• 配信日:2026.01.14
  • 更新日:2026.01.14

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【2026年最新】最先端技術の一覧とトレンド予測|論文・特許データが示す次世代の潮流

プラスチックのケミカルリサイクル技術:サーキュラーエコノミー実現の切り札


なぜ今、ケミカルリサイクルなのか? – 従来技術の限界と社会的要請

世界のプラスチック廃棄物は増加しており、海洋汚染や資源枯渇といった課題は、もはや一企業や一国の努力だけでは解決できない地球規模の経営課題となっています。現在のリサイクルの主流である「マテリアルリサイクル(機械的リサイクル)」は、再生を繰り返すことによる品質の劣化、多種多様な素材が組み合わされた複合フィルムや汚れが付着したプラスチックの処理が困難であるなどの技術的課題が存在します。こうした背景から「ケミカルリサイクル」が急速に注目を集めています。
ケミカルリサイクルとは、使用済みプラスチックを化学的に分子レベルまで分解し、モノマーや石油由来の原料といった化学的な出発物質にまで戻す技術の総称です。これにより、廃棄物を再び価値ある「資源」として捉え直すことができます。その代表的なアプローチは多岐にわたります。

・熱分解による油化:廃プラスチックを熱で分解し、石油のような油に戻す技術。
・ガス化(合成ガス化):高温で分解し、様々な化学品の原料となる合成ガスを生成する技術。
・加水分解やアルコール分解:ポリエステル(PETなど)を水やアルコールを用いて元のモノマーに分解する技術。
・酵素や微生物による分解:特定の酵素や微生物の働きを利用して、穏やかな条件下でプラスチックを分解する技術。
・触媒分解:触媒を用いて特定の化学反応を促進させ、プラスチックを分解する技術。

ケミカルリサイクルによって再生された原料は不純物が取り除かれ分子レベルで再生されるため、原理的には「バージン材(新品の素材)」と同等の品質を達成することが可能です。品質が劣化しないため、これまで再利用が難しかった食品包装や、高い安全性が求められる医療分野の製品へも再び生まれ変わらせることが可能になると期待されます。

多様化する技術アプローチ:課題解決に向けたイノベーションの最前線

ケミカルリサイクル技術は一つの手法ではありません。対象とするプラスチックの種類、目指す最終製品、そして経済合理性に応じて、世界中の企業や研究機関が競うように多様な技術アプローチを開発しています。この技術の多様性こそが、プラスチック問題という複雑な課題に対する解決策の幅広さを示しています。

● 油化技術:既存インフラを活用した大規模リサイクル

廃プラスチックを熱分解して「油」を生成し、それを既存の石油精製プロセスに戻す「油化技術」は、その規模と経済合理性から大きな注目を集めています。このアプローチの最大の戦略的価値は、多種多様なプラスチックが混在した廃棄物を大規模に処理できる点と、既存の石油精製設備(ナフサクラッカーなど)をそのまま活用できる点にあります。これは、新たな大規模投資を抑制しつつ、日本の化学産業が世界有数の規模を誇る既存のコンビナートインフラを競争優位に転換できる可能性を示唆します。廃プラスチックを化学産業の基幹原料であるナフサの代替として利用できるため、社会実装へのハードルが比較的低いのが特徴です。

ENEOSと三菱ケミカルは、英国Mura Technology社の「超臨界水技術(Hydro-PRT®)」を導入し、2025年に茨城事業所で大規模なケミカルリサイクル設備を稼働させます。この技術は、高温・高圧の水を用いて複雑なプラスチック廃棄物を直接分解し、高品質なリサイクル油を生成します。この油はナフサクラッカーの原料として、再びプラスチックや化学製品へと生まれ変わります。

三井化学は、廃プラスチックから得られた熱分解油を、常温・常圧の化学処理で効率的に精製する独自技術を開発しました。従来の高温・高圧を必要とする精製法に比べ、エネルギー消費を約70%も削減できるアプローチです。これにより、コストと環境負荷を大幅に低減しながら、高品質な油を安定的に供給する道筋を示しています。

● モノマー化(解重合)技術:高付加価値な水平リサイクルの実現

特定の種類のプラスチックを、その構成単位である「モノマー」にまで化学的に分解し、新品と全く同じ品質のプラスチックに再生する「モノマー化(解重合)」は、真の意味でのクローズドループ(閉じた循環)型リサイクル、すなわち「水平リサイクル」を実現する鍵となる技術です。品質の劣化が全くないため、使用済みの製品が何度でも同じ製品へと生まれ変わる、究極の資源循環モデルを可能にします。

Denovia社は、独自の触媒化学プロセスを用いて、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、繊維混成材といった多様なプラスチックを、石油由来品に遜色ない高純度のモノマーへと短時間で変換する技術を開発しています。

信州大学は、アクリル樹脂(PMMA)のリサイクルにおいて、従来よりも130℃も低い300℃という低温で解重合させ、95%という高い回収率で高純度モノマーを再生する技術を開発しました。

東京都立大学は、安価で入手しやすい鉄触媒を用いて、ペットボトルなどに使われるPETを高効率で分解・回収する技術を開発しました。これにより、コストを抑えながら高付加価値な再資源化を実現しています。

● 難処理プラスチックへの挑戦

ケミカルリサイクルの真価は、これまでリサイクルが極めて困難とされ、廃棄・焼却するしかなかったプラスチックに新たな価値を与える点にもあります。技術革新は、リサイクルの適用範囲を劇的に広げつつあります。

多層フィルム: 食品包装などに使われる、PET(ポリエステル)とPE(ポリオレフィン)が接着された多層フィルムは、分離が困難なためリサイクルの大きな障壁でした。これに対し、Murray State Universityは、フィルムの層を物理的につなぎとめる特殊な共重合体を開発し、溶融再加工時の機械的特性を新品同等に維持する技術を実証しました。

フッ素樹脂: 耐熱性や耐薬品性に優れる一方、焼却が困難で有毒ガス発生のリスクがあるフッ素樹脂(PVDF、PTFE等)は、難処理材の代表格でした。名古屋工業大学は、常温・常圧で安全に分解し、フッ化カリウムなどの有用な工業原料に直接転換する技術を開発しました。

自動車部品: 豊田合成は、使用済み自動車から回収したポリプロピレン(PP)製の部品から、不純物管理や独自の材料改質技術により、新品と同等の性能を持つ部品を再生する水平リサイクル技術を確立し、量産化に成功しています。

全固体電池技術の動向と展望


概要:次世代エネルギー貯蔵の切り札

全固体電池技術は、現代の製造業、特にEV(電気自動車)産業において「ゲームチェンジャー」と位置づけられています。現在主流のリチウムイオン電池は、可燃性の液体電解質を使用することによる根本的な発火リスク、そしてエネルギー密度充電時間といった性能面での限界に直面しています。全固体電池は、この液体電解質を不燃性の固体に置き換えることで、安全性と性能の両面で飛躍的な向上を遂げるポテンシャルを秘めており、次世代エネルギー貯蔵技術の切り札として期待されています。

この技術への期待の高さは、研究開発の活発さにも表れています。2020年から2024年にかけての学術論文の年間平均成長率は20.6%、特許出願の年間平均成長率は27.2%に達しており、学術界と産業界の双方が大きなリソースを投じていることが定量的に示されています。

技術革新の最前線:3つのキードライバー

全固体電池の実用化は、特定の画期的な発明一つによって達成されるものではありません。むしろ、複数の技術領域における開発が同時並行的に進み、互いに影響を与えながら技術全体の成熟度を高めています。本セクションでは、この多面的な技術革新の最前線を「材料開発の深化」「製造技術の確立」「社会実装の加速」という3つの主要なドライバーに分類し、それぞれがどのように相互作用し、実用化への道を切り拓いているのかを解説します。

材料開発の深化:性能の核を握るブレークスルー

全固体電池の性能、すなわちエネルギー密度、寿命、安全性を根幹から決定づけるのは材料科学の進展です。現在、世界中の研究機関や企業が、より高性能で持続可能な材料の開発にしのぎを削っています。

固体電解質の多様化と高性能化: 全固体電池の心臓部である固体電解質では、現在、硫化物系、酸化物系、ハロゲン化物系など、特性の異なる複数のアプローチで開発が進められています。特に実用化に近い硫化物系では、出光興産が量産技術の確立を急いでおり、2027年から28年の本格事業化を目指して実証設備の増強を進めています。また、三井金属鉱業は、高いリチウムイオン伝導性を持つアルギロダイト型の硫化物系電解質「A-SOLiD™」を開発し、増産体制の構築に取り組むなど、産業化に向けた動きが活発化しています。

電極材料の革新:高容量化と脱希少金属への挑戦: 電池のエネルギー密度を直接左右する正極・負極材料においても、革新的な研究が進められています。性能向上だけでなく、資源の持続可能性も重要なテーマです。例えば、京都大学などの研究グループは、地殻に豊富に存在する鉄を主成分としながら、既存のリチウムイオン電池の2倍を超える容量を持つ全固体フッ化物イオン電池用正極を開発しました。負極材料では、名城大学が半導体材料であるゲルマニウムを応用し、従来比で約3倍となる1,000mAh/gという極めて高い容量を持つ複合負極を報告しています。

製造技術の確立:量産化への道を切り拓く

研究室レベルでの材料的ブレークスルーを、商業的に成立する工業製品へと転換させる上で最も重要なのが製造技術の確立です。特に日本の製造業技術者にとって最大の関心事である「量産化」は、全固体電池普及の鍵を握ります。具体的な投資や革新的なプロセス技術開発は、この分野が研究開発フェーズから、日本の産業界が最も得意とする製造プロセスエンジニアリングの領域へと移行しつつあることを示しています。

パイロットラインへの巨額投資: 事業化フェーズへの移行を象徴するのが、大規模なパイロットラインへの投資です。ホンダは、栃木県さくら市に約430億円を投じて大規模な実証ラインを建設しました。2025年より稼働を開始するこのラインは、「固体電池特有の緻密化」「高速な加工」「エネルギー消費低減」といった量産特有の課題を克服し、実際のコスト構造を検証することを目的としています。

革新的な製造プロセスの登場: 従来の製造プロセスにおける課題を克服するため、全く新しいアプローチも登場しています。例えば、長岡技術科学大学では、レーザーによる局所加熱3Dプリンティング技術を応用した電池製造プロセスが研究されています。これらの技術は、材料を瞬時に、かつ精密に加熱・積層することで、製造時間の大幅な短縮や、より緻密な界面の形成を可能にします。将来的には、製造コストの削減に大きく貢献するだけでなく、日本の装置メーカーにとって新たな技術的優位性を築く好機となる可能性もあります。

社会実装の加速:実用化事例に見る可能性

全固体電池は、もはや理論や実験室の中だけの技術ではありません。コンセプト実証の段階を超え、具体的な製品やサービスでのテスト運用が世界各地で始まっています。多様な分野での応用事例は、技術が着実に成熟し、社会に新たな価値をもたらす段階に入ったことを物語っています。

自動車・モビリティ分野: 最大の応用市場と目される自動車分野では、主要OEMによる実用化に向けた最終検証が加速しています。BMWは、パートナーであるSolid Power社と協力し、フラッグシップモデル「i7」を用いた車両で全固体電池セルの走行試験を開始しており、実際の運用データを蓄積しています。また、Stellantisと米国のスタートアップFactorial Energyも、2026年までにデモ車両を走行させる計画を進めています。さらに、次世代モビリティへの展開も始まっており、中国のEHang社は、開発中のeVTOL(空飛ぶクルマ)に固体電池を搭載し、48分を超える長距離飛行に成功。航続距離と安全性の向上を実証しました。

産業機器・IoT分野: 製造業の現場においても、全固体電池はその価値を発揮し始めています。SUBARUは、工場の産業用ロボットのバックアップ電源として、マクセル製のセラミックパッケージ型全固体電池を採用しました。これにより、従来は不可欠だった定期的な電池交換が不要となり、生産ラインの停止時間を削減できるなど、工場の生産性向上とメンテナンスコスト削減に直接貢献しています。また、マクセル自身も、150℃といった高温環境下でも充放電が可能なセラミックパッケージ型電池を製品化しており、これまで電池の搭載が難しかった過酷な環境でのIoTデバイス活用などを可能にしています。

まとめ


本レポートでは、論文/特許分析を切り口として、今注目すべき先端技術を紹介しました。本レポートで紹介した技術は、「AIによる既存領域の革新」「サステナビリティという大きな潮流への対応」という二つの共通テーマで括ることができます。特に注目すべきは、AIが単なる効率化ツールに留まらず、サステナビリティという社会課題を解決するための強力な触媒として機能している点です。AIによる素材探索はより環境負荷の低い新材料を生み出し、デジタルツインはエネルギー効率の極限までの最適化を可能にします。これらの技術動向は、単独で存在するのではなく、相互に影響し合いながら産業全体の変革を促しています。

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執筆者紹介


【2026年最新】最先端技術の一覧とトレンド予測|論文・特許データが示す次世代の潮流

浅野 佑策
リンカーズ株式会社 イノベーション推進事業本部

【略歴】
東北大学工学部卒業( 2006 年)、東北大学大学院工学研究科修了( 2008 年)
株式会社東芝 生産技術センターにおいて半導体製造プロセスの研究開発に従事。
その後、アクセンチュア株式会社にて大手製造業における、工場デジタル化や業務自動化などのデジタルトランスフォーメーションを複数推進。
現職では、メーカーでの研究開発とコンサルティングの経験を活かして、エレクトロニクス領域を中心に、先端技術動向調査、技術マッチング、技術情報を効率的に収集するための技術開発など、製造業向けのイノベーション創出を支援している。