- 配信日:2026.02.20
- 更新日:2026.02.20
オープンイノベーション Open with Linkers
CES 2026とは?最新トレンドと注目技術を111社現地取材で徹底解説!
CES 2026 出展企業の注目テックベンチャー技術
リンカーズでは、CES 2026 に出展された多くの技術を大きく6つの項目に分類しています。実際に私たちが現地で取材してきた中から、特に注目すべき技術を分野ごとにピックアップしてご紹介します。
デジタルヘルス・ウェルビーイング
デジタルヘルス分野の大手企業では、病院に行く前に自宅でできることを増やす技術が目立ちました。AI やセンサーを活用し、日常の中で体調の変化に早く気づき、体の状態を見守れる仕組みを家庭に広げようとする流れです。
CT などの大型機器は、特に諸外国では大病院にしかありませんが、遠隔地や救急車で使えるポータブル機器があれば、早い段階で状態を把握できて現場で役立つことが分かります。
たとえば、フランスの企業 Withings は、昨年、AI 搭載の鏡型健康デバイス「OMNIA」を発表したことで話題となりましたが、今年は体重計で心臓機能と血管機能がわかるものを発表しています。日常の計測から心臓の状態を継続的にモニタリングできれば、自宅で循環器系疾患の早期発見や治療後の管理が可能になるでしょう。
そうした中で注目したベンチャー企業の2つの技術を紹介します。
1つ目は、アメリカのベンチャー企業 Tiposi が発表した持ち運び可能なヘルメット型のブレインスキャナーです。 マイクロ波を使って脳の画像をわずか3分で撮影でき、CT スキャナーを持ち運べるようにしたポータブル装置です。
2025 年1月の論文では 431 名の検証で脳卒中の判定精度 76% を達成しており、マイクロ波信号と臨床データを AI 深層学習で分析することで実現しています。 CT を持っていけない救急現場や遠隔地での活用が想定されています。将来的には宇宙ステーションでも脳の画像診断ができる時代が来るかもしれません。
2つ目は、韓国の大学発ベンチャー企業 Exopert の技術です。血液中のエクソソーム(細胞外小胞)をラマン分光技術(*注)で解析し、6種類のがん(胃・膵臓・肝臓・大腸・肺・乳)を一度にスクリーニングするものです。 (*注: ラマン分光技術…物質に光を当てた際に生じる特有の散乱光を分析することで、対象に触れずにその場で瞬時に成分や分子構造を特定する技術)
特に画期的なのは、特定のバイオマーカー(タンパク質やマイクロ RNA など)ではなく、スペクトルデータのパターン認識で判定する点です。 従来は抽出に手間と時間がかかったエクソソームについても、自社開発の抽出キットで安く短時間で処理できるようにしています。
Nature Communications に論文を発表済みで、現在は韓国、アメリカ、イギリスで臨床試験が進んでおり、将来的には日本展開や研究者との協力も視野に入れているとのことです。
モビリティ
モビリティ分野でも、AI とロボティクスが今回の主要なキーワードと言えたと思います。
その他の特徴として顕著だったのは、EV(電気自動車)関連技術の失速感で、EV充電機器関連の出展は、数年前に比べると存在感がかなり薄くなっていました。
また、全体の出展社数自体は大きく変わっておらず、特定の技術領域が目立っている印象もありませんでしたが、自動運転や新しいパーソナルモビリティ、フリート分野などそれぞれ着実に独自技術を積み上げているように感じました。
Hyundai は唯一の自動車メーカーとして出展し、「フィジカル AI」と「E2E ロボティクスバリューチェーン(*注)」をキーワードに、自動車企業というイメージからの方向転換を大きくアピールしていました。 (*注: E2E ロボティクスバリューチェーン…ロボットの設計・開発から、製造、運用、保守、そして廃棄・リサイクルに至るまでの全工程を一つなぎに捉えた価値連鎖のこと。)
また、自社のアクセラレータープログラム「ZER01NE」で育成したスタートアップ 10 社以上を展示し、AI・エネルギー・ロボティクス・量子コンピューティングの4分野に注力してオープンイノベーションを推進している点をアピールしていました。
BOSCH は、AI と自動車の関わりについて積極的にアピールし、パーソナライズドなどの技術が数年以内に実用化されるなどの現実的な話をしていました。 また、EV バッテリーのリサイクルシステムを初めて公開し、海外企業ならではのオープンな姿勢も見られました。
モビリティ分野で注目の技術を2つ紹介します。
日本の中央海産株式会社は、タイヤ保管事業で蓄積したデータを活用し、カメラの画像認識でタイヤの状態を自動チェックする技術を発表していました。 タイヤの画像から、メーカーや製造時期、摩耗の進み具合などを判別できるため、ディーラーは「そろそろ交換したほうがいいタイミング」を根拠を持って提案できます。
スタッドレスタイヤ交換の需要は冬前に集中しがちですが、この技術を活用することで、時期をずらすことができ、ディーラーの安定した収益化に貢献可能です。新たな用途を探すため、今回初めて CES に出展したところ好評で、タイヤ以外にも黒い物体全般を検知する技術として、新しい分野への応用が期待されています。
アメリカのベンチャー企業 AC Future は、デジタルノマド層をターゲットにしたトレーラーハウスを開発しています。観光バスほどのサイズで、停車時には横に広げることができ、日本の 1LDK マンション程度の広さを確保できます。
印象的だったのはそのビジネスモデルで、単なる移動する家を作るのではなく、自社のコア技術を「AI統合型インフラ」と位置づけ、「不動産とモビリティの中間にある新しい市場カテゴリー」で製品を訴求していた点でした。
ロボティクス
ロボティクス分野は、CES の中では比較的毎年出展数も多く、安定して展示数が多い分野です。数字では出展社数が増加している印象は少ないものの、会場では各社がヒューマノイドのデモを中心に行い、多くの来場者の注目を集めていました。
特に多くの来場者の注目を集め印象的だったのが、中国の Unitree という企業の ヒューマノイドG1です。リングの上でアクロバティックなダンスをするなどの派手な演出で注目を集めていました。生で見ると、滑らかな動きや飛び跳ねる動作等のバランス感覚から、技術力の高さを感じます。
一方、シンガポールの Sharpa が展示していた North は、手先の細かい動きに強みがあるヒューマノイドです。パネルを持ち上げる、パンフレットを来場者に手渡す、自撮り棒で写真を撮るなど、手先の繊細な作業を見せていました。一言でヒューマノイドと言っても、各社の技術展示の違いが表れています。
今回のCESでは大手企業では、LG Electronics が独自のヒューマノイドを自社の事業領域で応用するというビジョンを打ち出しており、洗濯物をたたむデモなども行われました。 Boston Dynamics なども同様に自社領域でのヒューマノイド活用を発表しております。
ヒューマノイド全体では、かなり多くのデモがあり注目度も高かったものの、製造現場などでの応用を見据えた重い荷物を運ぶ動作をするデモ等は行われておりませんでした。
現場で使えるヒューマノイドがどのような形になるのかは、各社が今後かなり速いペースで開発を進めると思われるため、引き続き新しい情報を注視したいです。
AI × 産業応用
AI × 産業応用のカテゴリーは、ロボティクス・デジタルヘルス・エネルギー関連など、あらゆる分野に AI が活用されているため、定義が難しい分野でもあります。一部の先進的な企業だけが AI を利用しているのではなく、分野を横断した基盤技術として活用されるインフラ的な存在になっている印象です。
その中でも、「AI の供給側を支える技術」と「現場での応用技術」という観点からピックアップした2つの技術をお伝えします。
1つ目は、日本のベンチャー企業株式会社 GeekGuild およびその米国法人 Cache AI Technologies の技術です。あらゆる分野で AI が当たり前のように使われ始めている現在、重視されるのは AI を使う側だけでなく、AI を安定して動かし続けるための土台となる技術といえます。
Cache AI Technologies が取り組むのは、LLM(大規模言語モデル)が一度行った計算結果をキャッシュとして保存し、次に似た質問や計算が来たときに、同じ処理を最初からやり直さないようにする仕組みです。これにより、LLM の消費電力を最大9割削減し、チャットの応答時間も 10 倍高速化するといった効果があるとされています。
2つ目は、日本の株式会社 MTG による XR と AI を組み合わせた技術です。カメラで髪の毛を読み取り、なりたい髪色を決めると、AI が必要なカラー剤を出力するという仕組みです。これまでの AR 技術は「こんな髪色になります」と映すことはできても、実現するための方法は提示できませんでした。
美容師のスキルや暗黙知を AI で平準化するという点で、技能伝承に課題を抱える製造業などにも応用可能な技術として注目しています。ビューティーテック分野に特化してはいるものの、すでに実用化されており現場で活用できる AI 技術です。
エネルギー / サステナビリティ / 建設
エネルギー・サステナビリティ関連では、「環境に優しい」「カーボンニュートラル」といった言葉を前面に出すだけではなく、実現するための具体的な課題に向き合い、検証や技術開発を着実に進めている展示が多く見られました。
また、「建設」という意味合いとは少しずれますが、各種インフラ関連の技術開発も活発な印象を受けました。
大手企業同士のコラボや協業が目立ち、既存製品に後付けで追加できる、今の設備をそのまま活かせるといった訴求も多く見られたのも特徴の1つです。
たとえば、Siemens はメイン会場で大規模なブースを構え、他社との協業や実際の導入事例を前面に出して紹介していました。 LG も同様に協業関係を強調し、今ある設備や装置を大きく入れ替えずに、エネルギーマネジメントを最適化できる点をアピールしていました。
そうした中で注目した技術を2つ紹介します。
1つ目は、米国のベンチャー企業 ION Storage Systems 社の固体電池です。特許を取得したセラミック技術を採用している点が特徴で、エネルギー密度などをアピールしていました。
印象的だったのは、スウェーデンの電池企業 Northvolt AB が破綻したニュースの影響で、新興の電池関係企業が自社で大規模な生産設備を持つことを避けている点です。
自社のコア技術を大手企業に渡し、製造や大規模生産は大手に任せる形で、良い関係を築きたいというニーズがある様子です。電池関係のコア技術を探している企業にとっては、ベンチャー企業と協業するチャンスが多いのではないかという印象を持ちました。
2つ目は、米国のベンチャー企業が開発した建設関係の技術です。ブロックチェーン技術を用いてセンチメートル級の精度を持つハンドヘルド型の GNSS 受信機を開発・販売しています。測位精度を高めている点が大きな特徴で、建設現場だけでなくモビリティにも関係する技術といえます。 CES Innovation Awards® を受賞しており、世界最高クラスの精度を達成したことが大きなアピールポイントとして紹介されていました。
Emerging Tech(新興技術分野)
リンカーズでは、Emerging Tech分野は、半導体、量子技術、宇宙開発、農業テクノロジーなど、新興分野における基盤技術や次世代産業を創出する技術領域を対象としています。
Emerging Techの分野では、IBM などの大手企業も参加したAI と量子コンピューティングに特化したセッションが話題となっていました。大手企業が開発を進める中、ベンチャー企業は要素技術を提供する役割を担っている印象を受けています。 注目の技術を1つ紹介します。
アメリカの Diamond Quanta は、人工ダイヤモンドの成膜技術を持つ企業で、ダイヤモンドをスマートフォンやパソコン、宇宙で使える産業素材として量産することを可能にしました。
ダイヤモンドには、硬くて熱をよく通す一方で、絶縁体であるという特徴があります。ダイヤモンドにリチウム・ホウ素・リンをドーピングすることで、室温でも電気が流れる半導体の素材にし、さらに半導体産業の標準サイズである 12 インチ(約 30cm)の大型薄膜の製造にも成功しています。
シリコンより熱に強く高電圧にも耐えられるため、パワー半導体の材料としても注目されています。現地では、Diamond Quantaと提携する、産総研発スタートアップ、株式会社 ExtenD にお話を伺いました。同社はナノレベルのダイヤモンド粉末を基板に植え付けて成長させる技術や熱フィラメント CVD を通じて、実験室レベルの技術を量産レベルへ引き上げることに貢献したことがわかりました。日本の技術力が、世界の先端技術を支えているのを目の当たりにしました。
技術の応用例として、強化ガラスより傷がつきにくいスマホ画面や、ダイヤモンド薄膜をセンサーにして液体の味を判別する技術などが紹介されています。
CES 2026 イノベーションレポート
本記事で紹介したテックベンチャーの技術は、リンカーズが実際に CES 2026 の現地で調査した内容の一部です。
調査結果は「CES 2026 イノベーションレポート」としてリリースしています。
レポートの特徴
● ロングリスト:4,000 社以上の出展社から厳選した 260 社以上の注目技術
● 詳細取材:111 社に直接取材を実施し、技術の詳細や開発者の想いをヒアリング
● 独自の視点:日本企業への期待や日本市場展開の可能性を独自に数値化・分析
● 一次情報:公開情報では得られない技術者の本音や熱量を収録
ご興味のある方は、リンク先の「申込み・問合せ」ボタンよりお問い合わせください。
講演資料のダウンロードについて
本記事に関するセミナー講演資料を、以下のボタン先の申込フォームからお申込みいただけます。申込フォームに情報を入力後、送信ボタンを押してください。その後、自動的にページが切り替わりますので、そちらから講演資料をダウンロードしてください。
『CES 2026 調査報告会』講演者紹介
渡辺 彩子
株式会社リンカーズOI研究所 オープンイノベーション研究所 リサーチマネージャー 博士(農学)
名古屋大学大学院 生命農学研究科 博士課程修了。2021年 藤田医科大学 消化器内科にて博士研究員を務め、消化器系疾病と腸内細菌叢の研究に取り組む。2023 年よりリンカーズ オープンイノベーション研究所に入社し、医学、ヘルスケア、バイオテクノロジー領域を中心に先端技術動向調査を行う。
石田かほり
株式会社リンカーズOI研究所 オープンイノベーション研究所 リサーチマネージャー
武蔵工業大学大学院 工学研究科 電子工学専攻。
脳波( EEG )における ERP 評価を用いたヒトの記憶関連の脳機能に関する研究に取り組む。
デンソーにて車載空調機器向けセンサーの開発・設計、車室内快適性製品の新規企画・開発、小型モビリティの新規企画に従事。
現職ではヘルスケア、各種センシング技術(生体、環境 etc. )、カーボンニュートラル / ネガティブ 他多数の最新技術動向調査を行う。
干場太一
株式会社リンカーズOI研究所 オープンイノベーション研究所 リサーチマネージャー
神戸大学大学院 工学研究科 機械工学専攻。
生体金属材料(バイオマテリアル)の研究に励み、修了後は大手家電メーカーに入社し、生活家電の技術開発や量産設計などに従事する。
2024年 株式会社リンカーズOI研究所入社。主にセンサ・機械・ソフトウェア分野における先端技術動向調査により、製造業の活性化を支援している。
リンカーズサービスのご紹介
リンカーズ株式会社は、ものづくり企業向けにイノベーション・オープンイノベーションを支援している会社です。技術パートナー探索やユーザー開拓など、ものづくり企業の様々な課題に対してビジネスマッチングを軸にしたソリューションをご提供しています。またあらゆる技術テーマでのグローバル先端技術調査も承っております。
◆技術パートナーの探索には「 Linkers Sourcing(リンカーズソーシング)」
Linkers Sourcing は、全国の産業コーディネーター・中小企業ネットワークやリンカーズの独自データベースを活用して、貴社の技術課題を解決できる最適な技術パートナーを探索するサービスです。ものづくり業界の皆様が抱える、共同研究・共同開発、試作設計、プロセス改善、生産委託・量産委託、事業連携など様々なお悩みを、スピーディに解決へと導きます。
◆技術の販路開拓/ユーザー開拓には「 Linkers Marketing(リンカーズマーケティング)」
Linkers Marketing は、貴社の技術・製品・サービスを、弊社独自の企業ネットワークに向けて紹介し、関心を持っていただいた企業様との面談機会を提供するサービスです。面談に至らなかった企業についても、フィードバックコメントが可視化されることにより、今後の営業・マーケティング活動の改善に繋げていただけます。
◆技術情報の収集には「 Linkers Research(リンカーズリサーチ)」
Linkers Research は、貴社の業務目的に合わせたグローバル先端技術調査サービスです。各分野の専門家、構築したリサーチャネットワーク、独自技術データベースを活用することで先端技術を「広く」かつ「深く」調査することが可能です。研究・技術パートナー探し、新規事業検討や R&D のテーマ検討のための技術ベンチマーク調査、出資先や提携先検討のための有力企業発掘など様々な目的でご利用いただけます。
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