- 配信日:2022.10.13
- 更新日:2024.08.07
オープンイノベーション Open with Linkers
イノベーション事例~小田急電鉄の取り組みを徹底解説
この記事は、リンカーズ株式会社が主催した Web セミナー「~ 小田急電鉄から学ぶ ~ オープンイノベーション徹底解剖」のお話を編集したものです。
ウェビナーでは、小田急電鉄株式会社 執行役員の久富 雅史 様に「『安全第一』の企業風土からイノベーションを生み出す」というテーマでお話しいただきました。
イノベーションに興味のある方は、ぜひご覧ください。
◆目次
・「次世代モビリティ領域」でのイノベーション
・「まちづくり領域」でのイノベーション
・「くらしの領域」でのイノベーション
・イノベーションに小田急の経営企画部門が取り組む理由
・イノベーション推進の「アプリケーション」と「 OS 」問題への対応
・小田急のイノベーション活動の成果と課題
小田急電鉄のイノベーションの歴史
小田急は東京の西側から神奈川県一帯を事業エリアにしており、運輸業を中心に流通・不動産・ホテルなど様々な事業を運営しています。
小田急線の沿線には 27 市区町があり、人口は約 520 万人に上る非常に大きな経済圏です。
私の所属している経営戦略部では、中長期計画の策定など経営企画業務と風土改革を実践するとともに、新規事業創造を平行しておこなっています。まず、新規事業をいくつかご紹介させていただきます。
「次世代モビリティ領域」でのイノベーション
「次世代モビリティ領域」として、大きく分けて2つの取り組みを行っています。
1つは「統合型」で、移動手段や目的をシームレスに連携させる、いわゆる MaaS で、サービスをより良くしていくことを目標にしています。
もう1つは「次世代サービス型」で、テクノロジーを活用して新しい交通サービスを生み出していく取り組みです。
今回は MaaS の取り組みを例として紹介します。
次世代モビリティの取り組みの例:MaaS アプリ『 EMoT』
小田急では MaaS アプリ『 EMot (エモット)』を開発しました。「Mobility with Emotion 」を短縮して『 EMot 』という名前が付けられています。
『 EMot 』は日々の行動の利便性を高め、新しい生活スタイルや観光の楽しみ方を見つけられるアプリです。
『 EMot 』を使った取り組みとしては、まず小田急グループでのデジタルチケットの拡充が挙げられます。
加えて、他の鉄道会社様との連携や、小田急沿線の施設との連携拡大も行っています。
MaaS アプリ・ Web への機能提供ということで、『 MaaS Japan 』というオープンな共通データ基盤の中にデジタルチケットの管理機能や決済機能などを盛り込み、外部の鉄道会社様が『 MaaS Japan 』に接続することで MaaS の展開をスピーディに進めることが可能となっています。すでに東武鉄道様や遠州鉄道様などにご利用いただいている状況です。
「まちづくり領域」でのイノベーション
「まちづくり領域」での新規事業として、ウェイストマネジメント事業( WOOMS :ウームス)を行っています。循環型社会の実現において、廃棄物の収集・運搬の課題にフォーカスした事業です。
多くの自治体からは「ごみの収集を担当する社員の採用や委託先の確保が難しい」という意見を伺います。
最近は環境への意識の高まりからリサイクルを進めたいという自治体や事業者が増えていますが、そもそもリサイクルできる資源の確保が難しいのです。
そこで私たちがこれまで地域に根ざした鉄道・不動産などのインフラ事業で得たノウハウを活用して、廃棄物の収集・運搬が直面する人手不足などの課題をデジタルで支援しようと、2021 年9月に事業化しました。
現在、小田急沿線に限らず広く営業活動を進めています。
ウェイストマネジメントの2本の柱
ウェイストマネジメント事業には2本の柱があります。
1つが「収集・排出サポート」で、ごみの収集・運搬の効率化を支援するサービスです。アメリカの RUBICON 社との業務提携により、持続可能な収集体制の実現をワンストップでサポートするシステムを提供しています。どうやってごみ収集車の積載量を適正に増やすのか、ゴミを集めた拠点から焼却場へ輸送する回数を減らせるのかなどをシステムを使ってサポートします。あわせて、ペーパーレス化など管理のサポートをするシステムも提供しています。
もう1つが「資源循環のサポート」で、効率化によって生み出された余力を活用して資源循環を高める施策を提供するサービスです。リサイクル量の増加や可燃ゴミの減量に向けて、可燃ゴミと一緒に出されていた剪定枝や紙おむつを、先ほどのシステムを使って生まれた余力でリサイクル率の向上に貢献できます。
また啓発活動の拡充ということで、例えばごみ問題の解決ワークショップをお子さん向けに開催し、その際に使う教材の提供も行っています。
リサイクルできる廃棄物の効率的な収集・運搬は、家庭ごみだけでなく企業の廃棄物に対しても活用可能です。実際に小田急電鉄は、バイオジェット燃料製造サプライチェーンモデル構築に向けた実証事業に参加しています。
「くらしの領域」でのイノベーション
「くらし領域」での新規事業として、地域密着型サービスプラットフォーム『 ONE (オーネ)』について紹介します。
小田急沿線エリアで暮らす・働く・学ぶ約 520 万人の方に向けて、1つの ID で多彩なサービスを提供するサービスプラットフォームを構築しました。
2022 年4月から小田急線に乗るとポイントが貯まる「おでかけポイント」をスタートさせ、鉄道と他のサービスを掛け合わせています。特に力を入れているのが子育て応援サービスです。
社員から新規事業アイデアを公募する事業アイデア公募制度『 climbers 』を 2018 年から開始しました。
『 climbers 』から事業化した取り組みとしては、『いちのいち』という自治会・町内会向けの SNS や、都会の若手のハンターと農林業者をマッチングする『ハンターバンク』というサービスなどがあります。