• 配信日:2020.08.03
  • 更新日:2023.09.01

オープンイノベーション Open with Linkers

化粧品OEMにイノベーションを – 株式会社ローザ特殊化粧料

※本記事は、Innovation by Linkersに過去掲載した記事の再掲載記事となります。

現在化粧品は大手企業から中小企業まで各々の企業がそれぞれの理念のもとに数多くの商品を販売しています。その中でローザ特殊化粧料では、専務の角屋様が積極的に異業種の方々と接する事で、その職業の人ならではの潜在ニーズに気付いて商品化している企業です。またその商品を販売するために生まれる作業を通じて、地元に新たな働く場を提供し、地域連携や地域の活性化にもつなげようと試みている企業でもあります。 大ロット製造が主流の化粧品OEMの通例を転換し、イノベーションを起こそうとしている興味深いお話も伺うことができました。

全ての商品にはストーリーがあり、感謝の気持ちが込められている

今、一押しの「男眼(DANGAN)」とは

イベント出展などで外に出ることも多い中で年配の男性と話をすることもあるのですが、男性は「化粧品」という言葉を聞くだけで「俺には関係ないから」と立ち去ることが多いです。 ですが、シャンプーやひげ剃りの時に使うクリームも化粧品の一種。関係ないわけではないはずと、男性にも響く商品はないかと考え始めました。 そんな時、女子高生たちが男性用の汗拭きシートを使っているのに気づきました。彼女たちにどうして男性用を使っているのかと聞くと、女性用よりも爽快感があって気持ちいいからと答えたのです。 女性も男性用商品を使うと知り、男性用化粧品を作ったとしても女性も使ってくれるという自信になり、より一層男性用商品の開発に取り組みました。

その結果出てきたのが、「男眼(DANGAN)」。


男眼は目尻の小ジワに塗るもので、眠気覚ましにもなる可能性のある商品です。 目的外使用になりますが、クマを保護したり、首筋に塗る時は容器の形状からツボ押しやマッサージにもなりますし、鼻の下に塗れば花粉症対策になったという使用者からの声もいただきました。 働く男の仕事を助けるキーアイテムとして誕生しました。

角屋 様

この商品ができてから、催事などのブースに立ち寄る男性たちも話を聞いてくれるようになったんですよ。


自分の家族がきっかけで作られたハンドメイド石鹸

ローザ特殊化粧料のハンドメイド石鹸は無添加でできています。 通常、肌に優しい石鹸というと弱酸性のものですが、ローザ特殊化粧料はその反対をいきます。なぜなら、本来人間の身体にはアルカリ中和能というものがあるため、アルカリ性を含んでいても自分で回復させることができるのです。 ローザの処方なら、アルカリ性に寄っていても肌はつっぱったりしません。さらに植物オイルのコールドプロセスなので、石鹸自体が酸化せずにフレッシュな状態を保つことができます。油が多い石鹸なので肌を保護してくれますし、グリセリンが精製されるため乾燥もしにくくなり、いいこと尽くしです。

角屋 様

肌が超敏感な人や喘息の方にも実績のある商品です。



ハンドメイド石鹸誕生の裏には、早産の子どもとのエピソードがあります。1500グラムで産んだ我が子は3ヶ月も保育器の中で、その後1週間小児科で過ごし、やっと自宅で一緒に過ごすことができました。 私はもともとエステを行っていたので、その技術は持っていたのですが、子どものためにベビーマッサージも覚えて、今では教えることもできるようになりました。 ですが小さな子は通常よりも成長率が早いため、肌ができるのが追い付かず、アトピー気味でした。アトピーと診断される前に子どもの乾燥している肌を何とかしたくて、保湿クリームを色々試しました。朝昼晩と塗り続けてもカサカサになってしまう肌を見て、どうしたらいいのかと考えた時、肌を洗うものも変えてみたらいいのではないかと思い至りました。

無添加石鹸をいろいろ使っているうちに、プロポリスに行き当たり、ようやく効果を実感。コールドプロセスの商品は肌の弱い人に効果的と知り、これがローザ特殊化粧料のハンドメイド石鹸へとつながったのです。

角屋 様

私に子どもが生まれなかったらできなかった商品ですし、会社も転換期を迎えられなかったかもしれませんね。この石鹸があったからこそ、自社ブランドを作ろうというきっかけになりました。


地域貢献と女性の活躍支援

株式会社ローザ特殊化粧料には経営理念の中に、「報恩感謝」「知行合一」「常在意識」というのがあります。 すべてはありがとうのキャッチボールをすることが大事。それを常在意識として持っているので、東京都檜原村の村おこしや昭島の水プロジェクトにも参加していますし、企業ビジネスマッチングで知り合った法政大学の学生と共同開発をしたこともあります。 檜原村の仕事は主に農作業で現在過疎化が進んでいます。そんな中、村内で林業促進をされている株式会社東京チェンソーズさんが大活躍して男の人たちの働き口を作り出しました。 ですが、年配の方や女性には働き口がありません。檜原村で取れる材料で作ったローザ特殊化粧料の商品が売れるようになったら、ここで化粧品のシール貼りやラッピングの作業をお願いできたらと思っています。

角屋 様

女性の活躍支援につなげていきたいというのが、今の夢です。


実際、株式会社ローザ特殊化粧料では時短のパートで働く人たちが多い、というのも理念に沿った形の一つです。


ただ、苦労をすることもあります。 したいことがあっても、それをどう進めていけばいいのか、誰と話したらいいのかがわからないという事です。 前例のないことをしようとしているので、お手本となるものがないための苦労とも言えます。 例えば先にもでた檜原村の場合は、近くにいる人に話を聞き、村長に自分の思いを伝えるも進展がなければ林業家の集いや、その他様々な集いにも参加し、たくさんの人脈を作っていきました。 林業家の集まりで東京チェンソーズさんと仲良くなると、彼らから話を聞いて「プロUV」というものも作りました。林業をしていると、どうしても蚊に刺されてしまいます。蚊は黒いところを狙ってくるので、日に焼けづらくなるようなものがあればいいのに、という言葉からミントを配合した日焼け止め「プロUV」が生まれたのです。 その他にも、西東京FMさんと仲良くなったり、田無市にある東京大学の農場と仲良くなって「ひまわりプロジェクト」に参加したりということも。ひまわりプロジェクトでは、ひまわりの種から油を取りたくて参加したのですが、気が付けば種を植えるところから一緒に行っています。

角屋 様

いきなりひまわりの種を渡されて、ここから真っすぐあっちの柱まで種をまいてと言われたときには驚きましたし、戸惑いましたよ。ですが、いい経験だったと思っていますし、ご縁は今も続いています。


OEM中心の会社だったローザ特殊化粧料

もともとOEMを中心に化粧品を作っていました。「こういうものを作りたい」という言葉を頂き、それにそって商品開発をしていくという形です。

だからこそ、自社ブランドが生まれた時、自社商品のPRをどう行えばいいのかのノウハウがありませんでした。ですが、自分が嬉しいことは他人も嬉しいはずという思いを信じ、人に発信していこうと思ったのです。

インターンも積極的に取り入れる

昔からの体制だけでは、現在の人に受け入れてもらえない会社になってしまうと思い、新しい風を取り込んでいきたいと考えました。

角屋 様

新しい風をと思ったのも、法政大学の学生さんと触れ合ったのがきっかけです。若い世代と話をするのは、私たちにもいい刺激になると思ってインターンを始めたんですよ。


インターンの学生には短くても二週間滞在してもらって、その間に商品を実際に開発してもらいます。最初の一週間で商品を一つ作り、それが失敗したら次の一週間でもう一つ作る。というスケジュール感で動いています。

またエステの経験があった為、美容学校で週二回講師として教えるる機会を作るなどをし、自らが若い人たちと関わっていくことで、現在の人たちの思いや考えを吸収してきました。

これから広げていきたいこと~地域貢献のワークショップ

角屋 様

私たちは地元でたくさんの人に支えられてきました。だからこそ、地域貢献をしていきたいと強く思うようになりました。自分にできることを、一つ一つ行動していくという感じですね。


地域貢献をしていく中で、メーカーから声をかけられ、イトーヨーカドー昭島店の物産展に出展もしました。そこで他の出展者を見てみると、鞄を売っている人もいれば絵を描いている人もいて、その人たちに声をかけてみるとあちこちの催事に出展しているという話を聞いたんですね。彼らにはそれぞれの人脈があり、その人脈を伝っていくことで面白いことができるのではないかと思いました。 例えば、石鹸には油も水も交じっているということを自分の手を使って知ってもらいたいという思いから、石鹸づくりのワークショップをしているのですが、様々なジャンルの人たちに声をかけてコラボをすれば、来てくれるお客さんも楽しめるのではないかと考え「女優プロジェクト(自分を綺麗にするという意味を込めて)」を立ち上げました。「女優プロジェクト」では、化粧水や美容液を作るワークショップやセルフ美肌ケア、ベビーマッサージ、介護マッサージなどを提供しています。 ※ここでのマッサージという表現は、医療行為ではなくスキンケアタッチによる心の効用を意味します。

商店街の活性化や地域貢献にもつながるため、これからも広げていきたいと思っています。

2018年の目標~OEMの壁を取り壊して

弊社の場合は小ロット対応ですが、それでもOEMは通常300個以上作らなければ注文できません(個数は少なくても、300個作る時と同じ金額を払えば作成可能です)。 もっと小ロットで作りたいと思っている人たちが多いという事を肌で感じ「コスメティング・ステーション(仮称)」を作ることにしました。

角屋 様

ローザ特殊化粧料で設備や材料を有料で貸し出し、自分の商品を自分で作ることができるようにしました。開発で人が足りない場合は、ローザ特殊化粧料から人員提供もできます。


この発想のきっかけは、帝京大学の学生さんと蜂蜜石鹸を一緒に開発したときに、自分で作ったものを自分で売るというのが楽しかった、という声を聞いたことがきっかけです。 「コスメティング・ステーション(仮称)」が女性の起業支援につながることが、今の目標の1つになっています。

ローザ特殊化粧料 代表取締役 角屋 正雄様(左) 専務取締役 角屋 由華様(右)

株式会社ローザ特殊化粧料

所在地:〒196-0015 東京都昭島市昭和町三丁目10番14号 設立:1958年3月17日 電話:042(546)0600 資本金:2400万円 正社員数 :3名(パート7名) URL:https://www.eco-cosmejp.com/


取材を終えて

何よりも印象強かったのは、新しい事へ果敢に取り組みながらも、常に周りの人たちに感謝する気持ちを持ち続けていることです。新しいことを始める時、人に冷たい視線を向けられることが多い中、そう思える精神力が凄いと思いました。「こうしたい」という気持ちを崩さず突き進んでいく姿をみて、これからどんな形を作っていくのかが楽しみだと思っている人も多いのではないでしょうか。