linkers Marketing(リンカーズマーケティング)」
Linkers Marketing は、貴社の技術・製品・サービスを、弊社独自の企業ネットワークに向けて紹介し、関心を持っていただいた企業様との面談機会を提供するサービスです。面談にいたらなかった企業についても、フィードバックコメントを可視化することにより、今後の営業・マーケティング活動の改善に繋げます。

技術情報の収集には「 Linkers Research(リンカーズリサーチ)」
Linkers Research は、貴社の業務目的に合わせたグローバル先端技術調査サービスです。各分野の専門家、構築したリサーチャネットワーク、独自技術DBを活用することで先端技術を「広く」かつ「深く」調査することが可能です。研究・技術パートナー探し、新規事業検討や R&D のテーマ検討のための技術ベンチマーク調査、出資先や提携先検討のための有力企業発掘など様々な目的でご利用いただけます。貴社が調査にかける手間や時間を短縮します。

オープンイノベーションの推進についてお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
「まだ方向性が決まっていない」
「今は情報収集段階で、将来的には検討したい」

など、具体的な相談でなくても構いません。
リンカーズが皆さまのお悩みや課題を伺い、今後の進め方を具体化するご支援をさせていただきます。

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