• 配信日:2025.11.13
  • 更新日:2025.11.13

オープンイノベーション Open with Linkers

新規事業を成功に導く9つの行動特性と人材育成【2,000件のデータ】

新商品・新規事業を成功に導くハイパフォーマンス人材(HPI)の評価・育成


ここまでにお伝えしたのは、あくまで新商品・新事業の開発をうまく進めるためのマネジメントです。本セミナーの本題はここから。そのマネジメントの実現を、いかに人材要件に落とし込んでいくか考えることが重要になります。

新規事業を成功に導く9つの行動特性と人材育成【2,000件のデータ】

まず開発した新商品・新事業に含まれる人材要件で、ダイレクトに効く要素として以下のものが挙げられます。

  • ・プロジェクトリーダー特性
  • ・プロジェクトチームメンバーの専門性、自律性
  • ・プロジェクトマネジメントと開発戦略の立案、推進

など。

そして人材の能動性に影響を与えられる要素としては、以下のものが考えられます。

  • ・顧客視点のターゲティング
  • ・コア技術マネジメント
  • ・アライアンスマネジメント

など。

こういったことを加味しつつ、ロバート・ケリーという方が定義したスターパフォーマー( HPI )の9つの行動特性と照らし合わせながら人材要件に落とし込み、人材を評価・育成します。

  • <9つの行動特性>
  • 1. 成果重視のワークスタイル
  • 2. ナレッジネットワークの構築
  • 3. 自己の生産性向上のための環境整備
  • 4. 複眼的視点の保持
  • 5. フォロワーシップ
  • 6. ナレッジリーダーシップ
  • 7. チームワーク
  • 8. 組織風土の熟知
  • 9. プレゼンテーション能力

デバイスメーカーでの適用事例

デバイスメーカーで行った事例を紹介します。先ほど紹介した9つの行動特性(要素)に照らし合わせながら企業を分析していくと、いくつかの因子が出てきます。しかし、このデバイスメーカーの場合は因子が1つしか出てきませんでした。つまり、複数の要素が1つの共通因子に集約される傾向が確認されたということです。これは社員の行動特性が単一の重要な要因に強く依存している可能性を示唆しています。

さらに分析した結果、「ナレッジリーダーシップ」が組織内で特に重要な要素であることが明らかになり、次いで「成果重視のワークスタイル」「チームワーク」「フォロワーシップ」が重要であることが判明しました。

ただし、重要な要素の中で「ナレッジリーダーシップ」と「チームワーク」の標準偏差を見ると、ばらつきが大きいということが見えてきました。

ここまでをまとめると、このデバイスメーカーは事業開発をするうえで、先ほどの4つの行動特性(「ナレッジリーダーシップ」「成果重視のワークスタイル」「チームワーク」「フォロワーシップ」)が重要になるのですが、「ナレッジリーダーシップ」と「チームワーク」については、チーム・各社員ごとにバラツキが大きいということです。このバラツキを縮めていくことを重視した人材育成がこのメーカーにとって有効な対策であり、現在取り組んでいます。

取り組みの具体例を挙げると、社員の「ナレッジリーダーシップ」を高めるために社内ナレッジシェア会を行ったり、顧客などに伝わりやすい言葉で技術的な説明を行うプレゼンの練習の機会を作ったりなどをしています。

それから、先ほど紹介した評価方法は人材配置にも応用可能です。例えば A 、 B 、 C という3つのチームがあったとします。 A チームのリーダーは人材の評価が「 A 」、サブリーダーの評価が「 B 」で非常にバランスがいい。しかし B チームには評価「 A 」の人材がいない。さらに C チームはリーダーよりもサブリーダーの方が評価が高い。このように各チームメンバーをスコアリングすることで、適切な人材配置かどうか、スコアの低い人材を成長させるにはどのチームに配属すればいいのかなどを分析・決定するのにも役立ちます。

化学メーカーでの適用事例

大手化学メーカーの技術者を評価した事例を紹介します。

新規事業を成功に導く9つの行動特性と人材育成【2,000件のデータ】

画像の左側がグループリーダーの行動特性を示したグラフで、右側が一般の技術者のグラフです。そして青い線が、このメーカー( A 社)で優秀とされるグループリーダー、一般技術者の数値です。桃色の線が、グループリーダーと一般技術者の平均値です。

左側のグラフを見ると、優秀とされるグループリーダーは「成果重視のワークスタイル」と「ナレッジネットワークの構築」が飛び抜けて高いことが分かります。これらの重要性が見えてきました。

そして右側のグラフを見ると、まず優秀な技術者は複眼的視点の保持が平均より高いことが分かります。複眼的視点とは、顧客、同僚、競合企業など自分とは異なる立場の人の視点に立って物事を捉えることです。それからナレッジリーダーシップについても、優秀とされる技術者と平均値とでは乖離がしていることが見て取れます。

また左右のグラフを見比べて共通していることとして、成果を出すというワークスタイルはグループリーダーにとっても一般技術者にとっても重要ですし、自立性の高い仕事ゆえに生産性を上げるため自ら動いて環境を整備していくことも重要になるということが挙げられます。

それから、このメーカーにおいて技術者のような専門性の高い人たちをまとめる上司にあたる役職に求められるコトも、分析していく中でわかってきました。まずはやはりナレッジリーダーシップ。部下に当たる技術者だけでなく上司も技術について理解し、リーダーシップを発揮していくことが必要です。さらにフォロワーシップ。特定の領域に関してチームメンバーの一人が非常に詳しく、上司含め他のメンバーの知識が足りないというケースもあり得ます。そのときに全員の知識・能力を引き上げていくためのリーダーシップも上司に求められる要素です。他には組織風土の理解。大企業の場合は自分たちの意見やアイデアを上層部に採用してもらうために誰に働きかけるべきかを理解することも必要になります。その際のプレゼン能力も重要になるでしょう。

新規事業を成功に導く9つの行動特性と人材育成【2,000件のデータ】

画像左側は、この化学メーカーにおける組織全体の成果(新商品・新事業がステージゲートを通過して上市される確率)と、9つの行動特性の相関関係を表したグラフです。グループリーダーも一般技術者もナレッジネットワークと組織成果が強い相関関係にあることが分かります。このメーカーは研究所や製造工場など多数の社外組織とアライアンスを組んで事業を展開しています。こういったネットワークを構築する能力こそ成果を出すうえで重要であると、このグラフから考えられるでしょう。そこでグループリーダーのナレッジネットワークと一般技術者のナレッジネットワークをそれぞれ分析し、5つのカテゴリーに分けたものが右側のグラフです。このグラフを見ながら、成果を出すためにはどのカテゴリーにある活動をしていくべきかを導き出していきます。

新規事業を成功に導く9つの行動特性と人材育成【2,000件のデータ】

実際に行った改善のためのプログラムをまとめたのがこちらの画像です。まず9つの行動特性を階層別・チーム別に分けて照らし合わせ、どこが改善点なのかを洗い出します。そして改善のための行動計画を各自で考えていくという流れです。

具体的には、行動特性と照らし合わせた改善点を診断表として各社員に渡して改善のための行動を日々行ってもらいます。その過程で同僚からの評価( 360 度評価)をもらい、その結果を集計してグループワークを 10 日に一度のペースで4回実施。そして課題を解決できたことをマネジメント層に報告するというプログラムです。

新商品・新規事業を開発するリーダーの行動特性に関する参考事例


新規事業を成功に導く9つの行動特性と人材育成【2,000件のデータ】

ここからは、新商品・新事業を開発するリーダーの行動特性に関する参考事例の紹介です。トヨタ、コマツ、本田技研工業、キャディのケースを、戦略・プロセス・組織(チーム)・人材の観点でまとめました。

その結果として、複数の領域にまたがって研究開発を進めるために、様々な組織とコラボレーションをする「越境統合力」の重要性が見えてきました。これは先ほどの「ナレッジネットワーク」と似ている要素です。そして「学習施行と高速試行」。つまり PDCA サイクルを高速で回していくことも重要だということが分かりました。

新規事業を成功に導く9つの行動特性と人材育成【2,000件のデータ】

またリーダーの創造性や革新性を測り、自社はどのレベルにあるのかを導き出すための研究も進んでいます。その研究の一つが、画像左側にある革新的リーダーシップの5次元モデルです。ただこのモデルは非常に概念的で、自社の創造性・革新性を測る指標として使うのは難しいと感じており、より具体的な行動に落とし込まないと扱いにくいと個人的に考えています。

右側はマッキンゼー・アンド・カンパニーのイノベーションリーダーシップの実証研究で、7つの特性に分類されています。

このように、イノベーションや、より高い成果を出すための研究はかなり進んでいます。その中でも、先ほど紹介した9つの行動特性が大切であり、私自身、今後も研究を続けていこうと思っています。

講演者紹介

新規事業を成功に導く9つの行動特性と人材育成【2,000件のデータ】

波多野 徹 氏
株式会社NEWONE 執行役員兼コンサルティング事業部長

【略歴】
早稲田大学大学院理工学研究科卒業後、野村総合研究所に入社。戦略コンサルティング業務、ニューヨーク駐在経験を経てアクセンチュアに入社。
1年後にパートナーに昇格し、チェンジマネジメント、ヒューマンパフォーマンスグループの責任者、自動車・産業機械グループのアジア・太平洋地域責任者を務める。
その後、九州大学産学連携センター客員教授を経て、沖電気工業株式会社に移り、ソリューション&サービス事業本部長、同社常務執行役員および子会社であるOKIデータの代表取締役社長に就任。
退任後、株式会社SHIFTのアカウントビジネス推進本部副本部長を経て同社顧問。2024年5月より弊社株式会社NEWONEの執行役員兼コンサルティング事業責任者に就任。

オープンイノベーション推進を支援するリンカーズの各種サービス
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